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総務省におけるデジタル・コンテンツ政策及び「メディア・ソフト制作・流通の実態」の紹介

  • 講師:安東高徳
  • 総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室課長補佐

 6月17日のIECP研究会は、総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室の安東高徳氏を講師に迎え、『総務省におけるデジタル・コンテンツ政策及び「メディア・ソフト制作・流通の実態」の紹介』と題して開催された。

 ネットワークのブロードバンド化が進むなかで、デジタル・コンテンツの重要性が急速に高まり、政府、民間の取り組みも積極化している。研究会では、総務省がどのような政策によってデジタル・コンテンツ振興を図ろうとし、具体的にどういう取り組みを行っているのか、またその前提としてコンテンツの制作・流通の実態をどう把握しているのかについてお話をうかがった。

コンテンツ制作・流通の実態調査

 総務省では、「メディア・ソフトの制作および流通実態に関する調査」を定期的に実施している。メディア・ソフトとはいわゆるコンテンツのことであり、調査ではこれをテキスト系、音声系、映像系の三つに分類している。具体的には、次のようなコンテンツが含まれる*1。

  • [映像系]映画ソフト、ビデオ・ソフト、地上波テレビ番組、衛星テレビ番組、CATV番組、ゲーム・ソフト
  • [音声系]音楽ソフト(CD・テープ)、ラジオ番組
  • [テキスト系]新聞記事、コミック、雑誌ソフト、書籍ソフト、DB記事

 公表されている最新の調査結果は2002年のものであるが、これを見ると、コンテンツの市場全体は、2000年10.9兆円、2002年10.8兆円と、横ばいないしは微減という厳しい状況にある。ただし、その中で映像系ソフトだけは、1992年3.5兆円、1996年4.5兆円、2000年4.6兆円、2002年4.8兆円と健闘を見せている(図1)。

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図1:ソフト形態別市場の推移

 これをさらに、一次流通市場かマルチユース*2市場かという流通構造で見ると、一次流通市場が若干縮小傾向であるのに対して、マルチユース市場は、1992年1.1兆円、1996年1.4兆円、2002年1.6兆円、2004年1.9兆円と一貫して拡大傾向にある(図2)。

http://www.glocom.ac.jp/img/chijo/103_069.gif

図2:流通構造別市場の推移

 これらのデータから、コンテンツ市場が全体として停滞しているなかで、起爆剤として映像系ソフトのマルチユース市場が期待できると考えられる。

 また、マルチユース市場をコンテンツ別に見ると、一次流通市場で約三割を占める地上波テレビ番組がほとんど再利用されていないことが課題として挙げられる。権利許諾手続きの煩雑さや二次使用料の分配方法が未確立であること、ビジネス・モデルが見えにくいことなどがネックになっていると考えられ、これらについての適切な対応を図り、効率的な流通を実現させることが、マルチユース市場を活性化させる鍵であると言える。

 現在、コンテンツの市場展開において流通拡大が期待できるのはインターネット配信である。ネットワークの現状を見ると、ブロードバンド(DSL、CATV、無線、光ファイバー)の契約数が2004年末で1,866万件に達し、なかでも光ファイバーは2003年末との比較で200%以上という大きな伸びを示している。光ファイバーで大容量のコンテンツを視聴するというユーザー側の利用環境が整いつつあり、デジタル・コンテンツに対する潜在的な需要は高まっていると言える。

総合的なデジタル・コンテンツ政策の推進

 安東氏によると、一般にコンテンツ政策では、[制作]→[保存]→[流通]の一連のサイクルを各段階で満遍なく支援していくことで、コンテンツの利用環境が整い、市場が育っていくという。すなわち、良質なコンテンツを制作し、それを確実に保存し、ネットワークを通じて流通させていくことによって得られた収益が、次のコンテンツ制作に回っていくようになるのである(図3)。

 そして、コンテンツ流通促進室では、[制作][保存][流通]のそれぞれにおいて、次のような施策を用意しているという。

[制作]コンテンツ制作、人材育成に対する支援

  • 次世代型映像コンテンツ制作・流通支援技術の研究開発
  • 情報通信人材研修事業支援制度 [保存]デジタル・アーカイブ化とそのネットワーク利活用の推進
  • 文化遺産オンライン構想の推進(文化庁と連携)
  • Web情報のアーカイブ化推進(国立国会図書館と連携) [流通]権利処理の円滑化、安全な利用環境整備の推進
  • 著作権クリアランス実証実験の推進
  • 高度コンテンツ流通技術の実証実験の推進
  • ユビキタス・ネットワーク時代に向けたマルチコンテンツ利用技術の開発・実証
  • コンテンツアドバイスマーク(仮称)制度の創設推進

