本稿は1999年9月28日に国際大学グローコム副所長・教授 青柳武彦が日本関税協会において講演をおこなったもので、雑誌「貿易と関税」11月号に掲載予定のものです。同協会のご同意を得てここに掲載するものです。

はじめに
 国際大学の青柳です。国際大学は八二年に日本で最初の大学院専門の大学として設立されました。現在、世界三九か国からの留学生が学生の七五%を占めています。授業は全部英語で行い修士号を取らせています。われわれのグローバル・コミュケーション・センター、略称グローコムは、興銀の中山素平名誉顧問のリーダーシップにより作られた社会科学系の研究所で、所長は公文俊平先生です。研究所の精神は、「学者は誰も読まない論文だけ書いていてはダメ、すべからく世の中のプラスになる研究をやって提言を行い社会に貢献せよ」ということです。「プロポーズ・オア・ダイ(世の中に提言せよ。それができないなら死んでしまえ)」というわけですね。そういうわけで本日のテーマの「コンピュータ二〇〇〇年問題」もグローコムの重要な研究課題となっています。現在まで毎週研究会をやっています。

一.二〇〇〇年問題…本質をとらえた危機管理計画を!

二〇〇〇年問題も、残すところ既に一〇〇日を切ってしまいました。事故が起こらないようにする対応策をきちんと講じる時間的余裕はもうありません。したがって今となっては、たとえ問題が生じてもあまり深刻にならないようにする危機管理の方に力を尽くすしかありません。その危機管理も、二〇〇〇年問題の実態とか本質に基づいて、対策をとらなければいけません。では、その実態・本質とは何でしょうか。

二〇〇〇年問題の実態と本質
 まず、放置すれば必ずシステム・ダウン又は誤作動を起こすということです。それにもかかわらず、日本の企業、特に中小企業の多くが何もしていないといっても過言ではありません。政府は「何々が何%完成して、何月何日までにテストも終了する予定です。」という調子で極めて楽観的な見通しを発表しています。しかし、われわれが独自に調べたところでは、とても、そのようには準備は進んでいません。
 政府はアンケートをいろいろ出しています。それに対して多くの企業や組織が、実は殆ど何もやっていないのに「何もやっていない」というところに丸を付けて出すのは格好が悪いので、何かやっていますというほうに丸を付けて出している。そういうケ−スがあまりにも多いのです。特に地方公共団体が何も対応策を実行していないのに、やっている方に丸を付けて出すというのは、そば屋の出前の「もう出た」というのとはわけが違います。住民への責任があるわけですから、たいへん罪が重いと思います。
この問題は人類共通の負の資産と考えるべきでしょう。つまり、今更、誰が悪いのかを究明するのに血道をあげても、この段階ではあまり益はないのです。責任追及は後日ゆっくりやってください。実際、六〇/七〇年代は二桁対応が通常だったのですから、ユーザの方にも責任があります。今はとにかく何らかの手を打たなければいけないという段階です。
ところが、二〇〇〇年問題には対応策を進めているとイモづる式に問題点が発生し、作業も費用もどんどん増加するという厄介な性格があります。更に、完璧なテストには長い時間と費用がかかるという点があげられます。特に埋め込みチップの問題は後に述べるように簡単にはゆきません。

完璧な対応は有り得ない
ここが大変重要な点なのですが、二〇〇〇年問題についての唯一の正しい認識は、「Y2K(=二〇〇〇年。Yはイヤー,Kはキロ)問題はどんなに対応作業を行っても、人間がやる限り一〇〇%完璧はあり得ない。」ということです。常にこの観点から対応策を考えなくてはいけません。この点は本日、これから何回も申し上げます。
 現在、政府がいろいろ対応策を講じて発表していますが、こういう観点から見ると基本的な考え方の面で間違っている点が多いのです。たとえば九月十三日から十四日にかけて国内航空三社が実際に飛行機を飛ばしてシステムの時刻表示を年末の○時○分に設定してテストを行いました。そして、何も問題が起らなかったから少なくとも日本の航空機に関しては安全であるという宣言を行ないました。しかし危機管理の観点からいうと、これはたいへん間違った考え方です。
なぜか。まず、これによって「安全です」という認識を国民に植えつけるのは、「Y2K問題は、どんなに対応作業を行っても、人間がやる限り一〇〇%対応はあり得ない」という本質を隠してしまうことになるからです。公開で模擬テストをやって、結果オーライであった。それは大変結構なことです。公開テストをやるまでの間に関係者は大変な準備をされたことでしょう。それは全部対策に役立っている筈です。
しかし、危機管理の正しい考え方は、模擬テストの段階までやって何も問題はないことを確認した上でも、更に念には念をいれて年末年始は欠航、または大幅減便をやろうという考え方なのです。既に英国のヴァージン・アトランティック航空やオーストラリアのアンセット航空など、いくつかの航空会社が欠航を発表していますが、彼らは決して自信がないから、あるいは準備不足だから欠航するという訳ではありません。
JR東日本は、年末年始は全ての列車を最寄りの駅に停車させることを決めました。フランス国鉄も前後二○分間運転を中止します。正しい決定だと思います。それは二〇〇〇年問題への対応が間に合わなかったからではないし、いわんや技術に自信がないからではありません。二〇〇〇年問題では人間がやる限り一〇〇%の対応はあり得ないことを正しく認識し、かつ他社の原因で事故がおこることもあり得ると考えるからです。
これに反してJR西日本などは、対応をしっかりやったから事故はない筈、したがって列車を停めることはしない、といっています。対応を完全に行えば、事故は完全に防げるという幻想を持っているからそういう考え方になるのです。対応を完璧にやって、なおかつ万一に備えるのが危機管理です。いわんや、繰り返し申し上げますが「Y2K問題はどんなに対応作業を行っても、人間がやる限り一〇〇%完璧はあり得ない」のですから、念には念を入れるべきなのです。

