|
起 案 者 公文俊平、齊藤忠夫、南部鶴彦、島田範正、國領二郎、山内康英
署 名 者
金森久雄、伊藤憲一ほか日本国際フォーラム政策委員80名
|
日本電気株式会社、日本電信電話株式会社、株式会社CSK
協 力
情報通信政策研究会
1998年8月
財団法人 日本国際フォーラム
(Adobe Acrobat Readerプラグインが必要です。)
|
| 趣 旨 | |
| 要 約 | |
| 1. | [新時代の世界的情報基盤となるIPネットワークの構築を推進する] |
| 2. | [情報社会への移行に向けた戦略課題としてCAN構築を推進する] |
| 3. | [情報化推進の本質であるビジネス・プロセスの革新に取り組む] |
| 4. | [情報化の前提となるオープン・システムを構築する] |
| 5. | [セキュリティに配慮したネットワークを構築する] |
| 6. | [2000年問題に代表される情報システムの不安定要因を解決し、社会的な責任を重要視したシステムの運用を行う] |
| 7. | [情報システム専門家の育成を推進する] |
| 8. | [すべての学校に光ファイバーを、すべての教室にインターネットを接続する道を開く] |
| 9. | [インターネットを活用した新たな教育の理念の確立とそれを実現する社会的諸整備に早急に取り組む] |
| 10. | [日本の法体系を情報化に適合するものに再編する] |
| 11. | [事実上のGIIであるインターネット上での電子商取引を促進する] |
| 12. | [インターネットのガバナンス問題に日本政府として早急に取り組む] |
| 13. | [垣根撤廃を進め、利用者に世界最高水準のサービスを安価に提供する] |
| 14. | [競争原理を用いつつ、日本の全住民に良質な情報基盤へのアクセスを確保する] |
| 15. | [活発な価値創造が行われるサイバースペース構築に向けて電気通信料金改革を行う] |
| 16. | [電気通信事業の国際化のために相互接続ルールのグローバル・スタンダードを持つ] |
| 本 文 | |
| 1. | [新時代の世界的情報基盤となるIPネットワークの構築を推進する] |
| 2. | [情報社会への移行に向けた戦略課題としてCAN構築を推進する] |
| 3. | [情報化推進の本質であるビジネス・プロセスの革新に取り組む] |
| 4. | [情報化の前提となるオープン・システムを構築する] |
| 5. | [セキュリティに配慮したネットワークを構築する] |
| 6. | [2000年問題に代表される情報システムの不安定要因を解決し、社会的な責任を重要視したシステムの運用を行う] |
| 7. | [情報システム専門家の育成を推進する] |
| 8. | [すべての学校に光ファイバーを、すべての教室にインターネットを接続する道を開く] |
| 9. | [インターネットを活用した新たな教育の理念の確立とそれを実現する社会的諸整備に早急に取り組む] |
| 10. | [日本の法体系を情報化に適合するものに再編する] |
| 11. | [事実上のGIIであるインターネット上での電子商取引を促進する] |
| 12. | [インターネットのガバナンス問題に日本政府として早急に取り組む] |
| 13. | [垣根撤廃を進め、利用者に世界最高水準のサービスを安価に提供する] |
| 14. | [競争原理を用いつつ、日本の全住民に良質な情報基盤へのアクセスを確保する] |
| 15. | [活発な価値創造が行われるサイバースペース構築に向けて電気通信料金改革を行う] |
| 16. | [電気通信事業の国際化のために相互接続ルールのグローバル・スタンダードを持つ] |
|
データ通信の応用の分野で、これからの展開がとりわけ期待されているのは電子 商取引であって、ヨーロッパでも今後3年のうちに、その規模は50倍、年間644億ド ルに達すると予測されている。米国商務省が、1998年4月に発表したレポート『ディ ジタル経済の出現』は、まさに近年の情報化を先頭に立って推進してきた米国の勝利 宣言というに等しい内容のものであった。
それにひきかえ、制度的には米国以上に自由化・開放化が進んでいるといわれる 日本では、ここにきて情報化の頭打ち傾向が顕著になっている。パソコンやインター ネットの普及の伸びに、急激なブレーキがかかっているのである。日本の現状は、米 国の「好循環」に対して「悪循環」ともいうべきものである。たとえば、情報化投資 を例にとってみれば、不況が深刻なために、新規の情報化投資を控えざるを得ない。 ところが、深刻な不況から脱出するために内需喚起策をとっても、情報技術の導入が 遅れているために、既存の商環境や設備に国際競争力がなく、生産の順調な回復・拡 大に結びつかない。あるいは、通信幹線の広帯域化をしようにも、現場での需要が期 待できない以上、なかなかそれに踏み切れない。他方、現場での需要を喚起すべくイ ンターネットへの高速アクセス網を導入しても、幹線の帯域が不足している現状では活用のしようがない。
米国や欧州に比べて、なぜ日本だけがこのように遅れてしまったのか、その理由 はさまざまあろう。しかし、明らかなことは、このような現状を放置しておくわけに は、もはやいかないということである。それは日本自身にとって、はかりしれない損 失であるばかりか、世界経済全体の発展の、とりわけ現下のアジア経済の失速からの 回復の、足を引っ張るという意味でも、黙視しがたいことである。
情報化が加速する中で、これまで国家情報基盤(NII)とか世界情報基盤(GII) といった言葉で抽象的に呼ばれてきた新時代の情報通信基盤の具体的な内容が、次第 に明らかになってきた。今やそれは、インターネット・プロトコル(IP;インターネ ットの通信手段の総称)を用いるネットワーク、すなわち「 IPネットワーク」に他 ならない、という合意が定着してきた。
意見や政策が分かれているのは、たとえば、ネットワークの構造を、ユーザのコ ントロールがしやすい分散型にするのがよいか、それとも、ネットワーク側で集中的 に管理するのがよいか、といった問題である。また、通信幹線については、ここ当分 は、既存の電話のネットワークにも配慮した方式による、多様な「サービスの質(Qo S)」の実現をめざすのか、それとも最初から新しい光ファイバー・ネットワークを 構築するのか、等といった問題である。あるいは、幹線へのアクセス網でいえば、い きなり住宅やオフィスにまで光ファイバーを引き込む「ファイバー・トゥー・ザ・ホ ーム(FTTH)」路線を推進するのか、それとも既存の電話線等を活用した高速アクセ ス技術の商用展開をまずはかるのか、といった問題である。
応用面について見れば、このIPネットワークを、当面は主としてはビジネス(企 業内や企業間の通信や取引、政府機関、学校、病院等での利用)、もしくはコミュニ ティ(ボランティア活動、趣味、ビジネス、政治活動等)での利用に向けるのか、そ れとも消費者大衆を対象とする「情報家電」や多様な「デジタル・コンテンツ」の提 供を重視するのか、について異なる予想がある。もちろんこの両者は、現在でも必ず しも相互背反的ではないし、将来は当然相互補完的に並立するに違いない。しかし当 面は、そのどちらを重視するかによって、ネットワークの構造を、情報提供者と消費 者の対等な高速双方向通信を可能にするのものにするのか、「上り(消費者から提供 者へ)」よりは「下り(提供者から消費者へ)」を格段に大きくとったのものにする のか、といった違いが生じる。現場のLANについても、高速性を重視したLANの開発に 重点をおくのか、それとも家庭での多種多様な情報機器を一括管理できる「ホームLA N」型のネットワークの開発を進めるのか、といった方向性の違いが考えられる。
このような多くの予想の「分岐」と、そもそも予想自体が不可能なほど急激に進 む技術革新のために、情報通信分野の将来は、一見混沌として見える。現状を「津波 」の到来にたとえる観察者もいるほどである。「津波」が去った後の情報通信業界の 様相は一変していることは確かだが、どのように変化しているかは予想がつかないと いうわけである。
しかしこの種の不透明性を嘆いてもはじまらない。情報産業革命や情報社会革命 は始まったばかりであり、現在必要なのは、手元にある技術や資源を最大限に利用す ることである。具体的な政策として、われわれは、以下のような方針の採用を提案し たい。
(1) 情報革命のための社会的インフラの構築を促進すること。具体的には、「提言 2」で述べる「コミュニティ・エリア・ネットワーク(CAN)活動」のような形で、 自発的・協働的な取り組みを日本の各地でいっせいに開始する。
(2) 民間各部門が、情報化の前提となるビジネス・プロセスの革新に取り組むとと もに、情報システム専門家の育成に努め、オープンでしかも高いセキュリティをもっ たネットワークの構築を推進する。
(3) 学校教育や生涯学習を通じて、情報化の鍵となる要因や、情報革命の成果とし ての技術、製品・サービス、情報・知識等について一般の理解を深める。また、コン ピュータ・ネットワークの利用について、国民一人一人の技量を向上させる。そのよ うな具体的な取り組みを通じて、情報基盤の構築と、情報技術に関する国民の理解や 利用との間に、社会的な好循環状況を作り出す。
(4) 情報革命の進展に際して、社会・国家間の、また社会・国家内の、ギャップの 過度の拡大を抑制する。このために教育、コミュニティでの情報利用普及の取り組み を促進する。コミュニティ・レベルでの活動については、NGO−NPOの活動を社会的に 有用な形で推進するとともに、グローバルなオンライン商業活動が、国家の安全保障 や社会的慣習と無用な摩擦や対立を起こさないための、行動のルールあるいは権利義 務関係を明確にする。
このような政策を、世界の各国、各地域、各組織が、一方ではグローバルに協調 しつつ、他方では互いに競争しつつ推進していくべきだとの観点に立って、われわれ は以下の16項目のような具体的提言を行うものである。
