HOME > コラム > 設計未来 > 日本民主主義を再設計する/オープン・ガバメントへの道筋 > 庄司昌彦/第1信 (2)

往復書簡シリーズ 設計未来 : ポスト情報化社会を展望する

鈴木崇弘×庄司昌彦

日本民主主義を再設計する
オープン・ガバメントへの道筋

庄司昌彦/第1信 (2)

2011年2月28日

霞ヶ関の硬直的な体質の動かしがたさ

とはいいながらも、自分が政策シンクタンクの現場に関わるようになってきた実感として思うのは、やはり国の行政機構というのがあまりにも大きすぎて、ものすごい数の人がいっせいに動かなければ物事を動かせないということの重苦しさです。あとは、法律の書き方などの独特の文化みたいなものでしょうか。とにかく、やりたいことを実現する時には、どことどことを調整して、どの時期に何をすべきであるといった慣習が、民間の人間の想像を絶する規模で存在するのが日本の官僚機構だということを、日々思い知らされているわけです。

ただ、一般にメディアで喧伝される官僚悪玉論みたいなもののイメージとは違って、霞ヶ関という場所はものすごく忙しいところで、ほとんどの人は別に悪いことやってることわけでも何でもなく、自分の与えられた仕事を本当に一生懸命やっています。むしろ、だからこそ問題の根が深いとも言えて、よそ者が入ってじっくり経験を積む時間もなければ、これまでの慣性や惰性で動いてく部分がどんどん大きくなってしまい、新しいことをするチャンスがなかなか掴めないわけです。


私もまた、若輩ですが有識者として役人の方たちの中に入っていって話をするわけですが、例えば電子行政の分野に入っていくと、ある分野については圧倒的に彼らの方がよくわかってるわけです。とにかく、特定の専門性については非常に蓄積されていてきわめて高くなっているので、まったく外部の人間はかないません。

しかし私は一般のインターネットユーザーたちが何を求めていて、どういうことをしたいのかとか、そういう人たちにとってどういう状態が望ましいのかという、ある意味での民意を届ける立場にあります。そこをどうやって繋げたらいいのかということが、非常に大きな悩みどころになっています。

日本の官僚機構というのは、徹頭徹尾、自己目的的に動いている組織なんですよね。例えば経済産業省なら経済産業省という組織の中で高度に自己完結していて、自分たちの枠組みをひたすら再生産していくという不思議な組織になってる。


役所の側でも本当は民間の知恵をどんどん入れていきたいと思っていて、個々にはそういった話も役人の方とたくさんしています。しかし組織のレベルになると、これが途端に動かしがたいものになってしまう。

このあたりのことについては、鈴木先生の方がずっと近いところからご覧になってこられてきたと思います。こうした問題の原因と、この状況をどう変えていけばいいのかということについては、いかがお考えでしょうか。

政権交代による「政治主導」がなぜ機能しないのか

本来であれば、こうした官僚機構の硬直性は、民意を受けた政権が変わることによって変わるはずです。

アメリカの場合は、政権が変われば政府を構成する上位のスタッフが軒並み入れ替わる仕組みになっていますね。だから、政権交代に伴うロスも多いのですが、政府は成り立っている。日本では、そうした上級官僚がある日突然いなくなるという仕組みは、ほとんど考えられません。ここが日米の大きな違いです。


日本でも2009年に戦後初めて第一党の入れ替えによる政権交代が起こって、民主党は政策決定のプロセスを変えようとしました。「政治主導」の名の下に、事務次官会議を廃止し、従来よりも多くの決定に政治家が関わるようなプロセスにしたり、国家戦略室を設けて省庁横断的にトップダウンで物事が変えていけるような仕組みを作ろうとしたわけです。

しかし、そのプロセスも百戦錬磨の官僚たちに太刀打ちできずというか、お世辞にも有効に機能する形を確立できとは言えない状況にあります。むしろ菅政権になってからは、改革を断念して昔に戻ろうとしてしまっている部分もあるくらいです。


そういう、政治主導を掲げる意図と実態がチグハグになっている状況の中で、うまく政治家へロビイングをかけて入れ知恵した者が勝ち、といった状況も現れてしまっているのは、非常に良くないと思います。もちろん、鉄の三角形の外部から、政策的なロビイングを通じて提案を入れていけること自体は、これまでの日本に比べればポジティブな変化ではあるのでしょうが、それが過渡期的な混乱として、きちんとした秩序になっていく見込みがあるのかどうか。

現状では、その徴候があまり見えず、結局民主党政権になってもまったく民意による政策形成ができない状況は何も変えることができなかったという無力感だけが漂ってしまっています。


ですから、政権交代によってある程度整然とした政策体系の転換を行っていけるようにするためには、政党そのものがそれぞれの分野における高い政策立案・実行能力を持った、ある種のシンクタンクを内包した集団になっていかなければならないのでしょう。そのために、鈴木先生は政党シンクタンクの設立に尽力されてきたわけですが、将来のあるべき理想的な政党というのは、どのようにして形成していけば良いのかということについても、ぜひご意見をうかがえればと思います。

日本民主主義を再設計する
オープン・ガバメントへの道筋

[プロフィール写真]庄司昌彦
庄司 昌彦
(しょうじ・まさひこ)
1976年生まれ。国際大学GLOCOM講師/主任研究員。内閣官房IT戦略本部電子行政タスクフォース構成員。中央大学大学院総合政策研究科修士課程修了。おもな関心は情報社会学、政策過程論、電子行政、地域情報化、ソーシャルメディアなど。共著に『地域SNS最前線 Web2.0時代のまちおこし実践ガイド』、『クリエイティブ・シティ 新コンテンツ産業の創出』など。
[プロフィール写真]鈴木崇弘
鈴木 崇弘
(すずき・たかひろ)
城西国際大学大学院国際アドミニストレーション客員教授。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団研究事業部長、大阪大学特任教授、「シンクタンク2005・日本」事務局長などを経て現職。中央大学大学院客員教授も兼務。著書に『日本に「民主主義」を起業する 自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』など。