増え続ける対応費用
 対応費用の問題ですが、二〇〇〇年問題対応は大変お金がかかる作業です。逆にいうと、お金をかけていないところは何もやっていないとお考えいただいて結構です。お金をかけずに対応が出来てしまったなどという手品みたいなことは、日本中、いや世界中どこへいってもありません。実際、ムーディーズなどの世界の格付け機関は、ある企業がどのくらいの費用をかけたかによって、その企業の二〇〇〇年対応レベルを評価しています。
米国の政府主要二四機関による総対策費用の推移を見てみましょう。これは、米国の議会に属している会計検査院(General Acounting Office)が報告しているものです。日本の会計検査院は行政官庁に属していますが、米国のGAOは議会に属しており、たいへん興味ある報告を出しています。どこそこの機関はいくら督促しても締め切りまでに報告を出さないから、我々がその下部機関に直接行って調べた、などという表現が随所に見られます。日本の、互いの面子を重んじる役所の文書には絶対に見られない表現です。
見積り費用の集計を見ると、九七年二月の時点では二三億ドルとなっていました。それがアレヨアレヨと言う間に増え続けて、いまや一〇〇億ドルを超える金額になりつつあります。二〇〇〇年を超えても、おそらく費用は発生し続けるでしょう。
では、これに対応する日本の政府機関はどの位の費用をかけているのでしょうか。平成九年度で九八億円、平成十一年度で二四八億円、合計でも三四六億円です。実に米国の三〇分の一位しか使っていません。米国は日本よりも人口が多いとか、国が大きいとか、軍事費がたくさんかかっているとか、いろいろ理由はあるでしょうが、それにしても三〇分の一というのはたいへんな差です。
 この差は何なのでしょう。私はチェック体制があるかどうかの差が大きいと見ています。米国の場合は、いろいろな対応進捗度などの数字を当事者に申告させたら、それが本当なのかどうかということをどんどん検査官が出ていって調べるシステムが確立しています。残念ですが日本はそういうことをまったくやらずに、申告を全て鵜呑みにしています。前に申し上げた通り、そば屋の出前の「もう出た」と同じですから、全部信じるわけにはゆきません。例外は金融監督庁です。監督官はたったの四名ですが、独自の調査と指導を強力に行っています。

災いを転じて福となせ !!
 危機管理を策定するにあたっては、考えるべきいくつかの基本的な原則があります。まず、「災いを転じて福となせ」ということです。これはクライシス・マネージメントの第一歩です。どんなに悲惨な大事故でも、後で振り返ってみると何かしら良いことはあるものです。関東大震災のような悲惨な災害でも、そのおかげで東京の区画整理ができたとか、システムが全部壊れてしまったために、それまでだったらできなかったような新しいシステムを思い切って導入することができたとかいうことはあるものです。そこに費用と時間を思い切ってつぎ込むのです。それによって、初めはマイナスの要素しかなかった災害もプラスの要素を含むことが出来るようになります。
日本の金融機関にしても(もし、銀行の方がいらっしゃったら御免なさい)長い間の規制と保護の下でぬくぬくと育ってきて、従業員も高給料に甘えていました。しかし、金融ビッグバンの荒波のなかで、このままでは存続できないという危機に瀕しています。その結果、色々な思い切った経営改革が断行され、給料も能率給主義に転換したところが出てきています。他の業種では当たり前のことですが、こういう改革は、環境が安泰なときにはなかなか出来るものではありません。危機に瀕して初めて可能になるのです。
 ですから私は、二〇〇〇年問題もについては「危機をしっかりと見据えて、災いを転じて福となせ」と連呼しているのです。ところが、ある人が私に言いました。「青柳さん、日本では、二〇〇〇年問題は誰も危機とは思っていないのだから、そんな事を言っても空振りですよ」…… 皆さんはどうでしょうか?

