ノーティラス・フレームワークペーパー
日本海におけるエネルギー関連海洋問題における日米政策イニシアティブ
ケン・ウィルケニングおよびジェイソン・ハンター
ノーティラス・インスティチュート
目 次
1.はじめに
1998年6月11日および12日、米国で初めての全米海洋会議が、カリフォルニア州モントレーで開催された。この会議には、クリントン大統領、ゴア副大統領、および4名の閣僚が参加した。基調講演者の1人であり、本論文の参考文献でもある『Sea Change』(海の変化)の著者で海洋大気圏局の元主任科学者でもある、シルビア・アール氏は、この会議は米国の海洋保護における分岐点となるだろう、と予想し次のように述べた。「海洋問題について話し合うために、これほど高レベルの米国高官が集まったことはかつてなかった。また、今日ほど海洋問題が優先事項の高い問題として扱われたことはなかった。」 この会議および米国政府のもうひとつの取り組みである「国際海洋年」は、海洋問題に関する民間および軍事機関の上級代表者で構成される作業グループである、オーシャン・プリンシパルズ・グループによって取りまとめられた。これらの取り組みならびに科学経済環境に関するヘインズ・センターの計画を実行するために、米国政府は、政府、民間企業、非政府組織および学界からなる「関係者」の協調メカニズムをつくった。
今年1998年はまた、国連により指定された「国際海洋年」でもある。UNESCO、FAO、UNEP、IAEA、IMOおよびWMOなどの機関と協調して、国連は、「有限の経済的資源である海洋および海岸地域に関する問題について、各国政府の認識を高め、行動をとり、適切な資源を提供し、優先事項として取り扱うよう、各国政府から確約を得る」ために努力を行っている。さらに、ポルトガルのリスボンで開催中の世界万博'98は、世界の海洋の保全が主要なテーマとなっている。
日本海のエネルギーに関する問題についての我々のワークショップは、第1回全米海洋会議の成功、そして、世界の海洋が直面している危機についての世界中の認識の高まりに対応したものである。特に、このワークショップは、日本海の海洋環境をエネルギーによる汚染から保護するための日米共同政策イニシアティブを日米の様々な政府機関へ提案する具体的な提言の作成を通じて、全米海洋会議の精神を行動に移すことを促進する。
本論文の目的は、適切かつ実行可能な日米政策イニシアティブに関するワークショップの議論の枠組みを提供することである。ノーティラス・研究所(Nautilus Institute)およびグローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)は、日本海地域におけるエネルギー関連海洋問題に関する日米の共通の問題について話し合うために、学者、日米の代表、政策担当者、その他の関係者など優秀な人材を一同に集めた。このワークショップの主な成果は、日米が日本海地域における問題に共同で取り組み、また協調体制を促進するための共同行動に関する提言という形でまとめられ、日米の様々な政府機関およびメディアに対して発表されることになっている。
このワークショップは、ノーティラス・研究所およびGLOCOMによるESENAプロジェクトの一環である。以下に、ESENAプロジェクトについて簡単に紹介する。
2.ESENAプロジェクト
北東アジアのエネルギー、安全保障および環境についての日米共同研究(ESENA)プロジェクトの使命は、エネルギー使用量の大規模な増加が予想されている北東アジア地域におけるエネルギー、環境および安全保障問題の中心的課題を分析し、当地域で持続可能かつ安全なエネルギーの未来を実現するための日米地域政策共同イニシアティブの、提言を作成することにある。
ESENAプロジェクトはカリフォルニア州バークレーに拠点を置くノーティラス・研究所と東京に拠点を置く国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の共同プロジェクトで、国際交流基金ならびに国際交流基金日米パートナーシップ・センターの助成を受けている。
ESENAプロジェクトは、3年計画(1996-1999)である。3年間の間に、本プロジェクトは下記のとおり、3つの異なったエネルギー関連問題について調査を行う。
- 1年目 - 国境を超える大気汚染(酸性雨)問題
- 2年目 - 地域海の海洋問題
- 3年目 - 持続可能なエネルギー投資のための革新的金融方策
ESENAプロジェクトの動機としては、エネルギー戦略の選択において北東アジアがジレンマに陥っている事実がある。将来、急速な経済成長に伴い、エネルギー需要が大幅に高まることが予想される。需要が最も大きくなると考えられているのは中国だが、日本および韓国の需要も伸びると思われる。さらに、エネルギー需要は、北朝鮮、ロシア極東地域、モンゴルおよび台湾でも大きく伸びると予想される。需要を満たすために考えられる主な戦略−石炭の開発、石油輸入、原子力−は、環境および安全保障の面で問題が伴う。ESENAプロジェクトは、現在のエネルギー政策の環境および安全保障への悪影響をなくし、または緩和するための将来の代替行動案を模索するものであり、最終的には、当地域における環境および安全保障の観点から持続可能なエネルギー開発を促進することを目的とする。ESENAプロジェクトを支える2つ研究領域は、「エネルギー安全保障」と「環境安全保障」である。これらの領域における理論的分析が、北東アジア固有の問題に応用される。
3.ESENA海洋ワークショップの背景
日本海におけるエネルギー関連海洋問題に関するESENAワークショップの具体的な背景は、3つの質問に答えることによって、説明することができる。なぜ、本ワークショップは、「エネルギー」問題に焦点をあてているのか?(この問いに対する答えはすでに一部上述してある)。なぜ、エネルギー関連の「海洋」問題に焦点をあてているのか?そして、なぜ、北東アジア地域の他の海洋ではなく、「日本海」に焦点をあてているのか?
