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2005 - November 12, 2005
セッション:014 地域情報化研究会
November 12, 2005 [ 2005 ]
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セッション『014 地域情報化研究会』では、最初にモデレーターの丸田 一氏より、本セッションの主催者でありタイトルでもある「地域情報化研 究会」について説明があった。地域情報化研究会は2005年1月に国際大学 GLOCOMをプラットフォームとして発足し、毎月一回、地域情報化に 関心を持つ研究者と実践家によってクローズドな会合が重ねられてきた。来 春、その成果を新著『地域情報化教本』(仮称)にまとめて刊行する予定だ ということで、今回のセッションではその中間報告が行われた。
研究を進めるなかで明らかになってきたことの一つが、「地域情報化」の 定義の違いである。地域情報化にかかわる人の関心がどこにあるかによって 定義が違い、解釈も違う。例として丸田氏は、公文俊平氏の定義「アクティ ビズムの発揮と智のゲームへの参加」、鈴木謙介氏の定義「イメージの実体 化とIDの確立」、國領二郎氏の定義「プラットフォーム形成」、従来の定義 「ITによる地域振興」の四つを紹介した。そして、これらをくくるメタな定 義として、次のように説明できるのではないかと述べた。 「情報化」:共働型社会の形成プロセス
ITの登場を契機として、新しいタイプの主体(能動性)と、場(創 発性)の相互作用によって、知識の生産・流通を通じて評判や信頼を獲 得するプロセス。社会ゲームや、その他の社会秩序(規則、倫理など) など意味の体系(大きな物語)の書き換えが起こる。 「地域情報化」:地域が主体になって進める情報化
プラットフォームによる地域問題解決や、イメージ戦略などを通じ て、地域に共同主観が形成され、プラットフォーム管理者らが共同主観 を代弁するなどにより地域が主体化し、地域間競争を経て意味の体系が 書き換えられるプロセス。
『地域情報化教本』(仮称)には、この定義を巡る分析が盛り込まれる。教 本の目次(案)は次のとおりである。 第1章 いま・なぜ・地域情報化なのか 第2章 政策は地域を変えるか 第3章 情報が地域をつくる 第4章 プラットフォームで地域をつくる 第5章 共働型社会に向けて 補論
第1章が導入、第2~4章が各論、第5章がまとめである。本セッション は、このうち第2~4章をテーマとして、それぞれの執筆担当者が概要を説 明し、それに対して公文俊平氏がコメントを加えるという形で進められた。
第2章は、これまで中央政府や地方自治体が主導して行ってきた地方情報 化政策についての検証である。担当する政策分科会のメンバーである瀧口樹 良氏によると、「特に1980年代以降、開発主義的発想によって立案され進め られてきた地域情報化政策の経緯を追い、その評価を行う」。そしてその流 れの中から、90年代末になって地域主義的な発想(市民の発想、官に利用 されない動き)が芽生えてきたことを踏まえ、「補完性の原理」をキーワー ドに、行政はどういう役割を担うべきなのかを考え、制度設計における市民 と行政の役割についてまとめたい、ということであった。
では、行政側からではなく、市民の側から見た地域情報化とはどういうも のなのか。これについては、富沢木實氏が、地域情報化はソーシャル・キャ ピタル(市民度)を増大させるのかという視点から、大分のCOARA(コア ラ)と札幌のNCF(ネットワークコミュニティフォーラム)を取り上げて 考察を行う。また、片瀬和子氏が、海外の事例を取り上げながら、政策に依 存しない地域情報化活動について考察を加える。
第3章は、社会学の視座から捉えた地域情報化である。担当する社会学分 科会のメンバーである浅岡隆裕氏によると、論点は次の五つである。
まず、情報化は単線的なプロセスなのか、地域とはどのように確定される のかなど、地域情報化を語る前提について整理をする。次に情報化のツール としての地域メディアを概観し、ここで地域メディアとは必ずしもインター ネットに限るものではないが、情報ツールとしてインターネットは非常にイ ンパクトが大きいものであることが確認される。
続いてネット発のコミュニティーの可能性、地域イメージ形成の理念と手 法などについて考察を進め、「地域のイメージ・シンボル」が「地域の共同 主観性」との摺り合わせや「対外的イメージ」との相互作用を繰り返しなが ら、「地域アイデンティティー(かけがえのなさ)」の確立につながっていく 過程を明らかにする。さらに、確立された「地域アイデンティティー(かけ がえのなさ)」が、「地域の実態」と影響を及ぼし合う(これを「地域イメー ジのポジティブ・ループ」と呼ぶ)ことで、地域の行政、産業の在り方を変 革する力を持ちうる点にも言及する。
第4章は、國領二郎慶應義塾大学教授のグループが担当する。國領氏は、 プラットフォームを「主体間の相互作用を促す共有された言語空間」と定義 する。プラットフォームは「語彙、文法、文脈、規範によって構成される。 (1)語彙によって概念が共有され、(2)文法によって伝達のプロトコルが 共有され、(3)文脈=共通体験によって伝達されたメッセージの共通の解 釈が醸成され、(4)規範によって行動が決定される、というメカニズムだ。 このような共通基盤がないと、ネットワーク上で多様な主体が相互作用を行 うことはできない」(GLOCOMf o r u m 2005資料より)。さらに、この ようなプラットフォームは設計可能であるとする。本章では、このプラット フォーム設計に着目し、地域においてどのようなプラットフォーム設計を行 えば、地域における多彩な主体の共働や、新しいネットワークの形成などと いった成果がもたらされるのかを探求していく。
具体的には、次のテーマごとにそれぞれの担当者からプレゼンが行われた。
物理的ネットワーク・インフラ構築については、藤井資子氏が、民間事業 者では採算がとれないとされている地域において、どのような仕掛けをつく るとブロードバンド通信環境が整備できるのか、実際の事例を交えながら考 察するとともに、構築された通信基盤を持続可能とするための課題を提起す る。
小橋昭彦氏は、情報発信に着目して、地域情報化をより活発化させる法則 を見つけようとする。地域全体をいくつかの層(「縁の培地」と呼ぶ)を持っ たプラットフォーム、情報発信を「作法や行動様式を伝える行為」と置き直 したうえで、複数の層に属する住民(コネクター)を介して作法が伝えられ ていくメカニズムを提示する。
地域情報化プロジェクトの組織マネジメントについては、鳳雛塾副理事長 の飯盛義徳氏が、人材育成プロジェクトを地域においてどうマネジメントし ていくのか、という観点から報告を行う。ここでは、事例研究、アクション・ リサーチを取り入れながら、共働をもたらすプラットフォーム設計に有益な モデルを提示しようとする。具体的には、人材育成プロジェクトの先進的事 例である「鳳雛塾」と「インターネット市民塾」を取り上げて共通点を整理 し、ネットワーク構造、オープン・ポリシーによる運営、産官学などの主体 との資源共有、教え合うコミュニティーの形成、事業やミッションの協創に ついて分析を行う。
最後に、高橋明子氏より、地域情報化プロジェクトの共働組織化について 説明があった。ここでは、主に地域情報化におけるリーダーの機能という観 点から地域情報化プロジェクトの分析を行う。高橋氏は、リーダーの機能を 「地域内コネクター」「地域外コネクター」「プロデューサー」という三つの タイプに分け、それぞれの機能に着目すると、地域情報化プロジェクトは四 類型に分類できるとする。そのうえで、プラットフォームの設計可能性とい う点からは、プロデュース型プロジェクトが有望であるという結論を導いて いる。
(濱田美智子:『智場』編集部)