起こる確率は無視して影響のみに注目せよ
 天災は、何時起こるかわかりませんが、何が起こるかは大体わかります。ところが、二〇〇〇年問題は、何時起こるかということはハッキリ判っていますが、何が起こるかはわかりません。したがって、対策を考えるにあたっても、それが起こるかもしれない確率にとらわれてはいけません。もし起こった場合に重大な影響があるかどうかだけを考えて、対策を講じて下さい。
 たとえば、二〇〇〇年問題で家庭のビデオ録画装置が狂ってしまう確率はかなり高いでしょう。しかし、こんなことは起こっても別にどうということはありません。死ぬわけではないし、リセットボタンを押せば直るかもしれません。そういうものには事前に対策を講じなくても良いのです。
 それに反して、中東から石油が来なくなるかもしれないとか、電気が停まってしまうかもしれないということには、起こる確率がいくら低くても影響は極めて重大かつ深刻ですから、一応の対策を考えておかなければいけません。実は、こういう考え方をしていないのが政府の対応策の間違った部分です。安全宣言を出そうと努めたり、「しっかりと対策を講じたから、起こる確率は極めて低い」などと言って、もし起きた場合の準備はしないということではだめなのです。ただし、完全な準備というのもあり得ません。ある程度以上のところは「割り切って」、覚悟を決めて結果を甘受するしかないでしょう。

自己責任原則と哲学に基づいた計画の策定を
そういう「割り切り」の程度をどの辺に取るかは各自の哲学と対応能力によります。既にエドワード・ヨードン(米国の有名なコンピューター科学者)のようにニューヨークのような大都市を引払ってニューメキシコ州の田舎に疎開してしまおうというような動きがたくさん出ています。米国の場合は、停電が起きたり、交通渋滞が起きたりすると暴動が起きてスーパーマーケットのガラスが割られて略奪が始まる危険性があることを考えておかなければなりません。それに暴徒は銃を持っていますから恐いのです。
さらにロシアの核ミサイル・システムが誤作動してミサイルが飛んで来る危険も考えておかなければなりません。こういう環境の中で、それぞれが自分の哲学と能力に応じて対応を考えているわけです。自己責任原則と哲学に基づいて危機管理の行動をする人を揶揄するがごときはとんでもないことなのです。準備が空振りに終わる確率も高いのですが、それは当人も十分承知なのです。

危機管理計画は階層(国家、組織、個人)別に策定せよ。
 危機管理計画は皆が同じことをやる必要はありません。国家は一〇年単位の危機管理計画をやって頂きたい。組織は一年から五年の危機管理計画をやって欲しい。個人は週から月単位の危機管理計画をやるべきであるということです。

二.国家レベルの危機管理計画

 七月二七日にグローコムの公文俊平所長と舛添要一先生がお二人で小淵総理を訪問して、国家として以下の七つの危機管理をしっかりやって欲しい、と申し入れを行いました。これに関し、九月二四日のグローコムY2K研究会に内閣内政審議室より担当官がおいでくださり、検討中である旨の回答を頂いております。七つの危機とは次の通りです。

危機1 情報の不足による国民の過剰反応
 現状では、情報がまったく不足していますから、国民一億全員が楽観的というか、危機感が全く欠如した状態です。ですから今の所は過剰反応などは薬にしたくてもありません。しかし、このまま情報不足のままですと、いざという時にパニックが起こる危険性があります。正しい情報、特にマイナスの情報をどんどん公開すべきです。パニックを恐れてマイナス情報を公開しないなどということは仮にもあってはならないことです。
米国では、昨年、情報開示法(Year 2000 Information & Readiness Disclosure Act)というのが出来ました。コンピュータ・メーカーやソフトハウスは、自分の製品に何か問題があると思ったら、その情報を勇気をもってどんどん開示することを促進しようという法律です。そのかわり、開示した情報を根拠に訴訟を起されることはありません。もっとも欠陥のある製品を売り出しておいて、その責任が免除されるわけではありません。しかし、情報が開示されたら利用者の方にもそれに応じた手段をすぐにとる義務が生じます。それをやらないと、仮に後日、損害賠償請求が認められた場合でも、もらえるはずの金が過失相殺で大幅に減ってしまいます。
ですから、米国のコンピューター産業は、自分の会社が二〇〇〇年問題で蒙るかもしれない損害を最小にするためには、マイナス情報でもどんどん公開してしまうしかないのです。インターネットを見ますと米国の場合にはそういうマイナスの情報が満ちあふれています。社会全体が対応策を取るためには実はマイナスの情報こそが役に立つのです。
 それに引きかえ日本では、インターネットのどのサイトを見ても、「わが社の対応は完璧です。」という宣伝文句で満ちあふれています。これでは、だれが見ても日本における二〇〇〇年問題は心配ないと思ってしまうでしょう。お役所の出す情報もすべて楽観的な情報ばかりです。
更に、米国の情報開示法では、二〇〇一年七月十四日まで反トラスト法の一部を一時的に停止することまでうたっています。業界談合でも連絡でも心配なしにやって、対応に万全を期してくれというわけです。そこには独占禁止法上の問題点よりも、米国にとって企業を存続させること、および産業を維持することのほうがずっと大事であるという認識があります。
ところが、日本の公正取引委員会は、「二〇〇〇年問題に名を借りた談合は断固取り締まる」という告示をわざわざインターネットに出しています。法律通りの正しいことを言っているわけですから、その限りでは非難されることはありません。しかし、二〇〇〇年問題は不公正取引や独占問題よりもはるかに重要で深刻な、産業の存続に関する問題なのだという認識がまったく欠如していることをはからずも露呈しています。

