「韓日安保」を考える時がきた

ユン・ドクミン(韓国外交安保研究院教授)

(『THIS IS 読売 1996年12月』掲載)

-米軍が東アジアに駐留している「保険期間」に日本との直接的な安保関係を作り上げる。これこそ日本の軍事的潜在力を制し、韓国の国益を守る手段である。-

韓日関係は一九六五年の国交正常化以降三十年、人的、物的交流は質量共に大きな変化を遂げながら成長してきたにもかかわらず、近代史における特殊性ゆえにいまだに正常な国家関係の枠組みを持ちえないでいる。とくに国家関係の緊密性を表す最も重要な物差しになる安保協力関係では驚くほど制限されており、ある面ではタブー視されてきたといっても過言ではない。
韓日関係の安保協力関係の大きな特徴は、あくまでもアメリカの仲介による関係だということだ。安全保障問題に関する限り、韓日両国は過去の歴史に起因する国内の制約により、アメリカを仲介者とする間接的な関係に浦足してきた。アメリカを仲介者とする韓日関係は、「北からの脅威」に対処するという共通の利益に関連して、朝鮮半島有事の際に日本に駐留する米軍や米軍施設の使用をめぐる韓日の間接的な協力関係がその中核をなしてきた。だがこのアメリカの仲介を前提とした韓日安保関係を取り巻く戦略環境は、冷戦構造の崩壊によって革命的といっていいほど急激な変化を遂げた。韓日の安保協力の対象となってきた北の共産勢力をけん制する、という伝統的な共通の利害関係が弱体化したためである。
中でも核凍結をめぐる米朝のジュネープ枠組み合意以来、米朝間はもとより日朝問の関係改善が本格化し、韓日安保協力は根本的見直しをせざるをえなくなってきた。今や崩壊寸前の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)をいかにして軟着陸させるかこそが、韓日両国にとって当面の最大の協力課題となってきた。
また、長期的には韓日を取り巻く環境の大きな変化要因としてのアメリカのプレゼンスがある。アメリカはいつまでこの地域に米軍を駐留させておくのか、という間題だ。米国防総省の「東アジア戦略報告」(EASR)でクリントン政権は、アジア・太平洋駐留米軍を引き続き維持すると表明している。だがこうしたコミットメントにもかかわらず、アメリカは財政赤字から国防費の削減を迫られており、この地域の米軍の関与がいずれは縮小する可能性もなしとしない。一方で日米間の力関係は急激に変化している。韓国の平和と安定にとって最も重要な影響を及ばす国際関係は日米関係である。日米安保体制は韓国にとって極めて重要だ。韓国から見れば、日米安保体制は韓日の間に直接的な安保関係がない現状では「日本軍国主義封じ込め」の重要な機能を呆たすものであり、と同時に日米安保体制は米韓相互防衛条約を後方で支えるものだ。日米安保体制が今後もかなりの間存続することは、韓国にとっては重大な利益であり、九六年四月の日米安保共同宣言で日米安保体制が再確認されたことは、韓国にとっては歓迎すべきことだった。だが現在、日米間の力関係は変化しており、深刻化している日米経済摩擦は日米安保体制の将来に不安を投げかけている。

戦後世代が表舞台に

韓日の戦後世代が政治の表舞台に登場するにつれて、両国関係を見直すべき時を迎えている。「過去」をめぐる感情的な対立は、両国関係を大きく損なってきた。韓国の戦後世代は日帝時代について徹底的な教育を受けたが、日本の戦後世代はこの時代から切り離されたまま育てられたのだ。だがアメリカのこの地域における力が揺れ、安全保障面でこれまでアメリカに従属してきた日本が独自路線を歩もうとしている現在の状況は、韓日の安保の枠組みがもはや有効ではなく、根本的な転換を余儀なくされていることを物語っている。この中で、ロシアの混乱、中国の急浮上、北朝鮮の崩壊の可能性など、短期的にも長期的にも韓日安保関係を考慮しなければならない変数が生まれている。こうした観点から、韓国側にとって韓日安保関係に関する課題は三つある。
第一は、アメリカの仲介による韓日安保関係から直接的な韓日安保関係への転換は呆たして可能なのか、という点だ。強力な経済力を背景に政治的自主性を追求する日本にいかに対応し、いかなる韓日関係を設定すべきか。日本の力をけん制するための中露との協力、あるいは多国間安保協力の枠組み作りの選択肢はあるのか。
第二は、北の脅威が去りつつある現在、韓日安保連帯のための共通項をどこに求めるのか。共通の利益がない限り、二つの国家間の安保協力関係は成り立たない。したがって韓日が安保関係を築くには、共通の利益や関心事項がなければならない。
第三は、長期的に東アジアの秩序を左右するだろう日中競争時代において、韓日協力はどうあるべきかだ。朝鮮戦争後、韓米相互防衛条約と日米安保条約がそれぞれ結ぱれた。アメリカが仲介する間接的な安保協力関係の中で韓国と日本は、北方の脅威認識についての微妙な差こそあれ、根本的には共産勢力を自国の安保の一時的な脅威と見なしてきた。もし韓国が朝鮮戦争当時、米軍の在日基地を使用できなかったなら、北朝鮮の南進に対抗するための釜山という足場を確保できずに韓国の共産化を許してしまったかもしれない。韓国にとって在日米軍基地は死活的な存在であった。このことからも、日本の協力が韓国の安全にとっては緊要であることが分かる。さらに日本との経済協力関係は、韓国の経済成長に極めて重要な要素であり、これが斬鮮半島の安全と平和の維持に不可欠だった。

