
講師:山本 達也氏
所属:慶應義塾大学SFC研究所上席所員
時間:午後2時~午後5時 終了しました
情報化の波は、確実に中東のアラブ諸国にも到達している。2007年現在、アラブ諸国を訪れると、日本などの先進諸国と同様に、老若男女を問わず携帯電話を片手に街を歩く人々であふれている。いたるところでインターネットカフェを目にすることができるし、中をのぞくと多くの若者でにぎわっている。
ところが、アラブ諸国で実際にインターネットを利用してみると、日本とは異なった事情があることにすぐ気づくことになる。多くの国で、特定のウェブサイトがブロックされるなどのインターネット・コントロールが行われているためである。
この地域へのインターネットの流入は、グローバリゼーションの波が到来したことの1つの結果として考えられる。同時に、日本でもしばしばニュースとして取りあげられるようになったドバイでの建設ラッシュや不動産市場の活況に代表されるように、グローバリゼーションによる経済的恩恵を受け始めた地域も出現するようになっている。
インターネット、すなわちグローバリゼーションにおける情報化の側面とグローバリゼーションの経済的側面。言うまでもなく両者は密接な関係にある。そして、この密接な関係ゆえ、多くのアラブ諸国政府はある種のジレンマを抱えることとなった。上で指摘したインターネット・コントロールは、政府が抱えるジレンマの帰結でもある。
グローバリゼーションの波がアラブ諸国政府にもたらしたジレンマとは何か、今後この地域はどの方向に進もうとしているのだろうか。この講演では、日本でほとんど紹介されることのない、アラブ諸国の情報通信政策をテーマとして、グローバリゼーション時代のアラブ地域について考えてみたい。
山本 達也(やまもと・たつや)
慶應義塾大学SFC研究所上席所員。2006年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。1975年、東京都生まれ。シリア国立アレッポ大学学術交流日本センター主幹・客員研究員などを経て、現職。専門は、国際関係論、比較政治学、中東政治研究。主著に『サイバーポリティクス』(一藝社、2001年、共著)、『かわりゆく国家』(一藝社、2002年、共著)、『政治のレシピ』(メタ・ブレーン、2006年、共著)、『開発途上国における情報化の進展とICT支援政策:中東アラブ諸国の事例を中心に』(JICA準客員研究員報告書、2004年)など。
「アラブ諸国の情報通信政策〜グローバリゼーションの波がもたらしたジレンマ〜」と題し、中東シリアでの在住経験もある山本達也氏による講演が行われた。本講演は、日本ではほとんど紹介されることのないアラブ諸国での情報通信政策に焦点を当て、グローバル化する現在のアラブ地域を考えるものである。
講演では、アラブ諸国の政府が情報化に対して積極的な理由を紹介する一方で、民主化と相関関係を持つ情報化のもたらすジレンマが示された。そして、情報化の進展と民主化という政治的リスクの抑制が政府の課題であると定義し、インターネット・コントロールの方法を、1)検閲によるコンテンツ層、2)プロキシサーバによるコード層、3)電話会社やISPからなる情報ネットワーク構築による物理層の3層でのコントロールに分け、後二者がいかに制度化されているかという観点による分析が提唱された。最後はその観点から、外資企業の受け容れに積極的なドバイとICTに積極的なヨルダンのケーススタディがなされた。
会場からはインターネット上の言語の問題、情報規制の有無やその基準、そしてイスラム文化への影響について質問が寄せられ、グローバリゼーション、情報化、そして地域といった問題について議論がなされた。
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