なぜエネルギー問題に焦点をあてているのか? 国際関係の分野において、エネルギーは、「高度に政治的な」問題である。換言すれば、世界のほぼ全ての国家が、エネルギー資源を確保するために政治的、経済的および軍事的に多大な努力をしている。「現実政治」的にいえば、エネルギーは、国家が戦争に突入する原因になる数少ない問題のひとつである。
また、エネルギー問題は、北東アジアにおける死活的問題である。第一に、当地域における将来のエネルギー需要の増加は、おそらく地域内の供給だけでは満たすことができないと考えられる。これは特に石油についていえることで、特に中国は、将来のエネルギー需要の伸びにともない、地域外から燃料を輸入する必要が出てくるだろう。第二に、エネルギー、特に石油をめぐる競争が、特に市場への供給が中断された場合には、厳しくなるだろう。第三に、予想外の新発見または技術革新でもない限り、北東アジアのペルシア湾への石油輸入の依存率は、現在の75%から20年間で90%に増えると思われる。第四に、北東アジアの2大主要国である日本と韓国は、通常燃料(石炭、石油および天然ガス)の供給をほぼ全面的に輸入に頼っている。
エネルギー問題が北東アジアにおける重要な問題だとすれば、エネルギー問題全体に対する重要度によっては、エネルギーの開発、輸送、転換、消費に影響を与える要因も、政策担当者が注意を要する重要な問題となりうる。エネルギー問題に影響を与え、またエネルギー問題により影響を受ける「要因」のひとつが、海洋環境である。
これは、第二の質問、すなわち、なぜエネルギー関連の「海洋」問題に焦点をあてているのか?につながる。簡単に答えるとすれば、北東アジアにおけるエネルギーの開発、輸送、転換、消費が、海洋環境に影響を与えるからである。しかしながら、日本海地域において、これらのエネルギー関連問題のすべてが等しく重要性をもっているわけではない。現在、最も注目すべき問題は、国際的なエネルギー関連海洋問題である2つの広い問題 − 航海の安全性および海洋における通信(SLOC)の問題および環境保全問題 − である。
SLOC問題は安全保障問題と密接に関連している。北東アジアにけるエネルギー関連SLOC問題の中心となるのは、主に中東からの石油輸送のための海の回廊の保護である。北東アジアが石油を中東に依存していることを考えれば、なぜ石油の安全輸送が北東アジア諸国にとって中心的な問題であるかを説明する必要はほとんどないといえる。現時点では、日本海は石油関連SLOCの中心ではないが、SLOC問題は、特に日本と韓国を隔てる海峡では、当地域における重要な関心事項である。SLOC問題に関連して、特に日本と韓国を隔てる海峡では、航海の安全性も問題となっている。
一般的に、政策担当者は、SLOC問題ほどに環境保全問題に重要性を感じていないとはいえ、環境保全問題に対する関心も高まりつつある。日本海における生態系の問題(例えば、磯焼けの問題)のみならず、航海の安全と自由の問題(例えば、沿岸環境保全のために国家が管轄権を拡大する「管轄権の拡大」問題など)にも関心が寄せられている。日本海に関する環境保全問題には、石油流出、核廃棄物の海洋輸送時の事故などのリスク、内陸活動によるエネルギー関連廃棄物の流入、船舶の油性廃棄物の取り扱いに関する港湾管理の慣習および公海における核廃棄物の廃棄が含まれる。
つまり、本ワークショップが海洋問題に焦点をあてている理由は、海洋問題が北東アジアにおける安全かつ持続可能なエネルギーを確保するための戦略的リンクであるからである。
では、海洋問題が重要だとして、なぜ、アジアの海洋のなかでも比較的非主流とでもいえる日本海の海洋問題が重要なのか。つまり、なぜ、本ワークショップは、日本海に焦点をあてているのだろうか?
