» カテゴリー : 研究成果

地域SNS事例集: 国内の地域SNSは519事例
2010年02月16日

カテゴリー : 研究成果

国内・海外の地域SNS事例集を公開します。
2010年2月時点で、日本国内の地域SNSは519事例が確認されました。国内の地域SNSの数は、

 2006年2月  21事例
 2007年5月 252事例
 2008年2月 336事例
 2009年3月 404事例
 2010年2月 519事例

と増加しています。

ファイルをダウンロード

この事例集は庄司昌彦(国際大学GLOCOM講師/主任研究員)が2009年度文部科学省科学研究費補助金(若手研究(B))を受けて実施した研究成果の一部です(研究課題番号20700230)。また地域SNS研究会のメンバーの皆さんにもご協力をいただきました。

「九州地域情報化研究会in九重」のプレゼンテーション資料を公開
2010年01月28日

地域SNS研究会事務局の庄司が、1月21日に大分県九重町で開催された「九州地域情報化研究会in九重」で行った講演の資料です。地域SNSの研究や運営のための参考資料としてお役立てください。庄司昌彦(shoji[atmark]glocom.ac.jp )までコメント等をお寄せいただけると嬉しいです。

庄司昌彦、「地域情報化と地域おこし 「人のつながり」から考える 」
http://www.glocom.ac.jp/project/chiiki-sns/100121kyushu.pdf

地域SNSに関する学会発表/論文/記事リストを公開
2009年11月16日

地域SNS研究会で把握している、「地域SNSに関する学会発表/論文/記事リスト」を公開しました。地域SNSの研究にお役立ていただければ幸いです。リストから漏れている学会発表/論文/記事などの事例がございましたら、事務局まで情報をお寄せください。

ファイルをダウンロード

なお、「地域SNS研究会」では地域SNSに関する運営・開発・研究に関心のある方のご参加をお待ちしています。地域SNS研究会での情報交換・交流などを中心に活動しています。

地域SNS研究会 事務局
庄司昌彦(shoji[atmark]glocom.ac.jp)

「共有・共感・恊働〜ネットがはぐくむ地域力〜」のプレゼンテーション資料を公開
2009年11月06日

カテゴリー : 研究成果

地域SNS研究会事務局の庄司が、8月に佐賀県で開催された「九州創発塾」で行った講演の資料です。地域SNSの研究や運営のための参考資料としてお役立てください。庄司昌彦(shoji[atmark]glocom.ac.jp )までコメント等をお寄せいただけると嬉しいです。

庄司昌彦、「共有・共感・恊働〜ネットがはぐくむ地域力〜」、九州創発塾プレゼンテーション資料、2009年8月。
http://www.glocom.ac.jp/project/chiiki-sns/090806saga.pdf

11月26日開催「地域SNS研究の最新動向」(情報社会学会+地域SNS研究会共催)のご案内
2009年11月02日

カテゴリー : 地域SNSニュース : 研究成果

情報社会学会と地域SNS研究会は、11月26日に国際大学GLOCOMにて研究会「地域SNS研究の最新動向」を開催します。オープンな研究会ですので、会員、非会員を問わずふるってご参加ください。

会場準備の都合上、事前に参加登録をお願いいたします。
参加費は無料です。

[参加登録方法]
情報社会学会事務局 official [at] infosocio.org まで下記をメールにてご連絡ください。

1)氏名(ふりがな)
2)情報社会学会会員種別(正会員・学生会員・賛助会員)もしくは非会員
非会員の方のみ[所属]と[連絡先メールアドレス]をお知らせください。

参加申込締切:11月25日(水)
問い合わせ先:情報社会学会事務局official [at] infosocio.org

-------------------------------
日時:2009年11月26日(木)18時~21時
場所:国際大学グローバルコミュニケーションセンター
東京都港区六本木6-15-21 ハークス六本木ビル2F
地図:http://www.glocom.ac.jp/access/

テーマ:「地域SNS研究の最新動向」
講演:
1.「地域SNSにおける友人関係の構造とその変化(仮題)」
  鳥海不二夫(名古屋大学)

2.「地域SNSの多様な発展 政治・行政・地域メディアの観点から」
  庄司昌彦(国際大学GLOCOM)

3.ディスカッション
-------------------------------

「季刊まちづくり」が地域SNS特集
2009年10月12日

「季刊まちづくり」の最新号が、地域SNS特集を掲載しています。全国を俯瞰した議論から各地の実例の紹介まで、50ページ以上にわたるボリュームで読みごたえがあります。ぜひご覧ください。

machi.jpg
季刊まちづくり 24(学芸出版社)2009/8/25

特集2 地域SNSとまちづくり
地域SNSとは―まちづくりにおける可能性を展望する……藤田忍+水野義之+吉村輝彦+西村一朗
地域SNSの動向と将来像……庄司昌彦
行政から見た地域SNSの可能性……牧 慎太郎
●地域SNSによるまちづくりの試み
・ICTによるまちづくりツールの構築……和崎宏
・八代市の公設SNS「ごろっとやっちろ」……小林隆生
・地域メディア×SNSのポテンシャル……牛島清豪
・Ruby City MATSUE ProjectとまつえSNS……野田哲夫
・京都山城地域SNS「お茶っ人」……中村俊二+杉本星子
・西千葉コミュニケーションサイト『あみっぴぃ』……虎岩雅明
・青森ソーシャル・キャピタル・サービスniconicoの実践……葛西 純
・地震で深まる人の絆……吉田等明
・はちのへを耕す物語……日山克之

人間関係ベースの消費 -地域SNSが地域活性化に貢献するために
2009年06月24日

カテゴリー : 研究成果

事務局の庄司が、国際大学GLOCOMの機関誌『智場』にコラム「人間関係ベースの消費 -地域SNSが地域活性化に貢献するために」を寄稿しました。その内容を転載します。

-------------------------------
■地域SNSで地域は活性化するのか

地域活性化というテーマは重要度を増している。100年に1度ともいわれる大不況の中、急速な経済活動の縮小によって、特に地方における地域社会は大きな困難に直面している。中長期的にみても、少子高齢化と人口減少がさらに進み、地域社会の衰退は今後も進んでいくと予測されている。国立社会保障・人口問題研究所によると、東京の人口は今後20年で約4%増加する一方で、たとえば秋田県の人口は20%以上減少するという。若い労働人口が集まる都市部と、人口減少の中で高齢者が残る地方との間の格差はさらに広がっていくだろう。

筆者は情報技術と地域社会とのかかわりを研究する中で、ここ数年は「地域SNSによる地域活性化」を主な研究テーマの一つとしている。「人のつながり」に重きを置くネットコミュニティであるSNSが、実際の地域社会にどのような影響を与えるのか、またそれをどう把握し評価し、改善していくことができるのか、ということに関心がある。

地域活性化という大きなテーマに対して、情報通信技術が果たす役割は限られており、しかも地域SNSという特定のツールができることはさらにその一部にすぎない。だが、「人と人をつなぐ」というSNSの特徴が地域社会に与えるさまざまな含意には興味深いものがあり、ソーシャルキャピタル論や社会ネットワーク論、ネットワーク科学など様々な分野の研究を参照しながら研究を進めている。

2004年の末に熊本県八代市で生まれた地域SNSは、誕生から4年、全国各地で開設が相次ぐようになってから約3年が経過した。まだまだサイトの数は増加しており、2009年2月現在、国内の事例は約400カ所にまで達している。政府の政策(例えば2009年3月の総務省「「デジタル日本創生プロジェクト(ICT鳩山プラン)」)の中でも触れられるなど、地域SNSへの期待は息が長いものになってきている。

だが最近は、地域SNSへの視線が「可能性に期待する」ものから「成果を問う」ものへと変わってきたと感じる。政府や民間のさまざまな表彰を受けるなど、高く評価されている事例が複数存在するので、顕著な成果はあがっている。また表彰とまではいかないが、筆者が注目すべき成果だと考えている事例も、全国に数十カ所という単位で存在する。

その一方で、参加者が集まらなかったり盛り上がりが続かなかったりするものも非常に多い。そういった地域SNSを指して「立ち枯れ」などと呼ぶ人々もいる。またそもそも地域SNSの参加者数は多くても数千人という規模であり、地域社会全体に与えるインパクトや広告媒体としての価値などの観点からみると、物足りないとみられることが多い。

このような状況にある地域SNSは、地域社会の活性化のためにどのような貢献をすることができるだろうか。あるいはそこからどのような示唆を得ることができるだろうか。特に、現在もっとも重要である地域「経済」の活性化というテーマについて、各地の地域SNSの取り組みや「人のつながり」という観点から考えてみたい。

■地域で人をつなぐ必要性
はじめに、地域活性化のために「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」が果たす役割を考えたい。地域SNSの運営者や研究者の間では、地域SNSがソーシャルキャピタルの醸成に役立ち、それによって地域社会の運営の効率化や活性化に結び付くという議論が多い。

ロバート・パットナムの研究によると、イタリアの北部地域では自発的な市民活動が活発で地方自治が機能し産業化も進展しているが、南部地域は社会的な信頼関係の発展などが不十分であり、地方政府の腐敗や犯罪発生率の高さ、産業の未成熟などが課題になっている。パットナムは、地域社会がうまく機能するためには人々が自発的に協力し合うことが必要であると指摘し、そのために求められる社会的特徴をソーシャルキャピタルと呼んだ。具体的には、信頼関係、互酬性規範(お互いに何かを与え合う規範)、社会ネットワーク(人と人のつながり)といったものである。

ソーシャルキャピタルは、社会・経済活動における取引コストを低下させる。日本は、国際的にみればソーシャルキャピタルが比較的豊かな社会だ。日本のサービス業の水準の高さや製造業の効率の高さは、こうしたソーシャルキャピタルの高さに支えられている。買物に行って何十倍もの値段を吹っかけられたり、役人からわいろを要求されたり、道端で強盗に遭ったりすることは基本的にはない。逆に、ソーシャルキャピタルが乏しい社会では、さまざまなリスクに備える必要があり、ビジネスも行政も取引コストが増大する。

 しかし日本社会のソーシャルキャピタルは、歴史的にみれば減少傾向にあるだろう。人の移動が激しくなる中で地域社会における人のつながりは衰退し、特に都市部では社会的な協力関係を結びにくくなっている。また地方でも、地域の自治組織や業界団体などによる活力が低下しているところが少なくない。終身雇用で家族ぐるみの高福祉を担ってきた会社組織でも、雇用の流動性が高まる中で人的なつながりや信頼関係などが衰退している。

社会・経済活動の取引コストを下げ、人々の自発的な協力行動によって地域社会を活性化させるためには、ソーシャルキャピタル、すなわち「信頼関係、互酬性規範、社会ネットワーク」を豊かにするような取り組みが求められる。そのためにまず今やるべきことは、地域で人をつなぐ、あるいはつなぎ直す取り組みなのではないだろうか。


■地域SNSを通じたモノの売買
少し話題を具体的にしよう。ここで、地域SNSを通じて売り手(生産者)と消費者の間に具体的な人間関係や仲間意識があり、長期間の日常的コミュニケーションをベースとしてモノの売買がおこなわれている事例を紹介したい。

鹿児島テレビが運営している地域SNS「NikiNiki」では、併設の物販サイト「NIKI MONO」で、ユーザーが制作した陶器やベビー服、民芸品、飲食店の割引券などを販売している。これは、鹿児島テレビが在庫を抱えているわけではなく、商品を紹介しユーザー間の売買の仲介するドロップシッピングのサイトだ。ただし、NIKIMONOの場合は、そこで商品の売買をするだけではなく、SNS上でのコミュニケーションや人間関係がともなう。つまりこの物販サイトにアクセスすると、日ごろからSNSやオフ会などを通じて互いに日常の様子や人となりをよく知っている仲間からモノを買うことができ、買った後にも交流を深めることができるのである。SNSを通じて「友達(の友達(の友達))」という非常に狭い範囲での消費を支援するサイトであるといえるだろう。

