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ソーシャル・ネットワーキングサイト「mixi」現状と今後について

  • 講師:笠原健治
  • 株式会社イー・マーキュリー代表取締役

 ―「ネット上で提供される機会がすべて利用し尽くされたと誰もが考えた時に、ルール自体を変えるような企業が登場する。そこに自分がかかわっているのは感動的だ」。元YahooのCEOでFriendsterの取締役、T. Koogleの発言です。自分も同じステージに立てたら、というのは言い過ぎでしょうか。(講演より)

 3月30日のIECP研究会は、(株)イー・マーキュリー代表取締役の笠原健治氏を講師に迎え、いま急成長を見せているソーシャル・ネットワーキングサイト(SNS)「mixi(ミクシィ)」 *1 についてお話をうかがった。

 笠原氏は東京大学経済学部在学中の1997年に、米国でのネットビジネス興隆に触発されて求人情報サイトFind Job ! *2 の運営を開始し、99年に(株)イー・マーキュリーを設立。新しいネットサービスを模索するなかで、2004年2月、日本におけるSNSの先駆けであるmixiを開始した。mixi立ち上げにあたっては、「プライバシーを公開してまで、こういったサイトを使うイメージがわかない」という社内の意見が少なからずあったが、それを説得できたのは冒頭に掲げたような思いがあったからだという。

実名のネットコミュニティ

 mixiは、完全招待制のSNSである。ただし何らかの審査があるわけではなく、mixiユーザーからの招待があれば誰でも無料で登録・利用できる(18歳以上)。強制ではないが、実名登録を推奨しており、実際に半数以上のユーザーが実名か、それに近い名前でプロフィールを登録しているという。

 招待し/された友人たちは、自分のトップページの友人(「マイミクシィ」という)一覧に表示される。この「マイミクシィ一覧」から友人のページにアクセスすることができ、そのページの「マイミクシィ一覧」から友人の友人のページへ、さらにその友人の友人へ……、というように、友人を介することによって、どんどんつながりを広げていく仕組みになっている。また、「友人検索」という機能があり、プロフィールの要素からユーザーを検索することもできる。たとえば、同じ出身地で同年齢、趣味が同じユーザーを検索し、そのページにアクセスするといったことが簡単にできてしまう。そして、こうしてアクセスしてきた遠い遠い友人や、全く知らないユーザーにも、個人プロフィールが公開される。「匿名が当たり前のネット上で、実名のコミュニティが成立するのか」という危惧をよそに、mixiは開始から1年余りで、登録ユーザー数47万人、1日のページビュー2,500万(いずれも2005年3月現在)という日本最大のSNSへと成長した。

SNSの定義と国内外の状況

 SNS(ソーシャル・ネットワーキングサイト/サービス)とは、「参加者が互いに友人を紹介しあって、新たな友人関係を広げることを目的に開設されたコミュニティ型のWebサイト」(『IT用語辞典e-Words』 *3 より)である。サイトによって多少違いがあるが、自分のプロフィールや写真を公開する機能、友人を紹介する機能、日記を書いて公開する機能などが提供されている。2003年に米国でブームになり、Friendster、LinkedIn?、Orkutが有名。日本ではmixiのほかにGREE、Echoo!、キヌガサなど、現在40サイト以上が存在する。

 笠原氏によると、これまでのコミュニティサイト(「2ちゃんねる」「YAHOO! 掲示板」など)との大きな違いは、バーチャルな世界にリアルな人間関係を持ち込んだ点にあり、「実名に近い、現実社会に近い形でのコミュニケーションという斬新さが受けて、急速に広がったのではないか」という。現在、写真を中心としたSNSや、気になるURLやニュースをクリッピングして紹介し合うサイトなどが続々と立ち上がりつつある。笠原氏は「人の関係や、人の関心・興味によってつながっていくサイトは、いま一番熱い分野」とも語った。

mixiのコンセプトと機能

 mixiのコンセプトは「身近な人から刺激を受け合い、交流を深め、新しい情報・知識も得て、日々の生活をより楽しく豊かに」で、i(人)とmix(交流する)をあわせたネーミング    とのこと。したがってmixiの機能はすべて、この身近な人とのコミュニケーションの活性化を目的として開発・提供されている。また運営側にとって、友人からの招待によって登録したユーザーが、その後も使い続けてくれなくては意味がない。そのため、モチベーションの喚起、アクティブ感の維持を意識した機能群が用意されている。