第一に、日本海は、比較的汚染されていないため、保全の対象となる格好の候補といえる。今、行動をとれば、日本海が黄海のように「死の海」と化すことを防ぐことができる。(黄海の惨状に関心を高める動きのなかで、韓国政府は最近、黄海は死の海であると宣言した)。
第二に、日本海は、冷戦時代こそ緊張地帯だったものの、現在では政治的に閑静化しており、沿岸国間の相互協力の途を探ることが可能な主要な候補地域である。日本海の沿岸国には、日本、ロシア連邦、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国および、豆満江流域に面していることにより日本海にアクセスがあるという点で、中国が含まれる。黄海、東シナ海、または南シナ海などのより対立の多い海域での沿岸国間の協力を促進するよりも、日本海沿岸国間の協力を促進するほうが容易であると思われる。
第三に、日本海地域では近い将来、大規模な開発が予想されている。ロシア極東地域、日本の日本海沿岸地域、韓国の東南海岸、特に釜山およびウルサン周辺地域、朝鮮の東海岸および豆満江流域は、開発中であるか、開発が予定されているか、主要開発地区になる可能性がある。開発初期の段階で(豆満江流域で試みられているように)、地域開発計画に「持続可能な開発」方法が取り入れられれば、開発による最悪の副産物を防ぐことができるかもしれない。
第四に、現在、日本海地域の全ての国家を含む多国間の政治機関は全くなく、また政治的取り決めもほとんどない。我々のワークショップの参加者であるマーク・バレンシア氏は次のように述べた。「日本海地域ほど海洋汚染のコントロールに関して多国間手段がほとんどとられていない半閉鎖性の海域はない」 。例えば、日本海地域の全ての国家を同時に含む多国間の科学的協調の取り組みはなく、捕獲の配分について全ての日本海地域の国が話し合える場もない。また、石油流出に関する地域内の緊急連絡体制もない。
北東アジアのその他の沿海地域 - 黄海、東シナ海、オホーツク海 - に比べると、日本海は、本地域における主要な政治アクターをすべて含んで入る。したがって、日本海地域は、本地域における多国間の信頼醸成、能力の伸長、制度形成のためのプロセスを促進する日米イニシアティブにとって、最高の可能性を提供していると考えられる。
4.日本海地域における米国の国益
本ワークショップの目的が、日本海地域におけるエネルギー関連海洋問題に関する日米共同政策イニシアティブへの勧告を作成することにあるとすれば、次のように問題を設定することが妥当であろう。この地域における米国の国益が何であるか?なぜ、米国は、比較的「遠い」日本海地域における政策イニシアティブに関与して、自らを煩わせる必要があるのか?
日本海のエネルギー関連海洋問題が米国の国益にかかわる領域はいくつかある。これらには、貿易、安全保障、環境問題が含まれる。
- 北東アジアにおける海運
現在、アジアの海上交通路における海運および貿易は増加傾向にあり、このことは経済的、戦略的にも重要な意味を含んでいる。過去20年間におけるアジア貿易の地理的パターンは、地域内貿易の安定成長だったが、地域間貿易、特にアジア諸国と先進欧米諸国間の貿易も重要な要素となっている。米国と米国のアジアにおける貿易相手国との間の商品の流れを阻害するものは、米国の国益に反すると考えられる。したがって、米国は、アジア、特に北東アジアにおける、円滑、安全かつ持続可能な海運について国益を有している。
海運は、伝統的に3つのカテゴリーに分けられる。乾船倉、液体船倉および一般船荷である。当然、米国の国益にとっても最も重要な意味を持つ海運タイプは、北東アジアが中東から輸入する原油の液体船倉である。しかしながら、懸念事項となっているのは、米国への石油の海上輸送ではなく、北東アジアへの石油の海上輸送である。北東アジアの戦略的重要国への石油の海上輸送を阻害するものは、米国のアジアにおける国益に影響を与える。現在、日本海を経由する原油または石油の貿易はほとんどないが、将来の工業発展(およびそれにともなう輸入の増加)または将来のエネルギー資源の開発(およびそれにともなう輸出の増加)により、日本海地域が石油の海上輸送に関する問題およびリスクの発生地域になる可能性はある。したがって、当地域における石油の海上輸送の安全性と持続可能性を確保し、問題の発生を事前に防ぐ手段の策定を促進、支援することは米国の国益にかなうのである。
- 航海の自由
アジアの海において、伝統的な航海の自由を守り、安全航海の慣習を維持することは、米国の国益にとって重要である。これは、軍事的観点のみならず、自由貿易と経済の観点からも重要である。例えば、米国は、中国、ベトナムおよびフィリピン間のスプラトリー諸島問題に関して、航海の自由は米国にとって「基本的な国益」であると宣言した 。
現在、北東アジアにおける航海の自由および海上保安を脅かす要因としては、軍事的要因よりも非軍事的要因のほうが多い。非軍事的要因には、自然災害、事故、海賊行為および地域国家の「管轄権拡大」(つまり、安全確保、汚染防止およびその他の理由により管轄水域を拡大すること)が含まれる。
しかし、軍事衝突に発展しかねない脅威もある。これらには、1)国家安全保障上の理由のために航海の自由をコントロールすることを目的とした沿岸国による航海の停止(これは、冷戦中には、日本海における現実的な脅威であった)2)沿岸国の国内不安定(可能性としては、朝鮮民主主義人民共和国)3)海洋権をめぐる近隣諸国間の衝突(領海権争いにおける見解の相違または排他的経済水域をめぐる衝突)、が含まれる。
つまり、潜在的に不安定な航海の自由と安全保障問題が紛争へ発展するのを防ぐことが、米国にとって重要なのだ。この意味で、日本海は、安全保障および航海の自由を協力的に調整する重要な試験的水域となる可能性がある。
- 米国の海洋政策
