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2003 - May 1, 2003
IECPコロキウムレポート ブロードバンドの現状と将来
May 1, 2003 [ 2003 ]
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講師:鳴戸道郎氏(富士通(株) 特命顧問、(株)富士通研究所 代表取締役会長、(株)トヨタアイティー開発センター 代表取締役会長)
3月4日に行われたIECPコロキウムでの鳴戸道郎氏の講演は、ブロードバンドの普及状況の説明にとどまることなく、国際的に活躍されている経験に基づいた、たいへん示唆に富むものであった。内容も盛りだくさんで、3時間という時間が短すぎると感じた。
鳴戸氏の話から感じたことは、ここ数年の情報通信の世界の変化に伴い、社会構造に大きな変化が起きているということである。それは今までの常識ややり方が、あたりまえではなくなってきているということを意味する。
その中のひとつとして、社会・経済のリーダーであった米国が、ブロードバンドの普及という点において、必ずしも秀でているわけではないということが挙げられる。「IT革命」や「ドットコム・バブル」という言葉が流行っていたころ、情報通信によって牽引される米国の社会、経済は、ますますその勢いを増すと考えられていた。ところが、ドットコム・バブルがはじけ、競争政策の見直しが行われているうちに、アジアや北欧の国では一気にブロードバンドの普及が進んだ。
韓国、日本の普及率の高さは有名であるが、ここにきて中国の勢いが増している点を鳴戸氏は強調していた。潜在的な市場の大きさはいうまでもないが、後発で参入する国のほうが最新技術とインフラを導入できる利点がある。また、情報通信が及ぼす社会経済発展への影響力を考慮し、それを政策の中心に据えているという。それから、北欧についても学ぶべき事例が多いという。北欧ではICT(Information & Communication Technology)による国家再生に注力し、電子政府や、新たな産業の確立に成功しているそうだ。また、教育制度も充実しており、社会的連携を尊重している点は参考にすべきと、強調していた。
もうひとつは、情報インフラやアプリケーションが多様化してきたことである。講師の話の中で出てきた無線ICタグは、そのひとつのいい例である。バーコードは物流としての物の流れを追跡することしかできなかったが、無線ICタグを利用すると、その物が有する情報が瞬時にわかり、解析可能になる。既存の生産や流通システムに大きな変化が生じることは明らかであるが、消費行動にも変化が起きることは間違いない。
また、情報家電がさらに普及すれば、生活と情報の関係がより密接になり、ライフスタイルも大きく変わるに違いない。現在の機能は、既存の技術を基に「こんなことができたらいいのでは…」という、つくり手の立場から考えられているが、使われていくうちにユーザーニーズにあった機能が開発され、また新たな使われ方をして普及していくに違いない。
人々の情報通信への要求度はますます高くなり、生活になくてはならないものになりつつある。流通する情報量が急増することになると、それに応えるインフラや制度づくりが必要になる。鳴戸氏が強調されていた「必ずしも国家が主導してということではないが、重要な国策のひとつとして情報通信のあり方を考えていくべきだ」という点は、説得力があるものであった。
日向和泉(リサーチアソシエイト)