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ブログが変えるネット・コミュニケーション
- 講師: 関 信浩
- シックス・アパート株式会社代表取締役
ブログという言葉を初めて聞いたのは、二年ぐらい前だったと思う。米国でウェブログ(ブログ)が流行っていて、伊藤穰一氏がそれを使って論文を書いたという話だった。日本でも、(株)はてなの「はてなダイアリー」やニフティ(株)の「ココログ」などが話題になり始めていて、何かネットの言論空間が大きく変わろうとしている、といった気配があったように思う。
それから二年たって、ブログはすっかりネット上のメディアとしての地位を固めてしまった。イラク日本人人質事件、ライブドアによるニッポン放送買収問題、2005年衆議院議員選挙など、事件やイベントがあるたびに、ブログを使った言論がネットにあふれた。ブロガーと呼ばれる一部のオピニオン・リーダーだけでなく、ごく一般的なネット・ユーザーが日記や備忘録としてブログを利用していることも多い。総務省の『ブログ・SNSの現状分析及び将来予測』
2005年12月2日のIECP研究会では、シックス・アパート(株)代表取締役の関信浩氏を講師に招き、ブログが普及した背景と現状、今後のブログ利用動向などについてお話をうかがった。シックス・アパート(株)は米Six Apart Ltd.の日本法人で、日本でのブログ・ブームの火付け役となったブログ・ソフト「Movable Type」およびブログ・サービス「TypePad」の日本語版を提供している。
開設・更新が簡単なブログ
「ブログって何?」と聞くと、ネット上のツールだと言う人もいるし、カルチャーだと答える人もいる。どうも「ブログ」は、技術であったり、ウェブ・サービスであったり、ウェブのページを毎日更新する行為であったりと、いろいろな意味合いを含んで使われている言葉らしい。
関氏によると、ブログについて明示的な定義があるわけではないが、最大の特徴として「ホーム・ページを簡単に開設・更新できる」ということが挙げられるという。ブログを使うと、文章を打ち込むだけで、デザイン性の高いホーム・ページを手軽に開設・更新することができる。この「開設・更新が簡単」という点は、ブログが急速に広まった大きな理由だと言えるだろう。実際に「意気込んでホーム・ページを開設したものの、更新が面倒でついつい放置している」という話をよく聞く。その点、ブログなら、サイトにアクセスして思い付いたことを書き込むだけで更新ができる。そこに誰かからコメントが付けば、その場でコミュニケーションが始まるし、さらにブログを更新しようという動機付けにもなる。
情報の流れを双方向にするトラックバック
トラックバックの機能を備えていることも、ブログの特徴の一つだと考えられている。しかし関氏によると、これはシックス・アパート社の「MovableType」で初めて導入された機能なのだそうである。ここで仕様をオープンにしたことで、トラックバックという仕組みがブログの世界全体に広まっていき、いまや日本ではブログにとって欠かせない機能とみなされるようになった。
トラックバックとは、ブログ同士が自動でリンクを張り合う仕組みである。自分のブログで誰かのブログの記事を参照する(リンクを張る)ことを知らせるために参照元に通知を送ると、通知を受け取ったブログは、トラックバック一覧として参照先URLなどの情報を自動的に表示する。
かつてリンクは、自分のサイトからしか張ることができなかった。相手サイトから自分のサイトへのリンクを張ってもらおうとすると、相手にその旨を知らせて→同意してもらい→手動で張ってもらう、という手続きが必要だった。トラックバックは、この手続きを強制・自動化したとも言える。相手ブログのトラックバック機能がオンになっていれば、相手の記事に自分の記事へのリンクを張ることができ、張られた相手も、誰がどういう形で自分の記事を参照したのかをすぐに知ることができる。
関氏によると、これはネット上の情報の流れを変える可能性を持っている。リンクは、情報の豊富なサイト、多くの人が興味を持つサイトに向かって張られることが多いため、どうしても、大手サイトや有名サイトに集中しがちである。しかしトラックバックは、相手がどんなに超大物ブログであっても、記事が関連していれば自分のブログとの間に相互リンクを張ることができる。どんな小さなブログに向けても情報の道をつくることができるわけで、情報の流れをより遍在化させるとも言える。
ブログはどのように利用されているのか
米国でブログが流行したきっかけは、9.11同時多発テロであった。マス・メディアが一斉に愛国的な報道に傾くなかで、知りたい情報がなかなか報道されないと考えたフリーランスのジャーナリストたちが、ブログを通じて情報や意見を公開するようになり、盛り上がりを見せたということである。一方、日本にはもともと日記ホーム・ページという文化があり、ブログはその文化も引き継ぐ形で広まっていく。すなわち、ジャーナリスティックな情報発信や意見表明だけでなく、日記や日々の近況報告のためのツールとしても、ブログは利用されるようになったのである。また、ブログのコミュニティー的な側面を、少人数のコラボレーションに活用することも行われている。
関氏は、ブログの利用形態として次の四つを挙げた。
- ジャーナリズム型:世の中に自分の意見を問う
- 日記型:個人の備忘録
- コラボレーション型:小グループでの意見共有
- メール代用型:親しい人や家族への近況報告
企業のブログ利用動向
更新が簡単で双方向コミュニケーションが可能というブログの特徴を、ビジネスに活用したいという企業も多い。『インターネット白書2005』
関氏によると、最近注目されているブログのビジネス利用として、次のような事例を挙げることができる。
- 社長ブログ:社長自らがプライバシーや企業姿勢をブログに綴ることで、企業の広報活動に利用する。
- マーケティング:商品のマーケティングやプロモーションにブログを利用する。
- eコマース:eコマース・サイトで商品のセールス・プロモーションにブログを利用する。
- CRM(Customer Relationship Management):既顧客との関係維持にブログを利用する。芸能人ブログで、ファンとのコミュニケーションに使って成功している例は、一種のCRMの成功例である。
- 社内ブログ:社内ネット(イントラネット)にブログを置いて、社員のコミュニケーションや情報共有に利用する。
また、個人のブログと連動して、ネットの口コミ効果をマーケティングに生かす仕組みについても検討がされているそうである。
さらに関氏は、イントラネットの社内ブログについて、「個人ブログの延長」という段階から進んで、「企業のナレッジの入力ツール」ととらえて活用を始めている企業の例を紹介した