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1997年8月8日

「インターネットアウォード審査講評」

日本経済産業新聞 掲載

公文俊平

インターネットの一年は、ウェブ・イアー (通常の四年にあたる) だとか、ドッグ・イアー (通常の七年にあたる) だといわれるが、今度二度目の審査にたずさわって、まさにその感を深くした。この一年の間に、ホームページの作成スキルには一段と磨きがかかったと思う。入賞した石川県のものなど、まさに息を呑むような豪華な美しさだった。逆に日銀のホームページは、機能に徹した簡素さが快い美しさにもつながっていた。

それに、JAVAの技術もまたたくまに普及して、アニメや音声の利用なども、ごくあたりまえの事になり、ホームページのマルチメディア化も、着実に進展している事がうかがわれた。

 この一年間でのもう一つの大きな変化は、企業のイントラネット化や電子商取引 (インターネット商取引) の導入の試みに代表されるような、インターネットの業務利用の本格化である。今回の審査にさいして、私どもが特に興味をもったのも、インターネットが企業や自治体の日常業務とどのように深くかかわり、その強力な支援手段となりえているかという点だった。

たとえば、県庁や市役所の庁内へのLANの導入による業務の電子化、インターネットの対住民サービスへの利用から、さらにコミュニティの全域にわたる情報通信ネットワークを地域活性化の基盤にしようとする構想や計画がどこまで進んでいるか、といった点に注目したのである。

企業へのイントラネットの導入は、相当進んでいるという印象を受けたが、実際にそれがどのように使われ、生産性の向上にどう貢献しているかとなると、ホームページを見たり、話をうかがったりするだけではもう一つ良くわからないというところに、審査する側のもどかしさがあった。トータル・システムとしてのインターネットの活用を審査し表彰しようということになると、審査の仕方自体にもう一工夫擁しそうである。また、ホームページの制作代行など、インターネットにかかわるサービス自体を業務としている企業の作品を、評価対象にするのがどこまで適切か、少なくとも他の企業と同じ基準では評価すべきではないのではないかという意見も、審査委員の中からでた。

電子商取引への利用の試みはいっせいに進められているとはいうものの、まだまだごく初期の段階にあり、その成果をうんぬんするところまでは来ていない。この分野は、来年の課題ということになるだろう。

 自治体による業務利用が本格的に始まるのも、まだこれからののようだ。そのためにも、地域の全員が安価に利用できる高度な情報通信インフラの構築が、早急に望まれるのだが、その意味では、全戸にパソコンを配布し、ISDNでネットワーク化して多面的に利用して行こうとしている富山県の山田村の奮闘は、注目に値する。ホームページを通じて行なっているさまざまな試みも好感がもてる。ということで、山田村は受賞寸前のところまで来たのだが、成人に達した男女はともかく、小学校の新入生まで顔と名前を全員掲示するのは、プライバシー保護の観点からしていかがなものかという疑問が委員の一人から出され、侃々諤々の議論が交わされた。ホームページが、村のコミュニティのメンバーだけが見るものならばまだしもかも知れないが、不特定多数の人々に公開されているとなると、確かに疑問が残る。というわけで、しばらくの議論の後で、念のためもう一度ホームページにアクセスして確認しようとしたところ、その部分は変更の手が加えられている途中で、空白になっていた。やはり山田村の方々も勇み足に気づかれたのだろうということで、惜しくも今年の受賞は見送りとなった。

 この種の問題は、先端的な試みに挑戦する場合にはつきものだろう。山田村は、これにめげずに (という僣越な表現はお許しいただいて) 、次々と新しい課題に挑戦し続けていっていただきたいものである。とくに、山田村としては、ISDNの次にくるレベルのコミュニティのネットワークをどのような形で構築していくのだろうか。すでに赤外線や電力線の利用などといった興味深いアイデアもでているようだが、山田村の今後は全国的にも注目の的になるだろう。

 第二期目を迎えた米国のクリントン=ゴア政権は、高度情報通信基盤(NII) やマルチメディアとは、実はインターネットのことだったという認識を明確にした。そして、電子政府とはインターネット政府のことであり、電子商取引とはインターネット商取引に他ならないという立場を、明確に打ち出している。そして、今年の大統領教書が縷々述べたように、インターネットの利用の中心を、教育面での利用におこうとしている。日本でも、今やインターネットの教育への導入は「国策」になったといわれる。

 インターネットの普及を本格的に促進するための大前提は、大都市だけでなく全国のあらゆる地域に、コンピューターのネットワーク (CAN=コミュニティ・エリア・ネットワーク) を構築することである。同時に、それを維持・活用するための全国的なサービス網を、そのための人材の研修・教育網と合わせて、はりめぐらせることである。今年自治体部門で受賞した岡山県は、そのための一つのモデルを提供しているが、他にもさまざまなモデルが考えられるだろう。来年の応募作品ないし応募事例が、さらに多彩で高度なものとなることを期待する。

日経本紙用

 この一年の間に、ホームページの作成スキルには一段と磨きがかかったと思う。入賞した石川県のものなど、まさに息を呑むような美しさだった。それに、アニメや音声の利用なども、ごく普通の事になり、ホームページのマルチメディア化も、着実に進展している事がうかがわれた。

 問題は、インターネットが企業や自治体の日常業務とどのように深くかかわり、その強力な支援手段となりえているかだ。電子商取引への利用の試みはいっせいに進められているとはいうものの、まだその成果をうんぬんするところまでは来ていない。この分野は、来年の課題ということになるだろう。

 今年特に注目したのは、企業でいえば、その情報システムの「イントラネット」化による業務の再編成が、自治体でいえば、庁内へのLANの導入や、インターネットの対住民サービスへの利用から、さらに地域活性化の基盤としての位置づけや利用が、どこまで進んでいるかという点だった。企業へのイントラネットの導入は、相当進んでいるという印象を受けたが、実際にそれがどのように使われ、生産性の向上にどう貢献しているかとなると、ホームページを見たり、話をうかがったりするだけではもう一つ良くわからないというところに、審査する側のもどかしさがあった。

 自治体による業務利用が本格的に始まるのは、まだこれからののようだ。そのためにも、地域の全員が安価に利用できる高度な情報通信インフラの構築が、早急に望まれる。