なお、情報化については、社会の各領域が、対応すべき課題をそれぞれに持って いる、との考えから、本提言の各項目は、おおむね以下のような区分になっている。
(1) 社会全体の情報化への指針:提言1、2
(2) 民間部門・情報技術ユーザの課題:提言3、4、5、6、7
(3) 教育分野の課題:提言8、9
(4) 法体系等、政府全般の課題:提言10、11、12
(5) 情報通信産業と電気通信行政の課題:提言13、14、15、16
1998年8月24日
タスクフォース主査
| タスクフォース・メンバー | ||||
| 國領 二郎 | 島田 範正 | 山内 康英 | 齊藤 忠夫 | 南部 鶴彦 |
政策委員長 | ||||
| 政策副委員長 | ||||
政策委員 | ||||
| 愛知 和男 | 木村 明生 | 野田 宣雄 | ||
| 生田 豊朗 | 草柳 大蔵 | 袴田 茂樹 | ||
| 石井公一郎 | 黒田 眞 | 畑 恵 | ||
| 伊藤 英成 | 小島 朋之 | 服部 靖夫 | ||
| 井上 秀一 | 近衞 忠 | 花井 等 | ||
| 猪口 邦子 | 近藤 剛 | 平泉 渉 | ||
| 猪口 孝 | 阪中 友久 | 弘中 喜捷 | ||
| 今井 敬 | 坂本 正弘 | 藤村 正哉 | ||
| 今川 瑛一 | 佐藤誠三郎 | 船田 元 | ||
| 岩田 一政 | 澤 英武 | 古川 昌彦 | ||
| 内田 忠男 | 志方 俊之 | 前田 耕一 | ||
| 鵜野 公郎 | 島田 晴雄 | 前田 忠男 | ||
| 大蔵雄之助 | 末次 一郎 | 真野 輝彦 | ||
| 太田 宏次 | 鈴木 棟一 | 三好 正也 | ||
| 大宅 映子 | 鈴木 淑夫 | 森井 敏晴 | ||
| 岡 照 | 関本 忠弘 | 谷野 剛 | ||
| 小笠原敏晶 | 瀬崎 克己 | 矢吹 晋 | ||
| 小此木政夫 | 高橋 一生 | 山内 昌之 | ||
| 小山内高行 | 高原須美子 | 山口 達男 | ||
| 柿澤 弘治 | 田久保忠衛 | 山澤 逸平 | ||
| 柿沼 靖紀 | 田中 靖政 | 山中 子 | ||
| 加藤 博久 | 田原総一朗 | 屋山 太郎 | ||
| 門田 敏量 | 中内 | 吉田 春樹 | ||
| 金子 熊夫 | 那須 翔 | 吉田 康彦 | ||
| 蒲島 郁夫 | 新堀 聰 | 渡邉 昭夫 | ||
| 上坂 冬子 | 西尾 哲 | 渡辺 利夫 | ||
| 神谷 不二 | 西尾 幹二 |
|
| 1.[新時代の世界的情報基盤となるIPネットワークの構築を推進する] |
1980年代から、情報社会の将来ビジョンについてさまざまな構想が打ち出されてき
た。その中で、当初は学術利用を中心とするコンピュータ・ネットワークであったイ
ンターネットが、商業化を契機として急速に拡大し、現時点では世界的な情報基盤と
しての体裁を整えた。日本は、インターネット・プロトコル(IP;インターネットの
通信手段)に立脚したIPネットワークの構築と利用の面で米・欧に決定的に立ち遅れ
ている。この面でのギャップの拡大は緊急に解消しなければならない。日本でも、IP
ネットワークの本格的な構築の推進が急務である。
|
| 2.[情報社会への移行に向けた戦略課題としてCAN構築を推進する] |
情報通信関連の社会資本の整備は、低迷の続く日本の経済や産業を活性化させるた
めに不可欠である。しかしながら、従来型の発想による「情報土木投資」的な対策で
は、日本の経済や社会に新しい方向を示すことができない。われわれは、地域の全員
が加入できるようなIP市内網をインフラとして持ち、また地域の全員が、容易に利用
できるような各種のアプリケーションを備え、その基盤の上に、地域の全員が各種の
活動──コミュニティ運営、地域のビジネスの展開、多様なNPO活動等──に従事し
うるような「コミュニティ・エリア・ネットワーク(CAN)」の全国的な構築と運用
こそが、わが国の情報社会への移行にとって、最も重要な当面の戦略課題とされるべ
きことを提案したい。
|
| 3.[情報化推進の本質であるビジネス・プロセスの革新に取り組む] | 情報技術を活用した生産性の向上について、わが国では工場生産性、定形的業務の 生産性で大きな成果を挙げてきた。しかし、産業の国際競争力のためには、より広く ホワイトカラーの不定型業務において情報技術の活用による生産性向上が求められて いる。このためには、従来のビジネス・プロセスそのものに対する見直しが必要であ り、企業の業務全体について広く見渡した分析と透明性の高い業務処理を、情報技術 に対する本質的な理解の上に立って実施しなければならない。産業界においても行政 においても、その機構改革は情報化の上に立って初めて意味を持つものである。いわ ゆるリストラも、行政機構改革・省庁再編成も、事務機構における情報の流れの分析 と情報技術を基礎において同時的に考えなければ、国際競争力の改善の意味を失う。 |
| 4.[情報化の前提となるオープン・システムを構築する] | わが国の情報システムは、それぞれの企業、官庁においてそれぞれに構築されてい るが、それぞれの業務に特化した個別開発が行われ、組織間のデータの共通性、ネッ トワークの相互接続性に困難を生じている。それぞれの組織の中核に関わるシステム については独自システムを構築することは当然であるが、それ以外のものについて独 自性をいたずらに主張することは、ネットワーク化による生産性の向上を阻害するの みならず、情報処理コストを増大させる要因になっている。それぞれの組織は、パッ ケージ・ソフトウェアの活用を積極的に進め、ネットワーク化に対応したオープン・ システムを構築すべきである。 |
| 5.[セキュリティに配慮したネットワークを構築する] | システムの重要性の増大とともに、システムのセキュリティを高い状態に保つこと がますます重要になっている。同時に、ネットワーク化の進行によってセキュリティ 上の問題が生ずる可能性が高まっている。セキュリティを保つためには、情報専門知 識および組織の業務についての知識を持った要員を配置する必要がある。こうした対 策を含め、その前提でもあるところの組織の中での重要性の認識を高めることはもち ろんである。 |
| 6.[2000年問題に代表される情報システムの不安定要因を解決し、社会的な責任 を重要視したシステムの運用を行う] | 各企業の運用する情報システムは現在では社会におけるすべての活動の神経系統と なっている。これらのシステムの安定的な運用が社会の安定性に不可欠である。同時 にこれらのシステムは各種の外部的、内部的な脅威にさらされており、それらの要因 によって安定性が損なわれれば、より広い社会活動に混乱を与える可能性がある。20 00年問題はその代表的なものであり、一部のシステムでもそれによって不安定になれ ば、他に与える影響は大きい。日本では特に各企業、官庁において、2000年問題に対 する関心が低いが、これによって問題が生ずれば、そのインパクトはその組織に留ま らず大きな社会的問題に発展することを認識した適切な対応が求められる。 |
| 7.[情報システム専門家の育成を推進する] | わが国の組織では、間接要員の削減が重視され、充分な業務評価なしに要員数が減 少する傾向がある。組織全体における情報技術の軽視もあり、わが国の企業、官庁、 大学における情報システムの運用に関わる専門家の数は著しく不足し、OA化にあたっ ても、非専門の業務の担当者がシステムを扱うために、生産性の阻害要因になってい る。わが国で今後情報化を促進していくためには、各組織においては情報専門家の数 を増大する必要があり、またそのために専門家の育成を進める必要がある。 |
| 8.[すべての学校に光ファイバーを、すべての教室にインターネットを接続する 道を開く] | 郵政省が総合経済対策の一環として提唱した「すべての学校に光ファイバー」をと いう注目すべき計画は、国民的な関心を集めたにもかかわらず、永田町、霞ヶ関レベ ルでのインターネットへの理解がいまだ低く、参議院選挙を前にした政治的思惑等も 絡んでか、葬り去られてしまった。まことに残念というしかない。なぜなら、米国は クリントン・ゴアの主導の下、2000年までにすべての学校がインターネットに繋がる よう一体となって取り組んでおり、その結果生じた巨大な日米格差を一挙に埋める千 載一遇のチャンスを逸したことになるからである。経済同様、教育新インフラの日米 格差は開くばかりである。あらためて、すべての学校への光ファイバー接続計画の重 要性を認識し、すべての教室からのインターネット接続の道を開くべきである。 |
| 9.[インターネットを活用した新たな教育の理念の確立とそれを実現する社会的 諸整備に早急に取り組む] | 日本の「インターネット教育」という言葉はあいまいであり、インパクトが弱い。 問題はインターネットを教育のツールとしていかにうまく取り入れるかが問われてい るはずである。それによって教育の質が大きく変化する実例を米国に見ることができ る。教師が理解していることもいないこともただカリキュラムに添って生徒に伝える 「放送型」教育はもはや否定されつつあり、生徒は先生から教わるのではなく、自分 の学習目標に向けての手助けを受けるだけで、自分で学習する。この方向性は、来る べき情報革命時代に生きる子供達に身につけさせるべき基本である。この実現に人的 、財政的バックアップが必要なことは論をまたず、公的資金だけで不十分なら、学校 が企業からの直接寄付を求められる仕組みも考えるべきである。 |