危機2 救助・復旧等共同作業の混乱
問題発生前後において、自衛隊、消防、警察、ライフライン事業者、病院等が、緊密な協力体制を構築して密接に協力をしあう体制を作っておくことが必要です。また共同作業における混乱を防ぎ、作業の効率化を図るため、情報の共有を行うための情報通信ネットワークの構築が必要と思われます。

危機3 輸入原材料・エネルギー・食糧等の不足
 日本は世界の先進諸国のなかでは類を見ないほど輸入に依存している国です。食糧、食品ではエネルギー換算で四二%を海外からの輸入に依存しています。エネルギーにいたっては七九・九%、中でも石油は九九・七%の依存率です。したがって、輸入相手国の二〇〇〇年問題が、日本の二〇〇〇年問題なのです。日本だけ対応をやっていればいいわけではありません。
今度の台湾の大地震の結果、すでに日本のコンピューター基板の相場がどんどん上がっています。かつて日本国内にあったIC製造業は今では全部海外にシフトしています。インド、インドネシア、中国からシリコンの原材料をたいへん安い価格で輸入して、台湾や韓国で製造しています。IC産業の「IC」とは、インド(India)とチャイナ(China)のICだと言われている位です。でき上がった基板を日本に持ってきてパソコン等を組み立てているわけです。
その中国や台湾や韓国で、もし二〇〇〇年問題による事故が起きたら、日本には製品が来なくなります。日本には原料もないし製造工場もありません。このように現れる二〇〇〇年問題は、日本だけで回復させる能力はありません。

中東石油問題
 いちばん恐いのは石油です。中東では石油産業が七三年に国有化されて以来、輸出は中東諸国の完全なコントロール下にあります。二〇〇〇年問題対応をどのようにやっているか心配です。国内石油資源が豊富な米国でさえも、上院が「中東における石油の問題はたいへん深刻だから、米国も備蓄をしなければいけない」とまで言っています。
 日本でも五月二八日に行われたの衆議院・災害対策特別委員会で、自由党の達増議員が、「石油確保に関する日本の二〇〇〇年問題対応はどうなっているか」という質問を致しました。それに対する政府委員の回答は極めて楽観的なものでした。すなわち「中東諸国は年内には対応が完了すると言っていますから多分大丈夫でしょう。中東諸国にとって、石油輸出代金収入は大切な筈だから、これを危機に瀕させることはないでしょう。また日本には一六四日分の備蓄がありますから、問題はないと思います」という答えです。要するに、特には何もやっていませんというわけです。九月の二〇〇〇年問題の顧問会議でも全く同じやり取りが繰り返されています。
石油輸出産業というのは現地の電気、上下水道、海水淡水化装置などのすべてのシステムが密接にかかわっています。世界中でこれだけ皆が心配して危機管理計画を策定しようとしている状況なのに、何故中東諸国だけが対応策が完璧で心配はないと考えることができるのでしょう。
いくつかの商社の石油輸入担当役員に聞いてみましたが、代表的な回答はこういうものでした。「政府や通産省が言っているように何も起きないということはないでしょう。ただし、その混乱は一ヶ月くらいで収まると見ています。」
さらに中東の経済・宗教・文化それぞれの専門家の意見を聞いてみますと、「中東諸国は、現在は微妙な力のバランスでかろうじて社会が安定しているに過ぎないから、仮に一ヶ月間もの石油輸出産業の混乱があったとすると、とてももたないだろう。」という意見さえあります。
中東諸国では王族の高齢化が進んで統率力が弱まっているし、問題が発生した場合には輸出産業が依存している外国人の国外流出がとまらなくなるし、何よりもイスラム原理主義の動きを押さえられなくなるだろうというわけです。こういうことを総合的に考えると、とても「まあ、大丈夫でしょう」なんて言っていられない筈なのです。
 答弁の「中東諸国にとり石油輸出収入は大事な筈だから、これを危機に瀕せしめるようなことはないでしょう」に至っては何をかいわんやです。すべての人間は常に合理的に行動するということを前提にしての発言ですが、これは事実に反しますね。人間は毎日不合理なこと、説明できないことをやってしまうものです。組織も国家もみな同じです。とりわけ、イスラム原理主義というのは、邪悪な西洋を排除しようという考え方で凝り固まっていることを考えないといけません。彼らによれば、石油輸出は邪悪な西洋を利するだけであり、しかも、その代金は王族等の支配者階級の懐に入るだけであって、我々の懐に入るわけではない、というわけです。「マホメットの時代には石油はなかった、石油輸出産業反対、つぶしてしまえ」というわけです。
 「中東諸国にとって石油輸出収入は大事な筈だから、ちゃんとやるでしょう」などという甘い考え方でやってもらっては困るのです。「日本は一六四日分の備蓄があるから問題ない筈」というのもたいへん楽観的な考え方です。確率からいえば、多分その通りでしょう。しかし、冒頭に申し上げたように、二〇〇〇年問題では起るかもしれない確率にとらわれてはならないのです。起きた場合の影響だけを考えて対策を練るべきなのです。