互いに緊要な存在

一方、日本も朝鮮半島の地政学的重要性をおろそかにできなかった。そのことは、一九六九年十一月二十一日のニクソン・佐藤会談後発表された日米共同声明でも「韓国の安全は日本の安全に緊要」という韓国条項になって表れた。韓日はその地政学的な位置によってお互いの安全にとって緊要な存在であり、「一衣帯水」の関係と称される所以だ。
しかし過去の歴史をめぐる韓国の国民感情間題と日本の憲法上の制約は、軍事分野に関しては直接的ではなく、アメリカの仲介による間接的な協力関係にとどまらざるえないことを余儀なくしている。
中でも日本の憲法第九条は、国際紛争への軍事的関与、いわゆる「集団的自衛権」を禁じており、韓国が攻撃された場合、日本が軍事力を行使することは出来ない。従って韓日間の直接的な軍事関係ないし同盟関係は実定法上不可能だといえる。 結局、これまでの韓日安保関係の特徴は、地政学的な重要性と北方の共産勢力という脅威に対する共通認識とによって、両国の国内的な制約の中でアメリカの中継する間接的な安保協力関係に甘んじてきたことといえる。
北方の脅威が去り、アメリカのプレゼンスが縮小・撤退するかもしれないという可能性を考慮に入れ、韓日安保関係の再構築を迫られている韓国にどういった選択肢があるのだろうか。

日本に対する二つの立場

これに関して、韓国内には二つの立場がある。第一には、日本との直接的な安保協力は、韓国側に依然としてぬぐいきれない日本に対する歴史的不信感があるために不可能であり、むしろ韓国は日本の軍事力に備える態勢を整備しながら、一方で中露などと連合して日本をけん制すベきだという立場に立つものがいる。韓国人には、陰謀説で日本をとらえる傾向がある。日本はいずれ大陸(中国、朝鮮半島)を侵略しようとたくらんでいるとの前提で、日本が少しでも軍事的な行動をとろうとすると日本を危険視する。日本の国連平和維持活動への自衛隊の派追を皇軍の大陸侵攻に喩えたり、日本の軍事大国化を既成事実化する先入観にみちみちた対日観が、依然として韓国社会の底流に潜んでいる。
だが、もし日本の軍事大国化をそれほど懸念するのなら、もっと徹底的な対処策が講じられねぱならないはずだ。が、韓国内外に日本の陰謀に備えているようなふしはどこにも見られない。韓国人の対日感情とは相反して、日本を仮想敵国視する政策などはナンセンスと言わざるをえない。
日本は、決して韓国の仮想敵国にはなりえない。なぜか。韓日間の人的、物的交流は膨大な水準に達している。韓国人の知らぬ間に韓日関係は、すでに相互依存関係に突入している。両国間の貿易額は約五百億ドルに達し、両国民の相互訪問数ほ年間三百万人に上り、国籍別外国人出入国者数ではお互いの国民がそれそれ首位を占めている。こうした交流協力関係は日本にとってのみか韓国の繁栄にとっても欠かすことのできないものとなっている。韓国がその繁栄を犠牲にしてまで日本を敵視するのは、あまりにも非現実的になってしまった。また、とてつもない損失である。だとすれぱ、現実可能なオプションは、新しい形の韓日安保協力関係を模索することだ。まず実定法の枠内で韓日の直接的な安保対話と協力のチャンネルを確保し、信頼醸成措置(CBM)を増進する方策を講じなけれぱならない。現在、日米韓の間には安保情勢協議会があるが、韓日間の安保協議は制度化されてはいない。その意味で最近、韓日首脳会談が定例化したり、首脳間のホットラインが設置されたことは喜ばしい。
しかし韓日両国の防衛関係省庁間の人的交流にとどまっており、実質的な対話や協力方策は依然、制限されているのが現状だ。

