「2000年問題現状評価」(12.1 Update)

「コンピュータ西暦2000年問題」とは、直接的には、1999年から2000年への転換、あるいは1999年以前から2000年以後にわたるデータの処理に、コンピュータのハードやソフトが対応できない場合があるという問題(いわゆる2000年バグ)です。対応できていないコンピュータは、これから2000年にかけて、停止や誤作動のような故障を必ず起こします。そのために各種の事務処理や生産工程の制御に混乱が生じ、ひいては世界の経済、社会、政治、軍事、貿易などに深刻な影響が及びかねません。これが広義の2000年問題です。

そこで各国では真剣な修復の試みが行われていますが、いくつかの理由で、完全な修復は不可能です。第一に、すべてのシステムを期限内に修復するためには時間も資源も足りません。第二に、修復したつもりでも、ある確率で見落としが残ります。第三に、修復の過程で、これまたある確率で新しいバグが入ってしまいます。これらについてもれなくテストしようとすると、厖大な時間がかかってしまいます。さらに、自分のシステムは修復できたとしても、それが他のシステムと接続された場合に、正しく作動する保証はありません。それを確認するためのテストは、困難極まります。最後に、やりとりされるデータのフォーマットが2000年に対応していない場合には、これまたさまざまな不具合が起こってしまいます。

そのため、今となっては、修復努力の継続もさることながら、むしろ、さまざまな故障の発生を前提とした上で、不可欠な業務をいかに支障なく継続していくかという、「BCCP(ビジネス・コンティニュイティ&コンティンジェンシー・プランニング)」や、主として政府・自治体のレベルで、各種の危機に対応するための「危機管理計画(クライシス・マネジメント)」の策定と実施が急がれます。2000年問題の少なからぬ部分は、2000年の1月1日以前にすでに発生すると考えられる以上、この種の計画の策定は緊急を要します。

広義の2000年問題は、「短期の問題」と「中長期の問題」に大別されます。現時点での多くの専門家の意見は、とくに修復努力が相対的に進んでいる地域にあっては、「中長期の問題」をより重視すべきだという方向に収束してきています。「短期の問題」に対処するためには、10月29日の政府の呼び掛けなどを参考にすることが有益だと思われます。しかし、そこには「中長期の問題」への言及はまだ見られません。

「中長期の問題」自体は、日本の場合、二つのタイプのものに分けて考えることができます。その一つは、各方面での個々別々に見れば比較的些細な故障(品物の納期が遅れたとか、公共料金や税金の計算が間違った、役所や病院のデータが一部消失したといったような)が互いに相乗効果を伴いながら拡大するために、経済活動全般の効率が低下したり、日常生活の上での様々な不便がうっ積するために、人々の不安や不満が広がるという問題です。

もう一つの問題は、海外での生産の混乱や輸送活動の混乱が引き起こす、貿易の停滞です。資源やエネルギーのほとんどを輸入に依存している日本の場合、この問題はとりわけ深刻です。たとえば石油の輸入が何ヶ月かにわたって途絶するとしたら何が起こるでしょうか。

「短期の問題」は、そこそこの備えと我慢があれば、比較的容易に乗り切ることができるでしょう。しかし、「中長期の問題」となると、十分な備えは事実上不可能です。そこで大切なのは、できる限り正確で豊富な情報の共有と、その的確な分析に支えられた、すべての人々の沈着な行動と相互の信頼・協働です。2000年問題への対処は”総力戦”でなければならないと私達が考えるのも、そのためです。

その点を肝に銘じながら、このGLOCOM2000年問題サイトでは、日本語と英語による有用な情報の提供に、引き続き力を尽くしていきたいと思いますので、どうかご活用ください。また、公開の価値があると思われる情報をお持ちの方は、ぜひ、このサイトに直接提供してくださるか、そのURLをお知らせください。

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

所長 公文俊平

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