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2003 - February 1, 2003

政策メッセ「信頼できる政策形成に向けて」

February 1, 2003 [ 2003 ] このエントリーをはてなブックマークに追加

庄司昌彦(GLOCOM研究員)

 1月11日・12日に、政策分析ネットワーク*1(Policy Net)の年次研究大会「政策メッセ」が明治大学で開催された。これはワークショップや研究発表、展示などを通じて政策研究者や実務者、学生、NPO等が相互に研究交流を行うイベントで、今年で4回目を数える。

 GLOCOMはこの政策分析ネットワークに機関会員として参加しており、今回の政策メッセでは二つのワークショップの企画運営とポスター展示を行った。以下ではその模様を中心に報告する。

ワークショップ
「Digital Economyの変調と 岐路に立つインターネット」

コーディネーター:
前田充浩(政策研究大学院大学 客員教授)

パネリスト:
公文俊平(国際大学GLOCOM 所長)
楠 正憲(マイクロソフト株式会社 製品マーケティング本部Windowsサーバー製品部 プロダクトマネージャー)
神成淳司(岐阜県 情報技術顧問)
土屋大洋(国際大学GLOCOM 助教授)
真野 浩(ルート株式会社 代表取締役)

 情報通信政策一般を考えるうえでの大局的な現状確認を行い、地域情報化やセキュリティにおけるオープンソースと商業ソフトの比較、無線(ボランティア)ネットワークの展開、国際的なガバナンス等、情報通信産業とインターネットに起き始めている変化を議論するワークショップを開催した。

 公文所長はアメリカの情報通信産業のメルトダウンと議会の開発主義的な支出動向(デジタル・ニューディール)、および東アジアが広帯域インフラ先進国に躍り出た現状を解説した。次に神成氏が自治体や地場の中小企業の情報化を、大手ベンダーに頼らずオープンソースのソフトを活用し地元企業で展開する可能性を述べた。土屋氏は、9.11以後のインテリジェントコミュニティの活性化とインターネット・ガバナンスの推移について述べた。真野氏は無線LANを用いたボランティアネットワークの動向や政策の動向について述べた。最後に楠氏が、オープンソースコミュニティに対する評価と、「積極的にセキュリティ論議に参加・協力し、政府が必要とするセキュリティ基準を満たす準備がある」というマイクロソフト社の戦略を述べた。

 議論を通じ、インターネット社会の基盤であった「自由」に変化が生じてきているという共通見解が得られた。

ワークショップ
「知識国家の構想」

コーディネーター:
野中郁次郎(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

パネリスト:
泉田裕彦(経済産業研究所 客員研究員)
西田治子(マッキンゼーアンドカンパニーインクジャパン R&Iマネージャー)
山内康英(国際大学GLOCOM 教授)
丸田 一(国際大学GLOCOM 助教授)

 経営学の概念である「知識マネジメント」や「組織的知識創造」を用いると、国家の政策形成過程とは、立場の異なる人々が知識を共有しながら新たな合意形成を模索する「知の創造過程」「社会的知識マネジメント」であると捉えることができる。このワークショップでは、知識創造プロセスと政策形成についての理論的検討や事例の紹介、中央官庁や地方自治体における適用可能性を討議し、ITも活用した21世紀型の政策形成のあり方や国家像を探った。

 まず泉田氏は、政府の政策形成機能の低下を指摘し、一方で情報化により社会的知識創造の「場」の拡大が起きていると解説した。次に山内氏は、情報や知識の共有という観点から、旧来の開発主義的な政・産・官のトライアングルによる政策決定過程を解説した。そして、主要産業の交代が起きている現在では、利害関係者による「政策連合」の組換えが起きている、と指摘した。西田氏は企業の知識創造に対する分析を政府の政策形成に具体的に応用し、innovativeな政策形成を行うコミュニティづくりの必須要素を挙げた。

 この後、丸田氏が総括的なコメントを行い、「コミュニティ・モデル論」からみた知識国家論への提案を行った。これを受けて野中氏はまず、コミュニティ概念と「場」の類似性を指摘した。そして、時空間と文脈を共有し新たな知識を生み出す「場」の役割と、組織における「ビジョンを持った個人」の重要性を強調し、今後も議論を継続していきたいと語った。

ポスター展示によるGLOCOMの紹介

 機関展示コーナーでは、政策研究を行っているシンクタンクや、教育機関、NPO等の紹介が行われた。

 GLOCOMも、現在行っている研究・提言活動を「情報社会・学」研究、国際情報通信政策、政策形成・協働、地域情報化の四つの観点からまとめたポスターを作製し、掲示した。また、『智場』や研究員等の著作物を展示し活動を紹介した。

メインセッション・その他

 最後に行われた政策メッセのメインセッションでは、まずオリックス株式会社取締役会長兼オリックスグループCEO宮内義彦氏が、総合規制改革会議議長としての取り組みを解説した。次に竹中平蔵経済再生金融担当大臣がインタビュービデオで出演し、日本社会にはマスコミを介さずに政府等の一次情報を入手し社会に翻訳して伝える「政策ウォッチャー」が不足している、と指摘した。最後にパネルディスカッションが行われ、北川正恭三重県知事は、選挙公約において政策の目標や手段、財源などを数値で明示することの必要性を述べた。

 期間中の来場者数は非会員も含め424人と過去最多であった。会場で、参加者として来場したGLOCOMのフェローの方々にお目にかかることもあった。政策形成に携わる人々のネットワークが着実に広がり、知的なコミュニティを形成しつつあることを感じる大会であった。

*1 政策分析ネットワーク:竹中平蔵代表(現在は大臣職務中のため大田弘子内閣府参事官が代行)<http://www.policynet.jp>