危機4 海外でのトラブル
問題発生時の外交ルートを予め確保したり、在留邦人の保護策を講じておいたり、途上国に対する対応支援および人道的緊急援助等を事前に検討しておく必要があるでしょう。また、海外に対し随時我が国の問題発生状況を的確に発信し、対応の参考としてもらう必要があります。

危機5 社会的混乱
二〇〇〇年問題に伴う騒乱、犯罪を想定して、警備体制の強化などの対応策を講じる必要があります。また買い占めや個人備蓄の増加に伴う一時的物不足や物価高騰に対してもその対応策を検討する必要があるでしょう。

危機6 内外勢力からの破壊活動
 治安確保策やサイバーテロ対策なども真剣に考えておく必要があります。カナダでは三万二千人の軍隊を、国内で掠奪や暴動などが起きた時にこれを鎮圧するために国内各所に分散配置することに決定し、これにアバカス(算盤)作戦という名をつけました。コンピュータが駄目なら算盤を使えというしゃれですが、内容はしゃれどころではなく深刻な話です。軍隊に警察権限を与える法律改正が行われました。海軍は、大型艦は全てドックに係留して臨時の発電所、緊急病院、炊き出し設備に転用する事を決めました。さらに今後は二〇〇〇年問題に関連するもの以外の調達が禁止となりました。コンピュータを更新するとか、ソフトのY2K問題対応を行うとか、軍艦を病院に転用するためのベッドを購入する等の用途以外のものはすべて中止または先送りというわけです。
米国も同様な内容の「ポジティブ・レスポンス作戦」というのを展開しています。この類の対策は日本は何もやっていません。
米国人が大変心配していますのは、やはり安全保障の問題です。ご承知のとおり、いまだにロシア側に二五〇〇台、米国側に三〇〇〇台の核弾頭を積んだミサイルがにらみ合っています。これが誤作動する危険性がかなりありますので、米国はせめて年末年始の間だけでも弾頭を外そうという交渉をしてきました。しかしロシアは、ユーゴスラビアの問題に抗議して交渉を打ち切ってしまいました。米国は「NATOは米国ではない」と言ったのですが、ロシアは「NATOは米国」だと言って譲りませんでした。
しかし、コソボ問題が一応決着したので、交渉が再開しました。ところがロシアは「三〇億ドル支援してくれ」と米国に言ってきたそうです。考えてみればおかしなものです。核弾頭兵器を米国に向けておいて、「誤作動するかもしれないから、三〇億ドル出してくれ」と相手の国に言っているわけです。国際政治の社会では、そういうたいへん不可解な現象がいくらでも起きているらしいですね。
ようやく九月十三日になって、米国のコーエン国防相とロシアのセルゲーエフ国防相が合意して、米国のコロラド・スプリングスにロシア・米国の共同対応センターを作ることになりました。もし誤ってミサイルが発射されてしまったら空中で打ち落とそうというものでしょうが、果たしてうまくゆくのでしょうか?
日本人も「米国は大変ですね」などと言ってはいられません。テポドンの問題があります。もし私が北朝鮮の軍事専門家で、テポドンをいつ日本向けに発射するかを決めなければいけない立場としたら、二〇〇〇年問題のタイミングがいちばん効果的と考えるでしょう。一応の対応策を考えておくべきではないでしょうか。

危機7 訴訟の乱発
米国は、これをたいへん心配しています。国連および世界銀行が米国における訴訟の金額は一〜二兆ドル(一二○〜二四〇兆円)と予測しています。米国のコンピューター産業がいくつも引っくり返ってしまう金額です。
訴訟の乱発を抑えるために、"Y2K Act"というのを七月二十日に成立させました。米国の場合には、とくに懲罰的損害賠償の規定がありますから大変なのです。皆さんのご記憶にも新たと思いますが、先般、自動車に欠陥があったため、追突されたときに火事が起きて火傷を負った女性がGMを訴えました。そして直接的な損害賠償請求額が一億四〇〇〇万円、加えて懲罰的賠償請求額が何と六〇〇〇億円という天文学的な金額にのぼりました。
 米国の場合、懲罰的賠償金額は相手の会社の売上高、年間総利益、総資産等をベースにして計算する判例がありますので、GMのような大きな企業の場合にはそういう金額になってしまうのです。二〇〇〇年問題でそういう問題がバンバン出てきたら、米国のコンピューター産業はいくつあっても足りません。したがって、この法律では消費者集団訴訟にも制限を加えています。
九月二四日に、内閣の二〇〇〇年問題推進室から「日本では訴訟の乱発の心配はないので対策を講じる必要はないと考える」旨の返事が来ました。私が心配していますのは、米国の企業はこういうふうに守られているのに、日本企業は守られていないわけですから、米国の消費者が日本企業を狙いうちにして、日本で集団訴訟を起こしたらどうするのかということです。やはり、こういう問題は国際的に同じレベルでやらないと具合が悪いのではないでしょうか。

