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various - January 12, 2011
『未来を創る情報通信政策』紹介
January 12, 2011 [ various ]
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昨月16日に発刊されました、『未来を創る情報通信政策』の内容の一部を抜粋して紹介させていただきます。
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***** 抜粋 *****
国際大学GLOCOM主任研究員 豊福晋平
学校教育にコンピュータが導入され始めて約20年が経過しようとしているが、情報教育は受験教科に浸透することなく、いまだに添え物的な役割に甘んじているからである。
教育が担った2つの役割、すなわち「社会の安定的継承」と「次代を牽引する役割を果たすべく新しい領域への備え」の対立構図では、往々にして堅固な既存の(教科)構造が優先され、新しい要素は付け加えになりがちである。また、大学研究領域や教科関連団体、また専門領域教員からなる既存構造があまりに複雑に入り組んでいるために、教科再編の大胆な棚卸しができないという行政上の問題も大きい。
おそらく、これまでと同じ手法で、既存教科に影響が及ばない形でデジタル教科書の導入がなされれば、結局、児童生徒の手に機材は渡らず、学校の倉庫でキャラメルラッピングを解かれないまま朽ち果てることになるだろう。(p.78)
国際大学GLOCOM主任研究員 渡辺智暁
これら多様な中立性概念の背景には、重複しながらも、異なる政策目標がある。アクセス網の支配的事業者がその市場支配力をてこに他の領域の競争を阻害することのないように規制をする、という競争政策上の目標がその1つである。もっともこのような目標を追求するだけであれば、競争法の当局(米国では連邦通商委員会や司法省)の管轄事項であって、ネットワーク中立性の主要な議論の場となっているFCCの管轄ではないという見方もできるだろう。そもそもネットワーク中立性が市場の効率性を改善するものであるかについては学説上も解決していない問題であり、一律に事前規制をかける根拠にはなりにくいだろう。
もう1つは、イノベーションにかかわる目標である[Lessig 2007, vanSchewick 2007]。インターネット上でさまざまなサービス、アプリケーションが展開された理由として、インターネットの開放性がしばしば指摘される。インターネットは誰か特定の者に管理されたものではなく、基本的に誰でも接続可能なネットワークのネットワークである。また、特定の技術標準に従えば、事前に誰かに許可をとる必要もなく新しいサービスやアプリケーションを提供できる。ネットワーク中立性はこのような開放性を保証するための政策として位置づけられることがある。
アクセス網の寡占化が進むと、たとえばベンチャー企業が新規サービスを展開しようと思ってもアプリケーションが遮断され、アクセス網の事業者と提携したり、追加的に料金を支払ったり、申請して事前に許可を得たりしなければエンドユーザーにサービスが提供できない、といったことが起こると考えることができる(実際にそういう事態が起こる可能性がどれだけ高いかについては、さまざまな見方がある)。…(p.102)
国際大学GLOCOM主任研究員 上村圭介
ブロードバンドは、他の通信サービス同様、民間の通信事業者の事業として手がけられる。そのため、ブロードバンド投資にかかる膨大なコストをどう回収するか、そのネットワークを他事業者にどのように、あるいはそもそも開放するのか、といった問題が、民間事業であるブロードバンドに宿命のようにつきまとっている。そのため、社会・経済的に大きな波及効果を持つといわれながらも、取り組みがなかなか進まないことも現実である。ブロードバンド政策の難しさは、まさにこの点にある。そのなかで、連邦政府主導による全国規模のブロードバンド網を構築するという計画は一見画期的である。
ところが、実際には、連邦政府主導のNBNという構想にたどり着くまでの道のりは決して平坦なものではなかった。それは、他に有効な選択肢を失ったオーストラリアにとって最後に残された選択肢であった。本章では、1997年に導入されたライトタッチ・コントロールと呼ばれる通信政策がたどり着いた先が、それとは対極であるはずの政府主導によるブロードバンド整備計画であったことを示す。(p.168)
国際大学GLOCOM主任研究員 庄司昌彦
ところで、本来、電波オークションは政府による恣意的な周波数割り当てを排するために有効な手法であると考えられている。だが、この台湾のWiMAXオークションにおいて、政府は中立的だったといえるだろうか。経済部は産業育成の観点からM-台湾に参加した新興企業の参入を望み、政府から独立した組織であるはずのNCCが、政府の意図に沿った制度設計を行い、その通りの結果になったと見るのが自然ではないか。筆者がこのような問題意識をオークションの設計にかかわった政府関係者に投げかけたところ、「オークションの結果に政策意図は入っている」と認めた。そしてユニークなオークション方式は、経済学的な裏付けに基づくものではなく、「かなり場当たり的な部分がある」設計であったという。固定通信で圧倒的なシェアを持つ中華電信に対抗するモバイルインターネットサービスを確立すること(固定対無線の設備競争)、WiMAX機器メーカー等の新興企業にビジネスチャンスを与えることが意図されていたのである。(p.201)
国際大学GLOCOM主任研究員 砂田薫
中国やインドの経済が成長した1997 年から2005 年までの8年間で、それと逆行するかのようにICT機器・サービス分野では、世界市場で占める日本企業のシェア(企業競争力)も、全世界の輸出総額のうち日本からの輸出額が占めるシェア(輸出競争力)も、ともに低下した。国も企業も、国際競争力の向上はきわめて重要な課題となっている。
さらに、国際間での協業でも課題を抱えている。日本は、ソフトウェア技術者の賃金格差を利用したオフショアリングにとどまらない、新たなビジネスネットワークをアジアで作り上げる必要があるだろう。なぜなら、東アジアではこれまでも、必ずしも安い労働コストの優位性だけで経済成長を成し遂げてきたわけではないからだ。資本集約的・資源集約的な欧米の発展形態とは違って、東アジアでは「資源節約的技術への傾斜が維持されたまま、生産性の向上を通じて労賃の上昇分を吸収しつつ、労働節約型工業化への転換が起こった」のである。(p.229)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 編著
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