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往復書簡シリーズ 設計未来 : ポスト情報化社会を展望する

鬼木 甫×湧口清隆

電波オークションをめぐって

湧口清隆/第1信 (2)

2010年11月21日

オークションと利用制度をどう使い分けるべきか

先生も含め世間的には、私は周波数オークション反対派だと思われている節がありますので、私がオークションを導入すべきだと主張すると宗旨替えをしたのではないかと訝られるかもしれません。しかし、私は基本的にはオークションには慎重で、電波利用料を工夫することにより需給調整を図るべきだという考え方です。私は、欧米型の周波数オークションの導入は全国レベルでネットワークを構築して提供されるサービスに限定し、他のサービスについては個々のサービスに対する電波監理の直接的費用を下限とする政府決定の料金を徴収すべきだと考えています。

たしかに、欧米型の周波数オークションが、ある周波数の利用に対し最も経済的価値を見いだす者に割り当てる方法であることは事実です。他方で、オークションの社会的運営費用や衡平性の要素を勘案しなければなりません。内部に法務担当者などを抱えられる大規模事業者が入札に参加することはそれほど大きな負担とはならないでしょう。

しかし、技術指向型の事業者や地域的に事業を展開するような小規模事業者、自営ネットワーク運営者にとって、入札に参加することは新たに大きな負担になります。また、わが国のように人口や経済に大きな偏在性がある国の場合、市場を区切った入札制度では落札者がある地域と、入札者のいない地域に分かれてしまう可能性があります。結果として、その情報通信サービスの供給に地域格差が出てしまい、ますますデジタル・ディバイド問題を悪化させてしまいます。

さらに、現在の電波利用料制度でも同様のことが言えますが、アマチュア無線家を含め、多数の電波利用者に総務省が独自に料金を徴収する制度では徴収費用が莫大になる可能性があります。加えて、オークションでは複数の利用者で排他的に電波を共同利用しているような周波数の扱いが難しくなる危険があります。かつての入会地(共有地)が近代的な所有権制度のもとで消滅していったことと重なります。

したがって、国際競争力をつけてもらわなければならないような大規模事業者が存在する全国レベルのサービスでは積極的にオークションを活用すべきでしょうが、そうでない大部分においては電波利用料制度をもっと活用すべきだと考えています。

電波オークションをめぐって

プロフィール写真:湧口清隆
湧口 清隆
(ゆぐち・きよたか)
1972年東京生まれ。一橋大学商学部・大学院商学研究科、フランスHEC(学部時代に1年間交換留学)で学んだ後、2000年~2004年に国際通信経済研究所に勤務。九州大学大学院比較社会文化研究院客員助教授を経て、2004年から相模女子大学で教鞭を執る。2001年に一橋大学で「博士(商学)」を取得。専門は交通・公共システム論、情報通信の経済学。
プロフィール写真:鬼木甫
鬼木 甫
(おにき・はじめ)
1933年生、東京大学経済学部卒業、スタンフォード大学大学院(1968年PhD)、東北大学助教授、ハーバード大学助教授、クイーンズ大学准教授、大阪大学教授・大阪学院大学教授等を経て2009年より(株)情報経済研究所代表取締役・所長。主著『電波資源のエコノミクス』(2002年、現代図書)。