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2000 - October 1, 2000

『ファイル交換ソフトウェアの行方』

October 1, 2000 [ 2000 ] このエントリーをはてなブックマークに追加

上村圭介著

  本稿で筆者は、ファイル交換ソフトウェアの現状を展望し、こうしたソフトウェア群がインターネットにとって何を意味しているのかを考察している。ファイル交換ソフトウェアとは、NapsterやGnutellaに代表されるもので、もともと音楽ファイルなどの交換や共有を容易に行うために開発された。ところが、ファイル交換ソフトウェアは、電子化されたファイルであれば、著作物を含めてどのようなものでも交換可能にするため、著作権あるいは知的財産権のあり方を問い直すもの、あるいはそれに挑戦するものとして理解されるようになってきた。しかし、その本当の意味は、インターネットの利用者同士が直接やりとりを行う、「ピア・トゥ・ピア」コミュニケーションの潜在的な可能性を改めて示したことにあると筆者は指摘する。

 すでに非常に多くの種類のファイル交換ソフトウェアが公開されている。そのうち、本稿が対象としているのは、「ネットワークに接続された未知(unknown)のコンピュータの間で、ファイルを交換し、または共有することができる」、「ファイルの送り手と受け手が、『クライアント』と『サーバ』の機能を備えた共通のソフトウェアを使用する」、「交換(共有)されるファイルは介在するサーバ上に一元的に保存されずに、ファイルをやり取りするコンピュータ間で直接に交換される」という三つの特徴を満たすものである。

 その上で、ファイル交換ソフトウェアは三つのタイプに分類される。一つは、「仲介型」である。Napsterに代表される仲介型では、どこの誰がどのようなファイルを持っているか仲介するコンピュータが存在する。ただし、ファイルの転送は、利用者(ピア)同士で行われる。

 ニつ目は、Gnutellaに代表される「伝言(リレー、チェーン)型」である。このタイプでは、ファイルの所在についての情報を集中的に管理する仲介役のコンピュータは存在しない。ファイルに関する情報は、利用者(ピア)のコンピュータからコンピュータへ手渡しされていく。

 三つ目は、「放流型あるいは回遊型」である。このタイプでは、ネットワークに参加したコンピュータが、ファイルを交換・共有するための一つの大きな記憶領域を構成し、この中にファイルが記憶され、利用者のリクエストに応じて引き出されるが、誰がそのファイルをネットワークに「放流」したのかは分からなくなっている。

 筆者は、こうしたファイル交換ソフトウェアは、単に利用者にとって便利なものであるという以上に重要な意味を持っているという。第一に、これまでいくつかの要因により抑えられてきた「ピア・トゥ・ピア」のコミュニケーションが再発見され、インターネットの本来の姿が利用者に提示されたことである。第二に、それだけにとどまらず、分散検索という新しい可能性も提示している。分散検索は、メタデータの活用によって、分散エージェント技術を発展させ、既存の検索エンジンのあり方を大きく変えていく可能性がある。第三に、インスタントメッセージングソフトウェアとの間で互いの機能を取り込みあうことにより、インターネットは、コンテンツあるいはメッセージの共有から、“時間の共有”を行うものへと変化しつつあるのではないかということである。

 ファイル交換ソフトウェアはネットワークの帯域やコンピュータの処理能力に負荷をかけると批判されるが、逆に広帯域インターネットの新しい利用法となる可能性を秘めているのだ。