カリフォルニア州モントレーで開催された全米海洋会議で、クリントン大統領およびゴア副大統領は、米国における重要な海洋資源を開発、保護、回復させるための一連の主要計画を発表し、これに対して2002年までにさらに2億2400万ドルの支出を提案した。クリントン大統領は、「21世紀に向けての包括的海洋問題のアジェンダ」を作成することを提案し、閣僚に対して、1年後(1999年6月)までに、「協調的、規則的、長期的な連邦海洋政策」への勧告を報告するよう指示した。同大統領はまた、議会と協力して、現在の海洋政策をリードする海洋問題委員会を設置したいと述べた。
モントレーで発表された構想はすべて国内的なものだったが、我々のワークショップは、クリントン政権の国内的構想を国際的領域にまで広げるべきであるという我々の意見を述べる機会に恵まれ、より大きな国際的目標を達成せずに国内的目標のみを達成することは不可能であると主張することができた。我々のワークショップは、日本海のような水域における科学的、技術的、経済的、軍事的協調体制を整えるために、なぜ米国が米国の海洋関係資源の一部を費やさなければならないのかについて説明する良い機会となりえる。
- 海洋環境の保護
世界の海洋保全の促進は米国にとって重要な国益の絡む問題である。人類の文明の将来は世界の海域の状態に大きく依存している。世界で最も科学的、技術的に進歩した国として、また、唯一残った超大国として、さらに海洋環境に被害を与えている汚染国のひとつとして、それを実質的に償う意味でも、米国は、政治的に不安定で経済的に重要な地域が海洋問題に取り組むのを支援する義務を負っている。日本海は、日本とともに、海洋問題における米国のリーダーシップを証明することのできるひとつの海域である。
5.日本海における既存のレジーム、プログラム、活動
どのような日米共同政策イニシアティブが最も効果的かを考えるためには、現在どのような活動が日本海水域で行われているかを理解する必要がある。日本海に関連する様々な国際的取り組み、プログラム、活動を以下に挙げる 。ただし、以下のリストは全てを網羅しているわけでない。各項目については、別添1(国際レジームおよび共同活動)または別添2(日米共同活動)で説明する。
日米共同活動は以下のとおり。
- UNCLOS
- アジェンダ21
- IMO条約
- ロンドン・ダンピング会議
- 内陸活動による海洋汚染についてのモントリオール・ガイドラインならびに内陸活動からの海洋環境保護のための国際的行動プログラム
- 海洋環境の持続可能性のためのAPEC行動プラン
- 北西太平洋行動プラン(NOWPAP)
- 豆満江流域開発プログラム
- 西太平洋作業グループおよび北太平洋海洋科学機関(PICES)による科学的調査
- 東アジア海の海洋汚染の保全および管理に関するUNDP/GEFプログラム
- 9つの2国間漁業協定
沿岸国を除く日本海地域における主要関係組織としては、国際海洋機構(IMO)、国連環境プログラム(UNEP)、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、国連開発プログラム(UNDP)、がある。
6.議論の枠組み
我々のワークショップの仕事は、日本海におけるエネルギー関連海洋問題に直接または間接的に取り組む日米政策イニシアティブに関する勧告を作成することである。本節では、日本海における共同イニシアティブの可能性に関して我々の考える枠組みを提示する。本節および本論文全体の意図は、どの提案を考慮し、どの提案を考慮から外すべきかについて指示することではなく、議論の基盤を整えることにある。以下の議論の内容は、1997年12月にカリフォルニア州バークレーにて開催された類似のESENAワークショップ、ESENAプロジェクトの一部として委託された論文、様々な専門家による議論に基づいている。
本ワークショップの議論の枠組みとして、政策提言の可能性がある3本柱に関連して3つの質問を設ける。
- 日本海におけるエネルギー関連海洋問題について、日米はどのような共通の目標を追及するべきか?
- 日本海におけるエネルギー関連海洋問題において、どのような事項が日米にとっても最も重要であるか?
- 日本海におけるエネルギー関連海洋問題について、具体的にどのようなプログラムまたは活動を日米はとるべきか、そしてそのようなプログラムをどのように実行するべきか?
第1の政策的関心は、日本海における日米共同行為の「全体的な」目標および動機に関するものである。これについては、次の質問を提示ことができる。日本海におけるエネルギー関連海洋問題について、日米はどのような共通の目標を追及するべきか?例えば、日米は、以下の事項について協調活動を行うべきだろうか?
- 複数の問題に取り組む多国間機関の設立
日米は、日本海において(おそらくASEANのような)多国間機関を設立するべきだろうか?そのような機関は、海洋問題以外の問題にも取り組むことになるが、ASEANのように、海洋問題が議論および協力の中心的対象となる可能性はある。
- 北東アジアおよび日本海を含むアジアにおけるSLOC安全体制の確立
SLOCは経済的生命線である。日米はSLOC安全保障体制を確立するべきか?アジア太平洋安全保障協力機構(CSCAP)海洋問題協力作業グループによって提案された『地域海洋問題の協力についてのガイドライン』(1996年12月)では、同ガイドラインの明確な目的のひとつは、「自由で妨害のない海上貿易の流れにより、地域における安定した海洋水域の促進を助けること」にあるとしている。
- 日本海における海洋環境保護のための正式な組織の設置
日米は、日本海における海洋環境保護のための組織を設置するために働きかけるべきなのだろうか?この組織の活動には、環境状態、海洋沿岸資源、船舶の動き、船舶、国内法や慣習、石油流出物の廃棄方法およびその他の関連する事項に関するデータの収集が含まれる。このようなデータは、日本海における海洋環境を協調的に管理するために利用されるだろう。
上記、3つの例は、日米が共同政策イニシアティブを画定するにあたって採用することができる共同目的の例にすぎない。この他にもあるだろうか?