首都圏防衛重視に転した日本

日本は九五年十二月に「防衛計画の大綱」を修正することで極東ソ連軍を意識していた「北方重視戦略」を修正して、西日本および首都圏防衛重視の新しい防衛態勢への転換を試みた。つまり日本は、ソ連の脅威が消滅し、北期鮮の核とミサイルの脅威が浮上してきたことや中国情勢など変化する戦略環境を念頭に入れ、日本自衛隊の配置を従来の北方の極東ソ連軍の侵攻脅威に備えた北海道集中配置から全国均等配置に転換した。事実上、朝鮮半島から近い西日本および首都圏重視の配置に転換したわけだ。
また九六年四月に発表された「日米安保共同宣言」に示されているように、日本自衛隊は過去とは違って徐々に朝鮮半島有事の際にアメリカ軍を支援するための行動がとれるようになると思われる。その結果、従来と異なり斬鮮半島周辺での日本の軍事力は著しくなる状況になろう。日本と直接的な安保対話と協力関係が存在しなければ、韓国社会に根強い対日不信と固定観念を考えると、韓国は絶えず日本の意図や動きに対して憂慮せざるをえないだろうし、場合によっては朝鮮半島南部への軍事力配置も検討されることになるだろう。
韓日両国の軍事関係を中間で中継するアメリカの役割は依然有効だが、にもかかわらず韓日間の軍事的提携関係は驚くほど制限されている。つい最近まで、日本とは艦艇の親善相互訪間は全く行われてこなかった。今年に入って、ようやく海上自衛隊の護衛艦の釜山寄港が実現したにすぎない。また韓国空軍と航空自衛隊はつい最近まで相互の飛行計画を交換しなかったため、相手の空軍機の発進を国籍不明機とみなし、自国の戦闘機をスクランプル発進させたり、対馬付近をソ連機が通過すると両国の戦闘機をスクランプルさせたりしてきた。さらに韓日両国間「防空識別圏」(ADIZ)が明らかでなかったために、飛行計画を相互交換していない航空機にはつねに衝突の危険性があった。九○年十二月、石川要三防衛庁長官(当時)が訪韓した際、韓国側はこうした問題を協議するための実務者協議開催を提案、九一年十二月から同協議が始まった。また九四年四月、韓国国防長官としては初めて訪日した李炳台長官と愛知和男防衛庁長官(当時)との間で行われた防衛首脳会談では、公海上での軍用機の発進など飛行計画をあらかじめ相互通告することや艦艇の相互訪問について合意した。

韓国にも「韓日安保」積極派

一方、韓国内でも遅きに失した感はあるものの、韓日間の直接的な防衛協力関係を積極的に推進しようとする動きが出始めている。九一年七月、李鍾九国防長官(当時)が、「(韓日間の)従来の制限された交流・協力関係から脱皮して韓国の自主防衛の早期達成のためにも役立つ方向に軍事協力を進める」と韓日防衛協力を提起。また九二年−九三年度版「国防白書」では初めて「日本の地域的役割の増大とアメリカを軸とする安保協力関係の発展的側面を考慮して、日本との実質的な軍事交流・協力を積極的に増大する方針」が明記された。その後も国防白書には、同じような表現が引き続き使われている。
それでは、ポスト冷戦の状況下で韓日安保協力関係は呆たして成立可能なのだろうか。その方向を設定するためには、韓日の安保協力の目的が明らかにされねばならない。確かに北朝鮮問題が解決すれぱ、東アジアの冷戦は事実上終結したことになり、もはや現在の韓日安保協力態勢は成立の余地を失うことになる。では、未来に向けての韓日安保協力の方向とはなんだろう。韓日間の共通の安保関心事は存在しなくなるのだろうか。
韓国の安全保障は(一)朝鮮半島の安定と平和(二)東アジアの安定した均衡関係(三)世界市場への接近の保障−−という三つの環境に依存している。この三つが保障されてこそ幹国の安全と平和、繁栄が保障されるのだ。従って、この環境整備強化こそが韓国の安全保障政策の基本である。そしてこの基本は日本の利益と対立するものではなく、合致するのだ。日本にとって、朝鮮半島の安定と平和とは伝統的に重大な関心事だった。それはポスト冷戦下でも変わらない。日本にとって朝鮮半島は、地政学的には依然として「自分の心臓を狙う短刀」であり、同半島が混乱に陥ることは望んでいない。そのことは、冷戦時代と同様に日本の朝鮮半島の後方基地としての役割は決して消滅していないし、引き続き有効なのだ。とくに北朝鮮問題が両国の最大の安保懸案として存在する以上、朝鮮半島有事の際、日本の対韓安保支援がどれほど可能かは韓国にとっては極めて重要な意味合いを持つ。そのことについては、先の「日米安保共同宣言」に基づく有事の際の米軍への兵たん支援を可能にする日米ガイドライン見直しがすでに開始されている。