またこの物販サイトでは、「NikiNikiリストバンド」という赤いシリコン製のリストバンドを販売している。これはNikiNikiの仲間であるということの証で、このリストバンドを購入し、身に付けて「協力店」へ行くと、餃子を1皿無料でもらえたり、車検や修理を5%引きで受けられたり、メンバー用の焼酎ボトルを飲めたりするなど、特別なサービスを受けることができる。商店街やスーパーなどが行う会員割引のようなものだが、協力店と顧客(ユーザー)がSNSという場を共有し、日ごろから1対1で交流したり連絡しあったりできる関係であることに意義がある。そのような関係があるからこそ、協力店は「NikiNikiの仲間にはサービスしよう」と考え、ユーザーも「どうせ行くならNikiNiki協力店へ行こう」と思うのだろう。

次に、西千葉の地域SNS「あみっぴぃ」から、地域SNSと地域通貨が連動している事例を紹介したい。この地域SNSは千葉市の西千葉駅前からのびる「ゆりのき通り」が活動の中心になっており、そこに、ユーザーが日常的に集まる中華料理店がある。この店では料金の一部を「ピーナッツ」という地域通貨で支払うことができる。そしてSNSユーザーであるこの店のご主人は、同じくSNSユーザーである野菜農家から有機野菜を仕入れる際に代金の一部を地域通貨で支払っている。さらに野菜農家の方は、農作業を手伝いに来てくれるSNSユーザー達に地域通貨でお礼を支払っている。つまりここでは、地域SNSのユーザー同士で地域通貨を循環させながら、仲間内での消費を成立させているのである。

 他にも、同様の取り組みやエピソードがある。兵庫県の地域SNS「ひょこむ」が設置している「ひょこむモール」では、兵庫県内や地域SNSを通じて連携している他の地域から200点以上の商品が出品されている。また青森県八戸市の地域SNS「はちみーつ」でも、SNS内のコミュニケーションの中でできた人間関係にもとづいて地元名産のホッキ貝を売り込もうという実験に取り組んでいる。この実験で八戸市がつくろうとしているのは、複数の地域SNSのユーザーをつなぎ、地域づくりに関心の強い人々が地域間交流をしながら互いの地域を支援しあうというモデルである。

いずれの事例も、人間関係や仲間意識をベースにした消費行動の可能性を示している。このような消費の形態は生活協同組合や会員制サービスなどに似ており、根本的に新しい経済モデルを打ち立てているというわけではない。だが、SNSというツールによって地域で人間関係を結び直すことができ、信頼や互酬的な関係を育てていくことができるという可能性を示している。

■関係を育む消費のあり方
ここまで紹介したような、売り手(生産者)と消費者の間に具体的な人間関係や仲間意識があり、長期間の日常的なコミュニケーションをベースとしてモノの売買を行うことを、「人間関係ベースの消費」と呼びたい。人間関係ベースの消費は、モノを売買するだけではなく、それをきっかけにコミュニケーションが膨らんでいき、関係をさらに育んでいくというところに特徴がある。

これは、情報技術を駆使して世界中から自分のニーズに最も適合する最も安いものを探し出して手に入れようという、消費のあり方とは全く異なっている。人間関係ベースの消費で手に入れる商品はその人にとってベストのモノではないかもしれないが、その代わりにコミュニケーションや人間関係、そこから得られる楽しさや満足感などの付加価値があるからだ。

また人間関係ベースの消費は、既成のブランド品を購入するような消費の仕方とも異なる。ブランド品が既に持っているイメージや物語性などを評価してモノを手に入れるのではなく、相手との関わりあいの中で自分もイメージや物語の形成に参加するようなところがあるからだ。

つまり、人と人のつながりを生み育てるSNSが地域経済の活性化というテーマに与える示唆とは、売り手と買い手、あるいは生産者と消費者の間の人間関係やコミュニケーションに基づく消費を、新しい形でもっと拡大することができるのではないか、ということである。売買が行われるその時点だけの即時的な関係ではなく、売買がおこなわれる前にも後にも文脈を共有し、リスクを分担し、プロセスをともに楽しみながら生産と消費のサイクル回していくことができるようになれば、ソーシャルキャピタルは増大し、地域経済の将来にも少し、光が射すのではないだろうか。

第15回 地域SNSの5類型と発展の方向性 (月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2009年05月31日

この連載では、これまでに国内外11ヶ所の地域SNSの具体的な事例を紹介し、その活用術を探ってきた。地域SNSとひとくちにいっても、運用の方法や活用のされ方、成果や現実の地域社会への影響などが、じつに多様であるということを紹介できたのではないかと考えている。最終回となる今回は、各地の地域SNS事例を「対象とする地域の広さ」と「人間関係重視か情報流通重視か」という観点(軸)から5つの類型に整理し、それぞれについて今後の発展の方向性を考える。

二つの観点(軸)で整理する
地域SNSには、地域の人間関係ネットワークと地域の情報流通メディアという二つの側面がある。これを一つめの観点(軸)としたい。人間関係を重視する地域SNSでは、参加者同士の濃密な人間関係を築いていこうとする傾向があり、さまざまなオフラインの活動と地域SNSでのコミュニケーションが結びついている。SNSは知人同士のグループウェアのように機能している。一方、情報流通を重視する地域SNSでは、その地域のニュースや芸術・ビジネス・観光などに関する情報を生成・蓄積・流通させようとする傾向があり、その情報を地域SNS以外のさまざまなメディアに対しても発信している。SNSは地域メディアの一部として機能している。「人間関係重視」と「情報流通重視」は両立することもできるが、地域の状況や運営者の意図などに応じてどちらかに重点を置くこともできる。

二つめの観点(軸)は、地域SNSが対象とする地域の広さである。地域SNSには、町内会や小中学校区規模を対象とするものもあれば、市町村規模を対象とするもの、複数の市町村を対象とするもの、都道府県を対象とするものもある。

そこで、二つの観点(軸)を基に、主な地域SNSを整理すると図のようになる。横軸の「人間関係重視か情報流通重視か」については、各事例に対する聞き取り調査や参与観察を踏まえ筆者の判断で配置した。

%E5%BA%A7%E6%A8%99.jpg
図:地域SNSの対象地域の広さと人間関係・情報流通
出典:筆者作成

各類型の特徴と発展の方向性
「情報・広い」と示した類型の地域SNSは対象地域が広く、情報流通を重視している。佐賀新聞の紙面と連携している「ひびの」(佐賀県)や、フリーペーパーやポータルサイトも運営しているドコイコパーク(香川県)などが代表的な事例である。この類型では、新聞、雑誌、ウェブマガジン、テレビ、ラジオなどさまざまな地域メディアと連携してSNS内の話題を外部に伝えたり、地域メディアに掲載されたニュースや話題に対する反応をSNSから発信したりすることで、地域における情報流通をデザインしようとしている。人のつながりは他の類型に比べると弱いが、地域ならではの話題でコミュニティが形成されることもある。今後、このような地域SNSは、新たな地域メディアとして確立していくことが求められる。特に、SNSに登録されたプロフィール情報を生かし、参加者各自の居場所や属性に応じた情報をいかに提供するか、生成・蓄積していく地域情報をどう活用するのか、といったことが問われるだろう。

「人間・広い」と示した類型の地域SNSは、対象地域が広く、人間関係を重視している。ソーシャルキャピタルの醸成を掲げる「ひょこむ」(兵庫県)や、年数十回開催されるまちづくりの勉強会と連携している「Sicon」(福島県会津地域)などが代表的な事例である。この類型ではSNSの参加に際して招待制をとることが多く敷居が高いが、「場」としての信頼感や結束を維持しようという意識が感じられる。また互いに友人を紹介して結びつけ合うなど、人間関係の橋渡し(ブリッジング)も意識的に行われている。ただし参加者が増えていくなか、広い地域で強い人間関係を維持するのは容易ではない。そのため「ひょこむ」では、兄弟分的な地域SNSを県内各地に誕生させて人的にもシステム的にもそれらを緩やかに連携させている。今後は「信頼関係や居心地の良さ」と「連携による拡大」のバランスをどう保ち発展させるのかということが問われるだろう。

「人間・狭い」と示した類型の地域SNSは、町内会などの規模を対象地域とし、人間関係を重視している。代表例は「あみっぴぃ(西千葉地域)」である。近所の人同士が実際に出会うことを支援する「Peuplade(パリ市)」もこの類型に位置づけられるだろう。日常的に顔を合わせられるような狭い地域での人間関係をオンラインのSNSも使うことでさらに強化し、またイベントなどと結びつけることで相乗効果を生み出していく。この類型の地域SNSはたくさんの参加者を集めることよりも現実社会での人間関係が円滑になることが求められるので、参加に際して招待制をとることが多い。この類型のSNSは、地域社会を実際に活性化していくために、SNSを使わない人をどう巻き込んでいくのか、というICTを超えた地域経営の発想が必要になっていくだろう。

「情報・狭い」と示した類型の地域SNSは、狭い地域を対象とし、かつ情報流通を重視する。都市部の商店街などで仕事やショッピングなどで訪れたりする人々の緩やかな交流や口コミ情報の交換・集積などを目的にしているものが多いが、この類型ではまだそれほど大きな成功例がない。それは、飲食店の口コミ情報を掲載するウェブサイトや大手SNSサイト、Twitterなど「ミニブログ」と呼ばれる新しいコミュニケーションツールの利用シーンと重なる部分が多いからではないかと考えられる。

最後に「中間」と示した類型の地域SNSは、人間関係・情報流通に関して中間的であり、対象とする地域も中間的に市町村規模を対象としている。またこの類型では行政が運営する地域SNSが比較的多い。代表例は「マイタウンクラブ(厚木市)」、「お茶っ人(宇治市)」、「ハマッち!(横浜市)」である。中間というのは中途半端ということではなく、さまざまなサークルや市民活動を自治体の公共施設やイベント等と関連させて活性化していくにはちょうど良いサイズのようだ。たとえばこの類型の地域SNSでは、公式オフ会をサークルや市民活動の発表の場として開催し、たくさんの人が参加して文化祭のように盛り上がる、ということがある。今後、この類型については、現在の基本的なSNS機能のほかに市民活動を支援するための機能やサービスをどう発展させていくのか、ということが求められるだろう。

多様性による発展
 この連載では地域SNSの多様な姿や取り組みを紹介することを心がけてきた。地域SNSが持続的に発展・拡大している要因にはこの多様性が大きく貢献していると思われる。それぞれの類型の発展、またこの類型に該当しないような地域SNSの登場によって、さらに地域SNSが地域社会の活性化に実質的な役割を果たしていくことを期待したい。


※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載した記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

第14回 横浜市「ハマッち!」 ―イベント創造とネット中継 (月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)

今回は18区に約360万人が住む国内最大の市、横浜で「横浜が好きな人」約2200人(2009年1月現在)が参加している地域SNS「ハマッち!」を紹介する。ハマッち!は2008年2月に開催された第2回地域SNS全国フォーラムをホストし大成功を収めた、全国的な知名度のある地域SNSである。

開港150周年と「イベント創造プラットホーム」
今年2009年は、1859年(安政6年)に江戸幕府が横浜を開港してから150周年という節目にあたる。小さな漁村であった横浜が、開港を機に、国内外の様々な人や物が集まる場所になった。つまり開港とは現在の大都市の原点であり、街のアイデンティティである。

横浜では毎年、開港記念日の6月2日に「横浜開港祭」を開催しているが、150周年の今年は、「開国博Y150」と題し、1年を通じて市内各地でさまざまなイベントを行う。

ハマッち!はこのイベントに連動した「Y150市民参加プラットホーム推進委員会」の活動に位置づけられている。この委員会は、単にイベントに足を運ぶだけではなく、この機会に「自分で何か企画したい」、「少しでも関わりたい」という市民にさまざまな情報と機会を提供し、さらには「主体的に地域でアクションを起こす市民」を増やしていこうということを目指している。