第2番目の政策的関心事項は、次のような設問によりアプローチする。日本海におけるエネルギー関連海洋問題において、どのような事項が日米にとっても最も重要であるか?1997年12月にカリフォルニア州バークレーで行われた今回のワークショップに似たESENAワークショップに基づき、参加者は以下の領域が最も重要であると判断した。以下の事項は、多かれ少なかれ、優先順位に基づいて列挙されている。
- モニタリングと評価
現在、日本海地域の全ての国家による協調的モニタリングは全く行われていない。必要とされるモニタリングのタイプは「システムの状態」のモニタリングである。これは、日本海の管理における第一歩になる。システムの状態のモニタリングには、問題を発生させると考えられている物質または汚染物に関する水柱および沈殿物のモニタリング、指標生物の有無および指標生物の状態モニタリング、様々な生物の細胞内の汚染物のモニタリング、が含まれる。モニタリング活動によって集められた科学技術的知識は、法的措置を執行するために必要であり、これは、UNCLOSまたは内陸活動による海洋環境汚染保護のための国際的行動プログラムで曖昧に定義されている法的枠組みを強化するために必要なステップである。
- 沿岸部の生態系管理
日本海の生態系保全のためには、沿岸部の統合管理(ICZM)が不可欠である。ICZMの要素のひとつには、内陸活動による汚染源のコントロールがある。「内陸活動による継続的汚染は現在日本海の海洋環境にとって、唯一最大の脅威である」 。にもかかわらず、日本海の沿岸国は、日本を除き、初歩的な沿岸管理しか行っていない。日本の場合でも、沿岸部の管理は、生態学的アプローチではなく、技術的アプローチにとどまっている。(日本の沿岸の長さの合計 - 35,000キロメートル - のうち、約2分の1は、台風、津波、浸食などの自然災害からの保護を必要としている。また、3分の2の地域では何らかの措置がとられており、その意味で、日本の沿岸部は実質的に人工的に管理されている)。米国、特にカリフォルニアには、沿岸部の生態系の管理について大きな蓄積がある。日米共同政策イニシアティブは、日本海地域の沿岸部の生態系管理の促進に焦点をあてることもできるだろう。
- 緊急時対応(石油流出、核物質事故)メカニズム
石油による外洋汚染は、全ての海洋汚染の10〜20%(沿岸汚染および内陸活動による汚染が80〜90%を占める)にすぎず、さらに石油の流出は全ての外洋汚染の10〜20%(石油廃棄物の処理が80〜90%を占める)を占めるにすぎないが、石油の大量流出が潜在的に影響を与えるという危機感は、海洋環境保全、特に沿岸地域の海洋環境保全に関する一般の意見および政策行動を促す主要な動機となっている。日本海沿岸国が、今、石油の流出に対する地域対応メカニズムを整えれば、問題の発生を未然に防ぐことができる。
石油の流出は、日本海で発生しており(例えば、1997年1月のロシアのタンカー、ナホトカ号による福井沖での流出事故)、将来より頻繁に発生することが予想される。ナホトカ号による流出事故は、日本および日本海沿岸国が石油の大量流出に対応する体制を整えていない事実を証明した。したがって、石油流出事故への対応メカニズムを整える必要がある。
この必要性が当地域ですでに認識されていることは次の取り組みによって証明されている。a)天然資源に関する日米協力プログラム(UJNR)に基づく情報交換、b)日本、中国、韓国およびロシアを参加国として1997年3月に東京で開催されたUNEP地域海域セミナーでの議論、c)日米コモン・アジェンダによる石油流出の緩和についての協力体制、d)NOWPAP会議での地域的対応メカニズム創設の試み。
- 航海の安全とSLOC
日本海は、「航海の安全性に関する船舶の管理において、いかなる形であれ、モデル地域となる可能性がある。狭い海域、島々に囲まれた沿岸線、商業的海運と密接に関連した活発な漁業活動、視界の悪い不安定な気候など、船舶管理を必要とする要素の多くが揃っている地域である。」 ESENAプロジェクトに委託された文書のひとつである、海洋法および海洋政策研究所のリンダ・ポール著『朝鮮/対馬海峡の船舶交通システムの分析』では、朝鮮/対馬海峡における船舶交通分離スキーム(TSS)が提唱されている。
- 港湾廃棄物管理慣習の統一
船舶による含油廃棄物の廃棄はアジアにおける懸念事項である。例えば、1993年12月に調印された港湾管理に関する東京覚書により、アジア太平洋諸国は自国の港湾内の船舶に対して、含油廃棄物の廃棄記録および船員の適切な証明書の検査を含む、船舶の安全状態の検査を行うことが許された。しかし、この計画の実行は、機材および訓練の欠落等の障害により妨げられている。
モントレーで開催された全米海洋会議で、クリントン大統領は、政府が米国の港湾を近代化することを求める『21世紀の港湾に向けて』計画を発表したが、これには、汚染物質の管理問題も含まれていた。このプログラムの出資機関として、港湾サービス基金が新たに提案され、この基金により将来5年間にわたり8億ドルが調達される。日米共同イニシアティブが、アジアにおける港湾管理の近代化への日本の意向、米国の港湾の運営および施設の近代化の意向を反映させる可能性がある。
未検討の分野
