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Newsletter - August 29, 2008

国際大学GLOCOMニューズレター 2008年8月29日

August 29, 2008 [ Newsletter ] このエントリーをはてなブックマークに追加

 平素、私たち国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)にご高配を賜り、ありがとうございます。夏の暑さも過ぎ、秋の訪れを感じさせる毎日が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。この度、私たちGLOCOMの活動や近況、そして研究成果のハイライトを皆様にお伝えするニューズレターを発行することにいたしました。今後このニューズレターを通じて、国際大学GLOCOMの研究成果などを一足先に皆様にお伝えしていこうと思います。


目次
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1. GLOCOMの近況
2. 研究紹介
2.1 ブロードバンド・インフラの回線開放政策の有効性検証
2.2 カントリー・ドメイン・ガバナンス(CDG)
2.3 ホスティングビジネス研究会
3. IECP研究会より
4. 注目の海外動向
4.1 「Global Information Technology Report」のランキングで米国が上昇
4.2 英国のブロードバンド普及で、地方が都市部を上回る
4.3 若者が接触する新メディアを健全育成に積極活用
4.4 中国で独占禁止法が施行。通信・ソフトウェア産業へ影響か
4.5 韓国、ポータル事業者に公正取引法違反で改善命令
5. 出版・パブリシティ


1. GLOCOMの近況
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6月1日より渡辺智暁研究員が新しくGLOCOMの研究員として採用されました。渡辺研究員は、情報通信政策と情報社会論が専門で、すでにGLOCOMの情報通信政策の研究の主要メンバーの一人となっています。また、日本におけるフリーカルチャーの動きとも深く関わり、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのメンバーであるほか、ウィキペディア日本語版のボランティア管理者を務めるなど、すでに幅広く活躍している一人です。渡辺研究員の今後の活躍にご期待ください。

2. 研究紹介
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現在GLOCOMの研究員が取り組んでいる研究・活動の中から、ブロードバンド・インフラの回線開放政策の有効性検証、カントリー・ドメイン・ガバナンス(CDG)とトレースバックシステムプロジェクトの三つをご紹介します。

2.1 ブロードバンド・インフラの回線開放政策の有効性検証
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ブロードバンドの普及を促進する施策として、いわゆるラスト・ワン・マイルの回線設備などを所有している事業者に対して、その設備を競争相手にも公正な価格で使わせるように義務付けるという回線開放政策があります。回線開放政策には様々な批判があり、回線開放を強制すると、事業者は設備投資をするインセンティブが減ってしまうという論点が特にしばしば見られます。

回線開放によって実現した競争と、回線設備を持つ事業者間の競争、それぞれがブロードバンドの普及にどの程度役立っているのかを様々な国の普及データ等を元に、分析した実証調査が、英語圏のジャーナルや学会、シンクタンクのペーパーとして少なからず出てきています。それらの分析から何が得られるかと論文を収集・レビューしており、現在、一部の学会論文を残す十数本の論文について、制御変数やサンプル数、分析モデルなどの基本的な特徴を手がかりに知見をまとめてきています。これまでのところ、回線開放に基づいて成立する競争が普及に役立ったとする結果が出た分析がなく、一部ではマイナスの影響があったとされている一方、回線設備を持つ事業者間の競争は普及促進につながったとする結果が出ています。学術研究がしばしばそうであるように、このレビューからも、反論の余地がおよそ考えられないような明白な結論が得られたというところまでは行かず、分析モデルや対象となった国や地域、制御変数等について細かな点を見ていくと、手法上の制約・選択などからこうした結果が出たのではないかという部分も残ります。ですが、政策論議にとって非常に興味深い知見を提供していることも確かです。

2.2 カントリー・ドメイン・ガバナンス(CDG)
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インターネットのアドレス体系は、IPアドレスと、その上にあるドメイン名システム(DNS)の二重構造をもっています。中でも、ドメイン名は、インターネット上で販売されるようになった最初の「商品」の一つであり、インターネットのグローバルな商業化の象徴的な存在となっています。一方で、国や地域を単位に設定される国別トップレベルドメイン(ccTLD)は、グローバルなインターネットの中にあって、国や地域の「主権」によって規律される数少ない分野の一つと言えます。CDGでは、このようなドメイン名システムの運用、中でもccTLDの運用がインターネットのガバナンスに与える影響の調査と分析を進めて
います。