四.市民レベルの危機管理計画

今年の一月十八日にタイム誌とCNNとが共同で世論調査を行いました。「少し心配しています」、「かなり心配しています」と答えた人が約六割いました。そう答えた人に更に「では、どうしますか」と聞いたら、次の通りになりました。すなわち
「銀行口座から余分に現金を引き出す」が四七%、
「水や食料を貯蔵する」が三三%、
「飛行機に乗らない。」が二六%、
「家族を家に集める」が二六%、
「車や家庭用の燃料を貯蔵する」が二三%、
「ショットガンで武装する」が一三%。驚きますね。もっとも日本ではショットガンは売っていませんから買いたくても買えません。
「田舎に引っ越す」が一二%でした。

 前に申し上げた通り、個人がどこまで準備をするかはそれぞれの哲学と考え方によります。完全な準備は無限のコストがかかりますから出来ません。したがってある線以上のところは割り切って影響を甘受するしかありません。しかし能力のある人はその線をかなりのところまで押し上げることが出来ます。私も、できたら田舎に引っ越して、何があっても大丈夫なようにしたいとは思っていますが金も暇もないので実行できないだけです。
最近、伊香保の温泉旅館業組合が「二〇〇〇年パック」というのを売り出しました。旅館業組合で食料も充分準備し、停電になっても発電機を使って電気をちゃんと流すなど対策を全部講じます、というわけです。お金のある方は伊香保にいって、半月ぐらい温泉にでもはいってゆっくり過ごすと良いかもしれません。

電力
ライフラインのうち電力の場合は、先ほどからいろいろ憎まれ口をきいてはきましたが、日本の電力会社の二〇〇〇年問題対応はたいへん優れており、世界のトップレベルだと思います。しかし、それも日本は長い間規制と保護の環境下にあったから、産業の業態が簡単で対応もやりやすいという事情もあるのです。
 米国の場合は早くから自由化が進んでいますから、発電の形態も送電も買電も非常に多種多様で、電力事業者の数も三二〇〇社あります。システムにしても関係するコンピューターのOS(コンピュータの基本ソフト)も何種類もあって、二〇〇〇年問題対策は非常に複雑かつ困難になっています。
日本の場合には沖縄も含めて一〇社、プラス原子力発電と電源開発で合計一二社しかありません。しかも一〇社は基本的に発電、送電、配電と全部同じことをやっています。しかも、ちょっと意地悪な言い方になりますがみんな未だに大型汎用コンピューターの集中処理システムが中心です。しかも、日本の場合は法律で制御用システムと事務用システムとがデータを共有してはいけないことになっています。米国の場合はどんどんネットワーク化を進めて両システムは勿論相互乗り入れをやっていますから問題も大きいのです。
日本の場合は電車の運転手が「出発・進行」と指呼しているのと同じように、オペレータが「なになに開始、なになに××」とやっています。こういう人間系の部分には別の問題点が発生しますが、少なくとも二〇〇〇年問題はありません。こういう事情がある上に、関係者が全員たいへん真剣にやっておられることもあって、日本の電力会社の二〇〇〇年問題対策は、公平にいって大変よくできているといって良いでしょう。
しかし、何回も申し上げている通り「客に心配をかけたくない」という危機管理の考え方と相容れない発想のためにマイナス情報の開示は一切おこなわれておらず、客先の危機管理計画策定の妨げになっています。なにしろどんな事があっても絶対に停電はありません、といい切っているのですから。
個人は通常の防災対策程度(懐中電灯、ストーブ、石油、コンロ用のボンベ等)は準備しておく必要があると思います。私は家庭用のカセットボンベを一〇〇個買いました。企業は、業態によりますが操業確保用の電源手配(?)ぐらいは必要かもしれません。

都市ガス・水道
次に、都市ガス・水道はどうでしょうか。ガス会社も、「大丈夫だ」と言っていますけれども、本当のところはわかりません。水道は地方自治体が管理・運用しています。地方によっては遅れている所がたくさんあって、まちまちです。東京都水道局が一番しっかりとやっていると思います。絶対に大丈夫と申し上げたい位ですが、それは二〇〇〇年問題の本質にもとりますから申しあげませんが…。しかし、一応飲料用にペットボトルくらいは少し多目に用意して、トイレ用の水を浴槽に張るぐらいのことは必要です。