推進委員会の先駆けとなった有志の人々は、数年前から「人々が主体的に地域で起こすさまざまなアクション」のことを「イベント」と呼び、イベントを生み出し支援するための基盤を「イベント創造プラットホーム」と呼んで、その機能や活用方法などを検討してきた。ハマッち!は「横浜のイベントをエコにする」「ハマっ子イベント大賞」などとともに「イベント創造プラットホーム」の取り組みのひとつとして2007年10月にスタート(一般公開)したものだ。そのためハマッち!では、地域で自発的に活動する市民活動団体やサークルなどに使ってもらうことに力を入れており、他の地域SNSよりもコミュニティ機能の利用が活発である。

この連載で紹介してきた各地の事例が示しているように、SNSと「イベント」は相性がいい。筆者らの調査では、国内の7割以上の地域SNSで、ユーザーが何らかのイベントを自発的に行っている。また海外に目を移すと、2008年の米国大統領選挙では、バラク・オバマ候補の支援者たちがMyspace、FacebookなどのSNSを積極的に活用し、そこからたくさんの草の根の会合や主体的な働きかけを生み出して当選を勝ち取った。つまりSNSには、人々の交流から主体的なアクション(=イベント)を生み出す力があるといえよう。

SNSから生まれた「みんなの市場放送局」
もともと横浜は市民メディアや市民活動・サークル活動に非常に厚みがある場所だが、ハマッち!では、それらの枠を超えた新たなつながりから、さまざまな新しいイベントが生まれている。最近の大きな話題はハマッち!から生まれた手作りのネットTV、「みんなの市場放送局 YCMB (Yokohama Central Market Broadcasting)」だ。

横浜市中央卸売市場水産部が地元住民に市場を一般開放する毎月第1・第3土曜日に、インターネットを通じて市場内の移動中継やトーク番組などを配信している。精肉店「ジャストミート」の店先に設けたスタジオでハマッち!ユーザーがキャスターやレポーターを務め、他のユーザーや買い物客、市場関係者をゲストに迎えて送るトーク番組はとてもにぎやかに盛り上がっている。

この市場放送局が生まれたきっかけは、ハマッち!の「横浜中央市場を横浜新名所に」というコミュニティだ。コミュニティの参加者が「横浜市場まつり」を盛り上げるためのアイディアを出し合う中から、インターネットライブ中継のアイディアが生まれ、市場関係者の協力も得てすぐに放送局が立ち上がった。しかも2008年10月19日の初回放送では、国内外からのべ 5,000件以上のアクセス数を記録したという。

aRIMG0041_small.jpg
図:みんなの市場放送局の放送風景。(写真提供:ヨコハマ経済新聞)

この放送局は、インターネット接続したPCにカメラをつなぐだけで、無料でインターネットライブ中継ができるStickam(http://www.stickam.jp)というサービスを使っている。視聴者は放送を見るだけではなく、画面の下に表示されたチャットを通じて番組に参加することもでき、双方向のコミュニケーションが可能だ。
Stickamは、会津Sicon(福島県)の勉強会「花ホテル講演会」やNikiNiki(鹿児島県)の「ネットラジオゆくさ」でも使われている。また第3回地域SNS全国フォーラムin佐賀でも、参加できなかった遠隔地の人々のためにStickamを使ったネット中継が行われた。地域SNSとネット中継を連携させる取り組みは広まっている。

オンとオフ、同期と非同期
なぜ地域SNSを楽しむ人々の間でネット中継が広まっているのだろうか。そのヒントを、次の表から考えたい。この表では地域SNSと地域SNSに連動する活動の場を「オンライン/オフライン」、ユーザー同士のコミュニケーションの時間差を「同期/非同期」として分類した。

hyou1.png
表:地域SNSと連動する活動の分類

ここで、(1)SNSのコミュニケーションは、各自が自分の好きなタイミングで参加できて便利だが、非同期なのでコミュニケーションには時間がかかるし一体感なども持ちにくい。これに対し(2)紙メディアのコミュニケーションは、便利で多くの人が参加できるが(1)と同様に非同期の問題を抱えている。一方(3)のネット中継は、人々が時間を共有し、一体感を感じることができるが、コミュニケーションの濃密さではオフラインにかなわない。そして(4)イベント・オフ会は、コミュニケーションの濃密さや一体感がある一方で、人々が場所と時間を合わせるのは難しいという問題がある。
おそらくこの4種類は、互いに補い合う関係にあるのだろう。そしてネット中継が各地の地域SNSで広まっている理由は、SNS本体でもオフ会でも、フリーペーパーでもできないコミュニケーションをネット中継が担っているからではないかと考えられる。
なおハマッち!の場合は、すでに「SNS」と「イベント」と「ネット中継」を組み合わせている。この表が正しいとすれば、次は(2)の紙メディアを活用に力を入れるとさらにコミュニケーションを充実させられるのではないだろうか。

GW-00025.jpg

※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載している記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

会津Sicon(福島県会津地域)が読売新聞に掲載+コメントの訂正
2009年05月14日

読売新聞福島版に「SNSで会津に人の輪」という、地域SNS会津Siconについての記事が掲載されました。地域SNS研究会の庄司のコメントも掲載されています。

 SNSで会津に人の輪 勉強会、郷土料理店など成果 (読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20090512-OYT8T01346.htm


■注:
下記の地域SNS研究会の庄司のコメントは、記者の電話取材にお答えしたものですが、庄司がお話しした内容や意図と異なる部分がありました。当該記者との間で誤りが存在することを確認しましたので、その点を明記します。

地域SNSの研究を行っている国際大学グローバルコミュニケーションセンター(東京都港区)の庄司昌彦研究員によると、全国に地域SNSは500程度あるが、ネットだけでなく、実際に会員同士が会って人の輪を広げている例は珍しいといい、「会津特有の地域性が成功の原因ではないか」とする。

>全国に地域SNSは500程度あるが、

庄司昌彦として(地域SNS研究会として)発表している数字は404事例(2009年3月現在)です。「ただし数え切れていないものもあるので、たとえば500個とか、もっとたくさんあると思います。」というコメントをしたため、500程度という記載になりました。

>ネットだけでなく、実際に会員同士が会って人の輪を広げている例は珍しいといい、

mixiや他のジャンルのSNS比べて地域SNSは人と人が実際に会う傾向が強い、という説明がこのような表現になりました。地域SNS全般でみると、61%のサイトでは運営者が公式オフ会を開催しており、73%のサイトではユーザーが自発的にオフ会を開催しているというデータがあります(2008年2月調査)。

%E5%9B%B31.png

>「会津特有の地域性が成功の原因ではないか」とする。

確かに会津は地域SNSや勉強会以外にも、会津大学というIT専門の大学があったり、会津若松市役所のユニークな取り組みがあったりするなど、いろいろ興味深い取り組みがある土地です。しかし、この先進的なエピソードは会津特有の要因によって起こったとは言い切れません。居酒屋・カフェを設置するという取り組みは鹿児島などでも行われています。

地域SNS事例集: 国内の地域SNSは404事例
2009年04月01日

カテゴリー : 地域SNSニュース : 研究成果

国内・海外の地域SNS事例集を公開します。
2009年3月時点で、日本国内の地域SNSは404事例、海外の地域SNSは18事例が確認されました。国内の地域SNSは、2006年2月の時点で21事例、2007年5月の時点で252事例、2008年2月の時点で336事例でした。


ファイルをダウンロード


この事例集は庄司昌彦(国際大学GLOCOM講師/主任研究員)が2008年度文部科学省科学研究費補助金(若手研究(B))を受けて実施した研究成果の一部です(研究課題番号20700230)。また地域SNS研究会のメンバーの皆さんにもご協力をいただきました。

第13回 パリ市「Peuplade(ププラード)」 ―ランデブーと隣人祭り(2)(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2009年02月25日

カテゴリー : 研究成果

前回は、フランス・パリ市を中心とする地域で16万人もの参加者を集めているSNS「Peuplade(ププラード)」を紹介した。Peupladeは、ネット上のコミュニケーションを促進するだけではなく、現実社会での「出会い(ランデブー)」や協力行動を促すことを目的としている。そして、その目的を実現するためにさまざまな機能が設計されていることを紹介した。今回はPeupladeの続編として、Peupladeと同じパリ17区から生まれた「隣人祭り」という取り組みを紹介しながら、地域SNSと現実の地域社会とのかかわりについての示唆などを紹介する。

800万人が参加する「隣人祭り」

隣人祭りとは、料理を持ち寄って食卓を囲んだりお茶を飲んだりすることを通じて、近所で暮らす人同士が交流を深め、より良い人間関係を育んでいこうとする小さな「お祭り」だ。SNSなどの情報技術を使ってはいないが、地域社会の人間関係を良くすることで個々の暮らしを豊かにしたり地域を活性化したりしようとしているところが、地域SNSとよく似ている。

この隣人祭りは、フランスのパリ17区で助役を務めているアタナーズ・ペリファン氏が、お年寄りの孤独死に接して近所づきあいの大切さを痛感し、1999年から自分が住むアパートの中庭で始めたものだ。近所の人に招待状を出し、ポスターを貼り、テーブルを外に出し、手作りで作っていく。それが、少しずつ周囲に広がり始め、現在はヨーロッパを中心とする世界各国で行われるようになった。基本的には毎年1回、5月の第4火曜日に開催することになっていて、1年間に世界29の国と地域で800万人もの人々が参加しているという。2008年からは日本国内にも支部ができ、各地で開催されている。

japan.jpg
図:隣人祭り日本支部のウェブサイトより

近所の人が会ってひと時を共にするというだけの、とてもシンプルなイベントであるのに、隣人祭りが多くの人を引き付け、世界各国へ広まっているというのは興味深い。近所づきあいが衰えているのは日本だけではなく、機会があれば人とのつながりを作りたいと求めている人がたくさんいるということだろう。
ペリファン氏によれば、フランスでは精神安定剤や抗うつ剤がたくさん売れていたり、若者の自殺が問題になったりしている。また、「政治が治安や安全にばかり向いていて愛情を失っている」という。彼は隣人祭りを広めることで、そんな社会状況と戦っているのだと語っている。また、ペリファン氏とともに『隣人祭り ―「つながり」を取り戻す大切な一歩―』(ソトコト新書、2008年)を著したジャーナリストの南谷桂子氏は、”エスプリ・ド・パルタージュ”(分かち合い、共有の精神)という言葉が、隣人祭りを象徴しているという。恵まれている人が誰かを一方的に助けるような関係ではなく、近くにいる人同士が、自分ができることをして互いに助け合うような「お互い様」の関係をどれだけ作ることができるのか、ということをペリファン氏は追求しているのだ。

rinjinmatsuri.jpg
図:ペリファン氏・南谷氏と筆者

ITを使わない人にもつながる地域SNSへ

近所の人たちが食事を共にして人のつながりを作る「隣人祭り」と、地域で人と人が実際に出会うためにさまざまな工夫をしている地域SNS「Peuplade」は、ほぼ同じ時期(ともに2000年前後)に、パリの17区から発祥した。

ペリファン氏によるとこの17区は、裕福なブルジョアの人々が住む地域と、BOBO(「ブルジョア・ボヘミアン」の略)と呼ばれる裕福で自然志向な新消費者層が住む地域と、貧しい移民の住む地域から構成されていて、フランスの縮図のような場所だという。そして社会的なイノベーションへの志向が強く、ペリファン氏やPeupladeの運営者ナタン・スターン氏のような社会起業家が何人か目立った活動をしている。

そして実は、スターン氏とペリファン氏は親しい間柄にあり、Peupladeを始めるにあたってスターン氏がペリファン氏に相談したり、ペリファン氏のためにスターン氏が隣人祭りの運営キット作りを手伝ったりしている。つまり、オフラインでたくさんの人が参加する隣人祭りと、オンラインで人の出会いを促すPeupladeは、目的や思想を共有し関連しているのだ。