※このプロジェクトは科学技術振興機構(JST)の研究開発プログラム「ユビキタス社会のガバナンス」の助成を受け、長岡技術科学大学と共同で実施されています。

2.3 ホスティングビジネス研究会
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国際大学GLOCOMでは、本年度より「ホスティングビジネス研究会」をスタートさせました。主に日本のインターネット関連のレンタルサーバーやハウジングサービス等の市場動向調査を目的とし、研究会を年に数回開催、調査研究レポートを年に一度とりまとめます。

本年度は、日本のホスティングビジネスの市場規模と各社のシェア、マーケットの特徴と国際比較、成長性や業界の展望について考察する予定です。本年度は、既に2回の研究会と海外調査を実施しました。これかれはホスティング利用者へのアンケート調査を実施し、10月に年度最終報告を行う予定です。本研究会は、会員制(1社あたり年間21万円)で運営されています。おかげさまでご好評をいただき、ホスティング事業、サーバー関連のハード・ソフトウエアおよびサービスに関連する事業に関わる皆様からご関心をお寄せいただき、既に20社のお申し込みをいただいております。会員は随時募集中ですので、ご関心のある方は、担当までお気軽にお問い合わせ下さい。

※ホスティングビジネス研究会(担当:新谷、秋山)
電話:03-5411-6675、電子メール:hosting@glocom.ac.jp

3. IECP研究会より
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国際大学GLOCOMの智業・企業協働研究プログラム(IECP)は、国際大学GLOCOM研究員、IECP会員企業の皆様、および各分野の専門家の方の参加の下、現代社会における「グローバル」な課題について、単なるセミナーに終わらない産・官・学・民をまたがった知の相互交流の場を提供することを目指した、協働研究プログラムです。

今年度はこれまで9回の研究会を開催いたしました。中でも6月から7月にかけて「日本が世界に誇る」はずのポップカルチャー産業の現状と展望についてのシリーズ研究会を開催いたしました。楽観的に語られることの多い日本のポップカルチャー産業ですが、実態はまだ磐石とは言えない状況にあるようです。

| 日本のゲーム産業の国際競争力は、一般に思われているよりもはるかに低く
| なってきているという。日本の国内マーケット規模に関しても、開発力とい
| う点においてもそれは明らかな数値として観察できる。決して楽観できる状
| 況ではない。 (6月25日開催「ゲーム産業の実態」開催速報より)

また、このシリーズを含め、4月から7月までIECP研究会では以下のテーマを取り上げ、参加者の皆様と議論を深めてまいりました。

* OOXMLの標準化と実装状況(2008年4月22日)

* 危機に瀕するインターネットの本質:The Essence of the Internet is in Danger (2008年5月)

* AR時代の技術(シリーズ「オーグメンテッド・リアリティ(AR)時代の世界」第2 回)(2008年5月20日)

* 「人のつながり」の理論と社会・インターネット(2008年6月4日)

* ゲーム産業の実態(シリーズ「日本のポップカルチャー産業の国際競争力」第1回)(2008年6月25日)

* 世界でどれだけマンガは読まれているか(シリーズ「日本のポップカルチャー産業の国際競争力」第2回)(2008年7月1日)

* アニメ産業の国際競争力(シリーズ「日本のポップカルチャー産業の国
際競争力」第3回)(2008年7月8日)

* コンテンツ産業の再デザイン(シリーズ「日本のポップカルチャー産業の国際競争力」第4回)(2008年7月23日)

* 日本の知的財産とコンテンツをめぐる戦略と課題:『知的財産推進計画2008』以降の戦略を構想する(2008年7月25日)

4. 注目の海外動向
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4.1 「Global Information Technology Report」のランキングで米国が上昇
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世界経済フォーラムとフランスのビジネススクールINSEADが4月に公表したTheGlobal Information Technology Report 2007-2008」によると、米国は現在、デンマーク、スウェーデン、スイスに次いで世界で4位であった。2007年の7位から急浮上したことになる。韓国は前年の19位から9位に上昇、日本は14 位から19位に降下した。この調査は、ブロードバンド容量やデータ伝送スピードだけでなく、市場要素、政治環境、技術インフラ等の要素を含む68の変数から作られたインデックスを使用している。New York Timesの記事によると、INSEADの著者の一人は、「政治的・経済的要因が極めて重要になってきている」と指摘している。

