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2001 - December 1, 2001
無線通信システムのシームレス化
December 1, 2001 [ 2001 ]
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講師:ウー・ガン(通信総合研究所無線統合ネットワークグループ主任研究員)
今や、われわれのまわりには、無線技術を利用した新しいサービスが溢れている。しかし、ふと気がつけば、携帯電話、PHS、無線LAN、Bluetooth、デジタル放送……といった、それぞれまったく独立した異なるサービスに囲まれてしまったともいえるだろう。携帯電話を例にとってみても、事業者ごとに、あるいは技術の「世代」ごとに、異なるサービスが提供されている。技術間、サービス間での競争が行われていると言えば聞こえはいいが、このまま新しいサービスが出現しつづけるとなると、利用者にとってはあまり望ましいことではない。
今回、IECP研究会の講師としてお招きしたウー・ガン氏は、「無線通信システムのシームレス化」という研究に携わっており、このような異種混在の無線通信サービスを、「シームレス」に利用できる統合無線システムのための技術開発を進めている。
ウー氏の講演から無線通信サービスのシームレス化のポイントを抜き出すとすれば、それは、サービス間のモビリティ、媒体間のモビリティが提供されているということになる。シームレスなサービスは、必ずしも一つの標準技術の上に提供される必要はない。それぞれの個別のサービスが適材適所の原則の上に提供され、利用者がそのサービス間を特に意識せずに切り替えることができることが重要なのだという。
例えば、PHSと第二世代携帯電話のハイブリッド端末は、このイメージに似たサービスを提供しているが、実のところ現在のハイブリッド端末は、PHSと携帯電話それぞれのサービスの切り替えを手動で行わなければならず、また、複数のサービスを同時に動かすことになるため、その分、消費電力も大きくなるなど、シームレスとはいえない。利用者が本当にシームレスに利用できるサービスを提供するためには、周囲にある利用可能な無線システムの検出、異種システム間の動的な切り替え、サービスを統合して管理するための共通ネットワーク、さらに、それぞれのサービスを横断して利用者が使うことのできる、共通の加入者IDの設定などを解決しなければならない。
ウー氏は最後に、シームレスな無線通信システムが可能にする新しい通信事業者のモデルについて触れた。その中では、一つの大きな共通のネットワークを提供する「オペレータ」と、実際に利用者へのサービスを提供する「プロバイダ」が分離される。プロバイダが、無線アクセス、光アクセスなどのさまざまなオペレータとの契約を取りまとめるため、利用者は、どこか一つのプロバイダに加入するだけで、複数のアクセス手段を利用できるというものだ。情報通信事業の中で、サービスとオペレーションの分離がいわれるようになっているが、無線通信を視野に入れることで、ますますこのようなモデルの必要性は高まってくるだろう。
上村圭介(GLOCOM主任研究員)