| 10.[日本の法体系を情報化に適合するものに再編する] | 近年の情報革命は、新しい産業革命としての側面と、情報社会革命の側面を併せ持 っている。近年、国家や企業とは性格を異にするNGO−NPOが多数出現して活発な活動 を展開していることや、これまでの国民や、市民に対して「ネティズン」等と呼ばれ る、第三のアイデンティティ軸を併せ持った新しいタイプの個人が目覚しく台頭して いること等は、近代化の新しい局面としての情報社会の開始を示す社会現象である。 こうした中で、今日の情報革命が、人類社会の発展に、さらによりよく貢献しうるた めには、適切な法体系の整備が不可欠である。これから本格化する近代化の第三局面 では、「共権」とでも呼ぶことができる「情報権」の観念に立脚した、NGO−NPOとネ ティズンの間の権利義務関係を律する「共法(英語ではサイバーロー等と呼ばれてい る)」とでも呼ぶべき新たな法体系が、慣習法として、また実定法として、整備され る必要がある。同時に、情報権と財産権の間の関係、および情報権と主権の間の関係 を調整する試みも必要になってくる。 |
| 11.[事実上のGIIであるインターネット上での電子商取引を促進する] | われわれは、事実上の世界情報基盤(GII)の建設がインターネットとして、民間 主導で具体化していることを認識し、さらにこの動きを積極的に利用すべきだと考え る。現時点でのGIIをめぐる議論の中心は、電子商取引(EC)である。グローバルな 商業活動を円滑に行うルールとして、ネットワーク上での課税、認証とセキュリティ 、個人データの保護といった問題が国際社会で協議の対象になっている。サイバース ペースでの経済活動が、一般にも拡大し始めた現段階では、国や地方自治体はオンラ イン上の商取引について、追加的な課税を行うべきではない。また、インターネット の本格的な利用には、暗号技術が不可欠であるが、法執行機関の捜査を妨げる恐れが ある暗号技術の不正利用対策に留意すべきである。実効性の観点から、「鍵回復シス テム」の利用を日本国内で一律に義務づけることは望ましくない。いずれの問題でも 、情報ネットワークの利用が、日常生活の領域に拡大し始めた現段階では、可能な限 り自由で公正な経済活動を促進する環境が望ましいとの原則を維持すべきである。 |
| 12.[インターネットのガバナンス問題に日本政府として早急に取り組む] | インターネットの大規模な商業利用が本格化するにつれて、運営方法上の課題につ いて見直しが行われている。また、社会活動が、コンピュータ・ネットワークに依存 する度合いが高まるにつれて、いくつかの安全保障上の問題が懸念されている。この ような問題点が、ただちにインターネットの全般的機能不全を引き起こすとは考えら れないが、関係者や対象の範囲の大きさ、利害の対立等を考えれば、これらの問題に 短期的な解決策を見出すことは困難であろう。インターネットを一種の社会システム として見た場合、この中央政府を持たないシステムを、どのようにして維持・発展さ せていくのか、という一種のグローバルなガバナンス問題が生じている。特に重要な 社会インフラの防護については、各国が独自に取り組む必要があり、この点について 、過去の経緯や法規を止揚した観点からも、日本政府が早急に検討を開始し、国内で オープンな議論を主導することを提案する。 |
| 13.[垣根撤廃を進め、利用者に世界最高水準のサービスを安価に提供する] | 1996年以降の電気通信分野の規制緩和が電気通信業界に存在した垣根の多くを取り 除いたことは、前向きに評価されるべきである。垣根撤廃の意義は、日本を世界中の 通信事業者が競って良いサービスを提供する市場たらしめ、企業や消費者が世界で最 高水準のサービスを、国際的に見ても低い料金で利用できる国にするところにある。 既存事業者にとって、垣根撤廃は大変なことかもしれないが、厳しい国内市場で育っ た事業者は世界的に強い競争力を持つこととなるであろう。過去の垣根撤廃を前向き に評価する一方、残る課題もまだ多いことも指摘しなければならない。たとえば放送 と通信の間の垣根や、電気通信業界を第一種事業者と第二種事業者に分ける区分であ る。改革には痛みが伴うが、グローバル競争が展開しつつある今日の情報通信業界を 考えると、新しい動きを阻害するような垣根の存在は許容できない。大胆に改革を進 めていくべきである。 |
| 14.[競争原理を用いつつ、日本の全住民に良質な情報基盤へのアクセスを確保する] | 日本が世界経済に対して文化的、経済的に貢献を続けていくためには、日本の全住 民および企業が高い情報技術活用能力を持つことが必要である。また、日本の政治、 経済、社会システムの再構築にあたっては、透明性が重要なキーワードとなっており 、その実現のためには、情報技術を活用した情報開示システムが必須である。そのよ うな情報基盤へのアクセスは、限られた資力ある一部の人間だけではなく、すべての 人間に保証されるべきで、全住民が良質の情報通信サービスを安価に享受できる環境 を持つことが肝要である。ただし、これまでの市場原理を無視したユニバーサル・サ ービス提供メカニズムはもはや機能しない。情報通信産業における競争の促進と、ユ ニバーサル・サービスの実現を両立させるためには、今後のユニバーサル・サー ビス実現手法は供給サイドだけでなく、需要サイドに対しても働きかけを行うものでなくてはならない。 |
| 15.[活発な価値創造が行われるサイバースペース構築に向けて電気通信料金改革を行う] | 日本の企業や生活者がコンピュータ・ネットワークを介したグローバルな知識創造 のプロセスに積極的に参加することが重要であり、それを促進するために定額制を基 本とした、利用促進型の料金体系を導入するべきである。米国等の経験から、24時間 追加負担を気にすることなく、世界中と通信できる環境のメリットがはかりしれない ことをわれわれは発見した。日本においても、早期に新しい思想に基づいた利用促進 型の定額料金制サービスの拡大と利用しやすい料金の実現を図るべきである。 |
| 16.[電気通信事業の国際化のために相互接続ルールのグローバル・スタンダードを持つ] | 情報通信産業のグローバル化は、もはやとどまることを知らないかのようである。 一方では経営サイドでの判断によるアライアンスとM&Aが進行し、他方ではディジタ ル技術のユニバーサル化によって技術は全く国境を知らないという状況が実現した。 このような変動の中で、依然としてドメスティックなものは各国が堅持している相互 接続のルールである。通信はそれぞれの国のインフラとして最重要なものの一つであ り、技術的・経済的条件以外に社会的な要請が、国別の接続ルールのあり方の大枠を 決めている。しかし競争によって各国の消費者のウェルフェアが上昇することが確実 となってきている現状では、相互に参入しやすいようなルールづくりによって、競争 の進展をさらに実現する必要がある。効率性と長期的な発展を重視したグローバルな 相互接続のルールづくりが必要である。 |
|
| 1.[新時代の世界的情報基盤となるIPネットワークの構築を推進する] |
1980年代から、情報社会の将来ビジョンについては、「ソフトノミクス」や「マ
ルチメディア社会」といったさまざまな構想が打ち出されてきた。また、情報社会の
インフラストラクチャーについては、ケーブルテレビや電話回線を利用したマルチメ
ディア・サービスについて、多くの商業化の試みがあった。
その中で、当初は学術利用を中心とするコンピュータ・ネットワークであったイ ンターネットが急速に拡大し、現時点では世界的な情報基盤としての体裁を整えた。 新時代の情報通信システムのあるべき姿として提案されてきた広帯域ネットワークは 、インターネット・プロトコル(IP)に立脚したインターネットの通信網として具体 化している。IPとはインターネットの通信手順の総称であるが、「IPパラダイム」と は、IPによって各種のネットワーク・インフラストラクチャーを統合的に接続し、オ ープンで広帯域の情報基盤を建設しようとする考え方である。最近では、米国の連邦 通信委員会(FCC)、あるいは連邦政府も、このビジョンにコミットした、といって よい。もちろんIPネットワークは、今後の技術進歩とともに、いっそうの進化を遂げ ていくに違いないが、大きな方向はすでに定まったように思われる。 日本は、IPネットワークの構築と利用の面で米・欧に決定的に立ち遅れている。 この面でのギャップの拡大は緊急に解消しなければならない。そのためには、(1)新I P幹線の構築が内外の企業によって協働・競争的に推進しうるように、一層の規制緩 和を進めること、(2)IPパラダイムの実現にとって不可欠な市内アクセス網での相互 接続を促進すること、具体的には、国内の各種事業者が保有している各種の通信基盤 、たとえば各種のライト・オブ・ウェーもしくは管路・電柱等の使用権や、第一種通 信事業者が保有する、もしくはその他の事業者が販売・貸与用に建設・保有する各種 の回線の使用権、通信事業者が提供するさまざまな通信サービス、とりわけ市内通信 サービスへのアクセス権等を、競争的価格で他の通信事業者に広く開放する政策を進 めることが重要である。同時に、既存の通信会社や放送会社が、この新しい流れに真 剣に対応することが求められる。いいかえれば、自らIPネットワークの構築と運用に 取り組む必要がある。 |
| 2.[情報社会への移行に向けた戦略課題としてCAN構築を推進する] |
情報通信関連の社会資本の整備は、低迷の続く日本の経済や産業を活性化させる
ために不可欠である。しかしながら、従来型の発想による、光ファイバーの敷設事業
を前倒しするような「情報土木投資」的な対策では、日本の経済や社会に新しい方向
を示すことができない。日本が必要としている情報通信関連のインフラ整備とは、以
下の課題に応えるものでなければならない。