総務省における具体的な取り組み

図3:総合的なデジタル・コンテンツ政策の推進

図3:総合的なデジタル・コンテンツ政策の推進

 これらの施策のうち、総務省で具体的な取り組みが開始あるいは予定されているものとして、以下について安東氏から説明があった。(1)と(2)は前年度までに開発・実証が進んでいるもの、(3)と(4)は現在推進中のもの、(5)と(6)は今年度から開始しているものである。

  • (1)ブロードバンド・コンテンツ制作・流通の促進 「著作権クリアランスの仕組みの開発・実証」および「ブロードバンド・コンテンツ流通技術の開発・実証」を実施。
  • (2)アーカイブ・コンテンツのネットワーク利活用の促進 博物館・美術館等においてデジタル保存されたコンテンツについて、ネットワーク流通を進めるとともに、社会・経済・文化・教育等の多様な活動への活用を推進するうえでの課題を解決するための取り組みを推進。
  • (3)Web情報のアーカイブ化の促進 デジタル時代の知識・文化が結集する貴重な資産であるものの、日々、消去が発生するWeb情報について、アーカイブ化や利活用を促進するための技術・仕組みの構築・実証を実施。
  • (4)コンテンツアドバイスマーク(仮称)制度の創設 インターネット上における違法・有害な情報の増大に対処し、利用者がサイトの安全性を容易に判断できる環境を整えるため、サイト開設者が自らのサイトの安全性を示す「コンテンツアドバイスマーク」(仮称)制度の創設を推進。
  • (5)ユビキタス・ネットワーク時代に向けたマルチコンテンツ利用技術の開発・実証 ユビキタス・ネットワーク時代に対応し、コンテンツの流通をさらに加速化するため、官民協力体制による実証実験を通じてパーソナル通信ネットワーク上のマルチコンテンツ利用技術の確立などを図り、コンテンツの多様な流通形態・利活用方法に関する環境整備を行う。
  • (6)次世代型映像コンテンツ制作・流通支援技術の研究開発 臨場感あふれる超高精細映像(次世代型映像コンテンツ、具体的には八百万画素級のデジタル・シネマ)について、ネットワークを活用してセキュアかつ効率的・効果的に編集・配信等を行う技術の研究開発を推進し、広く利用者が豊かな映像環境を享受できる社会の実現に資する。

 安東氏からはこれらの施策について詳しい説明があったが、ここでは誌面の都合から、「(1)ブロードバンド・コンテンツ制作・流通の促進」のみ概要を簡単に紹介する。これについては、2002~04年度の3カ年にわたって「著作権クリアランスの仕組みの開発・実証」および「ブロードバンド・コンテンツ流通技術の開発・実証」が行われた。

  • ◇著作権クリアランスの仕組みの開発・実証(権利クリアランス実証実験) 放送番組などでは制作のさまざまな段階で多くの関係者が携わるため、二次利用の際の許諾手続きがかなり煩雑となり、そのコストが収益に見合わないという実状がある。これまで二次利用に係る権利許諾手続きは、コンテンツ・ホルダーと権利者の間で、個別に電話やFAXでやりとりしながら行われてきたが、これがオンライン・システムによって円滑に処理できるようになれば、コンテンツの流通促進が期待できる。そのためには、権利者団体、コンテンツ・ホルダー、配信事業者などの関係者間で、コンテンツに関連する属性情報等を円滑にやり取りする必要がある。そこで、関係者それぞれが保有するデータにおけるメタデータ*3の互換性を確保するために、汎用メタデータ体系J/Meta 3.0*4が策定された。 また、コンテンツのネットワーク流通を考慮した権利許諾手続きフローについて検討が行われ、このフローに基づいて、権利者団体保有の権利者情報データベースとコンテンツ・ホルダー保有のコンテンツ情報データベースとを連携させた実証実験システムが構築された。このシステム上で、利用申請・許諾、利用契約、配信実績報告、利用実績報告、収益配分という一連のコンテンツ流通工程を模した実験が行われ、汎用メタデータ体系を利用したメタデータ交換の有効性が検証された。
  • ◇ブロードバンド・コンテンツ流通技術の開発・実証(高度コンテンツ流通実験) 放送と通信の連携の一環として、放送番組に通信回線からの情報を連携させることにより付加価値を付けて配信すれば、多様かつ高度なサービスを提供できる。これを実現するための高度コンテンツ流通技術の開発・実証実験が、放送事業者、通信事業者、メーカー等関係者との協力体制のもとで実施された。2004年度には、3カ年の集大成として、要素技術を組み合わせてサービス・モデル例を可視化したところであり、これを被験者が視聴してサービスの受容性についての確認も行われた。

 2005年度以降は、これら実証実験の成果を踏まえ、民間での利活用促進に向けた取り組みを実施するということであった。 2005年6月17日開催(編集部)