「統一」には日本の助力が必要

日本が本当に朝鮮半島の統一を望んでいるかについては論議の分かれるところだが、逆に南北朝鮮統一は日本の政治的、経済的な助力なしには夷現できないことも事実だ。日本が統一よりも現状維持を望むこともありうるが、それに公然と反対することなどはできまい。日本は韓国主導の平和的な統一ならぱ受け入れるだろう。その意味で、韓日両国は少なくとも統一過程で起こりうる混乱を最小限にとどめなくてはならないという点では一致しているだろうし、統一にかかるコストには日本の支援を得ねばならないだろう。
端的に言って、朝鮮半島の安定と平和は韓日両国にとっては共通の利益である。韓日両国は、朝鮮半島有事の際の安保協力ばかりでなく、北朝鮮の核兵器やミサイル開発の危険性を排除することや北朝鮮政権の急激な崩壊を防ぎ、崩壊による混乱を最小限に食い止め、北朝鮮をソフトランディングさせるためにも安保協力体制を整備することが急務といえる。事態を収拾するには、日米韓の強固な協力が最重要なことは言うまでもない。日本はこれまで南北朝鮮の平和的統一のために全面的な支援をしてきたが、今後も建設的な役割が期待されている。統一への支援はもとより、統一後の安定化など長期的な朝鮮半島の安定と平和にとって韓日両国が協力すべきテーマは限りなく多い。
東アジアの安定した秩序のための韓日の協力は、同地域の均衡を壊そうとする者に対する共同対応を意味する。秩序を壊すかもしれない中国やロシアなどの不安な国内情勢に韓日がどう共同で対処し、支援し合うか。そこには当然、非軍事的な協力も含まれている。むろん秩序破壊者に対する直接的な軍事共同対応の具体的な方策については、両国の国内法規や国民感情にてらして慎重に検討されねばならないが、その重要性がますます増大していることだけは間違いない。
言うまでもないことだが、東アジアの安定した秩序維持は、朝鮮半島周辺の四大国、日中米露による勢力均衡に依存する。中でも強大な軍事力を持つアメリカ、経済大国・日本、そして新たに力を蓄えつつある中国との三つ巴の競い合いが始まるだろう。従って同地域での安定した均衡は日米中の勢力均衡いかんにかかっているし、長期的に見ると日中間の競争ないし均衡に大きく左右されるだろう。

日中間で柔軟に動きたい韓国

日本、中国は韓国にとっては政治、経済それぞれ重点の置き方は異なるが、ともに重要な国である。だから日中競争時代にあって、もし韓国がどちらか一方の側に立ってもう一方をけん制するような政策をとってしまうと、韓国は身動きがとれなくなってしまう。韓国としては、日中の間で事柄によって自らの立場を決め、その都度最大の実をとればいいのだ。その意味で日中競争時代とは「ノンゼロ・サム」的な競争になるだろうし、そうした中での韓日安保協力関係とは、韓国の対外政策を拘束する同盟的なものというよりも、事柄によって協力しあう柔軟な体制が望ましい。
韓日両国は、自国の安全と繁栄とを対外関係に依存する政治経済構造を有している、言い換えると、共に資源貧国でエネルギー、食料、鉱物資源など戦略物資のほとんどを海外からの輸入に依存している。その一方で両国は、対外貿易によってばく大な宮を蓄積してきた。もし対外市場へのアクセスを妨げられスみようなことになれば、両国とも生存が脅かされる。両国は、世界市場へのアクセスをなんとしても確保せねばならぬという共通の利害を持っているのだ。
いかにしてそのアクセスを保障するかは、純粋に経済面だけをみれぱ関税および非関税障壁の撤廃などの保護貿易政策をやめ、経済プロック化に反対し、自由貿易体制を堅持することにある。無論これは韓日両国で共同対応が可能な協力領域になるだろう。しかし、それだけでは十分ではない。積極的な意味での世界市場へのアクセスを保障する間題は、両国と世界市場をつなぐ海上通路(SLOC)の安全であり、そのための海上通路の安全確保ということになってくる。この分野での韓日両国の協力は極めて有望である。両国は同じ海上通路によって世界市場につながっており、両国の産業に必須のエネルギー資源は中東から長いSLOCを経て届いている。これまでこのSLOCの安全確保は、米海軍によって守られてきた。だが米第七艦隊がフィリピン・スービック湾から撤退してからは、南シナ海の海上通路をめぐる中国海軍の出没や東南アジア諸国の海軍力強化など新たな不安定要素が出ている。米海軍は財政赤字縮小を進める中で、やがてSLOCの安全確保という役割を弱めていく可能性が大だ。その空白を誰が埋めるのか。韓日両国がこの長いSLOCの安全を確保するための責任と任務を分担することは、両国の共通の利益になるだろう。SLOCの安全確保は、基本的には両国の防衛協力に深くかかわってくる。防衛協力の可能性は、まさに両国の安全保障上最も重要なSLOC保護の面から検討できる。