またペリファン氏はPeupladeを高く評価している。その理由はPeupladeが「ユーザーのサイト滞在時間を延ばすことを目的にせず、社会的な目的を実現するためにサイトを作っているから」だ。ただしペリファン氏は、近所にいる人々が感情を分かち合い人生を味わうためには、フィジカルな関係に勝るものはないとも考えている。それなのに、近所づきあいの課題を専門家に話すとすぐに「いいサイトがある」とインターネットの話になってしまうことを残念に感じ、ITに頼りすぎる傾向を批判している。

確かに、SNSは目的を達成するためのツールにすぎない。地域を活性化したり、生活を便利にしたりするという目的のためには、地域SNSに参加しない人・参加できない人も含めた地域社会全体への働きかけを考える必要があるだろう。その意味で、インターネット中心の「地域SNSのオフ会」よりも「隣人祭り」の方が、広がりがありイメージしやすい概念だといえる。

Peupladeの課題と日本との共通性

現実の社会との関わりを持ち、16万人ものユーザーを集め、自治体の効果的な支援も受けているPeupladeは、今後の日本の地域SNSのあり方に、たくさんのヒントを示している。だが、Peupladeにも課題はある。むしろ、日本の地域SNSと同様の課題を抱え、日々方向性を模索しているといってもよい。
たとえばスターン氏は、Peupladeを通じてたくさんの人々がネット上の交流にとどまらず実際に出会っていることを喜びつつ、「みんなで騒ごう、飲もうということが多く、社会的なことが少ないのは残念」と語っている。日本の地域SNSにも同様の傾向があるが、この問題には「(一過性ではない、日常的・社会的な取り組みにつなげるために)人と人が会い、よく話し合う中から、本当の社会的ニーズが出てくる」というペリファン氏の言葉が参考になると思われる。

また、持続的なビジネスモデルの構築も課題だ。Peupladeは現在、BNPパリバ(銀行)、SFR(携帯電話事業者)社などから年間約30万ユーロを売り上げており、日本の地域SNSよりもはるかに大きな経営規模を持っているが、開発コストなどもかかっており経営は赤字だという。参加者数を増やせば広告価値が上がるが、それでは「ローカルで小さい組織の心地よさ、Peupladeらしさが失われてしまう」という悩みもある。大きくなりすぎるとコミュニティの雰囲気が変わってしまうという問題も、日本の複数の地域SNSで見られる問題だ。

 海外の他の事例との比較を通じて、地域SNSというツールに共通する課題を発見したり、国内にはない新たな発想を得たりすることができる。今後は日仏双方で研究の進展やノウハウの交換などが進むことを期待したい。

「インターネットと「人のつながり」の活用」の資料を公開
2009年01月26日

カテゴリー : 地域SNSニュース : 研究成果

2008年10月11日に上越教育大学で行われた教育工学会研究大会で地域SNS研究会の庄司昌彦(国際大学GLOCOM)が行ったプレゼンテーションの資料を公開します。

この資料のダウンロードはこちら(Hotdocs)へ。


Powered by Hot.Docs-

第12回 パリ市「Peuplade(ププラード)」 ―ランデブーと隣人祭り(1)(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2009年01月12日

カテゴリー : 地域SNSニュース : 研究成果

自治体との連携でユーザーが急増

SNSを使って地域の人々のつながりを強化したり、新しいつながりを作ったりしようという取組みは海外にも存在する。たとえばフランスでは、Peuplade(ププラード:http://www.peuplade.fr)、Ma-Residonce.fr(マーレジデンス:http://www.ma-residence.fr/)、VOISINEO(ヴォイジネオ:http://www.voisineo.com/)といった近所づきあいを促進するSNSサイトが存在している。
そのような事例の中から今回と次回は、筆者が実際に現地調査を行ったフランスのPeupladeを紹介する 。
GW-00018.bmp

Les Ingénieurs Sociaux(ソーシャルエンジニア)社が運営しているPeupladeは、フランスのパリ市やグルノーブル市などを対象とする地域SNSで、2008年10月現在、約16万人が参加している(パリ市の人口は約217万人、グルノーブル市は約15万人)。

Peupladeは、フランスの地域SNSの中ではもっとも歴史がある。開発のきっかけは2001年の夏にまでさかのぼる。ある日、若手の社会学者でインターネット上のコミュニケーションにも強い関心を持っていたNathan Stern氏が、自分の住むパリ市17区のSauffroyという通りの名前を検索してみたところ、近所に住んでいる人がインターネット上で履歴書を公開しているのを見つけた。そして「会ってみないか」と連絡を取ってみたところ意気投合し、食事をしたり一緒に出かけたりするような友人関係になったという。彼はこのような、人と人が「実際に出会う(ランデブー)」体験をより多くの人と分かち合いたいと考え、2002年にディスカッションスペースやメッセージング、セルフポートレートといった機能をもつPeupladeの最初のバージョンの提供を始めた。

当初はSauffroy通りだけが対象地域であったが2004年にはPeupladeの趣旨に賛同したパリ17区役所のサポートを受けて対象を17区全体に拡大し、ユーザー数も約5500人に達した。

さらに2006年9月からはパリ市役所がPeupladeとパートナーシップを組んだ。Peupladeは対象地域をパリ市全域へと拡大し、市からのお知らせをサイト内に掲載するようになった。一方パリ市は、市長が記者会見で支援を明言し、1200枚のポスターを市内各所に掲示して宣伝を行った。これによってPeupladeはさまざまなマスメディアに取り上げられるようになり、45日間で4万人ものユーザーが参加するサイトへと急成長した。現在でもパリ市が無料で提供している公衆無線LANにアクセスすると、トップページでPeupladeへのリンクが表示されるなど、パートナーシップ関係は続いている。

 パリ市は、Peupladeに対して金銭的な支援はしていないが、意義や目的に賛同し、主にユーザーをサイトに誘導するという面でさまざまな形で協力を行っている。このパートナーシップは、民間の地域SNSと地方自治体の協力関係の在り方として日本の関係者にも参考になるのではないだろうか。

IMGP5997.JPG

運営者のStern氏

人が出合い、アクションを起こすための機能

 Peupladeには重要な機能が3つある。いずれも、Peupladeの運営コンセプトを反映した興味深い機能である。

 一つめは、「ランデブー」の約束機能だ。Peupladeにおいてランデブーとはユーザー同士が自発的に企画する「オフ会」のようなものだが、日本の地域SNSで行われているオフ会よりももっと気軽なものだ。たとえば「私は○月○日にコンサートへ行くけど、だれか一緒に行きませんか」という呼びかけをして仲間を募ったり、ユーザー同士が会って食事やお茶をするときに「来たい人は来てもいいですよ」と呼びかけたりするものも立派なランデブーである。もちろん、しっかり企画されたイベントもたくさんあるが、例示したような参加者が一人や二人でも開催される小さなイベントがたくさん掲載されているところが興味深い。この機能について運営者のStern氏は、「リアルな関係を作るのがPeupladeの役目であり、この機能はバーチャルからリアルに入る滑り台のようにユーザーを後押しするものだ」と表現している。

 二つめは、「アイディア」を掲載する機能だ。自分の持っているアイディアを気軽に投稿し、賛同者と一緒に相談しながら実際のアクションに結び付けていく。日本の地域SNSでも「コミュニティ」の書き込みをきっかけとする行動はしばしば起きているが、それをひとつの機能として取り出し、さまざまな「アイディア」を一覧できるように表示するところが大きな工夫である。

三つ目は、ユーザー間の距離を表示する機能である。これはサイト上でユーザーの名前(ハンドル名)が掲載される際には、必ずそのユーザーと自分との間の物理的な距離が表示されるというものだ。各ユーザーが自分のプロフィールを登録するときに、地図上で自分が居る場所のおおよその位置を登録してもらうことによって実現している。例えばあるユーザーが、別のユーザーに興味をもった場合、二人の間の距離がたった数百メートルであったりすると、ネット上でメッセージの交換をするよりも「実際に会いませんか」ということになりやすい。もちろんこのようなサービスにはリスクが伴うので、自分の場所を正確には明かしたくない人などは、実際の場所とは少し違う場所を登録する。

 Peupladeは、同じ通りに住む人とネットを通じてリアルな友人になったという原体験に根差し、ネット上のコミュニケーションを促進するだけではなく、現実社会での「出会い(ランデブー)」や協力行動を促すことを目的としている。その目的を実現するために設計されたこれらの機能がPeupladeの特徴となっている。

地域SNSでのコミュニケーションがきっかけとなって生まれる具体的なアクションの内容は、日本の地域SNSと似ている。Peupleadeで生まれたエピソードにはたとえば、100人以上のユーザーが家賃を分担して皆が気軽に集まれる場所を借りたという話や、ネット上でアイディアを出し合い住民が地域を舞台にした短編映画を製作したという話、また一人暮らしの高齢者の家を交代で見回りをするようになったという話などがある。

次回はPeupladeが誕生したパリ17区から生まれた「隣人祭り」を紹介する。これは近所に住む人々同士が料理を持ち寄って食卓を囲み交流を深めるというもので、世界29の国と地域の800万人もの人々が参加するイベントである。そしてこの取り組みはPeupladeの運営とも関わりがある。そこでPeupladeや隣人祭りの発展の経緯や課題などを日本の状況と比較することで、地域SNSの今後を展望することにしたい。

第11回 会津「sicon(シコン)」 ―ブリッジングと「学び」のコミュニティ(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)

ボンディングとブリッジング

10月16・17日に、「第3回地域SNS全国フォーラムin佐賀」が開催された。メインセッションでは「地域SNSを斬る」と題し、地域SNSに深くかかわっていない専門家による、客観的な議論が展開された。その中で、地域SNSのコミュニケーションは結束を強める「ボンディング型」が多く、新しい関係の橋渡しをする「ブリッジング型」が不足しているのではないか、という指摘があった。

たしかに、多くの地域SNSでは利用者間のつながり(紐帯)を強化・緊密化し、一体感や安心感、信頼感を醸成するようなボンディングが重視されている。顕名で閉鎖的なコミュニケーションや、活発に開催されるさまざまなオフラインの活動は、体験や話題の共有を通じて利用者の結束を強化する方向に作用しているといえる。

しかし閉鎖的につながりを強化するだけでは、利用者の同質性が強まったり、新しい話題が減ってコミュニケーションが停滞したり、外部から孤立したりしてしまう。全国フォーラムでの指摘のように、外部の新しい話題や人とのつながりをSNSの内部へ持ち込み、橋渡しをすること(ブリッジング)も必要で、ボンディングとブリッジングのバランスを取ることが重要だと考えられる。

そこで今回は、ボンディングとブリッジングについて興味深い運営方針や取り組みがみられる、福島県会津地域の「sicon(シコン:http://sicon.jp)」を紹介したい。
sicon.bmp


「会津にコミットする1000人」のブリッジング

会津は福島県の西部に位置する広大な地域である。中心都市である会津若松市には福島県が設置した情報系の大学である会津大学が存在し、若者が県内外から集まっている。siconを運営している(株)デザイニウムの前田諭志氏も、県外から会津大学へ進学し、会津でITベンチャーを興した。しかし会津地域全体としては、過疎と高齢化が進み、温泉地などでは観光客も減少している。

siconという名称は、会津の人々の精神を表す「士魂」という言葉と「connect(つなぐ)」から合成されたもので、「会津の魂をつなぐネットワーク」を意味している。前田氏によると、会津の人々は一般に「地域愛は人一倍強い」が「頑固で、他の人と足並みを揃えたり情報を共有したりすることが苦手」だという。そのような中でsiconは、行動力があり地域の核となる人々、同じ興味や夢・目的を持つ人と応援しあっていこうと考えている人々をつなぎ、小さな課題解決や目的の達成を重ねながら、少しずつ会津を変えていこうとしている。つながっていなかった人をつなごうとしているという意味ではブリッジング的である。

