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RFIDを活用した「手ぶら旅行」体験記

  • 庄司昌彦
  • GLOCOM 研究員

 先日、出張で英国とスコットランドの職能団体、スコットランド議会を訪問した。このときに、GLOCOMが参加しているASTREC(次世代空港システム技術研究組合)が推進する「手ぶら旅行サービス」を利用したので、その体験をご報告したい。

 

手ぶら旅行サービスとは

 手ぶら旅行サービスは、国土交通省が掲げる空港の情報化プロジェクト「e-エアポート構想」の一環として、2004年3月から実施されている。これまでも、自宅から空港の宅配会社カウンターまで手荷物を運ぶサービスは行われていたが、航空会社とは連携していなかった。そのため、搭乗手続き(チェックイン)カウンターまでは自分で手荷物を運ばなくてはならなかった。

 だがこの「手ぶら旅行サービス」では、宅配会社と航空会社がICチップ内蔵のタグ(e-タグ)を手荷物に付け共同利用することで連携を実現した。利用者が自宅で手荷物を宅配会社に預けると、手荷物はそのまま空港で搭乗便に積み込まれ、渡航先の空港のターンテーブルに届く。利用者は成田空港で手荷物を運ぶ必要がなく、手ぶらでチェックインすることができるのである。

 今回の試行運用では、宅配会社と航空会社の間で渡航先情報等の管理や受け渡しを実際に行い、RFIDを利用した手荷物搬送というシステムや手ぶら旅行というビジネスモデルを検証し評価している。

 

申し込みは簡単

 筆者は、成田空港発ロンドンヒースロー空港行きのJAL便を利用するので、まずJALのホームページで手ぶら旅行サービスについての情報を調べた。そして宅配会社であるJALエービーシーに申込をすることが分かり、3月16日(火)13時40分に電話で申込をした。ウェブサイトからの申込ができないのが残念である。まずオペレーターに手ぶら旅行サービスを利用したい旨を述べ、片道だけの利用であることと、便名と氏名住所電話番号を伝えた。

 集荷は日付と時間帯を選ぶことができる。筆者の出発は3月21日(日)12時発だったので、選択肢の中で一番遅い時間、出発前日20日(土)の夕方5時から7時を指定した。福山通運の担当者が私の自宅までスーツケースを受け取りに来る、と言われた。料金は2100円だったが、これは自宅と空港との距離によって変動するようであった。

そして最後に、注意事項として(1)カギをかけた状態で集荷担当者に渡すこと(2)集荷担当者が渡す「控え」をチェックインカウンターで提示しクレームタグをもらうこと(3)自動チェックイン機は使えない、という3点を言われた。

 オペレーターは、このサービスがRFIDを使っていることなど、技術的なことは何も言われなかった。技術的な説明は一般利用者には不要であるので、それは当然であるが、新しい技術の試行運用に参加するのだ、と身構えていた筆者にとって申込手続きはあっけないくらいに簡単であった。

 

集荷

 20日(土)17時40分、福山通運による集荷があった。出発前日の夜、ということで荷造りをする時間は十分にとることができた。まず集荷担当者に荷物を渡し、2100円を現金で支払った。集荷担当者は、厚紙を台紙にした荷票をスーツケースに取り付け、また「手ぶら旅行」と書かれた黄色いシールを側面に貼った。この段階ではRFIDタグは使っていないようであった。集荷担当者に尋ねると、荷票はこれまでの空港宅配サービスでも使っているものであるが、シールはこのサービスであることを示すために貼るようにとの指示があったそうである。RFIDタグは輸送の過程で取り付けられるのであろう。ロンドンの空港でこのスーツケースに再開できることを願いつつ、スーツケースと送付状の控えを写真撮影した。

集荷されるスーツケース 送付状の控え(これをカウンターに持っていく)
集荷されるスーツケース
送付状の控え(これをカウンターに持っていく)

  

手ぶら旅行に出発

 21日(日)7時過ぎに家を出た。前回出張したときは、自宅から駅まで15分ほどの道のりを、スーツケースを引きずりながら歩いた。朝の住宅地でスーツケースを引きずると、ガラガラと大きな音を立ててしまうため気をつかうのだが、今回は普段出勤するときの肩掛け鞄だけだったので、まさに「手ぶら」であり非常に余裕を持って移動することができた。最寄り駅は遠回りをしないとエレベータを使うことができず、スーツケースを持って階段を上がらなくてはいけないためちょっとした難所なのだが、今回はそれもなくて助かった。

 この手ぶら旅行サービスでは、ASTRECが運営するウェブサイト(http://handsfree-travel.astrec.jp/)から、荷物が現在どこにあるのかを確認することができる。そこで筆者は、成田空港へ向かう途中、駅のホームや電車の中で携帯電話からこのサイトにアクセスし、確認を試みた。だが、事前にアクセスしたときには画面が表示されたのに、この日にはサーバがダウンしていたのか、画面にアクセスすることができなかった。そのため、手荷物が空港に届いているかどうか確認することができず、若干不安になった。

 

チェックインカウンター

 成田空港では、手ぶら旅行を申し込まなかった同行者と一緒に、チェックインカウンターに並んだ。大きな荷物を引きずっている同行者と一緒に移動するときに、このサービスのメリットを非常に感じた。この日のJALのチェックインカウンターは非常に混雑していた。自分の番になったときに、カウンターで「手ぶら旅行である」と告げると担当者は手元の端末で確認をし、荷物が既に空港に届いていることを教えてくれた。今回の試行運用では自動チェックイン機が利用できない、とのことであったが、チェックインもスマートにできるようにすると、より「手ぶら旅行」のメリットが大きくなるだろう。

 

スーツケースと再会

 ロンドンヒースロー空港へは約11時間半で到着した。ヒースロー空港のターンテーブルで待っていると、預けたスーツケースは無事に運ばれてきた。取っ手には透明のケースに入ったクレジットカードほどの大きさのタグ(eタグ)と、(写真には写っていないが)集荷時に取り付けた大きな厚紙の集荷票、そしてバーコードが印刷された通常のバゲージタグも付いていた。私の「手ぶら旅行」はこうして成功に終わった。

無事にヒースロー空港に到着 e-タグ
無事にヒースロー空港に到着
e-タグ

 

最後に

 RFIDを利用した航空手荷物タグは、サービスの高度化やテロ対策などの理由からアメリカをはじめ世界各地で導入されつつある。ASTRECでも今後は、eタグを実際の空港のBHS(Baggage Handling System)のコンベア上で読み取る検証試験や、これまで日本ではRFIDに使われてこなかったUHF帯の電波を利用する検証試験などが平成16年9月まで続く予定である。

 今回は速報的に「手ぶら旅行サービス」の利用体験記をまとめたが、運用上のさまざまな課題や評価、考察などは機会を改めてご報告したい。

 

参考: