鬼木 甫/第1信 (1)
2010年12月27日
湧口清隆 先生
貴第一信を頂いたのは紅葉の秋の季節でしたが、それからしばらく時間が経ち、現在は師走の寒波が押し寄せています。この1ヶ月足らずの間に、日本の電波政策は大きく動きはじめたかに見えます。原口前総務相のイニシアティブで開始された「ICT政策タスクフォース」が、12月14日のとりまとめの中で電波オークションに関する2方針を表明したからです。
1④ ワイヤレスブロードバンド事業者による既存の周波数利用者の移行コストの負担に関し、オークションの考え方を取り入れた制度を創設するため、関係法律の改正案を次期通常国会に提出する。【電波法の一部改正】[1]
1⑤ 第4世代移動通信システムなど新たな無線システムに関しては、諸外国で実施されているオークションの導入についても、早急に検討の場を設けて議論を進める(新無線システム移行までに関係法律の改正が間に合うように結論を得る)。
上記1④の「オークションの考え方を取り入れた周波数移行コスト負担制度」は不明瞭な表現で、その内容については改めて議論したいと思います。他方1⑤は、4G移動通信についてオークション導入の方針を明示したもので、「稀少価値のある空き電波を営利目的事業に割り当てる際にはオークションの採用が望ましい」と以前から主張してきた筆者としては歓迎できる結果です。タスクフォースの中では電波オークションの導入について賛否両論があった模様ですが、このような結果が得られたことについては、民主党政権による「政治主導」が働いたと思います。
貴第一信ではオークション導入についていくつかの問題を提起して頂きました。電波のオークション割当は現状と比較して全く新しい制度なので、基本理念、実施原則、適用範囲やタイムスケジュール、その他の細かな点など問題がたくさんあると思います。この場合いきなり細部に入ると議論が錯綜するおそれがありますので、今回はオークション導入に関する基本的ポイントについて小生の考えを述べたいと思います。まず基本について意見を交換し、もし意見が合わない点があれば、そこは双方承知の上で細部の問題を議論することが有用でしょう。
諸外国の情勢
まず電波オークション導入に関する海外諸国の状況を小生から説明します。図1を御覧ください。
ここに示されているように、電波オークションは先進国の大部分と多数の中進国・新興国によってすでに採用されています。OECD加盟30国のうち、未採用は日本を含めて6国だけです。また非加盟国の中でもすでに21国が採用済みか、あるいは検討中です。もちろん世界全体では200国以上があり、中国やロシアなど大国を含め、アラブ諸国・アフリカ諸国の大部分は図1右下の未実施枠に入るので、単純に国の数だけ勘定すればオークション実施45国は全体の4分の1です。
アジアでの直近のケースとしては、2010年4月にインドが3Gオークションを実施し、タイも準備中です。近い将来日本がオークション採用の検討を始めたときには、図1を改訂して日本の国名を左側の欄に移動させる予定です。なおもう1つ付け加えたい点は、図1のオークション採用国で旧制度に後戻りした例は1つもないことです。(後戻りがあればビッグ・ニュースになったはずです。)
図1に挙げたオークションの内容は大部分3G携帯電話用(アメリカは2Gから)で、一部にWiMAX、放送、LTE/4G目的が入っています。実は貴第一信を頂いた後でも、ベルギー、スイス、カナダ、エストニアのLTE/4Gオークション、ブラジルの3Gオークション、米国AT&T・スプリント間の周波数帯交換のニュースが入ってきており、日本の外側では電波オークションや電波取引が日常茶飯事になっていることが分かります。移動通信用電波割当で言うと、日本は2Gと3Gでトラック2周回遅れており、もしLTE(3.9G)でも遅れるとすると、3周回遅れて4Gでようやく走り始めることになります。
これら諸外国の情勢を見ると、まずは理屈抜きに、オークション採用を真剣かつ早急に考える必要があるという結論になるのではないでしょうか。
[1] 総務省、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース「政策プラットフォーム」、「『光の道』構想に関する基本方針(案)」第4回会合配付資料、2010年12月14日。<http://www.soumu.go.jp/main_content/000094827.pdf>。本資料は方針(案)になっているが、同会合で了承されているので、実質的には決定済の「方針」と考えてよい。