* The Global Information Technology Report 2007-2008(世界経済フォーラム)

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Executive Summary

* Study Gives High Marks to U.S. Internet(New York Times)

4.2 英国のブロードバンド普及で、地方が都市部を上回る
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Ofcomが発表したレポート”Communication Market Report: Nations and Regions”によると、英国のブロードバンド普及率は、都市部(57%)よりも地方(59%)の方が高かった。全国的に見ても、イングランドやスコットランドといった地域単位で見ても同じ傾向であった。Ofcomの最高責任者Ed Richardsは「地理的なデジタルデバイドが解消してきていることを示している」と述べている。

* Rural broadband households overtake urban for the first time(Ofcom)

* The Nations & Regions Communications Market 2008 (May)(Ofcom)

4.3 若者が接触する新メディアを健全育成に積極活用
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青少年の間ではSNSなどの新しいメディアの使用が増大しているが、これに対し彼らの親たちは性・喫煙・飲酒を勧める不健全なメッセージに子どもたちが溺れないか、心配している。この問題について米国ブルッキングス研究所などは、有害情報への対抗策として、同じメディアにポジティヴメッセージを積極的に流していくことを提唱している。

* Using the Media to promote Adolescent Well-Being(ブルッキングス研究所)

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4.4 中国で独占禁止法が施行。通信・ソフトウェア産業へ影響か
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8月1日、中国で初の独占禁止法が施行された。1994年の草案作成着手から施行まで14 年もかかったうえ「世界一短い独占禁止法」とも呼ばれるように条文数が少なく、また細則やガイドライン等も公布されていない、執行機関が定まっていないなど、不透明な部分が多い。しかし、上海の「新聞晩報」では影響を受ける5大業界として、鉄道、電気通信、石油、自動車、ソフトウェアが挙げられており、今後の動向に注意を要する。電気通信に関しては、中国電信、中国移動、中国聯通が支配的地位を有する事業者と認定される可能性があるが、「国民経済上の要となる部分と国家の安全に関連する業界」は「国家がその事業者の合法的な事業活動を保護」するという規定が適用される可能性もある。また、一部の専門家はマイクロソフトが「独禁第一被告」になるという予測もしている。

* 中華人民共和国独占禁止法(日本語訳:JETRO)

* 反独占法、明日施行 衝撃を受ける5大業界(「新聞晩報」※新浪網に転載)

4.5 韓国、ポータル事業者に公正取引法違反で改善命令
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韓国の公正取引委員会は5月7日、韓国で圧倒的なシェアを誇るポータルサイト「NAVER」を運営するNHN(株)に対し、市場独占的地位濫用行為の改善命令と課徴金を2億2700万ウォン(約2200万円)の賦課を行った。NHNは「パンドラTV」等9つの動画サイトとコンテンツの配信を受ける契約を締結したのにもかかわらず、自社ポータルサイト「NAVER」を通じて動画サイトにアクセスするユーザーに対しては、その「動画の前に映される広告(前広告)」をブロックした。NHNはオンライン広告市場と動画配信市場で競争関係にあるパンドラTVなどの営業活動を妨害し、同市場における支配力を拡大し、競争を制限したとされる。

* インターネットポータル事業者の公正取引法を違反する行為に対する改善措置(韓国公正取引委員会)

5. 出版・パブリシティ
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GLOCOMの研究員の業績のうち、4月から8月までの間に出版されたものをご紹介します。詳しくは、GLOCOM のウェブページにある研究員の業績・パブリシティの情報 をご覧ください。

* 鈴木謙介「なぜケータイにハマるのか-メールコミュニケーションの社会学」南田勝也・辻泉編『文化社会学の視座』ミネルヴァ書房5章

* 砂田薫「コンピュータ」『歴史学事典 第15巻 コミュニケーション』弘文堂

* 豊福晋平「学校のインターネット活用動向」『インターネット白書2008』株式会社インプレスR&D

* 上村圭介、庄司昌彦、ほか『インターネット検索能力検定試験教本』アチーブメント出版

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【発行】国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
(編集責任者:上村圭介)
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