国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)

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DISCUSSION PAPER_No.3(17-001)「ぼくのかんがえたさいきょうのちょさくけんせいど~新しい方式主義の構想~」

DISCUSSION PAPER No.3(17-001)

ぼくのかんがえたさいきょうのちょさくけんせいど~新しい方式主義の構想~(*1)

田中辰雄(慶應義塾大学経済学部 准教授/国際大学GLOCOM 主幹研究員)

要旨

一般に制度というものは、いったんでき上がると、あとは漸進的な改良を重ねるのが常であり、著作権制度も数年おきに微調整がおこなわれている。しかし、デジタル化とネットワークの普及で創作と利用の在り方が大きく変わるのにともない、現実との不整合が目立つようになってきた。ここで、漸進的改良ではなく、白紙から著作権制度を考え直すとすればどのような設計が考えられるだろうか。

本稿では、仮にすべての過去のいきさつを忘れ、現在の状況にあわせて白紙から理想の著作権制度を考えるとどうなるかを考察する。結論として提案するのは、新しい方式主義である。著作権取引所を設けて登録された著作物にだけ許諾権をあたえ、それ以外の作品は報酬請求権化する。報酬請求権の対象となった作品は取引所で報酬さえ払えば利用できる。ここで取引所は決済機能も兼ねていて、クリックだけで支払いが行われる。さらに、登録しない作品は非営利利用なら無償で利用可能としておく。これにより、孤児作品問題は事実上消滅する。この制度のもとではアマチュア作家は登録しなければ自身の作品が無許諾で利用されてしまうというコストを負担しなければならないが、その代り、他者の作品をより自由に利用し、かつ自身の作品を世に広く広めて行く道が開けることになる。この改革の狙いは、デジタル化とネットワーク化で誰もが創作者になる時代にあって、創作物の利用しやすさを飛躍的にあげることにある。

*1 本研究は科学研究費助成事業基盤研究A「コンテンツの創作・流通・利用主体の利害と著作権法の役割」課題番号23243017の一環として行われた。コメントを下さった基盤研究の研究会の参加者の方々に感謝をささげたい。特に中山信弘氏、金子敏哉氏、小島立氏には具体的な指摘をいただいた。さらに前田健氏と福井健策氏、そして張睿暎氏にはシンポジウムの場で貴重なコメントをいただいた。この場を借りて御礼を申し上げる。

キーワード

著作権、方式主義、取引所、報酬請求権、アマチュア

2017年1月発行