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2006 - January 10, 2006
『ネット社会の自由と安全保障サイバーウォーの脅威』
January 10, 2006 [ 2006 ]
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インターネットは1990年代の半ばから急速に発展して国際社会にグローバルな単一の情報基盤を作り出した。そこでの「自由」の概念は、インターネットが世界全体に普及した現在においても、その生い立ちから米国的な性格が色濃く残っている
一方、インターネットの急速な普及と踵を接する形でコンピューター・ネットワークを使った犯罪行為やさまざまな社会的・政治的活動が始まっている。サイバーテロリズムのほか、特定の社会的集団が、その政治的主張やアジェンダを実現するために、国際社会の世論の注目を集め、外交政策に影響を与えるような活動としてテロリズムや「行動主義的な政治活動(politicalactivism)」があり、社会的集団が国際社会や外交政策に影響を与える際の活動の一環としてインターネットを利用する例も顕著に増えている。インターネットにこうした犯罪行為や政治活動が目につくようになったことは、インターネットが社会の一部となり、影響力を持ったことの証左とも言えるが、反面、国家としてももはや放置することはできず、セキュリティー対策を強化すると共に、インターネットに対する法的規制を進めることになったのである。特に、常時接続、ブロードバンド化などの普及により、インターネットに対する危機は、一層拡大し深化している。9.11対米同時多発テロ以降、米国では、ネットワークにおける安全保障という名目で、国家によるネットワークの規制や個人の権利をも侵害しかねない動きが起きている。
以上のような状況を如何に考えていったらいいか、米国と中国の高名なシンクタンクの協力を得て、研究が進められ、出版へと漕ぎ着けたのである。
米国のランド研究所(http://www.rand.org)には、多摩大学情報社会学研究所の山内教授と2003年11月に、また国際社会経済研究所の棚橋主席研究員とは同年6月と11月に訪問し、ロンフェルト上級政策研究員と議論し、同研究所のスタッフと出版に関しての打ち合わせを行った。その結果、ネット闘争とその主体となるネットワーク組織に関して、第6章「ネットワーク、ネット闘争、未来への戦い」をロンフェルト、アーキラ両氏に寄稿してもらうことになったのである。
また、中国の現代国際関係研究院とは、当研究所設立以来、毎年情報化や危機管理といったテーマで共同研究を行っており、2003年度は、「安全な国際情報社会の構築」を研究テーマとし、8月には北京で研究会を開催し、2004年2月には東京で成果発表の国際シンポジウムを開催した。ここには中国人民政治協商会議議員である陸忠偉現代国際関係研究院院長にもご出席いただき、活発な意見交換を行った。これらの成果をもとに、中国でのインターネットにおける自由と国家の安全に関する考え方と現状を、第3章「中国のネットワークの自由と国の安全」として楊氏に担当していただき、中国でのインターネット上の犯罪やサイバーテロの現状に関して、第2章「中国の不正サイバー活動の現状および対策」で、張氏に概観してもらった。
山内氏には第1章「日本の情報化の進展と、ネットワーク社会の政治およびセキュリティ面への影響について」で、米国と中国の議論を踏まえて日本の情報化とネットワーク社会の安全面での状況に関して展開してもらった。
一方、米国におけるパトリオット法など、米国でのインターネットを巡る個人の自由や人権と国家の安全保障の間の論争を、棚橋氏に第4章「米国におけるネットセキュリティの現状と論争」で整理してもらい、この問題の思想的背景に関し、アジアフォーラム・ジャパンの茶谷氏に第5章「米国における『自由』と『安全』・『秩序』」に書いてもらった。
そして、これらの前提ともなるべきインターネットにおける自由と安全に関するいくつかの問題点を、原田が序章「インターネットの自由と安全」で展開している。