鬼木 甫/第1信 (3)
2010年12月27日
オークションについての主要ポイント
電波オークション導入については、さしあたり以下の4つのポイントを区別して議論できるのではないかと思います。
第1に、空き電波の利用者の決定すなわち新規免許の発行について、オークション方式と政府直接割当方式(命令・統制方式)とで結果がどのように異なるかです。
第2に、電波オークションを導入する場合、どの範囲の電波について、いつごろ適用するのかについてです。
第3は、電波資源を「資産」として見たときの資産の所有者や資産から生ずる所得の配分の問題です。
第4はオークションと「電波利用料」の関連です。
貴第一信では、第3の点について「オークション収入の使途が問題」、第4の点で「電波利用料と市場価値の関連」など問題を出されています。今回はすでに紙数を超過していますので、以下、小生から第1の問題を簡単に議論し、第3について質問を述べておきたいと思います。
下記は周知のことかもしれませんが、「電波資源の効率的利用、電波利用ビジネスの成長」という点にかぎって政府直接割当と比べたオークションのメリットを挙げておきます。それはつまり「競争社会が全体にもたらす利益」であり、市場メカニズムを主要原則とする資本主義国が政府計画原理で運営される社会主義国とのレースで勝利を収めた理由と同じです。電波利用の場合、オークションは、平均的に「電波を最も効率的に活用する技術と経営能力を持ち、消費者に安価で良質かつすぐれたサービスを提供し、その結果消費者から最も支持されて最大の収益を上げる事業者にその利用権を与え」ます。
これに対し政府割当では、割当権限を持つ政府当局が何らかの規準にしたがって最適と判断する事業者が選ばれます。その結果が消費者の支持と一致する保証はありません。また政府割当の場合、事業者側では、「政府当局が気に入るようなプレゼンテーションができる人」が重視され、消費者に支持される製品・サービスの生産・供給に貢献できる人は二の次になりがちです。政府側でも、担当官庁の利益(省益)を含む必ずしも正当化できない目的のために割当権限を利用する誘因を生じます。
さらに新規事業者の場合、かりにすぐれた電波利用技術を入手しても実績が無いため、政府当局にその可能性を認めさせることは困難で、結果的に参入の可能性が低くなり、産業全体の活性化の要因が失われます。これを技術者から見た場合、電波利用技術の開発に関する自身の能力を発揮するためには、既存事業者やメーカーに就職できる一部に限られてしまいます。大多数のすぐれた技術者は電波分野から去ることになり、社会全体として電波利用のための技術開発力が低下します。
もう1つオークションの目立たないメリットは、事業に失敗した場合の退出が滞らないことです。オークションで過大な代価を支払ったり、技術やビジネスモデルが劣るために事業継続が困難な場合、オークションで入手した電波を他に有償譲渡して退出することができます。政府直接割当の場合は、免許保有が「特権」になっており、他への売却は許されず、また事業者が特権を手放す誘因もありません。政府の側でも審査判断の失敗を意味する「免許停止」には消極的になりがちです。その結果電波の非効率利用が続くことになります。ビジネスの世界ではダイナミックな試行錯誤があたりまえなのに、政府割当下の電波利用についてはこれが妨げられ、産業全体としての競争力を弱めるのです。(コンビニ業界で店舗の新設・閉鎖が激しいことが目立ちます。しかしこれが同業界を活性化し、長期的・平均的には消費者に大きな便益を与えていることを考えてください。)
上記はテキストブック的説明ですが、このように考えると、諸外国が続々とオークション導入に踏み切った理由が分かるのはないでしょうか。
それから第3の問題につき、「電波資源の所有者」についてどのようにお考えかお尋ねしたく思います。電波供給が十分であった時代には所有者が誰であるかは問題にならず、電波を入会方式で利用しても差し支えありませんでした。しかし稀少化して需要競合が生ずる状態では、所有者を明確化しないと争いが起き、不毛な時間が経過することになります。
そこで、稀少な電波資源の所有者として、(1)国民全体の共有、(2)現利用者(免許保有者)の所有、(3)IT産業を構成する事業者=企業の共有、(4)政府当局=総務省の所有、などが考えられます。法律ではまだ何も定められておらず、今後の問題です。小生は(1)を支持しますが、如何お考えでしょうか。
次の第二信をお待ちしています。よい新年をお迎えください。
2010年12月27日
鬼木甫