またsiconの利用者になると、たくさんの人から「友達申請」のメッセージが届いたり、何人かの中心的なユーザーから頻繁に「友達紹介」のメッセージが届くようになったりする。これはsiconのユーザーたちが人脈の橋渡し(ブリッジング)をしようとしているものだといえる。会ったことがない人と友達になることに抵抗感がないわけではないが、紹介に応じて友達を増やしていくと、SNSの中で新しい話題や発見に出会う機会が増えるのも確かで、登録しても誰とも友達になれないSNSより何倍も面白いと感じられる。したがってこのブリッジング行為は、SNSの価値を高めることに貢献しているといえるだろう。

また一方で前田氏はsiconについて、「会津が好きで会津にコミットしていきたい人が1000人参加してくれればいい」ということも述べている。これはsiconでは参加者の数やコミュニケーションの量よりも質を重視していることを表しており、目的なくユーザーを増やすのではなく、会津で何かをしたいと考えている人をつなぎたいというこのSNSの原点をよく表している。単純に薄く広く「弱いつながりを」を広げていこうとするのではなく、限られた人々のつながりを緊密化すること(ボンディング)にも意識が向いているといえる。

勉強会と地域SNS

siconには、もう一つ興味深い取り組みがある。それは、中心的なユーザーの一人である塩田恵介氏が、自身の経営する奥会津の柳津温泉「花ホテル滝のや」で開催している「花ホテル講演会」だ。この勉強会は郷土の歴史や文化、経済、観光、IT、マーケティングなどのテーマについて、研究者や専門家、経営者・起業家などさまざまな講演者を招いて行われている。地元の人が話す場合もあれば、東京や仙台などから講演者を招待することもある。もともとこの勉強会はsiconが生まれる以前、2001年から行われており、開催の回数は約140回にものぼっている。

塩田氏はこの勉強会の開催告知から事前の意見交換、生中継、記録や事後の議論といった一連のサイクルに、メール、ウェブページ、SNS(siconのコミュニティ)、動画配信システム、チャットなどの情報技術を最大限活用している。特にSNSに関しては、この勉強会や懇親会がオフ会の役割も果たしているが、柳津温泉まで来られない人も、動画中継を見ながらチャットで遠隔参加して他のユーザーと時間を共有することができる。さらに勉強会の後には講演者もsiconに招待されて、たくさんのユーザーと「友達」になっている。

筆者が講演をした際にも、20-30人ほどの参加者が現地に集まり、同時に数十人が動画中継でオンライン参加していた。また筆者と一部の参加者は懇親会の後、深夜まで議論を続け、そのまま花ホテルに宿泊した。そしてその後はsiconで交流を続けている。

このように花ホテル講演会は、体験を共有し、つながりを強化するボンディングと、人脈を広げるブリッジングの双方の機能を持っている。

hanahotel.jpg

地域における「学び」のコミュニティが地域SNSと連携している事例は他の地域にも存在する。東京都渋谷区の「XSHIBUYA(クロスシブヤ)」では主なターゲットである「クリエイター」のための勉強会や交流会が毎週定期的に行っている。また西千葉の「あみっぴぃ」も、パソコン教室やサポートの事業と連携しており、花ホテル講演会と共通点がある。このような「学び」と地域SNSの関係についてはほとんど研究されていないが、地域SNSの人的なコミュニティが、友人間の相互評価や人的ネットワークの形成などの面で協調学習に好影響を与えているといえるだろう。

柳津温泉のような地方の小さなまちづくり活動が、遠隔地の専門家とつながりを作り、それを維持発展させていくための仕掛けとして、この「勉強会と地域SNS」の組み合わせが果たしている役割は大きいように思われる。このモデルは、他の地方のSNSの運営にも参考になるのではないだろうか。

第10回 京都府宇治市「お茶っ人」 ―市町村が運営する地域SNSのモデル(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年11月21日

市町村を対象とする地域SNS

この連載では、二つの類型を設けて地域SNSを整理してきた。ひとつは町内会や小中学校区などの「狭い地域」を対象として、人々の間に「強いつながり」を作ろうという志向を持つもので、西千葉の「あみっぴぃ」(第3回)が代表的な事例である。もうひとつは、都道府県などの「広い地域」を対象としてクロスメディアなど「地域情報の流通」の仕組みづくりに重点を置くもので、代表的な事例は佐賀の「ひびの」(第4回)や「ドコイコパーク」(第6回)「NikiNiki」(第7回)である。また兵庫の「ひょこむ」(第5回)は県という広い地域を対象としながら「強いつながり」を志向しているという、両方の性格を持っている。

この筆者の分類は非常に単純なもので、対象地域でいえば、実際には両者の中間である「市区町村」規模の地域を対象とするSNSが非常に多く存在する。千代田区の「ちよっピー」(第8回)など総務省や地方自治情報センター(LASDEC)の実証実験事業が市区町村を単位として行われているし、前回紹介した厚木市の「マイタウンクラブ」(第9回)も市を対象としている。そこで今回は、市区町村規模の地域SNSの中でも特に活発なコミュニケーションや多彩な活動で知られている京都府宇治市の「お茶っ人」を紹介する。

「市民団体の活動支援」と地域SNSの相性

宇治市は京都府の南部に位置し、約19万人の人口を抱える住宅都市である。また世界遺産の平等院などの文化財が多く、源氏物語など歴史の舞台に何度も登場している。室町時代から続く「宇治茶」の生産でも知られている。

地域SNS「お茶っ人」はLASDECの実証実験として、2006年11月3日から運用が始まった。2008年9月現在、約1500人が参加している。宇治市の行政(IT推進課)と市民団体(宇治大好きネット)が協働で運営してきたが、次第に、市民(宇治大好きネット)主体の運営に移行しているところだ。

この「宇治大好きネット」という団体は、地域SNSとともに「eタウンうじ」というウェブサイトを運営している。「eタウンうじ」も「お茶っ人」と同様に、市が2002年度に総務省の事業として構築したもので、133のサークルや市民団体の活動状況やイベント情報、子育て情報などが掲載され、地図やカテゴリーから検索することができるシステムである。「eタウンうじ」の運営による地域の団体支援という取り組みは、2004年度の「地域づくり総務大臣表彰」を受賞した。

地域SNSの運営も、さまざまなサークルや市民団体の活動を促進・支援するという宇治大好きネットの活動の一環として行われている。「お茶っ人」と「eタウンうじ」がシステム的に連携しているわけではないが、運営母体の活動や人脈としては関係が深く、相乗効果を発揮しているといえる。

たとえば「eタウンうじ」の3周年と「お茶っ人」の1周年記念イベントとして2007年11月に開催された「わいわいあつまろフェスタ」には、約600人もの人々が参加した。地域SNS関連のイベントとしては他に類を見ない大規模なイベントであった。このイベントではそれぞれの団体の活動の展示や発表があり、フェナーレでは参加者が肩を組み輪になって歌い、盛り上がった。そのほかにも、「お茶っ人」のユーザーが自発的に始めた「お茶っ人庵」というイベントも5月に開催された。ここでも生演奏や写真・絵画の展示、パソコン教室、源氏物語の「語り」など、ユーザーの趣味や特技が披露され、大いに盛り上がった。このように「お茶っ人」は、さまざまなサークルや市民団体の活動と結びついており、イベントはその発表会、あるいは「文化祭」のような雰囲気を持っている。

地域SNSのコミュニケーションからさまざまな「オフライン」の活動が生まれ、活動が活性化する傾向は他の地域でもみられる。それだけでなく、この「お茶っ人」の事例のように、既存のサークルや団体の活動と連携し、その活動支援としてSNSや他のシステムを活用することも、非常に相性がいいようだ。これは前回(第9回)紹介した厚木市の「マイタウンクラブ」が市の施設予約システムやサークル・団体のホームページとSNSを連携させていたことや、横浜市の地域SNS「ハマっち!」が、サークルや団体の活動を「イベント」という切り口でとらえ「イベント支援」を謳っていることにも通じている。

「生活圏」を充実させるメディア

また「お茶っ人」は、市内にキャンパスを持つ京都文教大学との連携を深めている。京都文教大学は、宇治の観光・文化の中心地である平等院近くの宇治橋通り商店街に空き店舗を利用した「サテライトキャンパス」を持っている。大学と地域との連携を深めるために、この施設は地域の人々も利用することができ、宇治大好きネットが打ち合わせを行ったり、学生の研究発表を地域の人に向けて行ったりしている。この関係が基になり、学生が地域の祭りに参加したり、学生と地域の人々が協力して「グリーンマップ」を作成したりするということがこれまでにあった。

さらにネット以外のメディアの活用にも積極的で、これまでに2度、タブロイド版の「お茶っ人新聞」を発行している。お茶っ人のユーザーが内容を解説しながら「人づて」で配布するという「SNSの新聞」らしいユニークな試みも行っている。さらに、コミュニティFMの「FMうじ」の番組内のコーナーで「お茶っ人」の情報やイベントの紹介がされることも多い。インターネットとFMの連携による災害情報の収集・配信の訓練も行っている。

「お茶っ人」が活用しているミニコミ紙やコミュニティFMは、近隣地域よりは広く、地方紙や地方放送局が対象とする県域よりは狭い「生活圏」を対象としている身近なメディアだ。歩いて行ける場所ばかりではないが、自転車やバス、車に乗れば気軽に行ける範囲、といってもいいだろう。その意味では市内の大学との連携も、同様の「距離感」だといえる。趣味のサークルや市民活動も、そのくらいの範囲で行うものが少なくないだろう。このような生活圏の情報流通や活動を充実させる基盤としても、地域SNSが使える可能性があることを「お茶っ人」は示している。

第9回 神奈川県厚木市「マイタウンクラブ」 ―生活密着サービスのID基盤へ(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年11月05日

「個人ID」の活用という方向性
地域SNSには、さまざまな社会活動を支えるコミュニケーション基盤となったり、地域情報の生成や流通・蓄積を支えたりする役割があることをこれまで紹介してきた。言い換えれば「オフ会」や「イベント」のための活用と「地域メディア」としての活用ということになる。

今回はこれらとは少し異なる方向に地域SNSを発展させる可能性について考えてみたい。今回紹介するのは、神奈川県厚木市役所が運営する「マイタウンクラブ」だ。この事例は、SNSが持つ「個人ID」を市民サービスに広く活用するということの可能性を示している。

施設予約システムから発展
厚木市は1986年に旧郵政省「テレトピア構想」のモデル都市指定を受けて以来、全国に先駆けてCATVや「キャプテンシステム」を活用した行政サービスの情報化などに取り組んできた。今回紹介する「マイタウンクラブ」も、地域SNSとして始まったものではなく、この時代から提供されてきた「スポーツ施設予約システム」がベースになっている。

2004年10月、マイタウンクラブはさまざまなサービスを統合して生まれた。まず、スポーツ施設予約システムの対象を公民館等に拡大し、「公共施設予約システム」とした。また、市が主催する講座やイベントの情報を詳細に提供し、それらのほとんどの申し込みがインターネット経由でできるようにもした。さらに、生涯学習サークルやボランティア団体等が簡単に団体情報をホームページに公開したり、電子掲示板を開設したりすることができる仕組みも設けた。そして、これらのサービスを「マイタウンパスポート」という薄いプラスチック製のIDカード1枚で利用できるようにしたのである。このカードは、図書館の貸し出しカードとも統合されている。つまりマイタウンクラブは、市民生活のさまざまな場面で登場する、生活に密着したサービスだといえる。

mytownclub.jpg

10万人以上の会員基盤と「サポーターズクラブ」
2008年8月現在のマイタウンクラブのユーザー数は10万人を超えたところだ。近隣自治体の住民など市民以外でも登録することができるが、厚木市の人口が22万人であることを考えると、非常に高い普及率だといえるだろう。