(1) 芽が出つつある新しい産業のシーズやニーズに、情報技術利用の機会を提供す ることによって、その立ち上がりを直接に支援し、付加価値の高い雇用を創出すること。 (2) 情報化により、より範囲の広い市場へのアクセスを可能にし、従来型の産業を 再生させるための新しい手段を提供して、雇用を維持しながら、内需を拡大すること。 (3) 学校や公共施設、さらには家庭で、われわれが情報利用の技能を学習し、かつ コンピュータ・ネットワークを通じて広範な知識を学習する機会を提供すること。 こうした中で、IPネットワークの構築と推進に際して、戦略的な重要性をもつの は、幹線網よりも市内網である。LANを相互連結する形で作り出されるIPネットワー クは、情報社会において、地域コミュニティにとって必要不可欠な情報通信インフラ となる。また、中継型IPネットワークへの需要を保証する上でも、地域のIPネットワ ークの広範な構築は、重要な前提条件となる。 それゆえに、全国各地域でのコミュニティ・エリア・ネットワーク(CAN)の構築 と利用に関して、中央政府および地方自治体が財政的支援を行うべきである。ただし 、ここでいうCANとは、地域コミュニティの全員が加入できる地域IPネットワーク(L AN、LAN間接続網、地域幹線へのアクセス網、地域幹線等)、多様な目的のために容 易に利用できる各種のアプリケーション、参加できる多様な活動機会、およびIPネッ トワークの保守や運用、アプリケーションの利用、活動への参加等のすべての側面に わたって有償もしくは無償で提供される支援・研修サービスを合わせたものを指す。 このようなCANの全国的な構築と運用こそが、わが国の情報社会への移行にとって、 最も重要な当面の戦略課題となる。 |
| 3.[情報化推進の本質であるビジネス・プロセスの革新に取り組む] |
情報技術の工業生産性の改善への応用、定型的サービス業務への応用については
、わが国では早くから成果を挙げてきた。情報技術によらなければ不可能なサービス
を、情報技術によって実現する努力も行われている。しかしこれらの多くは、情報技
術に直接関与する関係者を極力減らし、従来からの仕事のやり方をできるだけ変えな
いような局限された情報化であった。
情報システムを構築する専門家の立場からすれば、関与する範囲が広くない方が 仕事は容易である。また、その組織の仕事の全部を理解しなくても情報化できる。特 に日本では、多くの組織が自社内における情報専門家をできるだけ置かず、外部の専 門家に依存して情報化を進めてきた。このような場合には、特に関係者の局限が進む 。このような情報化が組織内のそれぞれの部内で整合性なく進められると、全体とし ての情報の流れはかえって悪化することすらある。 ホワイトカラー部門の不定型な業務の情報化による生産性の向上、営業力、企画 力の向上はこれからの国際競争力のための鍵となっている。このような業務によって 、今まで情報に関係のなかった人々が、その組織内外の情報に広くアクセスし、情報 を分析し、適切な判断をすることを求めるようになる。このような業務の生産性の向 上のためには、企業内の情報を広く組織の壁を越えて流通し、互換性高く処理できる ようになっていなければならない。このためには、情報は専門家が扱えば良いものと し、企業の社員の大部分がそれから遠ざかるような情報に対する考え方を改めなけれ ばならない。情報化は外部の専門家に丸投げするのではなく、企業の各階層がすべて 自らの仕事の重要な問題として理解し、自ら企画し、自らその解を求めていくように するべきであろう。これは多くの生産性向上の問題と同格である。 同時に、経営のトップは従来の企業組織を見直し、情報技術を最大限に活用して 、競争力を高める必要をそれぞれの企業の競争力向上の中心的課題として考えるべき である。工業生産性向上による競争力の向上は、戦後の日本の国際競争力を支えた鍵 であった。そこでは、経営のトップ自らが生産力の向上のために技術を理解し、適切 に投資し、生産性向上を主導した。現場の生産方式も、組織も、人員構成も、またそ れぞれに求められる技能も大幅に変化し、生産性向上を実現した。これに成功したの は、1960年代以降のわが国の経営者の技術に対する理解と適切な判断の結果である。 1990年代以降、こうした経営の技術向上の中心は、工場部門からホワイトカラー 部門に移った。その技術は情報技術であり、これをいかに企業競争力向上に結び付け るかを理解し、それを推進するのは企業経営そのものである。企業の業務全体につい て広く見渡した分析に立って、従来のビジネス・プロセスを見直し、担当者の人員構 成を適切化し、必要な技能について再教育することが、トップから担当者にわたるす べての階層に求められる。これに対する実行力と適切な投資が、わが国の国際競争力 回復の鍵である。 同様のことは、政府の行政事務の改善についても言える。わが国においては、総 定員法の下に、すべての政府機関で一律の定員削減が行われ、これが行政事務のスリ ム化のほとんどすべてであった。定員削減は業務の情報化の視点を欠いて一律に行わ れたため、本来無駄であった人員は削減されたが、多くの仕事は外部化され、多くの 擬政府組織を乱立させ、事実上の行政人員の把握が困難になるような混乱を生じた。 業務の分析と情報技術の活用による省力化、情報の流れの理解に基づく業務組織の再 編の視点がなければ、スリム化の努力も混乱を増幅する結果に終わる。組織の改善は 、本来トップダウンの決定である。これをボトムアップ的業務分析と結び付けるため には、情報技術を理解したトップによるリーダーシップが不可欠である。 |
| 4.[情報化の前提となるオープン・システムを構築する] |
情報化の基本は官庁、企業等の各組織において、業務をコンピュータ化し、ネッ
トワーク化し、情報の共有を実現していくことである。
コンピュータ化は1960年代に始まったが、当初はそれまでの業務をできるだけ変 更せずにコンピュータ化することを基本としていた。コンピュータ化は、一つの企業 においても業務ごとに他の業務との整合をとることなく進められた。企業の業務が部 門ごとに独立して行われた過去の実態は、コンピュータ化の後もそのまま引き継がれ た。情報の共有は、コンピュータ化以前は紙面による情報のやりとりであったから、 部門内でも部門間でも大きな差はなかったが、部門内に閉じたコンピュータ化によっ て、その格差は広がった。 さらに、コンピュータ化に伴うソフトウェアの開発は、当初他に例もないことか ら、企業ごとにそれまでの仕事の仕方を踏襲して独自に行われた。その後コンピュー タ化が一般化し、多くのプログラムが利用できるようになってからでも、各企業ごと の独自路線は変化しなかった。これはコンピュータ化に伴って、仕事の流れが変化す ることを嫌い、変化を好まない企業の保守性の現われでもある。それぞれの企業の仕 事のノウハウを保つことが競争力確保に重要であるという論議が出現し、いたずらな 独自主義が主張された時代もあった。 独自のソフトウェアは、パッケージ・ソフトに比べれば、導入当初は使いやすい 点もある。しかし、その改善には独自の努力を必要とし、改善は遅れがちになる。パ ッケージ・ソフトについては、その利用者が多いほど改善にかけるコストは大きくす ることができ、数年を経ずして独自ソフトよりはるかに優れたパッケージ・ソフトが 出現する。 このため、コンピュータ化が特に進んだ1980年代の一時、日本のシステムはパッ ケージ化された米国のシステムより細部にわたる機能の面で優れていると主張された 時期もあったが、その優位性は1990年代以降消滅した。 さらに、コンピュータ化が企業内から企業間の情報のやりとりに進むに際しては 、いたずらに独自性を主張し、各社ごとに別々にコンピュータ化が進んだわが国のシ ステムでは、それぞれに大規模な改修を必要とすることになり、EDI(電子データ交 換)、CALS等は、標準化がいかにできようとも、その実現は極めて困難になっている。 企業のコア・コンピテンスに関わる処理は別とし、一般の業務処理においては、 今後いたずらに独自性を主張したり、従来の仕事の仕方の変更を拒否することなく、 標準化されたパッケージを積極的に採用し、オープンなプラットフォームをアプリケ ーション層に至るまで構築すべきである。これを困難にしていたのは技術的問題では なく、企業の担当者からトップまでが、システムを理由として仕事の仕方を変更する ことを拒否していたことであることを考えれば、これは情報処理担当者の問題ではな く、企業構成員すべての問題である。 情報処理担当者としても、市販パッケージの採用に対しては、その内容の理解、 評価、既存システムへの適応性について、従来とは全く異なる業務とその能力が求め られることはいうまでもない。このようなシステム提供側、利用側両者の考え方の変 化を実現していくためには、企業経営者のリーダーシップが不可欠である。 標準化されたビジネス・プロセスに対応するパッケージが、民間のみならず政府 でも活用されれば、民間と政府の間の諸手続書類のネットワーク化の促進が進められ ることになる。 |
| 5.[セキュリティに配慮したネットワークを構築する] |
わが国の企業・官庁における情報化は、特に米国に比べ大幅に遅れている。特に
、情報技術に習熟した人材配置が、一般企業においての要員数で米国の3分の1から
5分の1であることが大きな阻害要因となっている。間接要員を極小化し、場合によ
ってはアウトソーシングによって情報化が進められている。何か不具合が生じても、
一般の職員が自分の知識で解決しなければならず、その時間のために本来の仕事に支
障を生ずることも日常化している。
