米上院Y2K特別委「100日前」報告書(概要)

■1999年9月22日、米上院2000年技術問題特別委員会が、"Investigating the Year 2000 Probrem: The 100 Day Report" と題する288ページにわたる報告書を公表した(http://www.senate.gov/~y2k/news/pr990922.htm)。米国内の各セクターごとの状況については、混乱も散発的となる程度に対策は進んできているというスタンスである。その他、興味ある点は概ね以下の通り。(社会インターフェイス研究所 浜口勤)

  1. 中小企業、地方政府、教育、医療分野の対応が遅れている。Y2K対応の完了が1999年の第4四半期に設定されていたり、さらにそれがずれ込む傾向にあることを懸念している。政府・民間、国内・国際とも「自己申告」が主流を占めており、それが予測の楽観さを導いている(「学生がテストの点を自分でつけるようなもの」と述べている)。
  2. 不測の事態への対応は、FEMA(連邦緊急事態管理庁)や州・地方政府によって準備が進みつつある。危機管理計画の策定は、セクターごとでまちまちである。また、Y2K問題を全国的に監視・対処するための「Y2K情報調整センター」を設置予定(予算は来年3月までで4000万ドル規模:7月29日上院公聴会資料より)。
  3. 主要な産油国においてY2Kへの備えが欠けていることにより、石油輸入に混乱が生じる可能性が高い。
  4. Y2K法によって訴訟が減少するかどうかは、まだ未知数。訴訟が万一大量発生する場合、ソフト会社、ソフト改修にあたった会社、保険会社が、訴訟の主要な標的となるとの指摘がある。最近の訴訟例からは、ソフト改修費用を取り返すために大企業が保険会社を訴える傾向が見られる。現地の法律を利用した不当な訴えが、国際的に活動する米国企業になされることを懸念。
  5. 諸外国の状況については、大きな懸念を有している。東欧、アフリカ、並びにアジアおよび南米の一部を特に心配。戦略的・経済的要素を踏まえると、中国、ロシア、イタリア、さらに米国が石油を輸入している数ヶ国について最も懸念を有している。サプライチェーンは、長期的・短期的に深刻に混乱する見込み。外国に供給元を持つ分野は、ある程度の不景気になる可能性。さらに、Y2K問題に取り組んでいない開発途上国から人道的援助を求めてくる可能性。
    (浜口コメント:昨年来の情勢不安とも相俟ってインドネシアの状況に関心があるところであるが、本報告書のアジア部分ではASEAN諸国のうちマレイシア、フィリピン、タイ、シンガポール、ベトナムにしか本文中で触れておらず、インドネシアに言及がないのが不気味である。他方、ロンドンの専門家グループが「極めて危険」とする国のリストが紹介されている部分があり、その中にはインドネシアも含まれている。また、9月14日付で米国務省が出した渡航情報のインドネシアY2K部分には「ジャカルタやその他の主要都市における電力の長期的な混乱の可能性がある」との記述がある。)
  6. 情報革命によって、国家安全保障上の脅威が生じている。インターネットを通じて、サイバー侵入者はどこからでも攻撃をしかけることができる。外国の諜報機関、テロリスト国家、組織犯罪、企業スパイ、テロリスト、組織内の不満分子、技術的なスリルを求める一般人などが攻撃をしかける可能性があり、誰が何の目的で攻撃をしかけたかを特定することは骨の折れる作業である。

    Y2Kのためのソフト改修に乗じて、米国の敵がその目的を果たそうとする可能性がある。改修したソフトの中に、サイバー侵入・攻撃を手助けするコードを潜ませておくのである。政府・民間ともY2K改修では、多くの作業を諸外国(中国、インド、アイルランド、イスラエル、パキスタン、フィリピン)にアウトソーシングしている。GAO(議会会計検査院)によれば、サイバー侵入・攻撃の能力は120以上の国が有していると見積られている。ロシア、中国、韓国、キューバ、インド、イランは、みな攻撃的情報戦争への関心を示している(表ではフランス、イラクも。日本とイスラエルは likely とされている)。

    限られた範囲ではあるが、情報インフラへの攻撃がどのようなものであるかを知る上で、Y2Kは一つの機会を提供している。米国にとっては、情報戦争が起こったときに何が必要となるかを知る卓越した機会である。ただ、米国の反応は外国の諜報機関が注視しており、米国の弱みを見つけて将来使用しようとするかもしれない。いずれにしてもY2Kは、21世紀における脅威・挑戦の性質を、直接的に理解する格好の機会となるであろう。

( 作成:社会インターフェイス研究所 sif@po.mmm.ne.jp 1999.9.23 )

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