図書館での貸し出しなどにも使うものであるため、マイタウンクラブの会員には年齢制限がない。ただし、一般の個人登録カードのほかに、中学生以下の市民向けに利用可能サービスを限定した「キッズカード」と、施設予約や団体情報の公開に特化した「団体カード」もある。

カードの発行は1人1枚に制限されており、本人が市内の拠点で申し込む必要がある。身分証明書の確認も行うため、インターネット上のサービスとしてはかなり厳格な会員制を取っているといえる。

また、登録した団体はマイタウンクラブ内に団体紹介を掲載できる。施設予約時に登録する情報に「公開可」というチェックを入れるだけで手軽に登録できるため、1600以上の団体が情報を公開しているという。マイタウンクラブを運営する情報政策課の小路隆行氏と中正大氏は、「マイタウンクラブはリアルなコミュニティの活性化支援に重点を置いている」と明言している。二人とも公民館やスポーツ施設の職員を担当していた経験があり、その現場感覚が運営に生かされているといえよう。

さらに2007年12月には、マイタウンクラブの「サポーターズクラブ」が発足した。マイタウンクラブへの愛着が強く活動的な70人のユーザーが、「まちかどレポート」や企業コンテンツ作り、管理運営のサポートや盛り上げ役を担っている。

SNSの導入とサービス統合
厚木市は2007年の総務省の地域ICT利活用モデル構築事業に採用された機会を活用し、マイタウンクラブに、「SNSの構築」、「民間イベント情報の掲載」、「企業・ショップ情報の掲載」、「強力な横断検索」という増強を行った。

SNSは10万人のユーザーにそのままSNS機能を持たせるのではなく、規約に同意した人がSNSユーザーとなるようにした。それでも、SNSが開設された2008年3月から7月末までの間に1137人の登録があり、順調に増加している。地域SNSとしてのマイタウンクラブでは50代・60代のユーザーや、子育てをしている女性が目立っているそうだ。大手の民間SNSを使ったことがない、初めてSNSを使うユーザーが少なくないが、きめ細かいサポートや講習会、サポーターズクラブの活動が支えている。保育所の様子を保育士が父母限定で情報発信するなど、公的な利用も一部に見られる。

また検索機能は、市のホームページの掲載情報、企業・ショップ情報、マイタウンクラブ(施設情報、団体情報、行政・民間のイベント情報等)に加え、外部公開されたSNSの書き込みまで一気に横断検索することができる。逆に、重要なイベント情報などはこれらの情報源に加えて広報誌にも掲載するなど、クロスメディアにも取り組んでいる。

このように大規模で高度なサービスが実現した背景には、業務や掲載情報の標準化への取り組みがある。厚木市は2008年の「全国広報コンクール(日本広報協会)」で総務大臣賞、「e都市ランキング2008(日経BP社)」で5位など、近年、マイタウンクラブを含む情報化への取り組みが特に高く評価されているが、この背景には、2004年の開設時から、情報政策課を中心に、施設ごとに異なる予約の形式やルールを標準化したり、各部署との調整をねばり強く続けたりしてきたことがある。

「生活密着サービス」を追求
このように、厚木市では市民生活やサークル・団体活動を支えるID基盤の上に地域SNSを追加するという他に例がないアプローチを取っているが、このような発展の方向性は他の地域でも取り入れることができるだろう。マイタウンクラブの今後の発展についてたずねたところ小路氏は、同じID基盤ではあるが住基ネットワークとの連携や統合は考えていないという。セキュリティ要件が厳しく広域連携がしにくい、また子供などが気軽に持ち歩けない住基カードとは一線を画し、マイタウンクラブは「生活中心」と割り切っている。それでもマイタウンクラブは使用頻度が非常に高く、生活の中で何度も使われるサービスであるため、厚木市として運営費用に市費を投入しても十分効果があると考えているそうだ。これも、地域SNSの継続性を考える上で非常に参考になるといえよう。

mytownpassport.jpg

第8回 東京都千代田区「ちよっピー」 ―先駆者の模索(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)

地域SNSの先駆者
今回は、東京都千代田区の「ちよっピー」(http://www.sns.mm-chiyoda.jp/)を紹介する。「ちよっピー」は、2004年に熊本県八代市で誕生した地域SNS「ごろっとやっちろ」に総務省が着目して2005年度に実施した実証実験で開設された。いわば地域SNSの先駆者のひとつである。このSNSの、実証実験後の展開を中心に紹介しながら、地域SNS活用のポイントを考えてみたい。

千代田区は23区のほぼ中心に位置し、皇居を取り囲む11.64平方キロメートルの狭い地域である。永田町や霞ヶ関には国会や中央省庁など国の首都機能が集中し、また丸の内や大手町には大企業の本社が集まる日本経済の中心でもある。また、秋葉原の電機店やアニメ・ゲーム産業の集積、神田神保町の書店や出版社の集積、番町の高級住宅街など、特色を持った地域によって構成されている。昼間の人口は85万人以上だが、夜間人口(区の人口)は約4万人で、その差が非常に大きい地域である。

「ちよっピー」は、「財団法人まちみらい千代田」が運営している。この団体は平成17年に、財団法人千代田区街づくり推進公社や財団法人ちよだ中小企業センターなどを統合して生まれた。地域の土地や建物を管理運営しながら産業育成や地域の活性化を主導する現代版「家守」の育成など、まちづくりや産業振興に取り組んでいる。

実証実験の成果
「ちよっピー」の実証実験は、地域SNSが行政への住民参画や災害情報の共有などに使えるかというテーマで、2005年12月から翌年2月の2ヶ月間に渡って行われた。「ちよっピー」という名称は、「千代田」と「People(人々)」を合成したもので、ユーザーからの公募で決められた。実験期間の終了までに903人がユーザー登録し、125個のコミュニティが設置された。また日記や日記へのコメントが1日平均17.5件、コミュニティへの書き込みが平均43.3件あり、比較的活発に利用されたといえる。

tyoppi.jpg

例えば「交通機関の運行状況速報」コミュニティでは、電車の遅延や運休についての情報が、ユーザーからの自発的な情報提供によって共有された。電車の運行情報は、この地域で生活している人々にとっては一刻も早く知りたい情報だが、テレビや新聞等にその情報が載るまでには時間がかかる。したがってこれは、ネットコミュニティでの情報共有が他のメディアに対して優位性を発揮できる使い方だといえよう。また「千代田区こども110番」コミュニティでは「千代田区こども110番連絡会」が、通学路の安全性などについて情報を交換しただけでなく、実際に区内で刃物を持った男が突然で人を刺傷し逃走するという事件があった際には、速報の提供、情報共有の場として機能した。さらに、この経験を契機として区担当者やPTAらによるオフラインの会議が実施された。

千代田区は観光スポットや飲食店、事件などがマスメディアに露出する機会が多い。それでも、実際にそこで生活をしている人々には、交通情報や子供に関する情報など生活に密着した情報をいち早く知りたいというニーズが強く存在し、その伝達共有手段としてSNSが活用できる可能性が示されたといえる。

実験後の課題は「人のつながり」
実証実験が終了した後も、ちよっピーは「まちみらい千代田」の事業として運営されている。登録者も2,336人にまで増加し、参加者の数でいえば今でも全国有数の規模を誇る地域SNSである。
だが現在、残念なことにちよっピーでは、以前ほど活発にはコミュニケーションが行われなくなってしまっている。ユーザーの関心が、メディアで頻繁に取り上げられた頃よりも低下するのは仕方のないことだが、ここでは「人のつながり」の観点から考えてみたい。

SNSでは、「ともだち」同士で互いの近況を把握したりそれを元にコミュニケーションをしたりすることができる。そして、「ともだち」が多いほど、SNSにアクセスした際に更新される情報が増えるので、ユーザーは「ともだち」のネットワークを拡大し、またそれによってSNSに滞在する時間を増やし、アクセス頻度を高めるようになっている。つまり、「ともだち」の数とは、SNSというサービスにとって、その性質を十分に生かせるかどうかを決める重要な要素だ。しかし、運営者によると、ちよっピーでは「ともだち」の数が0人で誰ともつながっていないユーザーが1726人と半数以上を占めている。

これには、(1)新規ユーザーが誰かの招待を受けなくても利用できる登録制であるということ、(2)地域SNSの代表例として広く知られているため、試しに地域SNSを使ってみたいという「様子見」のユーザーが多いこと、(3)運営者やコアユーザーが積極的に人を結びつけるような活動をしていないこと、などが原因として考えられる。

特に(3)については「地域SNS活用術」として重要なポイントだ。本連載ではこれまで、各地の地域SNSが、活発にオフ会を開催したり、SNS内のさまざまな活動を紹介するメディア(ウェブマガジン、フリーペーパー等)を活用したりしている例を紹介してきた。このような取り組みは、ユーザーに別のユーザーの存在を知らせたり、出会いの機会を与えたりするため「つながり」の形成に役立つ。また、「ひょこむ(兵庫県)」や「Sicon(福島県会津地域)」などのように、SNS上で第三者がユーザー同士に友達になるよう仲介する「橋渡し」行為が積極的に行われている例もある。このような、つながっていなかった人同士を結びつけるという取り組みは、地域の人間関係を緊密化し、コミュニケーションの濃度を上げることに役立つだろう。

資産を生かしさらなる発展を
もちろん、実証実験の後にも、ちよっピーを活用している人々がいる。町会青年部や合唱サークルのグループや、ブログを書いている人などだ。そのような人々は、地域への思いを持ったユーザーや、その予備軍ともいえる人々であり、ちよっピーにとっては大きな資産だ。また、地域SNSの運営を通じて姉妹都市のような関係を築いてきた新潟県長岡市の「おここなごーか」や京都府宇治市の「お茶っ人」の人々と花見や祭りなどのイベントを通じて交流を深めたり、千代田区の「亀吉」という居酒屋が全国の地域SNSの運営者や研究者が不定期に集まる拠点になっていたりもする。

このように、ちよっピーには、貴重な資産が今も息づいている。ちよっピーを代表するユーザーの一人であり千代田区職員の印出井一美氏は、「今後も、地域の魅力を発掘し、参加型の仕組みをさらに模索していきたい」という。ちよっピーの次の展開が注目される。


kamekichi.jpg

第7回 鹿児島県「NikiNiki」 ―クロスメディアとSNSカフェ(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年08月18日

各地の地域SNSは、ウェブ上のサービスとしても、まちづくりの活動としても、さまざまな試行錯誤を続けている。この連載を始めてから約半年の間にも、新たな取り組みが次々に生まれてきている。「メディアとしての地域SNS」という観点では、兵庫県佐用町「さよっち」など地域SNSと動画公開機能との組み合わせが広がっていることは特筆すべきであろう。また「グループウェア(地域活動の基盤)としての地域SNS」という観点では、文部科学省による「地域SNSを活用した家庭教育支援に係る調査研究事業」が全国18ヶ所の地域SNSで始まった、というニュースもあった。


クロスメディアに取り組む地方テレビ局
今回紹介する鹿児島テレビの地域SNS「NikiNiki(ニキニキ:http://nikiniki.tv/)」は、メディアとしてもグループウェアとしても、特にユニークな取り組みを次々と打ち出している事例だ。地方の新聞社が運営する地域SNSには、佐賀新聞の「ひびの」や河北新報の「ふらっと」、紀伊民報の「みかん」などがある。だが、地方のテレビ局が地域SNSを運営しているのは珍しいといえる。新しい技術やメディアの登場によって従来型のマスメディアの将来が不透明になっているというのは新聞もテレビも同様で、地方テレビ局にとっては、地上デジタル化に伴う大規模な設備投資をどうまかなうかということが、最大の問題になっている。