電話
それから、電話はどうでしょうか。日本ではまことに幸いなことにNTTの交換機はDIPS六○と七○の一種類しかありません。しかも、時系列対応はしていません。こういう国は他にありません。他の国では、いろいろなメーカーの交換機が入り乱れています。交換機のOSがみな違いますから大変複雑なことになっています。この二〇〇〇年問題の総合的な対応は大変です。
NTTの二〇〇〇年問題担当の方は、他の「絶対大丈夫」と連呼しておられるところと違って、「大体だいじょうぶだけれども絶対ということは有り得ない」といっておられました。良く問題の本質を掴んでおられるようなのでかえって安心しました。社外の検査・監査も受けています。そのNTTの方が、「携帯電話やインターネット電話は、電話網と共通している部分もあるけれども、共通していない部分も沢山あるから、代替回線として意味があるかもしれない」と言っておられました。

米国の都市ユーティリティ
 実は現在、米国の都市ユーティリティについて、たいへん具合の悪い情報が流出してしまい米国政府が弱っています。米国海兵隊・米国海軍が調査した資料ですが、これにによると、部分的な停止があり得るのが四三都市、部分的な停止がありそうなのが三八都市、全面的な停止がありそうなのが何と四四都市もあります。最後の全面的な停止がありそうな都市には、ボルティモア(水道・下水)、バッファロー(水道・下水)、ニューヨーク市(水道・下水)、サンノゼ(下水)などがはいっています。 これはさすがに大問題になりました。コスキネン大統領二〇〇〇年問題対策委員会委員長は「この資料は発表するつもりで作ったわけではない、軍隊がつくった資料であり、最も悲観的な見通しに基づいて作成している、これが最もあり得る状態とは思わない。」と一所懸命言い訳をしています。ところが、記者から「危機管理対策は悲観的に考えてやるものではないか」と反撃されて、たいへん困っています。

病院・医療
 さて、病院・医療はどうでしょうか。米国も日本もたいへん問題が多い分野です。私の家内が某病院へ行って、「血圧の薬がなくなると困るから、血圧の薬を備蓄しておいて欲しい」と頼んだら、お医者さんから「二〇〇〇年問題というのはコンピューターの問題ですから、医療や薬は関係ないんですよ」と説得されてしまいました。「家の主人は違うことを言っていますが…」と家内はモゾモゾ言っていたようですが、病院の中では医者と患者と関係は絶対すから、結局口答えできずに帰ってきたようです。
 多くの医療機器メーカーは、病院からの圧力によりテストをパスしたものに安全マークをつけて納入しています。どんなテストをしているのか、某メーカーにわれわれの研究会で発表してもらいました。テストの方法の発表後、研究会がシーンとなってしまいました。研究会の委員の一人で、長い間、米国で電子工学の教授をやっておられた専門家の先生が慨嘆して曰く、「アア、日本の工学部の教育が間違っていた」と。要するに、そのようなテストでは全然テストにも何にもなっていないというわけです。これはそういう技術者を育ててしまった教育に問題があった、ということを言おうとしたわけです。
そのテストとはシステムの日付け表示を十二月三十一日十一時五十九分ぐらいにし設定しておき、一分たっでパッと日付が変わったら「これは大丈夫だ」ということで合格のハンコを押すということです。もうおわかりと思いますがアプリケーションからOSへの時刻の問い合わせは頻繁に起り、日付け管理はもっと複雑に行なわれていますの、このテストは全く無駄とまではいいませんが、極めて小さな部分の対応しか確認できないのです。
医者が合格マークを盲信してチェックをしなかったらどういうことになるでしょうか。考えてみれば恐ろしい話です。お医者さんは医療の専門家ですが医療機器については素人です。医療機器メーカーは機器の専門家ではあっても必ずしもコンピューターの専門家ではないわけです。最近、若い方が、「一月一日に二〇〇〇年ベビーを生む」なんて言っていますが、やめたほうがいい。年内に、早めに生んでおかれた方が良いですね。

