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kumon - April 1, 1999

自立分散型ネットワーク社会の到来

April 1, 1999 [ kumon ] このエントリーをはてなブックマークに追加

1999年04月23日

New Wave Spring 1999年, Vol.29

公文 俊平

21世紀の社会は、それぞれがなにがしかの自律・自立力を持った諸単位が、ネットワークで結びついて、さまざまなかたちの交流(コミュニケーション)や協働(コラボレーション)を活発に展開する社会になるだろう。

 この数年の間に、情報通信のネットワークは、インターネットの標準(IP=インターネット・プロトコル)にしたがう、高速・広帯域のIPネットワークが主流になる傾向がはっきりしてきた。また、さまざまなデバイス--パソコンやPDAだけでなく、カメラやプリンター、さらには自動車や家電製品、あるいは自動販売機からコンビニなどで売られている各種の商品にいたるまで--は、ネットワークに常時接続されて、その所有者あるいはユーザーの意を受けた形で、互いに通信や取り引きをしあうようになるだろう。サンマイクロ社の提案しているジニの標準は、そのための便利なプラットフォームになると思われる。

 このことは、大型コンピューターの登場と共に始まった情報通信革命が、スタンドアロンのパソコンやマイクロコンピューターの段階を経て、第三の段階、つまりネットワーク・コンピューターとかコンピューティング・ネットワークと呼ばれる自律分散型のコンピューティングの段階に入ることを意味している。それはまた、センターにある「メーンフレーム・コンピューター」とそれをとりまく「ダム・ターミナル」のような階層的な役割分化、あるいは「サーバー」と「クライエント」のような役割分担の固定化がなくなって、ひとつひとつの情報通信機器が互いに「平等」の立場に立って、必要に応じてお互いの役割を交代したり分担したりしながら、交流や協働を行う段階が始まることを意味している。

 同じような動きは、物理的な情報通信のシステムだけでなく、社会システムのレベルにも見られるようになるだろう。21世紀の社会では、ものや情報の生産・流通者対消費者という役割分担が流動化する。そして誰でもが、情報(コンテント)を積極的に創造・発信したり、探索・加工したりするようになる。マイケル・ギボンズの言い方を借りるならば、知識の生産様式が、一部の専門家に限られていたものから、全員参加型のものへと転換するのである。

 そう遠くない将来に、日本全国の、いや世界中のいたるところに、自律・自立的な情報処理・通信能力を備え、自らのウェブ・サーバーをもった個人やグループが生まれるだろう。かれらはIPネットワークを通じて互いに結びつき、情報・知識を無償で分け合ったり、有料で交換しあったりする。また共通の目標の達成をめざす協働行動にたずさわる。たとえば広域的な災害について、それぞれの地域の実情を互いに知らせ合い、支援のための活動の相互調整を行ったりするだろう。もちろんいわゆるボランティアー活動だけでなく、ビジネスや政治運動なども、このような自律分散型のネットワークのプラットフォームの上で、広汎に展開されるようになるに違いない。