そのような中、鹿児島テレビは「放送外収入」の拡大を目指して、インターネットへの取り組みを積極的に展開している。具体的には、企画推進局コンテンツ推進部の池田耕毅氏を中心に、招待制地域SNS、オープン制(誰でも登録できる)地域SNS、地域情報サイト、物販サイトの4つを運営している。これらのサイトとテレビの連動から、新しい地域情報の流れと、新しい価値を作り出そうとしているのだ。このようにコンテンツやデータを複数のメディアに掲載してより多くの人に届け、相乗効果を生み出そうという手法は、「クロスメディア」と呼ばれている。


SNSから情報サイトに毎日約10件記事を掲載
鹿児島テレビの取り組みで核となっている招待制の地域SNS「NikiNiki-R」は、2006年4月に運用を開始したもので、ユーザー約2000人が参加している。また2007年9月にスタートした「NikiNiki-G」は、招待なしで誰でも気楽に登録でき、約1000人が参加している。二つの地域SNSを合計すると、NikiNikiには約3000名が参加していることになる。

情報サイト「WHAT'S NEW かごしま(http://www.ktstv.net/)」は、鹿児島テレビが提供する生活情報や地域SNSのユーザーが提供する口コミ情報、番組関係のブログへのリンクなどを紹介している。地域SNSからは1日10件程度、事務局が選んだ日記や写真をユーザーの許可を得て転載している。SNSと情報サイトやウェブマガジンを連携させる事例は他の地域でもいくつか見られるが、1日に10件程度の転載という記事の量は、全国で最も多いといえるだろう。今後は、特に人気の高いグルメや温泉に関する情報について、自社製作の放送コンテンツ(取材時に許可を取っているため二次利用がしやすい)と、SNSの口コミ情報を連携させていく予定だと池田氏は語っている。

そして物販サイト「NIKI MONO(http://ktstv-sh.sv1.allin1.jp/hitgoods/)」では、鹿児島やNikiNikiに関連する商品を販売していて、SNSの利用に応じて加算されるポイントを使って買い物をすることができる。特に興味深いのはNikiNikiリストバンドという赤いシリコン製のリストバンドだ。これはNikiNikiの仲間であるということの証であり、このリストバンドをして協力店へ行くと特別なサービスをしてもらえたりする。


地域SNSから生まれたカフェ
鹿児島市役所の近くに、昭和の古い木造建築の飲食店が軒を連ねる「名山堀」という場所がある。その一角に、地域SNSから生まれた「SNSカフェ めいさん」がある。NikiNikiユーザーの「めい」さんが経営する、居酒屋風の店だ。めいさんが昨年この店を開くときには、NikiNikiユーザーの有志が設計やペンキ塗りなどを手伝った。そして今は毎晩、NikiNikiユーザーの誰かが必ずやって来て、ハンドルネームで呼び合いながら食事や会話を楽しんでいる。カウンター席10人分ほどしかない小さな店であるため、NikiNikiのユーザーだけで店がいっぱいになることもある。

この「SNSカフェ めいさん」は、NikiNikiユーザーのさまざまな地域活動の拠点になっている。筆者が訪問した際には、NikiNikiの有志が数日後に迫ったキャンドルナイト(照明を消しキャンドルの灯りで夜を過ごそうという環境イベント)について相談しながら飲んでいたり、海の日に桜島の海岸を清掃しようという話がその場で決まったりしていた。この店で、ネットの人間関係が深まったり、新しいつながりが生まれたり、地域活動が生まれたりしている。

meisan.JPG

また「めいさん」の2階では、毎週木曜日の21時から1時間、ネットラジオ「ゆくさ(http://yukusa.blog57.fc2.com/)」の 生放送が行われている。「ゆくさ」は、「ネットラジオ」と称しているが音声だけではなく、Stickamというライブカメラサービスを使って、飲食店や観光スポットの情報、ゲストとパーソナリティの対話などを動画で流しながら、視聴者とのチャットを楽しんでいる。NikiNikiユーザーがゲストとして登場することや、NikiNiki発のイベントを紹介することもある。「NikiNiki」と「SNSカフェ めいさん」と「ゆくさ」は、ネット上のコミュニケーションとリアルな地域をうまくブレンドするいい関係を築いているといえるだろう。

池田氏によると、NikiNikiを中心とする鹿児島テレビのネット事業は、基本的な構築が終わり、現在はブラッシュアップの時期にある。「放送外収入」を生み出すビジネスとしてNikiNikiの事業モデルが確立するかどうかは、これからが勝負どころだ。しかし、クロスメディアという新しい情報の流れと、SNSカフェを拠点とする地域活動や人のつながりは、すでに歯車がかみ合い始めているように見える。

NikiNiki-R.jpg

※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載している記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

『地域SNS最前線 Web2.0時代のまちおこし実践ガイド』執筆担当者について

カテゴリー : 研究成果

地域SNS最前線 Web2.0時代のまちおこし実践ガイド』を2007年3月に出版してから、まもなく1年半になりますが、先日、「各章の執筆担当者がわからない」というお問い合わせをいただきました。

これは特に隠していたわけではもちろんなく、とりまとめをした私(庄司)のミスともいえます。ここに、各章の執筆担当者を掲載させていただきます。

-------------
1章 須子善彦
2章 庄司昌彦
3章 庄司昌彦
4章 和崎宏・三浦伸也
5章 三浦伸也、庄司昌彦、須子善彦、和崎宏 (1節ずつ担当)
-------------

第6回 香川県「ドコイコパーク」 ―持続可能なビジネスモデルの模索(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年08月04日

運営コストとビジネスモデル

多くの地域SNSに共通する最大の課題は、事業モデル・ビジネスモデルの確立である。地域SNSで人間関係を築き、一時的な盛り上がりを作ることができても、その関係を持続的なものにしていかなければ、本当の意味での「ソーシャルキャピタル」にすることはできない。そのため、地域SNSの運営に関する機器や人的なコストをどうまかなっていくかということは、非常に重要な課題である。

地域SNSの設置や運営にかかるコストはそれほど多くはない。総務省の「地域SNS動向調査(平成19年2月)」によると、初期投資は「10万円未満」が最も多く(約45%)、また月間運営費用も「5万円未満」が最も多い(約60%)。オープンソースのプログラムを使い、多少の技術力がある人材が確保できれば、かなりの低コストで地域SNSを運営することはできる。そのため、第2回地域SNS全国フォーラムが行った調査(平成20年2月、複数回答)では、地域SNSの運営費用は「他の事業からの補填(55%)」や、「持ち出し(21%)」でまかなっているという回答が目立っていた。

しかし、「最低コスト」での運営から一歩踏み出し、地域に対して積極的に働きかけたり、サービスや機能を充実させたりしようとすれば、費用がかかるのも事実である。また、いつまでも「他事行からの補填」や「持ち出し」でいることは望ましいことでもない。したがって、地域SNSを組み込んだより大きな事業モデルやビジネスモデルを考えることが重要なのである。

ビジネスとしての地域SNS

そこで今回は、地域SNSと地域密着型のビジネスとの関係を追求している香川県の地域SNS「ドコイコパーク」を紹介する。この地域SNSは、2006年1月にSNSのサービス提供を開始した、地域SNSの先駆け的存在で、現在は3000人弱のユーザーが参加している。

運営している(株)ドコイコは、代表取締役の河野大輔氏など20代の若者が経営するベンチャー企業である。河野氏らは、地元香川で地域の人々向けに地域情報誌『Tokyo Walker』(角川書店)のインターネット版のようなサイトを運営したいと考え、2005年7月からポータルサイトの運営を開始した。当初はポータルサイトが事業の柱であったが、すぐにmixiなどのSNSが人気を集めていることに注目し、ネットコミュニティからも地域の情報を得ようと考え2006年1月からSNSを開設した。

dokoiko.JPG

ドコイコの特徴は、SNSを開設した当初から、ビジネスと地域SNSを関連づけていることである。ドコイコのビジネスモデルは、地域の商店等に対してウェブページ等による情報発信を支援し、またSNSやフリーペーパー等で住民とのコミュニケーションを支援して、その対価を得ることである。具体的には、SNS内にその店舗のコミュニティを設置したり、ユーザーアンケートをしたり、SEO対策等のコンサルティング、ネットショップ販売代行、ポスター製作・印刷代行などである。そのため、ドコイコにとって地域の店舗や企業との関係は非常に重要で、日常的に活発な営業活動を行っている。その成果もあり顧客は高松市内の飲食店や美容関係を中心に220社を超えている。

 ドコイコの顧客である「カフェMATA-HARI」(高松市常磐町)の店長、宮川健一氏は「ドコイコは、香川の人や店ばかりで安心感がある。全国的なSNSでは余計な情報が多いと感じる」と述べている。宮川氏は2007年5月にドコイコの営業担当者が訪問したのをきっかけとしてSNSに一般ユーザーとして登録をし、6月頃に店舗として有料登録をした。現在は、ドコイコパークを通じて店のニュースを発信しており、数人の顧客とSNS上でやりとりをしている。さらに宮川氏は、ドコイコに店内のPOP広告やダイレクトメールの作成を発注するなど、多面的にドコイコと取引をしている。また多くの顧客を持つドコイコに「ビジネスパートナーなどを紹介してくれると嬉しい」とB2Bの橋渡しも期待している。人や企業を支援し、結びつける役割を果たす、というドコイコのビジネスモデルは、コミュニティビジネスの一部としての地域SNSのあり方を示しているといえるだろう。

ベンチャー精神と大学

ドコイコはビジネスとして地域SNSに取り組んでいるということもあり、じつにさまざまな試みを行っている。たとえば、夏には渇水が必ず話題になる地域性を生かしてユーザーと共に節水キャンペーンを展開し、地域のニュース番組に取り上げられた。ビアガーデンパーティやケーキバイキングなどを行う公式イベント「ドコイコサミット」も、10回以上開催している。その他にも、ネット上の地図を使って讃岐うどんの店を紹介したり、フリーペーパーを発行したり、地元で話題の場所を取材してポータルサイトで紹介したりするなど、サービス開発やコンテンツ制作には非常に積極的である。そのような取り組みが評価され、2006年には四国経済連合会などが主催する「キャンパスベンチャーグランプリ四国」で最優秀賞を受賞した。

ドコイコのベンチャー精神の背景には、彼らが若くビジネスを志向しているということの他に、「大学との関わり」もあると考えられる。「ドコイコ賢人論」というコンテンツでは、香川大学経済学部の研究室と協力し、地元で活躍する著名人や企業人のインタビュー記事を作成し公開している。大学には技術や知識があり、またサークルやNPO活動、多様な学生や教員という人材がある。これらは地域SNSが志向する地域活性化と非常に相性がいい。また大学がある地域は人材の流動性も高く、地域の側も新しい人や取り組みを許容する寛容さもあるといえる。大学がなければ地域SNSが活性化しないということはないが、大学がある地域で、大学関係者と地域の人々をうまくつなぐことができれば、地域活性化の取り組みが加速する可能性は高く、そこにSNSが貢献する余地があるといえよう。

 ビジネスの立ち上げから2年以上が過ぎ、いろいろなところから声が掛かるようになるなど、多くの人と関わる中で信頼を得られるようになり、「やっとスタートラインに立った」感覚であると河野氏は述べている。さらなる積極的な展開とビジネスとしての確立を期待したい。

dokoikoportal2.jpg

※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載している記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

「地域SNS全国調査(2008年2月版)」の資料を公開
2008年07月04日

カテゴリー : 地域SNSニュース : 研究成果

第2回地域SNS全国フォーラム実行委員会と地域SNS研究会(庄司昌彦)が、昨年度末に行った「地域SNS全国調査」の資料を公開します。(この資料は、第2回地域SNS全国フォーラムの際に使用したものです。)


Powered by Hot.Docs---地域SNS全国調査(2008年2月版)


この資料のダウンロードはこちら(Hotdocs)へ。

この資料に掲載しているのは調査のごく一部です。 詳細は下記の論文をご覧ください 。

庄司昌彦、 「地域SNSの実態把握、地域活性化の可能性」、 情報通信政策研究プログラム成果論文、2008年3月。
http://www.officepolaris.co.jp/icp/2007paper/2007014.pdf
※この論文は、情報通信政策研究プログラムの研究助成を受けて行った研究の成果です。

