GLOCOM2000年問題研究会

ワシントンDC調査報告

平成11年1月26日
学校法人国際大学GLOCOM
研究教育部 山内康英

1月18日〜20日ワシントンDCでY2Kに関する調査を行なった。目的は、

(1) 日本の法制度に関する政策提言に関してアメリカ側意見の聴取

(2) 情報通信分野での米国Y2K問題の対応状況


(1)ナショナル・リサーチ・カウンセル(NRC)の国際Y2K共同研究の提案

NRC国際部John Boright部長(Executive Director, Office of International Affairs, National Research Council)は、InternationalY2KConferenceを企画している。(主査として、メリーランド大学のErnest Wilson教授( Center for International Development and Conflict Management, University of Meryland)を予定。)

アメリカ商務省が昨年Y2KConferenceをワシントンで主催したが、余り関心が集まらなかった。NRCはアジア太平洋、欧州、米州から12〜15ヶ国を集め、それぞれの国のY2Kコミュニティーのネットワークを、更にネットワークするような場所を提供し、米国側の先進的な取り組み状況を紹介するとともに、各国のY2K対応過程の比較研究を計画している。

これに対して、現時点で国際的対応として必要な課題として以下の諸点を伝えた。

(a) 法制度の国際的イコール・レベル・フィールド
国によって取り組み方に強弱がある。例えば日本企業が集中的な訴訟対象になったり、法律的に不利な立場になる可能性はないだろうか。国際的なY2K法体制の標準化が必要。

(b)インターナショナルなY2KプロモーションとY2Kコンプライアンス支援
東南アジア、中東諸国などに、OECD諸国は大量のプラントや情報機器類を輸出している。現地ユーザーについて代理店が対応を進めていれば良いが、さもなければかなりの障害が予想される。ベンダーは、国際対応を念頭に置いてホームページ等へ情報を積極的に出すべきであり、これに加えて国際的なプロモーションが効果的。国際協調の大きな課題となる。

(c) インターナショナル・コンテンジェンシー・プラン
航空機の管制、海運輸送のナビケーションと港湾施設、エネルギー安全保障、電気通信の国際回線、貿易手続き全般等について、国際的な緊急対応計画を策定すべき。


(2)Venable弁護士事務所のJohn Cooney弁護士

ジョン・クーニー弁護士(GLOCOMフェロー)は、Venable弁護士事務所で、Year 2000 Liability Limitation Actを担当。1. Year 2000 Information Daily News Distribution Actをどう評価するか、2. Liability Limitation Actの現状と進捗状況はどうかを中心に先方の意見を聴取した。

・Y2K対応に必要な法制度は四つである。
(a) Contingency planの災害対策に関わる問題
(b) 情報開示法
(c) Liabilityに関する問題(保険の問題も含む)
(d) Information sharingの促進およびその際に生ずる独占禁止法関係の問題

これに加えてアメリカでは次の法案審議が進んでいる。
(e) 連邦政府がY2K対応を進めるための予算法案
(f) Y2K対応が遅れている中小企業に対する資金支援のための法案

・Liability Limitation Actに関してCooney弁護士は、法案趣旨は"Contract Governs"だと述べた。すなわちY2Kが起こっても、そのLiabilityの範囲は当初に結んだ契約の範囲で納められ、こを越える責任を製造業者は負わないという意味である。これは製造業者にとっては強力な味方になる。例として写真フィルムを挙げれば、フィルムのパッケージには必ず「Limitation of Liability」が記してある。その内容は『製品製造上の問題から生ずる損害については、購入した製品の交換をもって行う。それ以外の損失については保証しない』というもの。"Contract Governs"の原則とは、Y2Kについても、このような契約時の内容が適用される(それ以上の責任が特に追加されることはない)ということである。

・この原則は"Business to Business"と"Business to Consumer"のコントラクトに分けて考えるべきだ。 "Business to Business "では"Contract Governs"が成り立つが、"Business to Consumer "で、PL(Product Liability: 製造物責任)が問われた場合には適用されない。例えばY2Kの欠陥によってペースメーカーの死亡事故が発生したとする。この場合には、コントラクトにLiabilityの限界を設けてあっても、この契約はオーバーライドされるであろう。消費者保護は確立された法原則だからである。これに対してBusiness to Businessであれば、ほぼ"Contract Governs"となる。

・しかしながら現時点で、このような法案が通る可能性は殆んどない。理由は、次の2点である。
ア. 消費者保護団体からのロビー活動が強力
イ. Liabilityを制限しないことが、2000年対応を促進する大きな要因と連邦政府は判断している。

(後記:大方の予想に反して、クリントン大統領は1999年7月に2000年問題責任制限法(Y2K法)に署名した。この法律の中には"Contract Governs"の原則が含まれている。)


(3) 米国議会調査局Richard Nunno上級研究員

Analyst in information Technologies, Science Technology ahd Medicine Division, Congressional Research Service(CRS調査員)


(4) 連邦通信委員会(FCC)Y2K Task Force、Robert Cannon氏

アメリカの電気通信産業のY2K対応の現状を中心に意見を聴取。

(a) 電気通信業者の対応
‐全米約1400社の電気通信事業者、公衆回線事業者のうち、中・小の電気通信事業者の対応が遅れている。
‐公衆回線網のうちPBX等構内部分(Y2K改修は利用者の責任)の対応が遅れている。しかし、アメリカは対応が早かったので大きな支障は起こらないだろう。

(b) Network Reliability and Interconnectivity Committee ( NRIC ) 第IVグループ (FCC の諮問機関 )がY2K 対応の中心となって、政府と電気通信事業者の調整を行っている。Telco year 2000 FORUM や ATIS ( Alliance for Telecommunications Industry Solutions)等の電気通信事業者業界団体がY2K問題への取り組み(回線、危機を設置して模擬試験)を行った。米国では、個々の事業者、業界団体、FCCからなる三段階の取り組みがある。

(c) 交換機系公衆電気通信事業者にくらべて、インターネットの対応が遅れているのは懸念材料。中小の事業者が多く、また業界団体を持たないためである。
ア. ISPのサーバ/ルーター/モデムにY2Kに対応していない機種が発見されている。
イ. ホームページ http://www.nety2k.org/ が中心的な役割を果している。日本のISPもここを通じてY2Kに対応して欲しい。

(d) NTTやKDDも、NRICやTelco 2000 Forum、ATISに参加して国際回線を使った実験に参加していただければ有難い。希望があればFCCが協力する。

(5) CSIS(Center for Strategic and International Studies)
先方から「Y2Kは情報戦争(Information War)である」との定義があり、議論があった。

後記:この議事録は平成11年1月26日の2000年問題研究会における報告をまとめたものです。その後の各方面の取り組みにより、内容的には既に古くなっている点がありますので十分ご注意下さい。(報告者)


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