国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)

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情報社会学会シンポジウム

2009年1月31日に開催された情報社会学会シンポジウム「「多様な情報社会」をどう捉えるか」で国際大学GLOCOMの所員が下記の発表を行いました。(おって、資料を掲載させていただきます。)
  • 「独自サイバースペース・インフラとしてのコンピュータ・ゲーム ~リアル・マネー・トレードと、経済システムの間~」
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    井上明人 (国際大学GLOCOM)

  • 「青少年ネット規制法と情報社会の政策形成 -ネットの安全・安心を求める政府と市場と社会の相互調整-」
    ―>資料ダウンロード(PPT)
    庄司昌彦 (国際大学GLOCOM)

  • 「社会学理論における再帰的近代化と情報化の意義」
    ―>資料ダウンロード(PPT)
    鈴木謙介(国際大学GLOCOM)

  • 「情報社会のコードと言語の多様性:ソフトウェアの多言語化に働く政治的力学」
    ―>資料ダウンロード(PDF)
    上村圭介(国際大学GLOCOM)

  • 「グローバル・ガバナンスにおける分断と不平等:ウィキペディアの言語と政治」
    ―>資料ダウンロード(PDF)
    渡辺智暁(国際大学GLOCOM)


    「独自サイバースペース・インフラとしてのコンピュータ・ゲーム ~リアル・マネー・トレードと、経済システムの間~」

    井上明人 (国際大学GLOCOM)

    発表要旨  現在、インターネットは、万国共通の公共的プラットフォームとして機能している。そのため、ネットワーク中立性をめぐる問題等の、インターナショナルなガヴァナンスの問題が論じられている。一方、オンラインゲームの世界は、一次的現実に属する公共空間としてのリアリティを認められず、二次的現実に属する<おままごと>の空間として括られている。だが、90年代末以降にオンラインゲームの世界で問題となったRMTと呼ばれる現象は、二次的現実空間の問題が、一次的現実の公共・基幹インフラに関わるような形で展開してきた。これは、二次的現実空間のインフラの問題も、一定規模・一定期間を超えれば一次的現実の公共性を考えるための変数として機能しうることを示している。のみならず二次的現実空間では、インフラ設計そのものを独自に構築できるため、コミュニケーション/行為のインフラとしての自由度は一次的公共空間のそれを凌駕する可能性を持ち得ている。本稿では、このような二次的現実のインフラが、一次的現実との間でどのように相互作用するのかを、RMTをめぐる実際の展開を一つのケーススタディとして示した。

    「青少年ネット規制法と情報社会の政策形成 -ネットの安全・安心を求める政府と市場と社会の相互調整-」

    庄司昌彦 (国際大学GLOCOM)

    発表要旨  2008年6月11日に成立した「青少年ネット規制法」の成立過程では、「情報通信産業の発展」や「言論の自由」など青少年保護以外のさまざまな立場から、問題提起や議論が活発になされた。特に2007年末~2008年6月までの半年間は、産業界、政治、行政、学界、市民、メディア、PTAなど様々な立場の人々が活発な動きが見られた。本稿ではキングダンの「政策の窓」モデルにおける「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」および「政策アクティビスト」の概念を用い、青少年ネット規制法の成立過程におけるさまざまなアクターの動きとそれぞれの関係を描写した。その結果、情報社会の(とりわけ情報通信政策における)政策形成過程は、従来に増してさまざまな主体が関与する、より複雑な相互作用の過程として捉える必要があるのではないかということなどが示唆された。

    「社会学理論における再帰的近代化と情報化の意義」

    鈴木謙介(国際大学GLOCOM)

    発表要旨  近年の社会学理論で注目される概念に「再帰性」がある。この概念は特に政治領域において規範概念として用いられることが多くなっており、「新しい民主政治の必要性」とともに語られるものになっている。しかしながら、そこで導出される「再帰的近代ゆえの困難と、それに対する処方箋」は、再帰性の高まりという普遍的なプロセスを強調するあまり、それぞれの社会における独自の要因を軽視する傾向にある。本報告では特に日本社会における注目すべき要因として「雇用の変化」「コミュニケーション環境の充実」といった論点を取り上げながら、「多様な再帰的近代」の可能性について提示し、情報社会学への貢献を図るものである。

    「情報社会のコードと言語の多様性:ソフトウェアの多言語化に働く政治的力学」

    上村圭介(国際大学GLOCOM)

    発表要旨  多様な情報社会の実現には、多様な言語が使われていることが必要である。一方で、情報社会を形作る技術、あるいはコードは、言語を含む情報社会の多様性を規定する。本発表では、初めにこれまでの情報社会をめぐる議論において言語の多様性がどのように論じられてきたのかを検討し、次いで、これまでの社会言語学、その他の研究が何に言語の多様性の根拠について考察した。言語の多様性は、情報社会を形作るコード、すなわちソフトウェアの多言語化(ローカライゼーション)に依存する側面があるが、本発表ではマイクロソフトのWindowsオペレーティングシステムの多言語化の現状を踏まえ、多言語化の実現度が国際政治上の力学によって左右されてきたことを示した。

    「グローバル・ガバナンスにおける分断と不平等:ウィキペディアの言語と政治」

    渡辺智暁(国際大学GLOCOM)

    発表要旨  本発表では市民社会の多様性を考える切り口として、ウィキペディアにおけるガバナンスと言語の関係に注目し、いくつかの概念的整理を試みた。ウィキペディアは参加者の間の合意に基づく自治が重んじられるプロジェクトだが、全ウィキペディア的な自治は少ない。主に言語毎に、ウィキペディア日本語版やウィキペディア英語版といった形で区切られ、それぞれに自治の仕組みや、ルールやガイドラインが存在している。  これは、言語をまたぐ(翻訳を必要とする)意思疎通のコストが高いこと、などを考えると、合理性のある制度だと言える。同時に、そのような制度化は、言語間の交流をより減らし、分断をより深めるという再生産の効果も持つ。単一の言語版内に収まらないような案件についての議論に際しては、言語版同士の利害衝突が見られる。また、そのような案件に関する合意形成や意思決定のプロセスでは英語が中心的な役割を果たすため、英語話者とそうでない者の影響力の差がつくことがある。ウィキペディアは理念としては分断や不平等を志向するものではなく、全人類に知識を提供するプロジェクトであり、幅広い参加者の執筆によって質の高い情報源たることを目指しているが、分断や不平等は簡単に克服できるものではないように思われる。  これは、理念的には協働やグローバルな民主主義を志向するネット上の市民社会のほかの取り組みについても、あてはまるものであるようにも思われる。

    2009-02-06