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情報通信の世界~2007年を振り返る。2008年を展望する。

January 30, 2008 [ keyword ] このエントリーをはてなブックマークに追加

 2007年は情報通信にとってどのような年だったのでしょうか、また、2008年はどのような年になるのでしょうか。国際大学GLOCOMでは、この年末年始に客員研究員、フェロー、リサーチ・アソシエイトの方々に、それぞれ三つのキーワードで2007年を振り返り、また、2008年を展望していただきました。ここでは、それらのキーワードから、2007年の2008年の情報通信について考えてみたいと思います。

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 アプリケーションという視点から2007年を振り返ると、とりわけ目につくのはYouTubeやニコニコ動画のような【動画投稿サイト】の拡大、あるいは【Second Life】などの仮想世界への期待の高まりでした。しかし、日本の情報通信にとってこの年をもっとも印象的に振り返るキーワードは【情報通信の限界】だったのではないかと思います。本来、私たちの生活
や社会を守るはずの情報通信技術が、本来の使命をまだ果たすことができていないことが明らかになったのでした。情報通信技術は、情報の蓄積や共有のあり方を変えるということだけでなく、企業統治や企業経営への積極的な貢献ということまで期待されてきました。しかし、私たちが2007年に目撃したのは、情報技術が、実際には【偽装】の問題や、その他の社会の問題の前にいまだに無力だったということでした。それはガバナンスという高次の課題で力を示すことができなかっただけでなく、支払い記録の管理などに代表される、情報の蓄積や共有という初歩的なことでさえ無力だったということでした。

 あるいは、やはり2007年の大きなキーワードであった【格差社会】との関連でいえば、ある種の流行語となった【ネットカフェ難民】という言い回しからも、情報通信に伴う限界を見て取ることができます。収入が乏しく、定まった住まいをもつことのできない彼らにとって、「住」はなくともネットにつながることが最低限の条件であるかのように思えるからです。これは何を意味していたのでしょうか。情報通信は、彼らにとってそのような状態から抜け出す手がかりではなく、そのような状態を肯定するための道具になってしまったのでしょうか。やはりここにも情報通信の限界が見え隠れしています。

 また、2007年は色々な意味で情報技術の新しい使い方を示した1年でした。【SaaS】はその代表と言えるでしょう。あるいは、ゲーム機も新しい可能性を追求しました。ゲーム機が、単にビデオゲームで遊ぶための機械から、総合的なエンターテイメントの道具、あるいは情報技術の新しいインタフェースに発展するという流れが見えてきたのも2007年の特徴だったかもしれません。

 さて、2008年の情報通信を展望する時、何が見えてくるのでしょうか。寄せられた回答をながめると、【IPv6】や【NGN】に代表される次世代インフラの進展、【アナログ停波後の跡地利用】と【Google携帯】などの新興携帯事業者の可能性、携帯、ゲーム機の【情報端末化】や【携帯とウェブの融合】、【オープン・コンテンツの爆発的増加】、また、コンテンツ以外の分野、例えば【ジャーナリズム】や【政治】、【選挙】の中でのユーザ参加型モデルの拡大などが特に目立つキーワードとして挙げられています。

 2007年に至る数年までにコンテンツという切り口では、ユーザ参加型のツールや、それをもとにした実際のユーザ参加型の活動が裾野を広げました。この流れはどこまで進むのでしょうか。2008年には、アメリカで年末にかけて大統領選挙が予定され、また日本でも衆議院の解散・総選挙がささやかれています。そのような背景もあり、2008年は、ネットと選挙、あるいはネットと政治の関わりが注目されることになりそうですが、もう少し広い視点で見れば、ユーザ参加モデルが、コンテンツという領域を越えて果たしてどこまでインパクトをもつことができるのかが、2008年の情報通信を展望する一つの視点であると言えそうです。

 2007年は、Second Lifeなどの【仮想世界】あるいは【メタバース】の将来に熱い期待が寄せられた1年でもありました。しかし、【Seond Lifeの盛「衰」】というキーワードが寄せられたことからも分かるように、仮想世界への注目はこの1年の間に急速に拡大した一方で、また急速に縮小してしまいました。2007年には仮想世界が注目されましたが、2008年は、選
挙や政治とネットの関わりを示すキーワードがいくつも寄せられたことにも見られるように、仮想世界でなく現実世界の統治や秩序の中で情報技術がどのような役割を果たすことができるか、改めて注目される1年になるのかもしれません。

 2008年の通信インフラに関しては、ほかに【NGN本格サービス】、【今度こそIPv6】、【モバイル網と固定網の融合】、【Google携帯】などのキーワードが挙げられました。これらは、必ずしも2008年固有のキーワードではないかもしれません。しかし、これらの話題が2008年のキーワードとして挙がってくるということ自体、NGN、IPv6、あるいは固定・移動の融合といった到来するはずの新しい世界が、まだ私たちには具体的なイメージをもって見えていない、今年こそ見えてきてほしい、ということの裏返しなのではないでしょうか。

 また、もう一つ注目されるのは、端末、あるいは広い意味でのインタフェースの進化です。2006年末には任天堂が【Wii】を発売し、2007年に入ってからは【iPhone】など、情報技術の利用のあり方を変えるような新しい端末が登場しました。また、画面インタフェースは小型化と高精細化が同時に並行していますが、インタフェースの進化という点では、【AR】
(augmented reality)の技術がこの1年でどのような発展を示すことになるのか目が離せません。ビット(情報世界)とアトム(物質世界)の新しい関係が見える1年になりそうです。

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 以上、簡単に2007年と2008年の情報通信の姿についてまとめました。回答をお寄せいただいた客員研究員、フェロー、リサーチアソシエートの皆様にはこの場を借りてお礼を申し上げます。また、まとめにあたってはできるだけ皆様のキーワードのすべてを踏まえるようにしたつもりではありますが、お寄せいただいた意図・趣旨を汲んでいないもの、直接このまとめに反映できなかったものが少なからずあるかと思います。その際には何とぞご容赦ください。

上村圭介(国際大学GLOCOM主任研究員/所長補佐)