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2002 - December 1, 2002
『デジタル・デバイド:構造と課題』
December 1, 2002 [ 2002 ]
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C&C振興財団 編著
講師:原田 泉 (株式会社国際社会経済研究所 主任研究員・調査部長 兼 日本電気株式 会社 政策調査部 担当部長)
最近、デジタル・デバイドという言葉を日本で聞かなくなったように思う。2000年の夏、日本がホスト国であった沖縄サミットで「IT」がキーワードとして取り上げられた時には、デジタル・デバイド解消に向けた取り組みについて、多くの議論がなされていたはずだ。あれから2年しか経っていないのだが、デジタル・デバイドは解消されたのであろうか。
10月10日のIECP読書会で取り上げた本書では、複数の筆者が、それぞれ異なる視点からデジタル・デバイドを分析している。このことからもわかるように、デジタル・デバイドにはさまざまな側面、とらえ方があり、大変複雑である。そう簡単に解消できるものではない。
本書によると、情報化はIT革命と呼ばれ、産業革命以来の大変革であり、また経済の起爆剤になると同時に、社会生活そのものを短期間で変えるものと考えられている。実際、生産の効率化が図られたり、距離を超えた交流・流通が可能になったりと、社会経済にプラスの効果をもたらしている。しかし、これらの恩恵を受けられない人たちもいるはずだ。講師の原田泉氏は、「情報化の光の部分を見がちであるが、それだけではないことが顕在化してきた今、情報化が引き起こす矛盾を乗り越えていかなければならず、そのためデジタル・デバイドをテーマに選択して分析、議論を行った」と述べた。
何事も発展の過程においては格差が生じるものであり、このこと自体が問題ではない。市場原理のもとではこの格差が競争の原動力になり、社会を活性化することもある。原田氏によれば、「デジタル・デバイドは、情報化による社会的格差の顕在化である」という。つまり、「新たな格差が生まれたというよりも、情報化の進展により国家間の格差、社会的、経済的格差が生まれることを意味する。デジタル・デバイドそのものが問題であるというよりも、このことにより生じる格差、また既存の格差の拡大が問題なのだ」。このことは、デジタル・デバイドの及ぼす影響の大きさを表している。そして、変化の速度が速いほど、格差の広がりも大きくなる。だからこそ、世界中で議論され、問題の解決に向けて取り組みがなされているのであろう。しかし、一方で、デジタル・オポチュニティと呼ばれ、情報化により格差を是正、解消する側面があるのも事実だ。
出席者の方から、職場におけるデジタル・デバイドについて発言があった。社内におけるデジタル・デバイドには、二つの要因があるそうだ。一つは情報化に対する世代間の格差である。二つ目は職場の文化である。機器の機能を活用しながら効率的に仕事を進めていこうとする部署もあれば、直接、顔を見て話をしたり、組織の縦割りを重んじたりするために積極的に情報化を行わない部署もあり、組織間で格差が生じているとのことだ。
情報インフラの整備が進んだ日本では、デジタル・デバイドはあまり話題にならなくなっているが、まだまだ自分たちの身近なところにも存在するということを忘れてはならないだろう。