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kumon_letter - November 1, 1995

公文レター No.1

November 1, 1995 [ kumon_letter ] このエントリーをはてなブックマークに追加

1995年11月24日

「ディジタル革命」

公文レター第一号

公文俊平

[ディジタル革命の認知]

このところ、「ディジタル革命」という言葉が急にひんぱんに使われるようになってきました。ディジタルな情報処理機械としてのコンピューターが生まれたのは、もう何十年も前のことなのに、どうしてここへきてあらためて「ディジタル革命」などと言われだしたのでしょうか。それには二つの事情があると思われます。すなわち、

  1. 1970年代以来、マイクロチップスの集積化に伴うコンピューターの高機能化が進んでいたところへ、さらに1990年代に入って、コンピューターのネットワーク化が急速に進展し始めた。その結果、単体としてのコンピューターというよりは、「コンピューター・ネットワーク」が発揮するパワーの巨大さが、あらためて認識されるようになった
  2. ディジタルな情報処理技術に基づくこのコンピューター・ネットワークが、アナログの技術に基づく既存の情報通信の世界 (電話や放送) を急激に浸食し始めた

ことが、「ディジタル革命」という言葉の普及の背景にあります。

[ディジタル革命の進展速度]

このディジタル革命は、「爆発」という形容詞がぴったりするほどの速度、これまでの技術革新や社会変化の歴史の中ではおよそ経験されたことのない速度で、いま進展しています。アメリカの評論家ジョージ・ギルダーは、最近のインタビュー (Internet World, 11月号) の中で、その速度を、下記の四つの「法則」の相乗作用の結果だとして、次のように見積もっています。

  1. 拡張メトカーフェの法則
    • 1.1コンピューターのパワーは、チップの集積度の自乗に比例する
    • 1.2ネットワークのパワーは、要素の数の自乗に比例する
  2. 拡張ムーアの法則
    • 2.1チップの集積度は、1 年半ごとに倍増する (3 年ごとに4 倍になる)
    • 2.2ネットワークの規模は、年々倍増する

1.は理論的な法則、2.は経験則だといっていいでしょうが、以上を合わせますと、コンピューター・ネットワークのパワーは、3 年ごとに、

22x2 × 23x2 = 16 × 64 = 1024

つまり、約1000倍になることになります。これは、一年あたりに直せば、10倍です。今日のディジタル革命は、年々10倍という、信じがたいほどの速度で進展しているのです。この勢いが続けば、コンピューター・ネットワークのパワーは5 年で10万倍となり、10年では実に100 億倍になってしまいます。

このディジタル革命が始まったのが1990年代の初頭だったとすれば、1990年代も半ばに達した今日までの5 年間で、世界のコンピューター・ネットワークのパワーはすでに10万倍になっていることになりますが、これは実感としてもうなづけます。この勢いが、少なくともさらに後5 年は続くとすれば、つまり、経験則としての「拡張ムーアの法則」が、後もう5 年は続くとすれば、今世紀の終わりまでに、コンピューター・ネットワークのパワーはもう10万倍になることになります。このような爆発的成長が、20年も30年も続くとは到底考えられないとすれば、ディジタル革命の進展速度はそのあたりで急速に減速し、それまでの「指数的成長」曲線は、S 字型の曲線に転じていくのではないでしょうか。恐らく、後世の歴史家は、1990年代を、「ディジタル革命の10年」として記録することになるでしょう。

「指数的」あるいは S字型成長過程の常ですが、最初のうちは、いかに速度が早くても絶対値が小さいために、変化の影響はそれほど大きなものにはなりません。大変な変化が起こっていることが実感されるのは、その過程が始まってかなりの時間が経過してからのことです。私は、今回のディジタル革命は、まさに今、その時期に入りつつあると思います。

西和彦さんのお話では、マイクロソフトのビル・ゲーツ社長は、コンピューター・ネットワークの重要性に気づいて、「今後 "未来永劫" ネットワークに賭けることにした」といっているそうです。 "未来永劫" というのはどのくらいの期間のことかという問いに対しては、「5 年間だ」と答えたそうですが、これはまさに「言いえて妙」です。私たちを取り巻く情報通信環境は、これからの 5年間で確実に一変します。来世紀の初頭、私たちはどのような地平に立っているのでしょうか。