日本と相反しない韓国の安保

もう一つの側面がある。日米安保体制は、日本の軍事的潜在力を封じ込める瓶の蓋のような役割を呆たしてきた。だがアメリカの力は、日本との関係では相対的に衰退してきているように思われる。アメリカは、いわゆる「ナイ・イニシアチプ」によって財政面での日本の役割を増大させつつ日本の独自路線を阻み、米同盟の枠組みの中に引き統き取り込もうとしている。一方、日本ほ自らの国力にふさわしい国際的な影響力と自主的な対外路線を模索している。この中で韓国にとっては、日本とのより直接的な協力関係を強化することが急務になってきている。むろん日韓には国力の差があり、日本との安保提携を通じて増大する日本の力を韓国の国益に反しないように中和するには限界があろう。
従って韓国としては、日本とのより直接的な安保関係を強める一方で、多国間安保体制の枠組みの中に日本を押し込めるという政策を推進する必要がある。東アジアには、米露の軍事的役割の縮小による力の空白を誰がどう埋めるのかをめぐって疑心暗鬼と不信感とが渦巻いている。未来に対する不安などから域内ほとんどの国が軍備増強をしており、そのことが新たな不安定要因となっている。この不信と不安感を解消するには、ヨーロッパのOSCE的な多国間安保協議の場が必要だ。また各国の意図を透明にすることで軍備増強を緩和させ、紛争の平和的解決と軍備縮小のための協議の場を設けるべきだとの主張もある。
多国間安保協力には、その地域の大国の独自路線を他の諸外国との協調によってけん制できるという利点がある。すでにアメリカや日本はこうした体制に関心を示しており、「日米安保共同占旦言」でも多国間安保協力に積極的に取り組むことを明らかにしている。増大する日本の軍事力の透明性を高め、かつ日本から建設的な役割を導き出すためにも東アジアの多国間安保協力を検討すべきだろう。

「保険期間」に新たな関係模索

終戦から現在までの日本は、本来の日本ではなかった。というのも日本は太平洋戦争に敗れて、従来と異なる道を選択せざるをえなかったからだ。今や日本は過去にこだわらず、主権国家として「自らの意思」に従って対外政策を展開していくだろう。すなわち日本という国家が「本来の道」を歩むことを意味する。韓国は、この状況に慣れなければならない。日本の主権国化は韓国の力では押し戻すことはできないし、こういう日本と共存しなけれぱならない。韓国の対日政策は、一大転換を余儀なくされているのだ。また朝鮮半島の周辺事情も、過去半世紀の間に東アジアを支配していた冷戦という既存の秩序が崩れ、新しい秩序がまだ確立していない大変革期の真っ ただ中にある。
こういう状況の中で、アメリカと北方の脅威を軸にして問接的安保協力にとどまってきた韓日安保協力の枠組みを一日も早く直接的な安保体制に代えねぱならない。日韓問の直接的な安保関係への模索を始めねぱならない。アメリカが健在な間は、軍事的潜在力を有する日本の独自路線をけん制することはできる。
従って、アメリカがこの地域で重要な影響力を発揮している現時点は、韓国にとっては日本との安全保障上の「保険期問」のようなものだ。この保険期間の有効なうちに、日本の増大する力が韓国に悪影響を及ばさないように日本との新しい安保関係を模索し、作り上げることが二十一世紀に向けての幹国の対外政策にとっての最優先課題の一つと言える。


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