一方、情報化に伴うセキュリティの問題についても関心が高まっている。システ ムがスタンドアローンからネットワークを通して、社内、関連会社さらには一般社会 に広がり、また、その役割が大きくなるにつれてセキュリティの問題は大きくなる。 セキュリティ問題は、大きく分けて次の4つに分類される。 (1) ハードウェア、ソフトウェアの障害 (2) 外的要因による不動作:火災、地震、停電等 (3) 不注意による不具合:誤ったデータの混入、秘密の漏洩 (4) 意図的攻撃による破壊、情報の漏洩 いずれも、情報化の進展につれて大きな影響を生ずるようになっている。いずれ においても、出現の状況によって対処法は異なる。ソフトウェアのバグは、多くのア プリケーション・パッケージにもオペレーティング・システムにも内在しており、そ れに対する適切な対処も重要である。利用者の誤操作に対する対処のためには、ヘル プデスクが必要となる。集中化された管理システムによって障害の切り分けを行うサ ービスも、不具合に対する対応を迅速化するために不可欠である。こうした情報シス テムの管理はその必要性が見えにくいコストとなり、そのためにわが国では忘れられ ていたり、必要なコストが支出されないために、情報システムが使いにくいものとな り、結果的に情報化の阻害要因となりがちである。意図的な攻撃を企図するハッカー の存在も大きな問題である。これに対処する権限管理手段、ファイヤー・ウォール等 の技術も進歩しているが、これを破る手段も次々に考えられている。こうしたハッカ ーの使うソフトウェアは、ネットワーク中のウェブサイト等から数多く集めることが でき、マニアの雑誌等の記事を参考にして、このようなことを行うことがあり得るよ うになっている。さして知識のない者でも、専門家が作ったアクセス管理手段をくぐ り抜けて侵入する。このような危険は、ネットワーク等を通しての侵入の他に、不注 意に扱われたフロッピー・ディスク等の媒体を通しても侵入する。特に、不正にコピ ーしたソフトウェア・パッケージに危険が大きいことが指摘されている。こうした危 険を防止する側には、充分な組織に関する知識を持った権限の管理者が必要である。 特に、一つのファイルを多数の人がアクセスし、共同作業するような形の使い方の場 合の権限管理は、複雑で人手を要する。もしセキュリティが破られるようなことが生 じた時に、その発見が困難な場合もある。データを破壊するようなハッカーの被害は 容易に見つけられるが、単に情報を盗み出すような盗聴的な行為は、永年にわたって 見つけられないことも少なくない。このような行為の防止には、そのコンピュータを 利用する当事者の注意も必要であるが、全体でどのようなソフトウェアが動作してい るかを中央監視することも有効である。 これにも、相当の人手と業務に対する充分な知識が不可欠である。情報化の進行 は不可避であり、情報化の進行を不注意に安手に進めることは社会の脆弱性を高める ことになることを認識することが重要である。 |
| 6.[2000年問題に代表される情報システムの不安定要因を解決し、社会的な責任 を重要視したシステムの運用を行う] |
各企業が運用する情報システムは、それが顧客対応のものでも、社内利用のもの
でも、あるいは対関連企業対応のものであっても、近年では企業活動の円滑化に不可
欠である。特に、リアルタイム型のものでは、短時間の障害でも社会に与えるインパ
クトは大きく、リアルタイム型でなくても、その障害が長期におよべば、社会に影響
を与える。その社会的重要性が増大するほど障害が生ずることがあれば、その影響は
社会的な問題となる。障害としては過去においてはハードウェアの故障、ソフトウェ
アのバグおよび災害による影響について注意すれば充分な時代があったが、近年では
他の要因ネットワークを通しての各種の脅威、特に、2000年問題が注目されている。
2000年問題は、年号が1900年代では下2桁だけで表現すれば充分であったのが、2 000年以降では見直さなければならないことである。これに関するプログラムの部分 はアプリケーションプログラム、データベースの広い範囲にわたっており、これにつ いてすべてを見直してプログラムの改修を必要とすることである。 一般企業で使用されているプログラムは数十年にわたって開発されてきたものであ り、すでにそれを開発した人は退社していたり、そのソースコードを書いた言語の専 門家はいなくなっていたり、ソースコードそのものが失われているものすらある。こ の場合には2000年以降問題が生じないことを確認するためだけでも多額の費用を要す る。アメリカでは2000年問題に対応するためにすべての企業が大きな投資をし、また それに対する対応を明確に表明している企業が少なくない。日本でも多くのソフトウ ェアハウスが2000年問題に対応する受注で売り上げをのばしているが、各ユーザ企業 がどのように対応しているかは明確ではない。政府機関では2000年問題に対応するソ フトウェア改修の予算は充分に顕在化していない。 コンピュータ活用の社会的責任を認識すれば、すべてのコンピュータ利用者は 2000年問題に対する検証を実施し、その結果をテスト方法とともに明らかにすべき である。政府は政府機関のすべてのコンピュータについて、2000年問題に対する検証 を実施し、必要に応じてソフトウェアの改修を行うよう予算化すべきである。 |
| 7.[情報システム専門家の育成を推進する] |
企業における競争力は、今後ホワイトカラー部門における情報化、コンピュータ
とネットワークの活用を進め、個人の生産性を向上し、これを部門全体の生産性向上
、企業の生産性向上、さらには企業グループの生産性向上に進めてゆくことである。
このためには、定型的業務における情報化はもちろん、OAの幅広い導入は不可欠 である。すべての企業構成員か何かの型で情報システムに関わり、情報システムを使 いこなしてゆくことが重要である。 このような生産性向上のためには、常に最新技術に基づく機器と業務の生産性を 最大限に引き出すソフトウェアを整備し、不具合に対して迅速に対処し、セキュリテ ィ上の脅威に有効に対応できるようになっていなければならない。このようなシステ ムの維持管理に対して一般の業務担当者が関わることになれば、システム化による生 産性の向上は不可能になる。専門家は常にシステムの管理に責任を持ち、一般職員よ り効率良く問題に対処することができる間接要員である。 本来、組織における間接要員は、その組織業務の作業効率の向上の役割を促すも のである。わが国においては、特に近年、間接要員の削減が人件費削減の手段として 重視され、削減に努力が行われてきた。削減された作業は、単純作業の場合には外注 化によって処理できる。情報化の業務も、もしそれが、その企業の中で充分経験のあ る安定化したものならば、他の外注化と同様に処理できる。しかし現在の情報化はま さに進行中であり、外注化する場合にも、その内容について充分理解した上での外注 化でなければならない。 米国においては、近年一般の企業において、従業員の3%から5%の情報技術の 専門家が配置されるのが普通になっている。この内半数程度は分散配置されたOA機器 を安定に運用する支援を行う。残りの半数は企業全体のシステムを企画し、データの オープン性を高め、またセキュリティに配慮したシステムの管理を行うセントラル情 報技術要員となっていることが多い。これに対して、日本では一般の企業の情報技術 要員は従業員の1%に満たないことが多い。しかも大部分が在来型の独自システムの 開発要員となっており、OAの管理にあたる専門家が全く配置されていない場合も少な くない。このためOA機器は活用されずに放置されるか、一般職員が時間をかけて不具 合に対処するため、かえって生産性を落とすことも少なくない。 これを解決するためには、能力のある情報専門家を配置しなければならないが、 もしわが国で要員数を米国並みにするとすれば、その要員数の確保は不可能である。 1970年代においては、就業者中で何らかの意味で情報技術にかかわる人は10%で あり、専門家は1%以下、さらにシステム開発要員は0.5%以下で良かった。これに 対して、2000年代には、就業者の70%は情報技術に関わり、10%程度が支援要員とし て情報化を推進する必要があると考えられる。 21世紀の日本の生産力を維持してゆくためには、すべての子供の教育の中で、当 然のこととしてコンピュータを使用する能力をつけなければならないことはもちろん である。さらに10%程度の人口が、情報化の指導者になるべく養成されなければなら ない。 |
| 8.[すべての学校に光ファイバーを、すべての教室にインターネットを接続する 道を開く] |
政府の総合経済対策の柱として郵政省が提案した総額8,400億円にのぼる「全国4
万校への光ファイバー接続計画」は、従来型の公共事業の枠を破り、情報化時代に対
応する新たな社会資本整備として注目された。
計画によれば、米国ではT1と称される1.5メガビット/秒の高速回線(通常のISD N回線の約25倍)を各学校への引き込み、インターネットに接続し、その接続費用は 5年間にわたって国が負担しようとするものだった。これによって、現在は通常電話 線によるダイアルアップ接続という貧弱な接続でさえも、電話料との兼ね合いでほと んどの学校において教師・生徒・児童が活用できていないインターネットを自在に利 用させることを狙ったもので、革新的なアイディアであった。 周知のように、米国ではクリントン・ゴア政権のイニシアチブの下、2000年まで にすべての学校をインターネットに繋げることを国家プロジェクトとして掲げ、1998 会計年度において最大22億ドルの補助金を出す計画である。 すでに、昨年末における米国の学校のインターネット接続率は78%に達した。日 本の昨年末での推定値10%とは表面的な数字だけでも比較にならないが、「学校」で はなく「教室」レベルでの接続率になるとその差は絶望的に広がっているのである。 米全国教育統計センターの調べでは、1994年にはインターネットに繋がっている 教室は3%にすぎなかった。しかしその後1995年に8%、1996年に14%と増え、昨年 末にはほぼ倍増の27%まで達した。おそらくこのペースでいけば、政府の巨額補助計 画とあいまって、今年中に全クラスルームの過半数が直接インターネットに接続され るのは間違いないものと推定される。 はっきり認識しなければならないのは、米国の学校におけるインターネット接続 は、日本のようにパソコン特別教室にインターネットに繋がった数台のパソコンがあ り、そこへ児童・生徒が週1回出向いてなんとなく感触を知る──ということでは全 くないということである。 米国の先端校においては、幼稚園クラスから各教室に2台や3台のインターネッ トに接続したパソコンがあるのは当たり前であり、図書室はメディアセンターと名称 を改め、書籍とインターネット接続した10台以上ものパソコンが並列的な存在となっ て置かれているのが普通になりつつある。それはもう、教師にとっては教科書、黒板 とチョークと同等のものであり、児童・生徒にとって百科事典、参考書、ノートと鉛 筆に近いものになりつつあるということである。 だが、米国といえども、こと光ファイバーに関しては、広大な国土を擁すること や中小零細地域電話会社が数多く存在する等の事情から、末端までの敷設は日本に比 べはるかに困難な状況にあり、学校への光ファイバー接続までは考えられてはおらず 、T1を一部銅線で提供しているところもある。そして、T1接続は増加の傾向にある といっても、まだダイアルアップ接続が主流であることは事実である。 つまり、わが国において、もし全学校の光ファイバー接続が実現するならば、少 なくとも通信インフラにおいては米国を一気に抜き去る可能性があったわけである。 一方で、学校へのパソコン配備計画だけは着実に進展している状況を考えれば、日本 の学校のインターネット接続環境は米国にひけをとらない段階に進むのも夢ではなか ったはずである。 だが、この計画が否定されたことで、日本の学校インターネット化計画は、文部 省主導の「1日2時間インターネット接続」をベースとしたという今年度20億円の地 方交付税交付金による接続費補助だけになってしまった。いうまでもなく、日米格差 はさらに絶望的にまで広がるであろう。あらためて、すべての学校への光ファイバー 接続計画の重要性を認識し、すべての教室からのインターネット接続の道を開くべき である。 |
