プライバシー保護と情報セキュリティ
青柳武彦 国際大学GLOCOM客員教授


 住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)裁判は現在,全国各地で20件近くも行われており,下記についてはすでに判決が出ている.金沢地裁(2005/5/30 違憲),名古屋地裁(2005/5/31 合憲),福岡地裁(2006/3/14合憲),千葉地裁(2006/3/20 合憲),大阪地裁(2006/2/9 合憲),東京地裁(2006/4/7合憲),和歌山地裁(2006/4/11 合憲),神戸地裁(2006/6/6 合憲),東京地裁(2006/7/26 合憲),横浜地裁(2006/10/26 合憲),宇都宮地裁(2006/11/9 合憲),大阪高裁(2006/11/30 違憲),名古屋高裁金沢支部(2006/12/11 合憲),名古屋高裁(2007/2/1 合憲),さいたま地裁(2007/2/16 合憲) *1
 現在までのところ,地裁レベルでは金沢地裁の判決を除いてすべて合憲判決だ.高裁レベルでは,大阪高裁が違憲,名古屋高裁金沢支部と名古屋高裁が合憲と,1対2で判決が分かれている.筆者は,合憲判決を支持するものだが,合憲判決を下しているものの中でも,「プライバシー権=自己情報コントロール権」説(以下,単に「自己情報コントロール権説」と称す)を容認するか,あるいは横浜地裁判決のようにそれに近いニュアンスのものもあるので,この点については批判的である.
 この間違った説の呪縛はかなり深刻である.筆者は,全国の住基ネット裁判は早急に,この説の呪縛から脱却すべきであると考えている.まず,同説の由来や背景を検討し,その上で大阪高裁判決について考察をする.

……つづきは智場109号で

*1 : この他に名古屋高裁(2006/4/19)による住基カード訴訟の判決がある.結論は合法だった.