当然のことだが、日本海の海洋環境問題のすべてが、エネルギーに関係しているわけではない。非エネルギー関連問題には、領海権をめぐる紛争(例えば、日韓の 独島/竹島問題)、漁業問題、工業地域廃棄物の海洋投棄、赤潮、日本海における経済水域に関する合意を欠いた不明確な管轄権、重金属、有機汚染物およびプラスティック廃棄物による汚染、が含まれる。
エネルギー関連海洋問題のうち、上記で積極的に議論されていない問題もある。これには、放射性廃棄物の海洋投棄および核廃棄物の輸送が含まれる。
第三の政策的関心事項へのアプローチは、次のように問題を設定できよう。日本海におけるエネルギー関連海洋問題について、日米は具体的にどのようなプログラムまたは活動をとるべきか、そしてそのようなプログラムをどのように実行するべきか?ESENAの参加者により話し合われたプログラム/活動の例は、以下のとおりである。
- 日本海イガイ観察プログラムの設置
イガイは沿岸海水の化学汚染を検査するために使用される「サンプル有機物」である。米国では、世界で最も進んだイガイ観察プログラムが行われている。このプログラムは、NOAAにより運営されており、すでに11年目を迎えている。さらに、UNESCOの国際海洋科学委員会(IOC)がUNEPおよびNOAAと共同出資している国際イガイ観察プログラムがある。アジア・イガイ観察プログラムを設置する動きもあったが、まだ下地を築いていない。日米の共同作業により、日本海における特定のイガイ観察プログラムを設置することができるだろう。
- 対馬/朝鮮海峡における船舶交通分離スキーム(TSS)の設立
石油タンカー事故の後、マラッカ海峡TSSが設定された。日本海には、そのような悲惨な事故が発生する前に、このような計画を実施する機会がある。日米の共同により、このような日韓間のスキームに関する話し合いをすすめるための協力基盤整備を推進することができるだろう。TSSの設置は、前記のリンダ・ポールの論文でも提唱されている。
- 日本海を地中海のように特別ゾーンに指定すること
環境保護上の理由により、日米は、日本海を特別ゾーンに指定し、船舶および内陸活動による汚染源について厳格な管理を行うことができるだろう。
- 日本海における石油流出緊急事態対応計画の作成
ASEANがかかる計画を作成している。東アジア・リスポンス・リミテッド(EARL)という民間機関が、アフリカ東海岸から北東アジアの海域における第一級石油流出事故に対応するためにシンガポールに設立されているが、日本海はこの機関の対象として含まれていない。
- その他の事項
その他の事項には、情報および訓練の交換、技術の共有、開放性と透明性、海洋環境に関する環境教育およびこの地域におけるこの問題に対する認識を高めること、の推進が含まれる。
以上列挙した日本海におけるエネルギー関連海洋問題日米共同政策イニシアティブへの提言のリストの意図するところは、思考を刺激することのみである。我々は、ワークショップの期間中、大小のグループにわかれて、ひとつまたはいくつかの提言を作成するための討議を行う。
結論として、共同政策イニシアティブの可能性を探る場合に留意するべき質問を以下に記述する。
- イニシアティブはエネルギー(石油)に関連しているか?
- イニシアティブは日本海に関連しているか?
- 日米が共同イニシアティブを作成することは適切か?米国の関与の鍵は何か?
- イニシアティブは、地域協力を促進するか?
- このような協力活動は、日本海地域を安全で持続可能なエネルギーへの道へ導くか?
日本海に関する国際的取り組みおよび協調活動
(1)UNCLOS
国連海洋法会議(UNCLOS)または、単に、海洋法は、海洋統治に関する国際的「憲法」であり、各国の国内海洋政策の整合性をとり、各国による協調的海洋環境保護体制を整えるための国際的枠組みとなっている。UNCLOSの歴史は、長く複雑で、1958年の最初の海洋法会議の開催にさかのぼる。1973年に第三回会議が開催され、その後9年間の交渉を経て、1982年に合意が達成された。UNCLOS文書は320条からなる厚い文書で、ほぼ全ての海洋問題を取り上げ、海洋統治に関する国際的規範を提示している。UNCLOSの主な成果のひとつは、200カイリ経済水域(EEZ)の概念を正統化する一方で、航海の自由の多くを確保し、最大領海幅として12カイリの原則を設けたことである。
環境保護については、UNCLOSの第12部 - 海洋環境の保護と保全 - が、海洋環境についてこれまで行われた交渉のなかで、最も強力で最も包括的なものとして認められている。これは少なくとも2つの理由により重要である。第一に、同第12部には、全ての国が海洋環境を保護保全する一般的義務および海洋環境をすべての汚染源から保護するための国際規制を執行する義務を負っていると記述されている。第二に、同会議の参加国に対して、国際海洋機構(IMO)による交渉などその他の海洋関係会議で定められ、一般的に認められた国際規則および基準を、たとえその会議に参加していなくても、遵守しなければならい義務を課している。日本海のような半閉鎖性の海に関してUNCLOSは、この海に面している国に対し環境保護政策を調和させるよう勧告を出している。
米国は、UNCLOSをまだ批准していない。
(2)アジェンダ21