| 9.[インターネットを活用した新たな教育の理念の確立とそれを実現する社会的 諸整備に早急に取り組む] |
日本でインターネット教育という時、一般的なイメージはパソコンを並べた特別
教室に週1、2回集まり、インターネットに繋がった数台のパソコンを教師の指導の
下で覗いたり、海外の学校との学校間交流の手段としたり、あるいは世界的な酸性雨
プロジェクト参加校がデータを世界に発信するといったものではなかろうか。つまり
、インターネットは日本の学校においては「便利な通信手段」の域を出ていないのが
大半のように思われる。それも、日本の学校の貧しい接続事情を考えればやむを得な
い選択であったとも言える。
しかし、もし全学校に光ファイバーが届き、通信費の心配がない環境が提供され るならば、その活用次第では、今まさに閉塞状況にある日本の教育システムを劇的に 活性化させる力をも期待することができる。 日本では全く伝えられていないが、去る4月29日、米カリフォルニア州議会は党 派の圧倒的多数で「チャータースクール(charter school)」の拡大を決定した。チ ャータースクールとは、従来のカリキュラムに縛られずに自由な教育を行うことを認 める「公立校」のことで、全米31州に広がっているが、多分に実験的な性格を持つた め、カリフォルニア州法では100校に限定していた。しかし、従来型の教育に不満を 持つ親のチャータースクールへの期待の高まりを背景に、100校の枠を外すべきだと の声が高まり、議会は来年度250校に増やし、以後毎年100校ずつ増やすことを認める 決定を行い、知事も同意したのである。 なぜ親はチャータースクールに期待するのか。一般のパブリックスクールでは、 先生がカリキュラムに添って一方的に生徒に教え込み、ついてこれる子は優秀、つい てこれない子は切り捨てるという日本同様の教育が行われている。しかし、チャータ ースクールではカリキュラム内容を一方的に教え込むのではなく、パソコン、インタ ーネット活用を前提とした「プロジェクト」中心の教育が行われる。必要に応じ、ハ イテク企業とも直接交渉し、さまざまな支援を受けることも少なくない。 児童・生徒は教師からテーマを与えられ、グループでテーマについての研究を分 担して行い、成果を個々人がプレゼンテーションする。そこでの教師の役割は教える 人=teacherではなく、指導、助言するeducatorであり、児童・生徒はpupilやstuden tよりは自ら学ぶという感じの強いlearnerが使われ出している。そこでは、授業につ いてこれたかどうかでなく、個々人の能力、個性を生かしてどのようにテーマに取り 組んだかが評価の対象となる。マイナス評価でなくプラス評価である。そして、この 教育手法はチャータースクールに限らず、各地で積極的に取り入れられる傾向にある 。インターネットはこうして教育の変革の大きな要素になっているのである。 子供達は、インターネットを使うことで従来は百科辞典や限られた参考書でしか まとめられなかったレポートを、インターネットを使えば最新で厚みのあるデータに 自在にアクセスできることで、教科書をはるかに越える世界に踏み込んだレポートを 書き、発表する喜びを知る。 むろん、そこまで児童・生徒を導くには教師一人の個人的努力だけではできない 。有益なウェブサイトに関する組織的な情報交換システム、パソコンやインターネッ トそのものへの技術的サポート、遅れ気味の子を支える補助教員や親のボランティア 等が裏付けになっているのはいうまでもない。学校を閉じられた王国でなく、新たな 試みの成果を第三者が正当に評価するシステムも求められる。 米国におけるインターネットの教育への活用は、来たるべき情報革命時代に必須 のものとなる高い情報処理能力を子供の頃から確実に養いつつある。それも連邦、州 、地域社会企業が一体となってである。 日本においても子供達への情報処理能力の涵養は必須のはずである。その実現に 向けての教育理念の確立が早急に求められるし、その実現にあたっては、公的資金の 限界があればそれを打開するために手段についても幅広く検討すべきである。 |
| 10.[日本の法体系を情報化に適合するものに再編する] |
われわれの認識では、近年の情報革命は、新しい産業革命(軽工業革命から重化
学工業革命に続く情報産業革命)としての側面と、産業化そのものを超えるという意
味での情報化(近代国家を生み出した軍事化と近代企業を生み出した産業化に続く、
近代化の第三局面の開始)、いいかえれば情報社会革命の側面を併せ持っている。近
年、国家や企業とは性格を異にするNGO−NPOが多数出現して活発な活動を展開してい
ることや、これまでの国民(近代国家の成員としてのアイデンティティをもつ個人)
や、市民(近代国家の成員であることに加えて企業の従業員としてのアイデンティテ
ィをもつ個人)に対して「ネティズン」等と呼ばれる、第三のアイデンティティ軸を
併せ持った新しいタイプの個人が目覚しく台頭していることは、上の第二の側面、す
なわち近代化の新しい局面としての情報社会の開始を示す社会現象である。
ネティズンは、かつての国民や市民、とりわけ20世紀の消費者大衆としての市民 とは違って、情報の一方的な受け手としての存在に甘んずることなく、自ら積極的に 情報を探索・評価したり、創造・発信したりする。彼らは、その意味では能動的なコ ミュニケーターであるが、同時にNGO−NPOのメンバーとして、互いに共有する社会的 価値の実現をめざして活動するコラボレーターでもある。 こうした中で、今日の情報革命が、人類社会の発展に、さらにより良く貢献しう るためには、適切な法体系の整備が不可欠である。近代化の第一局面では、国家(お よび国民)主権の観念に立脚して、国家とその国民の間の権利義務関係を律する公法 の体系が、国内的にも国際的にも整備された。近代化の第二局面では、私有財産権の 観念に立脚して、企業と市民の間の権利義務関係を律する私法の体系が整備された。 また、公権と私権の間の関係を調整する試みもなされた。その点にかんがみれば、こ れから本格化する近代化の第三局面では、「共権」とでも呼ぶことができる第三の権 利の観念、すなわち「情報権」の観念に立脚した、NGO−NPOとネティズンの間の権利 義務関係を律する「共法(英語ではサイバーロー等と呼ばれている)」とでも呼ぶべ き新たな法体系が、慣習法として、また実定法として、整備される必要がある。ここ でいう情報権とは、情報処理の自律とセキュリティ、創造された情報の帰属とプライ オリティ、当人に関わる情報の管理とプライバシー、等をめぐる権利群を指す。同時 に、情報権と財産権の間の関係(たとえば、複製の自由とその制限)、および情報権 と主権の間の関係(たとえば、暗号化の自由とその制限)を調整する試みも必要にな ってくる。もちろん、このような新しい法体系の整備や既存の法体系との調整は、一 朝一夕にできることではない。しかしそうであればこそ、なるべく早期からの本格的 な取り組みが必要とされるのである。 |
| 11.[事実上のGIIであるインターネット上での電子商取引を促進する] |
1994年3月の国際電気通信連合(ITU)情報通信開発会議(ブエノスアイレス会議
)で、ゴア米副大統領は、世界情報基盤(GII)構想を発表し、世界の注目を集めた
。しかしながらその後、GIIの建設は、民間投資とダイナミックな競争の促進によっ
て進んでおり、当初のGII構想は、国際社会の主要なアジェンダにはなっていない。
