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Center for Global Communications,International University of Japan

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いたるところで電波ノイズ

  • 土屋大洋

  少し前、ノイズ・キャンセル機能付きのヘッドホンを買った。飛行機の機内誌でよく宣伝しているものだ。飛行機に乗っていると低周波の「ゴー」というノイズ 音がずっと続く。乗っていれば慣れてしまうのだが、この低周波のノイズ音が機内での安眠を妨げるらしく、このヘッドホンをつけていればよく眠れるという点 が売り物だ。これを持って飛行機に乗ったことがまだないので、その効果のほどは分からない。しかし、街中で歩きながら使っていると少し変なことが起きる。

  ノイズをキャンセルするという意味は、聞こえてくるノイズに対してそれを打ち消す周波数を出すことで聞こえなくしてしまうということらしい。耳をすっぽり 覆うカップ型のヘッドホンなので、それをかぶるだけである程度静かになる。カップの片側に単4乾電池を入れて、スイッチを入れるとノイズ・キャンセル機能 が動き出す。1秒遅れぐらいですうっと静かになる。しかし、ねらい撃ちするのは低周波のノイズだけなので、人の話し声などは消されないから、まったく無音 になるわけではない。

 コードをつないでMP3プレーヤーやPDAにつなげると音楽も聴けるのだが、単にかぶっ てノイズ・キャンセル機能を動かすだけだと、自分の足音がうるさくなる。普段歩いている時は、かかとの硬い靴でも履いていない限り、自分の足音が気になる ことはない。しかし、このヘッドホンをしていると、自分の体内を伝わって自分の足音が聞こえてくる。

 それより も気になるのは、携帯電話が発する電波だ。このヘッドホンの詳細な仕組みはよく分からないが、たぶん周りから聞こえてくるノイズ音をモニターしているのだ ろう。しかし、不意打ちで入ってくる電波ノイズには弱いらしい。電車の中でヘッドホンをつけていると、突然「ブーン」と強いノイズ音が聞こえてくる。電車 の中のざわついた音が消されて、なんとなく集中力が高まった気がしながら本を読んでいると、突然聞こえてくるのだ。電車が駅のホームに入った瞬間が多い。 周りを見回すと間違いなく携帯電話を見つめている人がいる。携帯電話で通話をしている時はどうやら音は聞こえないのだが、携帯電話でメールをしていると聞 こえるらしい。2メートルも離れれば聞こえないのだが、1メートルぐらいだと聞こえてしまう。隣の隣の席に座っている人ぐらいまでだ。

 こうした経験を繰り返すうちに、相当たくさんの人が電車の中や駅のホームで電波を出しまくっているのだと気づかされた。「電車の中では通話はお控 えください」というアナウンスがされているが、「メールは別」ということなのだろう。

  だからどうしろというわけではない。私のようなことをしているのはめずらしいはずだし、(医療機器に影響があるという話もあるが)少なくとも私に何か実害 があるわけではない。電波はそこら中で発信されていて、われわれは電波をひたすら浴び続けているという事実を確かめただけなのだ。

  ただ、電波の仕組みが分かりにくいのも確かだ。携帯電話が出す電波の悪影響はまだ証明されていないし、今後もされないかもしれないが、これだけ飛び交って いる様子を「体感」してしまうとなぜか複雑な気分になる。電波がそれこそ「ブンブン」飛び交うようになると、どうなるのかと考えてしまう。電波は目に見え ないから敬遠しがちだが、もっとその仕組みを分かりやすく教えてくれる教材はないものかと思う。