アジェンダ21は、1992年リオ・デジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED)で採択された40章からなる行動プランである。アジェンダ21の意図は、21世紀において、持続可能な開発の概念を実行するための道しるべを提示することにある。海洋および沿岸の管理については、アジェンダ21の第17章(閉鎖性の海、半閉鎖性の海、沿岸地域を含む全ての海洋の保護、およびそれらの生物資源の保護、合理的使用および開発)で取り扱われている。第17章では、同章がUNCLOSを補足するのではなく、UNCLOSに基づき、これをさらに練ったものである、と繰り返し述べられている。しかしながら、同章中には、同章が実際にどのように条約に関係し、条約の内容を練り直したのかについて明確に述べている個所はない。同章で議論されている主な7つのプログラムは、1)沿岸地域の統合管理および持続可能な開発、2)海洋環境の保護、3)公海の生物海洋資源の持続可能な利用と保全、4)国家管轄権内の生物海洋資源の持続可能な利用と保全、5)海洋環境および気候変動の不確実性の重大性、6)国際協力および協調の強化、および7)島嶼部の持続可能な開発、である。
(3)IMO会議
国際海洋機構(IMO)は、船舶、船舶による汚染、海上保安、廃棄物の海洋投棄に関する問題に長く取り組んできた国連機関である。日本海地域の全ての国家はIMOに所属している。しかし、IMO条約への参加およびIMO条約の実施の度合いは各国によって大きく異なる。例えば、特に船舶からの汚染防止に関する13のIMO条約のうち、ロシアは10の、日本は8つの、中国は5つの、韓国は2つの、そして北朝鮮はひとつの条約と他の条約の一部に調印している。
(4)ロンドン・ダンピング会議
1972年にストックホルムで国連人間環境会議が開催されたのに続き、同年ロンドンにて、廃棄物の廃棄およびその他の事項による海洋汚染の防止に関する会議(ロンドン・ダンピング会議またはLDC)が開催された。LDCは、廃棄物の海洋廃棄について初めて国際的な基準を設けた。中国、日本およびロシアはLDCに加入しているが、韓国および朝鮮は加入していない。
(5)内陸活動による汚染からの海洋環境保護についてのモントリオール・ガイドラインならびに内陸活動による海洋環境汚染保護のための国際的行動プログラム
海洋環境の健全性と生産性に対する脅威の多くが、人間の内陸活動にあることはよく知られている。工業、地域、農業活動による廃棄物および流去水は、河川および分水嶺を通じて海洋環境に流れこむ。内陸活動による影響は未だに知られていないが、最近まで、海洋環境の悪化を防ぐために、陸海の接点をどのように効果的に利用するかという点について十分に注目されていなかった。
内陸活動による汚染に対する最初の取り組みは、1985年に採択された内陸資源による汚染に対する海洋環境の保護に関するモントリオール・ガイドラインである。
モントリオール・ガイドラインに基づき、またUNCEDの成果および機運にのっとり、1995年、UNEPはワシントンDCにおいて、内陸活動による海洋汚染源に関する会議を開催した。同会議で、内陸活動による汚染からの海洋環境保護のための国際的行動プログラム(GPA)が採択された。GPAは、内陸活動と海洋環境悪化の関係に取り組んでいる主なプログラムである。内陸活動の海洋環境に与える影響は、複雑で、さらに重要なことには、包括的の統合された形で取り組まれたことがなかったので、この点に注目したことは、大きな成果だった。GPAの主な成果は、統合管理の必要性の認識、とるべき行動を提案する枠組みの設立、企業および非政府組織(NGO)による参加および参加奨励に対する柔軟なアプローチの必要性の認識、である。これらの要因が共通して強調しているのは、海洋環境の汚染を軽減するためには、沿岸部のみならず、上流の利害関係者も含めた行動をとる必要がある、ということである。GPAの主な目標は、地域および国家政府に対して、内陸活動の海洋環境に与える影響の問題への取り組みを促進することである。
(6)海洋環境の持続可能性のためのAPEC行動プラン
アジア太平洋経済協力機構(APEC)のフォーラムの環境関係閣僚達は、1994年に地域環境戦略についての作業を開始した。議論された話題のなかには海洋汚染も含まれている。この年、2つの文書が発表された。ひとつはAPEC環境ビジョン声明であり、もうひとつは、APECにおける経済および環境の統合原則の枠組みである。この時に開始されたAPEC作業グループの海洋関係環境イニシアティブおよび目標には、赤潮/有害藻類に関する技術交換、内陸汚染物質に関する国別報告書の編纂、沿岸部管理政策および責任ある国家機関、アジェンダ21第17章の勧告を実現するためのAPEC地域の他の組織との協調およびネットワーク作り、が含まれる。
1996年のAPEC閣僚会議で、海洋環境の持続可能性は、APEC内の行動を必要とする3つの重要なテーマ(他の2つは、持続可能な都市、クリーンな生産システム)のひとつに指定された。これに続き、海洋資源保全作業グループは海洋環境の持続可能性に関する行動プランを作成した。行動プランは、美しい海洋像を現実化するために必要な目標と活動について述べている。特に鍵となる3つの目標は、1)沿岸管理の統合的アプローチ、2)海洋汚染の防止、削減および管理、3)海洋資源の持続可能な管理、である。これらの目標を達成するための3つの中心的手段は、1)研究、情報交換、技術および専門知識、2)能力の向上、トレーニングおよび教育、3)官民の参加およびパートナーシップ、である。行動プランは、APEC地域内における海洋環境の持続可能性に関する協調活動のメカニズム、定期的再検討、更新および多国間機関または国内機関との連結、などを確立した。行動プランの意図は、その他の国際的海洋環境イニシアティブを補足することである。