現時点でのGIIをめぐる議論の中心は、電子商取引(EC: Electoronic Commerce) である。米国は、1997年7月に「グローバルな電子商取引に関する枠組み」を発表し た。その趣旨は、インターネットを利用した電子商取引を全世界的に推進することで ある。この中で米国政府は、インターネット上で行われる商取引には、新たに課税す べきではないし、また、技術標準についても民間の競争にまかせるべきだ、とする一 方で、市民と国家の安全保護の見地から、暗号の利用については制限を課すべきだと 主張している。 われわれは、事実上のGIIの建設がインターネットとして、民間主導で具体化して いることを認識し、さらにこの動きを積極的に利用すべきだと考える。電子商取引に ついて、世界的な情報基盤の上で行われる商業活動を円滑に行うルールとして、現在 、国際社会で協議の対象になっているのは、ネットワーク上での課税、認証とセキュ リティ、個人データの保護といった問題である。情報ネットワークの利用が日常生活 の領域に拡大し始めた現段階では、国や地方自治体はオンライン上の商取引について 、追加的な課税を行うべきではない。 また、インターネットの本格的な利用には、暗号技術が不可欠である。オンライ ン上の商取引に際しては、クレジット番号等の個人情報がやり取りされるため、デー タの暗号化が必須になる。パーソナル・コンピュータを使った強力な暗号技術が普及 して、組織犯罪等に利用される場合には、法執行機関の捜査を妨げる恐れがある。暗 号技術の不正利用対策については、(1) 暗号利用の規制内容をテロや犯罪の脅威の除 去に限定すること、(2) 費用対効果のバランスという観点から、商業利用や技術開発 をできるだけ阻害しないこと、(3) 安全保障の観点から国際的な協力態勢を作り、各 国間で調整を行うこと、等に留意すべきである。さらに、暗号技術については、米国 に「鍵回復システム(Key Recovery System)」を広範に導入しようとする動きがあ る。「鍵回復機関」は、暗号鍵の保管サービスを行うとともに、法執行機関の要求に 応じて、暗号解読の手段を提供する第三者組織である。しかしながら現時点では鍵回 復システムによらないPC暗号技術が、多くの国で実用化されており、国内のすべての PC暗号を鍵回復システムで規制することは、不可能ではないにしても、著しく社会・ 経済活動を阻害することになるであろう。実効性の観点から、「鍵回復システム」の 利用を日本国内で一律に義務づけることは望ましくない。 個人データの取り扱いについては、データベースを所有する企業が、情報を転売 したり、他の用途に利用する際の基準が国によって異なっており、グローバルな電子 商取引の問題となっている。基本的にはデータを収集・利用する企業が、何の目的で 利用するのかを明確にし、消費者にデータを提供するか否かの選択権を与えるべきで ある。 いずれの問題でも、情報ネットワークの利用が、日常生活の領域に拡大し始めた 現段階では、可能な限り自由な経済活動を促進する環境が望ましいとの原則を維持す べきである。 |
| 12.[インターネットのガバナンス問題に日本政府として早急に取り組む] |
インターネットの特徴の一つに、それが中央集権的なコントロールのメカニズム
や組織を持たず、一種の合議制により運営されているという「自由度」の大きさがあ
る。「ネットワークのネットワーク」として、一種の国際的合議制で運営する手法は
、その「自由度」の象徴である。しかしながら、このようなインターネットの運営方
法は、従来の研究者の共同体を中心とした利用を離れ、大規模な商業利用が本格化し
、より質の高いサービスが求められるにつれて、知的所有権、アクセス系回線の確保
、大規模な伝送の事故、プライバシー、暗号、ドメインネームの決定メカニズム、グ
ローバルな電子商取引、課税等といった課題について見直しが行われている。また、
いくつかの安全保障上の問題──、ネットワークを通じた通信設備、交通システムや
金融ネットワーク等の重要な社会インフラに対するテロリストの攻撃──が懸念され
ている。資料や各種の調査から判断する限り、このような問題点が、ただちにインタ
ーネットの全般的機能不全を引き起こすとは考えられない。しかし関係者や対象の範
囲の大きさ、利害の対立等を考えれば、上記の問題に短期的な解決策を見出すことは
困難であろう。国際社会が、世界情報基盤の運営という共通課題をめぐってルール作
りに取り組んでいるという点からすれば、地球環境問題等と同じく、インターネット
も一種のグローバル・ガバナンスの対象と考えることができる。
最近の例を挙げれば、インターネットのドメインネーム・システムの発給につい て、インターネット・ソサエティーを中心とする改革の動きがあり、ドメインネーム に関する国際臨時委員会(IAHC)の覚書が提出された。これは、われわれが日常使っ ている「.com」や「gov.jp」といったアドレスの体系と、これを付与する権限機関の 全面的見直しを含むものであり、商業利用にとっても影響するところは大きい。これ に対して、米国政府は、IAHCとは異なるドメインネーム・システムの提案を行い、各 国からの意見の聴取を終えて1998年5月現在、ドラフト最終案を作成しているところ である。今回の改革によって、インターネットの運営はより商業ベースに移り、より 安定したものになるであろう。 このように、インターネットは現在、「実用的な世界情報基盤」という新しい課 題に対応するための岐路に差し掛かっており、グローバルなガバナンス問題に対処で きるか否か、またどのような制度や枠組みが、その中から生まれるのかは、インター ネットの将来を占う上で重要な示唆を含んでいると考えられる。 インターネットを一種の社会システムとして見た場合、この中央政府を持たない システムを、どのようにして維持・発展させていくのか、という問題、特に重要な社 会インフラの防護については、各国が独自に取り組む必要があり、この点について、 日本政府が早急に検討を開始し、国内でオープンな議論を主導することを提案する。 |
| 13.[垣根撤廃を進め、利用者に世界最高水準のサービスを安価に提供する] |
1996年以降に実施された電気通信分野の規制緩和と、それに伴って促進された競
争は、前向きに評価されるべきである。たとえば、1996年1月に郵政省は、「『第2
次情報通信改革』に向けた規制緩和の推進について」と題する政策方針を打ち出した
。この宣言を実行に移した一連の規制緩和の意義は、電気通信業界に存在したさまざ
まな垣根を取り除いたところにある。この結果、 1997年以後、(1) 国内長距離事業
者と国際事業者の合併、提携、(2) 市内地域事業者の相互連携と長距離市場への参入
、(3) 海外事業者の国内参入の活性化、(4) 国内電気通信事業者の海外進出の加速、
が急速に進展した。最も喜ぶべきは、地域(市内)市場の競争が活性化したことであ
る。このような動きは、現在も進行中で、海外事業者が第一種電気通信事業者として
、地域市場にまで参入してくることが予定されている。
垣根撤廃の意義は、日本を世界中の通信事業者が競って良いサービスを提供する 市場たらしめ、企業や消費者が世界で最高水準のサービスを、国際的に見ても低い料 金で利用できる国にするところにある。すなわち、垣根撤廃によって、単に国内事業 者間の競争が活性化するだけでなく、海外の事業者も自由かつ迅速に日本市場に参入 し、サービスが展開できるようになる。日本の消費者および産業界は世界中の数多く の事業者の提供する多様な機能および料金メニューの中から、自分達のニーズに合っ たものを選択して利用することができるようになる。これが日本における情報通信利 用の高度化を進め、日本経済全体の活性化に寄与するであろう。 このような垣根なき競争は、短期的には日本のいくつかの事業者にとって厳しい ものとなるかもしれない。しかしながら、国内市場において高度な通信利用者を持ち 、厳しい競争市場で育った日本に事業者は世界的に強い競争力を持つこととなるであ ろう。 近年の垣根撤廃への取り組みを前向きに評価する一方で、残る課題もまだ多いこ とも指摘しなければならない。たとえば、大きな課題は放送と通信の間の垣根である 。かつて、通信と放送は技術的にも、利用するインフラストラクチャーの面からも大 きく異なり、その二つは自然な形で分かれていた。特に放送は、電波の希少性と放送 の影響力を論拠に、通信より厳しい規制の対象となってきた。しかしながら、技術の 発達はその二つの領域を急速に融合させつつある。その中で放送事業者と通信事業者 を区別し、相互の参入を妨げるような垣根は意味を無くしつつあるといってよい。 今一つの例は事業区分である。電気通信事業者は設備を有する第一種事業者と第 二種事業者に分けられている。これが問題なのは、新規参入の阻害要因となるからで ある。一般に新規参入を行う場合に低固定費−高変動費のローリスク・ローリターン 型で参入をし、顧客が取れた段階で高固定費−低変動費型経営に直して高い利益を追 求する経営を行うことが望ましい。これを電気通信に翻訳すると、新規参入初期は第 二種として参入し、安定した顧客が取れた部分から自前の設備を持つように段階的に 切り替える、一種、二種のハイブリッド戦略が望まれる。専ら設備を貸すだけで、自 分ではサービスを行わない0種と呼ばれる事業も含めて、事業者が規制ではなく、 経済合理性に合わせて設備の所有、非所有を戦略的に決められるようにすることが、 競争を促進する上でも重要である。 垣根撤廃には痛みが伴う。特に、1985年以降に垣根が存在することを前提に参入 してきた新規参入事業者に対してダメージを与えるものであるところであるところが つらい。たとえば、これまでケーブルテレビ会社は第一種電気通信事業者のインフラ ストラクチャーの上では放送事業が行われないことを想定せずに投資を行ってきた。 垣根撤廃によって、彼らの一部に事業撤退を強いるものとなることすら考えられる。 このような事業者に申し訳なさを感じつつも、世界規模でグローバルな競争が展開し つつある今日の情報通信業界を考えると、新しい動きを阻害するような垣根の存在を 許容するわけにはいかない。垣根撤廃により不利益を被る事業者の従業員の雇用等に 配慮しつつも、大胆に改革を進めていくべきである。 |
| 14.[競争原理を用いつつ、日本の全住民に良質な情報基盤へのアクセスを確保する] |
日本が今後、世界経済に対して文化的、経済的に貢献を続けていくためには、こ
れまで世界的に指導的な立場にあった生産技術や生活文化等の分野において、その技
を情報化時代にふさわしいものに昇華させていく必要がある。そのためには、日本の
すべての国民および企業が高い情報技術活用能力を持つことが必要である。特に情報
技術活用技能は幼年期より開発することが最も有効であると考えられ、子供達に日常
的に情報技術に触れ、能力を開発するチャンスをふんだんに与えるべきである。