 現在、提供されている主な機能は次の通りであるが、今後もユーザーの声を重視した機能を追加していきたいということであった。

●ミクシィ日記:
自分の日記を書くスペース。公開を友人までに限定するこ とも可。
●コミュニティ:
趣味や属性など共通するテーマで語り合うコミュニティ。 自由に開設でき、誰でも参加自由と参加承認制がある。
●最新情報:
自分のトップページに最新の友人の日記、参加コミュニテ ィのトピックなどが表示される。
●足あと:
自分のページへのアクセス記録。他人のページをのぞいて も足あとが残る。
●その他:
レビュー、紹介文、メッセージ、カレンダー、お気に入り、 携帯からの閲覧・書き込みなど。

質疑応答から

 講演後の質疑応答では、会員数47万、アクティブ率 *4 70%という「ネット企業にとってよだれの出るような価値のあるサイト」(参加者の言葉)の運営体制や収益モデル、笠原氏がキーワードとしてあげた「安心感・信頼感・居心地の良い空間」を維持するポイント、またブログサービスとのすみ分けについて、さらには次々と算入してくる同業他社をどう意識しているかなど、多岐にわたる質問が出された。

 なかでも、収益源についてのやりとりは興味深いものであった。現在、mixiの収益は、バナー広告・レビューからのアフィリエイト *5 ・mixiプレミアムサービス *6 の3本で成り立っている。しかし、これだけ多くのユーザーが集まるサイトであれば、より多角的な展開が可能なはずである。一つの試みとして、昨年末、映画のプロモーション企画会社とタイアップして「『オーシャンズ12』OFFICIAL」という公式コミュニティを作成した。これについては、笠原氏自身「ユーザーにどう受け取られるのか、かなり緊張しながら」の公開であったという。というのも、これまでmixiでは、ユーザーの自発的な意思による自然発生的な関係を尊重してきたからである。「『オーシャンズ12』OFFICIAL」には、企画会社の協力によりmixiユーザー限定の特典が盛り込まれた。

 結果として、このコミュニティには最大時で2,000人以上のユーザーが参加し、出演メンバーの来日情報や映画評などで盛り上がりを見せた。とくに公式コミュニティに対する批判的な意見が聞かれることもなく、成功であったとのことである。笠原氏は、「素材がおもしろく、mixiユーザーにメリットがあるものについては今後も扱っていきたい」と語った。

 これに関連して、「個人がPR目的でコミュニティを開設するのは問題ないのか」という質問が出された。mixi利用規約では、「商業用の広告、宣伝を目的としたプロフィール内容その他コンテンツ、スパムメール、チェーンメール、MLM、その他勧誘を目的とするコンテンツをアップロードしたり掲示したり、メッセージ機能などの方法で送信(発信)する行為」は禁止されている。これについて笠原氏は、「無差別な勧誘については規制しているが、話題性や魅力があって、自然に書き込みが集まってくるようなものであれば規制する必要はないと考えている。逆に露骨な営業目的のコミュニティは、ユーザーの支持を得られずに自然淘汰されるのではないか」と述べたが、このコメントからは、mixiユーザーに対するある種の信頼感のようなものが感じられた。

 確かにmixiには、ここならプロフィールを公開しても大丈夫という、妙な安心感がある。完全招待制であること、各ユーザーが日記スペースを持っていること、「足あと」機能によって訪問者のプロフィールを互いに確認できること、きめ細かなサポートでトラブルに対処していることなど、さまざまな仕組みが功を奏しているのだろう。「安心感・信頼感・居心地の良い空間」というmixiのキーワードが、運営と開発の両方でうまく実現されているという印象を受けた。

                          (編集部)


 

*1 : 「mixi」<http://mixi.jp/>
*2 : 「Find Job !」<http://www.find-job.net/>
*3 : 『IT用語辞典e-Words』<http://e-words.jp/>
*4 : アクティブ率:各ユーザーの過去3日間のログイン率
*5 : レビューからのアフィリエイト:レビューを経由した商品やサービスの購入に対する報酬
*6 : mixiプレミアムサービス:一部の負荷の高いニーズに対して、有料で各種拡張機能を提供する オプションサービス。月額315円(税込)