(7)北西太平洋行動計画(NOWPAP)
UNEPによる海洋および沿岸部の環境の保護、管理および開発のための北西太平洋地域行動計画(NOWPAP)は、1994年に北朝鮮、日本、中国、韓国およびロシアにより採択された。北西太平洋地域とは黄海および日本海を含むと定義された。今日までのNOWPAPの後援による行動はわずかで、北東アジアにおいて多国間体制をとることの難しさを証明している。モニタリング地域活動センター(RAC)をロシアに、海洋汚染の防止および対応地域センターを韓国に、海洋情報およびデータベース地域センターを中国に、それぞれ設置する議論も行われたが、これらの地域活動センターは、まだひとつも承認されていない。石油流出事故への対応についてなどの話題に関する地域セミナーも行われた(1997年3月、東京)。1998年にウラジオストックで開催された最近の会議では、NOWPAPの資金繰りをめぐって議論は煮詰まった。
(8)豆満江水域開発プログラム(TRADP)
国連開発プログラム(UNDP)のTRADPは、重要な環境問題の要素を含む地域開発活動のなかで、おそらく最も進んでいる。TRADPは、他の地域環境協定に影響を与える重要な法的政治的前例となる可能性がある。海洋関係の問題としては、工業廃棄物、下水、炭化水素排出、浸食沈殿物を取り扱っている。
(9)科学的調査
日本海地域に関する主な科学的研究プログラムは少なくとも2つ- WESTPACおよびPICES - ある。
西大西洋10ヶ国作業グループ(WESTPAC)は、多国間海洋科学研究プログラムを計画、調整する目的で、1977年にUNESCOにより設立された。WESTPACは、海洋環境汚染国際調査団(GIPME)および国際海洋委員会(IOC)の方法、標準および相互較正に関する専門家委員会(GEMSI)と協力で、相互較正演習に焦点をあてた。WESTPACの目標は、1)地域的問題を定義し、海洋科学研究プログラムを作成すること、2)IOC国際海洋科学研究プログラムを地域レベルで実施すること、3)特に発展途上国への、科学データの交換を促進すること、である。この組織は科学者のみで構成されており、目標達成への進度は遅れている。
北太平洋海洋科学機関(PICES)はWESTPACに類似した機関である。PICESの活動には、データおよび情報の交換、共通の評価方法および海洋汚染のモニタリング技術の開発、内陸活動による汚染源およびそれらの海洋環境への流入、またそれらの海洋環境に対する影響の検査、北西太平洋地域から公海への国境を超えた汚染物の移動および環境基準および標準の研究、が含まれる。
(10)東アジア海の海洋汚染の防止および管理に関するUNDP/GEFプログラム
東アジア海の海洋汚染の保全および管理に関する地域プログラムは、特に内陸活動による海洋汚染の防止および管理のための沿岸部統合管理システムを応用するための試験的プロジェクトを実施するための国際環境促進機関(GEF)およびUNDPによる共同の取り組みである。この地域プロジェクトには、ASEAN(ビルマ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、シンガポール、タイおよびベトナム)、カンボジア、中国および北朝鮮が含まれている。
(11)漁業
北東アジアにおいて現在9つの2国間漁業協定が結ばれており、日本海地域の全ての国がひとつまたは複数の協定に関与している。しかし、漁業問題について、これら全ての国が同時に関与しているフォーラムはひとつもない。
日本海に関する日米共同活動
(1)天然資源に関する日米共同プログラム(UJNR)
「沿岸環境に関する科学および技術についてのパネル」を含む長年の共同活動の共同議長をつとめているのは、NOAAおよび日本の科学技術庁(STA)である。このパネルは、日米共同沿岸環境調査およびモニタリング・プログラムの開発、科学者および技術者の交換、データおよび情報の共有、2年おきの会議の開催および共同文書の発表を行うことを目的としている。このパネルの最初の二国間回専門家会議は、1998年3月17日から19日に日本で行われた。この会議では、流出石油の軽減、湿地の埋め立て、水質モニタリングおよび標準設定、海洋生物のモニタリングおよび沿岸部の管理などの問題について、専門家が意見を交わした。
(2)日米コモン・アジェンダ
日米コモン・アジェンダは、両国が環境、公共衛生、人口および科学技術開発などの「国際的」課題に対応するための共同活動を協力して実施するために、1993年に開始した。海洋問題に関する活動には、気候変動、生物多様性、有害廃棄物、オゾン層の破壊などの国際的優先環境問題に焦点をあてた保全イニシアティブ、世界の珊瑚礁の保全を促進する国際珊瑚礁イニシアティブ、海洋問題の研究と石油流出の軽減の協力を行う国際変動研究アジア太平洋ネットワーク(APN)が含まれる。
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