金融・証券
 それから、銀行・証券はどうでしょうか。これも逆説的な言い方なのですが、世界の銀行・証券のネットワークの対応レベルからいえば、日本はたいへん進んでいます。しかし、これも「病院のカルテ・システムに二〇〇〇年問題はありません」と言うのと似たような意味があります。病院のカルテシステムは全部紙でやっていますので、まったく電子化されていないからです。
 米国の銀行は顧客サービスの面におけるネットワーク化がたいへん進んでいて、十数年前からゼロ・アカウント・サービスをどこの銀行でもやっています。ゼロ・アカウント・サービスというのは、「全米に何千いや何万と入出金の拠点があろうとも、全部当行にお任せください、当行はその帳尻を毎日計算して、帳尻をゼロにしましょう、つまり必要なだけのお金しかお貸ししませんから余分の金利は一セントもいただきません」、というものです。
 日本の銀行は、規制と保護のもとで長い間安逸な夢をむさぼってきましたから、現在お客さん向けにそういうネットワーク・サービスを展開できる銀行は一つもありません。ゼロアカウント・サービスどころか、例えば七千五百五○万円を貸してくれと頼むと、貸してくれる場合でもきりの良い一億円にしてくれといわれてしまいます。日本では、行員全員が端末を一つずつ持っていて、ネットワークで仕事をしているところさえもあまりないのではないでしょうか。
 米国では顧客とのネットワークが広域に展開されています。それもパソコンやワーク・ステーションを駆使して継ぎ足し継ぎ足しで広げていっています。インターネットをどんどん使って、ルーター・ベースでネットワーク展開をやっていますから、二〇〇〇年問題対策は本当に大変です。
ところが、日本の場合は、相変わらず大型コンピューター・システムを使った集中処理システムでやっている所が多いわけですから、関係するOSの数は数種類しかありません。
 グローコムのY2K問題研究会には日銀の方も来られて、「こういうテストをやった」と説明してくださいました。立派な対応と思いました。但しこれは金融業者の仲間うちの決済システムについての話です。しかし、問題があるよりはないほうがずっと良い。米国で一番の問題となっている顧客とのネットワーク取引は、日本ではもともと殆どやっていないから、二〇〇〇年問題は起りようがない、こういう状況です。 日本の全銀協に関連する正会員の一四三行、準会員をいれて合計一八四行が、年末の取引資料を全部紙に印刷して保存することになりました。この紙の厚さが富士山の三倍の高さになるそうです。大変な量ですね。

交通機関
交通機関はどうでしょうか。事故、遅延、ダイヤの大幅な乱れがあると考えておいた方が良いでしょう。東京都交通局とJR東日本は十二月三十一日の夜、日付が変更するときには、電車を全部駅に停めると言っています。フランス国鉄も二〇分間停めるそうです。これが正しいやり方です。しかし、JR東日本以外のJRは、「わが社は完璧な対応をしたから、その必要はない」ということで停車させることはしないようです。「完璧な対応をすれば事故がない筈」という考え方です。そのように言えないのが二〇〇〇年問題の本質なのですが、危機管理のABCも判っていません。本当に困ったものです。

海外旅行
 飛行機の問題もそうです。既に申し上げましたが、九月の十三日から十四日にかけて航空三社の飛行機に各社の社長と運輸大臣が乗って飛んで、安全性が確認されたと言っています。なぜ「安全性が確認された」と言えるのでしょうか。私も飛行機が落ちることはないとは思っていますが、それは確率が非常に低いというだけです。
 地上の管制システムは、米国のFAAの例にあったように、たいへん問題です。JTBと日本旅行社は十二月三十一日から一日に飛行機で飛ぶ部分のあるパック旅行は、全部取り止めました。そうすると運輸省は、「そういうことを言って国民にパニックを起こそうとするのか」ということで、大変ご機嫌が悪い。しかし、これはJTBと日本旅行社の方が正しい。国民の間には危機感などありませんから、パニックなんかあるわけがない。みんなノホホンとしていて、何も知らない。この方が余程問題です。
飛行機の問題は、ICAO(国際民間航空機関・国連の専門機関)が二月に提案しています。同機関は世界を七つに分けています。日本は太平洋地区に属しています。太平洋は、アラスカのほうの北太平洋ルート、ハワイの中部太平洋ルート、オーストラリアに行く南ルート、ウラジオストックへ行く裏日本のルートの四ルート、これを高度差と間隔でわけて合計で六四ルートにしています。
この高度差二〇〇〇フィートを倍の四〇〇〇フィートにする。間隔は一〇分を一五分にする。これを採用するように勧告しています。こうするとキャパシティはおよそ三分の一になってしまいます。
これを受けて、日本の運輸省及び航空会社も十月中に年末年始の計画を確認する予定です。ICAOとIATAとが共同して、全国二〇〇〇の空港にアンケートを出していますが、本日現在でも五三〇の空港からは返事がありません。そういう状態ですから、「安全だ」と言っていても、やはり減便・欠便をせざるを得ない状態です。
 米国の連邦危機管理庁(FEMA)は、「不要不急の航空機による旅行はやめるように」との勧告を行っています。CIAは世界中の駐在員に対して、年末年始の飛行機を使った出張を禁止しています。京セラも禁止しています。それなのに、運輸省はなぜ「年末年始は心配ない」というのでしょう。

おわりに

 本日、私が申し上げたかったのは、「二〇〇〇年問題は、その本質からいってどんなに完璧を尽くしても人間がやる限り完璧はあり得ない」ということです。したがって、どんなことでも起り得ると考えて対策を考えることが必要です。また二〇〇〇年問題は誰が悪いわけでもない、人類の負の遺産です。そういうことを十分頭に入れて、対応して欲しいと思います。
 対策を考える時には悲観的に、危機感を持ってやって下さい。そして、希望を持って楽観的に乗り切るのです。逆に楽観的に対策を考えて、いざという時に悲観的になるのではいけません。ご静聴を有り難うございました。

                            (終)

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