1995年11月24日
公文俊平
1994年の初めに米国のゴア副大統領が提唱した「グローバル情報インフラ(GII) 」の理念は、1995年 2月のブラッセルでのG7サミットを経て、広く世界に受け入れられるようになっている。この理念は、米国を中心に近年急速に進展している「情報革命」と密接不可分な関係にある。
この情報革命には、産業革命としての側面と、より広い社会革命としての側面とがある。今日の世界は、第三次産業革命の突破局面に入ろうとしている。新産業技術、とりわけディジタルな情報処理通信技術の革新によって始まったこの突破局面は、今日のインターネットを原型とする新しいグローバルな情報インフラの構築と新しいメガ産業 (マルチメディア産業) の発展をもたらす。それは同時に、企業組織のありかたを変え (リエンジニアリング) 、さらに産業組織の変革 (企業統合やバーチャル・コーポレーションの出現) をもたらそうとしている。こうして産業社会は、「産業化の二一世紀システム」に移行していくのである。
このような変化の意義は、成熟局面にあった「産業化の二十世紀システム」からの延長としては理解できない。既存の電話やケーブルテレビの延長上にGII を構想したり、マルチメディアの応用分野を娯楽を中心とする今日のマスメディアに求めたりするのは、誤っている。
さらに、情報革命には第三次社会革命の側面があることも注意しなければならない。これまでの近代社会は、軍事革命をへて近代主権国家とを生み出し、産業革命をへて近代産業企業を生み出した。その過程で、人びとは臣民から市民へと変わっていった。そして今、情報革命は、一般にはNGO やNPO とよばれているが、実は「近代情報智業」とでもよぶことがより適切な、コミュニケーションとコラボレーションを通じて知的影響力の増進を追求する、新しいタイプの社会的主体を生み出しつつある。同時に人びとのありかたも、「ネティズン (ネットワークの中に生きる市民) 」とでもよぶのがふさわしいものに変わりつつある。彼らの経済活動や情報活動は、二十世紀の「大衆」と呼ばれた市民たちに比べると、はるかに積極性が強い。彼らは自分で必要な財・サービスを探し出して購入したり、自分が公開したいと思う情報や作品を、進んでネットワークの上に公開したりしようとする。「グローバル情報インフラ」は、何よりもこのような智業とネティズンのコミュニケーションとコラボレーションの場、すなわち「智場」となる。産業社会では「市場」での取引の中に他の社会活動の多くが包摂されていったように、来るべき情報社会では、「智場」で説得の中に他の社会活動の多く、とりわけ経済活動 (電子取引) が包摂されていくことになるだろう。