また、今日急務となっている、日本の政治、経済、社会システムの再構築にあた っては、透明性が重要なキーワードとなっており、その実現のためには、情報技術を 活用した情報開示システムが必須である。そのような開示された情報へのアクセスは 、限られた資力ある一部の人間だけではなく、日本の社会に住むすべての人間に保証 されるべきである。そのためにはすべての住民が世界で良質の情報通信サービスを安 価に享受できる環境を持つことが肝要である。先端的な分野において最高の技術を持 つことと同等か、それ以上の重要さで、「すべての人間がアクセスできる情報環境の 水準がどの程度か」ということが問われるようになっている。 経済合理性から考えても、情報技術、特にネットワークには、いわゆる外部性が 働き、一部の人間だけが利用できる状態ではその効用に限りがあり、すべての人間が アクセスできることを想定できるようになった時に大きな力を発揮する。このことは 、すべての人間が電話も郵便も連絡手段として持たない社会の不便さを想起すれば理 解できよう。 日本に住むすべての住人への情報基盤へのアクセスの重要性を強調した上で問題 となるのが、その実現方法である。歴史的に情報ネットワークを「あまねく」提供す る意義は「ユニバーサル・サービス」の概念の下に論じられ、制度化されてきた。こ こで問題となるのは、ユニバーサル・サービスが、これまでの市場原理を無視したメ カニズムでは提供できないことである。 これまでの電気通信業界の秩序は、規制によって生じる独占利潤を原資に事業者 にユニバーサル・サービスの実現を課すものであった。日本においては、1985年の電 気通信の自由化によって、この体制が崩れた後も、現実的には支配的事業者であるNT Tに課すことで成立してきた。しかしながら、市内通信市場にまで競争状態が広がり 、収益性の高い地域に特化した事業者との競争が進展すると、その原資はなくなる。 NTTが負担に耐えられずに、料金に地域格差をつけざるを得なくなることが当然考え られる。また、利益の得やすい法人市場等に注力していくことになるのも自然な流れ であろう。 情報通信産業における競争の促進と、ユニバーサル・サービスの実現を両立させ るためには、今後のユニバーサル・サービス実現手法は供給サイドだけではなく、需 要サイドに対しても働きかけを行うものでなくてはならない。特定の事業者に特権を 与えたり、義務を課したり、規制を加えたりするのではなく、需要者側である個人、 企業や地域に対して、情報通信サービスを購入するインセンティブないしは援助を与 え、彼らが多くの事業者の中から、最も良いサービスを最も安価に提供するものを選 択して供給を受けるという考え方である。 具体的な方式にはいくつか考えられ、NTT地域会社が会社法上、電話サービス の全国提供義務が課せられている状況では成り立ち得ないが、例示として考えられる のは、補助をしないとサービスの供給が行われない地域において、望まれるサービス と料金でサービスを提供する事業者を競争入札で募る方式である。最小の補助金で供 給を請け負う事業者にその地域のサービスを委託する。補助金の原資は理論的には国 の一般会計から拠出されるのが望ましいが、より現実的に考えれば、通信料金に広く 薄くユニバーサル・サービス基金への拠出金をかける方式が考えられるだろう。 |
| 15.[活発な価値創造が行われるサイバースペース構築に向けて電気通信料金改革を行う] |
グローバルなネットワーク化が進む中で、日本に拠点をおく企業や生活者がコンピュータ・ネットワークを介した知識創造のプロセスに積極的に参加することが重要であり、それを促進するために定額制を基本とした、利用促進型の料金体系を導入するべきである。
米国においてインターネットが爆発的に発展し、情報産業だけでなく、それを利用する産業や社会活動が活発になった背景に同国の市内通信料金に定額制が用いられ、利用者が時間を気にすることなくネットワークにアクセスできることがある。 利用者にとって、インターネット利用料金はプロバイダに支払う金額と、市内電話会社に支払う金額の合計となるが、二つのうちプロバイダ料金は日米とも比較的小額の定額料金で利用できる。問題は市内通信料金である。数千円で市内通信が定額で利用できる米国に対して、日本では24時間いつでも定額で利用できるサービスを受けようとすると、最低でも3万8,000円を支払わなければならない。他の通信料金の格差が狭まっている中で、決定的に重要な部分に大きな格差が存在する。 市内料金定額制は、電気通信事業者にとっては収入が増えないままに必要な設備が増大していく悩ましいものであり、米国における定額制も戦略的なものであったというよりも、歴史の偶然の産物といってよい。 そのような問題を認識しつつも、24時間、追加負担を気にすることなく、世界中とコミュニケーションできる環境のメリットがはかりしれないことをわれわれは発見しつつある。これは知的な生産活動には収穫逓増と呼ばれる特質があるからである。そのメカニズムが十分解明されていないのだが、知識という財は孤立してある時よりも、さまざまな知識が結合された時に総体としての価値が増大する。これを具体的な形で現出させたのがインターネットである。変動費の低いインターネットの構造は、知識を容易に相互結合させる空間を作り出し、そこには、しばしば知識の価値自己増殖現象が生ずる。このようなサイクルが始まると、単独の企業の中では、とても達成できない爆発的なイノベーションの連鎖反応が社会に生ずる。実際に情報社会で重要な製品──グローバルな市場占有率を誇るソフトウェアやネットワークの接続機器──は、このような空間の利用法から生まれている。 元々市内通話について定額制を採用してきた米国と異なり、わが国において24時間定額制を安易に導入すると、現行の市内交換機がパンクしてしまう他、急激な設備拡張が要求される可能性が高い。 しかしながら、電話網と別のネットワークの構築を図る等の工夫をすれば、利用促進型の定額料金制サービスを導入できる。現にNTTが導入しているOCNサービスがこの例である。特にインターネットを含むパケットを使った通信では、通信料金を従来のような距離や時間によって増える方式ではなく、利用したい最大通信速度別の基本契約と、パケットの優先度別ネットワーク従量料金の組み合わせとし、優先度の低い通信は従量料金ゼロとする方式に直すことが考えられる。これによって高度で安定したサービス(つまり高優先度サービス)を求める、価格弾力性の低い顧客へのサービスから得られる収入を、原資に構築したネットワークの空き容量を、低優先度でもいいから定額制を求めるユーザに利用させることで、利用促進と収入確保の両方を達成できる。 実はこのような考え方は通信業界では一般的なビジョンとなりつつあり、今後ネットワークが電話網を基本とするものから、コンピュータ・ネットワークを基本とするものに転換していく過程で、このような料金体系に変わっていくことが想定できる。 米国においては電話網のままで定額料金制になっているところもあり、これが爆発的な知識結合連鎖のインフラストラクチャーとなっている。日本の通信料金体系も未来を展望して、早めに改革してほしい。
|
| 16.[電気通信事業の国際化のために相互接続ルールのグローバル・スタンダードを持つ] |
情報通信産業は、技術革新によって将来ますます競争的な産業組織を持つことが予想され、期待されている。その一方で、現状においては、産業のコアをなしている市内電話ネットワークについて、グローバルなルールづくりが焦眉の急務となっている。それは、相反する二つの意味において重要である。 第一には、市内電話ネットワークは、現状において、先発の通信キャリア──その大部分は、自然独占と呼ばれていた──によってほぼ独占されているので、この市内網がその他の競争的な通信事業者にとっては、ボトルネックをなしているということである。つまり、競争事業者は自ら市内網を建設するか、先発事業者のネットワークを利用させてもらうかの選択を迫られるが、自ら市内網を建設するコストは非常に大きいので、先発事業者に依存せざるを得ない状況にある。そこで先発事業者の所有するネットワークが貸してもらえるか否か、そして貸してもらえるにしてもいくらで借りられるかが、競争を実現するための条件となる。政策的に第一の条件はクリアできるのが現状であるが、第二のいくらで貸してもらえるのかの問題──これが相互接続の料金問題として、すべての国の共通の課題となっている。ここでは、市内網の技術的構造を解明して、貸す方も借りる方も納得のいくような接続のルールとその料金が決められねばならない。 最近、相互接続ルールづくりの方法として重要性を高めているのは、英国、米国の一部が採用している増分費用(incremental cost)概念に基づいた相互接続料金の算定方法である。これは市内のネットワークを技術的に分解してネットワークのエレメントを明示的にし、さらにそのエレメントごとに最新の技術で計算すればどれだけのコストがかかるかを、モデルとして開示したものである。この方法を採用すれば、少なくとも方法的には各国に共通した相互接続のルールづくりが可能となる。一方、この方法を採った場合、事業者にとって実際に発生しているコストが回収漏れとなる可能性もあり、各国とも現実にはその採用をめぐって議論を継続している状況である。そして、今や通信の市場は人為的な国境以外には、何の境界もない、という時代に入った。早急に国内における先発と後発の競争だけでなく、国外からの競争が有効に機能するような構造を用意せねばならない。この点では、ネットワーク・エレメントを開示したグローバルな相互接続のルールづくりが必須である。 このことは、今一つの意味あいにおいても重要であることに留意せねばならない。現在の技術革新の流れの中では、先発企業の持つ市内網が、果たして、いつまでボトルネックであり続けるかは、極めて不確実である。公正な方法で計算しても、既存事業者の市内網を利用する接続料金は高いということになれば、競争的な事業者はこれを利用しないで自ら市内網を建設するインセンティブを持つ。そしてインフラ部分そのものに競争が導入される可能性がある。このような競争のきっかけをなすものとしても、相互接続のルールが現状の市内網の持つ社会的な機会費用(opportunity cost)を顕示するという意味で重要なのである。 |