第5回 兵庫県「ひょこむ」 ―産官学民に広がる強い絆(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年06月17日

地域SNSの代表例

前回までは、広い地域で、大規模でゆるやかなつながりを作り情報流通を重視する地域SNSと、商店街などの狭い地域で、しっかりとした人間関係やオフラインの活動との連携を重視する地域SNSを紹介した。今回は、両方の特徴、すなわち広い地域を対象としつつ、しっかりとした人間関係やさまざまなオフライン活動を実現している兵庫県の「ひょこむ」を紹介する。

「ひょこむ」は、「地域のソーシャルキャピタル(社会関係資本)の創造」を目的として、姫路市のインターネットサービスプロバイダー、インフォミーム株式会社が運営している。社長であり「ひょこむ」を主宰している和崎宏氏は、全国各地で地域SNSの効果や可能性を熱心に説いている、いわば地域SNSを代表する存在だ。


活発なオフライン活動と「強い紐帯」

「ひょこむ」は、オンラインのコミュニケーションも、オフラインの活動もともに活発だ。特に、ユーザーによる自発的なオフラインの活動がたくさん起こっている。

たとえば、ユーザーの発案とデザインによって実際の車の外装を「ひょこむ」のキャラクターなどで飾った「ひょこむカー」が生まれたり、地産地消で料理をしようというオフ会から、姫路の郷土料理を使った新名物「姫路おでんコロッケ」が生まれたりしている。
hyocomcar.jpg

その他、ひょこむの使い方講習会や、山歩き、ダイエット、バーベキュー、芸術活動、異業種交流会など多数のイベントや活動がユーザーによって自発的に行われている。単なる飲み会やお食事会ではない、さまざまなアクションによって、地域の人々のつながりが深まったり、新たなつながりが生まれたりしている。

「ひょこむ」は、2008年4月現在で約3800人が参加する比較的規模の大きな地域SNSであるが、参加するためのルールは厳格で、ユーザーからの招待がなければ参加できない招待制をとっている。またAさんがBさんをひょこむに招待したらAさんはBさんの「後見人」として助や協力をする、という「後見人制度」も採用している。このような運営方針には、運営者の「人のつながり」へのこだわりが現れている。

運営者だけでなく、ユーザーの方も比較的「強い紐帯」を志向していることがうかがわれる。例えば、「ひょこむ」で書かれる日記やそのコメントは、他の地域と比べると長く内容の濃いものが多い。また官(兵庫県)や民(NPO等)、学(大学関係者等)が運営者と協力関係を築いているほか、ひょこむに参加している一般のユーザーの中にも、みんなで共にひょこむを作っているという感覚や信頼感を共有している人々が少なくないように見える。


兵庫県庁の活用

兵庫県庁が地域SNSを積極的に活用しているということも、大きな特徴だ。「ひょこむ」には、県知事をはじめとする県庁職員約640人が参加している。これだけの数の行政職員が参加している地域ネットコミュニティは他に存在しないだろう。それだけではなく、2007年度からは県の事業として、地域SNSを県民の地域づくり活動のツールや県政情報の発信の場などに活用している。

この兵庫県庁の取り組みの中心人物は総務省出身の牧慎太郎企画管理部長だ。牧氏は、総務省時代に、地域SNSにいち早く注目し、2005年に行われた総務省の実証実験を推進した人である。

兵庫県では、地域SNS(ひょこむ)の活用が県の事業であるため、業務関連のことについては勤務時間中でも閲覧したり、実名を名乗った上で書き込んだりすることができる。例えば県が運営している「コウノトリバーチャル博物館」コミュニティでは、県が野生復帰を支援しているコウノトリの放鳥や産卵の状況が県から投稿され、ユーザーが多数のコメントを寄せている。このような県の事業に関連したコミュニティは、一部の県民だけへの情報提供で終わらないよう、ユーザーではない人も閲覧できるように公開されている。牧氏によれば県のコミュニティは、従来のネットコミュニティでたびたび見られた行政と住民の対立的な雰囲気はなく、逆に「行政職員が身近になった」という声も聞かれるそうだ。県職員と県民の日常的な信頼関係の構築はある程度成功しているといえるだろう。


ひょこむに見る地域SNSの将来

ひょこむの中心的なユーザーからは、産官学民などの立場の違いや組織の壁を超えて、日ごろから協力関係や信頼感などの「ソーシャルキャピタル」を醸成しておくことへの強い意識が感じられる。その背景には1995年の阪神淡路大震災の際に地域の人々が自発的に助け合った経験があると和崎氏は語っているが、確かに兵庫の人々は、災害の経験を共有していることによって他の地域よりも地域の協力関係の重要性を強く認識しているのかもしれない。

兵庫県内にはひょこむの他に、三田市の「さんでぃ」や佐用町の「さよっち」など、市町を対象地域とする地域SNSが誕生している。これらはひょこむと人的に連携し、またシステム的な連携もし始めている。今後は、兵庫県全域を対象とするひょこむと、より狭い地域を対象とするSNSが、人々の活動範囲や目的などに応じて縦横に連携しながら発展していくようだ。兵庫県のモデルは他の地域にも参考になると考えられる。

その他にもひょこむでは、SNS内で流通する地域通貨ポイント「ひょこぽ」や、地域の商店が並ぶオンラインショッピングモール「ひょこむモール」など、地域の人々のコミュニケーションや経済取引をさらに促し充実させるようなことにも取り組んでいる。また地域SNS内で生成される地域情報を、その地域を通過する自動車のカーナビへ配信したり、インターネット接続された地上デジタルTVに配信したりするなど、SNSに参加していない人や地域の外部の人々へも向けて流通させるような取り組みも行っている。
ひょこむが醸成するソーシャルキャピタルの上に、どのような経済社会システムが出来上がっていくのか。今後の発展が楽しみである。
hyocom.bmp

第4回 佐賀県「ひびの」 ―メディア志向の地域SNS(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年05月27日

カテゴリー : ひびの(佐賀県) : 研究成果

自由参加で大規模、ゆるやかなつながり

前回は、「町内会や商店街のような狭い地域」を対象とする地域SNSの代表例として、西千葉の地域SNS「あみっぴぃ」を紹介した。招待状がなければ「あみっぴぃ」には参加できないが、ユーザーの間には地域通貨の取り組みやさまざまなオフライン活動を通じた強い信頼関係があり、オフラインの関係を補完する役割をSNS(オンライン)が担っていた。「あみっぴぃ」は地域SNSと地域社会の関係についてのひとつの典型であるといえる。

それに対して今回紹介する佐賀県の地域SNS「ひびの(http://www.saga-s.co.jp/)」は、佐賀県という広い地域を対象とし、誰でも自由に参加することができ、大規模でゆるやかなつながりを作っている。その意味では、「あみっぴぃ」とは別の(ある意味では「対極」の)典型である。

「ひびの」は、2006年11月からSNSサービスの提供を開始した佐賀新聞社のサイトで、佐賀新聞のニュースとSNSのコミュニティ、生活情報のページから成り立っている。SNSのユーザーは過去の特集記事などを閲覧するサービスも同じIDで利用することができる。運営は、佐賀新聞社のデジタル戦略チームが担当している。

「ひびの」のユーザーは8387人(2008年3月現在)で、全国の地域SNSの中で最も多い。また他の地域SNSに比べて女性の割合がやや高い(約40%)のも特徴で、これはSNSのスタート時から、県の子育て支援事業と連携して情報交換のコミュニティを設けているためだと考えられる。子育てをしている30代前後の女性がコアユーザーになっていて、「食育」など子育てに関するテーマのコミュニティが活用されていたり、携帯電話からのアクセスが多かったりする。地元スーパーと連携したコミュニティで、タイムサービスの情報がスーパーから投稿されていたりするのも興味深い。

図:「ひびの」画面
hibino.jpg

地方紙とネットコミュニティ

地方新聞による地域SNSの運営では、佐賀新聞社が先駆者だ。他には、河北新報(宮城県)の「ふらっと 」や新潟日報(新潟県)の「アメカゴ.net 」などがある。

新聞社がネットコミュニティの運営に乗り出した背景には、インターネットの普及などにともなう「新聞離れ」がある。佐賀新聞の購読数は、ここ数年14万部程度で横這いを続けているが、他の地方紙は購読数が減少しており、佐賀新聞も将来的には減少していくと考えられている。そのため佐賀新聞社は早い時期から、広告やウェブサービス開発、インターネットサービスプロバイダ等のビジネスに進出してきた。SNSも、このような積極的な取組みの一環として位置づけられる。新聞社が読者個人とつながるということはこれまで無かったことだ、と「ひびの」の運営を担当している牛島清豪氏は述べている。牛島氏によると、新聞社はこれまで、新聞が家庭へ宅配された後にその家族のうちの誰が実際に新聞を読んでいるのかということを把握していなかった。だがSNSや携帯電話のような情報技術を活用することで、新聞社が個人とつながることができるようになった。このように、さまざまな形で新聞社と地域社会との関係を深めていくことが目指されている。

 新聞社とネットコミュニティという組み合わせでは、一般の人々がニュースを書く「市民記者制」や「市民ジャーナリズム」という考え方もある。市民記者制とは、プロのジャーナリストではない一般の人が書く身近なニュースを集めるやり方だ。2002年の韓国大統領選挙で盧武鉉氏が当選した際に、市民記者制をとるインターネット新聞「OhmyNews」が保守的な既存の新聞社と対立する「進歩派」言論の拠点となって注目を集めた。

だが、佐賀新聞社が考えていることはそれとは異なる。牛島氏は、「メディアとしての地域SNSは、“瓦版”のようなものである」と例えている。瓦版では、誰かが情報を収集し編集して人々に伝える。すると集まってきた人々に口コミが生まれて、情報がさらに伝わっていく。このような「情報の流れ」があるとすると、現在の新聞紙が担っているのはその最初の部分だけだ。地域SNS「ひびの」は、瓦版のような、情報が流れ循環する環境を目指していると牛島氏は述べている。

そのため「ひびの」では、運営者としての佐賀新聞が前面に強く出ることはほとんどない。ユーザーも記者も自由に交流や情報交換をしている。コミュニティで読者に感想をもらっている論説委員や写真記者がいたり、ユーザーの投稿から新しいネタを見つけて取材に行く記者がいたりする。「ひびの」ユーザーと記者の関係は、競合的ではなく、同じグラウンドで地域情報のキャッチボールをするような関係だといえるだろう。

もちろん、ひびのは佐賀新聞本紙ともしっかり連携している。「ひびの」の話題を載せる「週刊ひびのタイム」のコーナーは毎週土曜日に掲載され、SNSのコミュニティや日記で話題になっていることを紹介したり、生活情報ページの新着情報を紹介したりしている。

メディア志向の地域SNS

「ひびの」では、2007年11月にAMラジオ局と共催で「ひびのフェスタ」を開催するなど、ユーザー同士が実際に顔を合わせるイベントの開催にも取り組んでいる。ひびのフェスタには、1500人の参加者が集まり、盛況であった。

図:「ひびのフェスタ」の様子(佐賀新聞提供)。
hibinofesta3.jpg

だが他の事例と比べて顕著な「ひびの」の特徴は、ユーザー同士のゆるやかなつながりの場であり、「情報の流通」に対する意識が強いということだろう。いわば、「メディア志向の地域SNS」である。

2007年7月から8月にかけて佐賀県で行われた高校総体では、SNSと連携したミニブログ による応援サイト「そーたいっ!ひびログ」を運営するなど、「ひびの」は新しいCGM(Consumer Generated Media)サービスの活用にも積極的に取り組んでいる。地域においてどのような情報流通の場をつくり、どのようにメディアと連携させていくのか。「ひびの」の発展の方向性は今後も注目される。

地域SNSについての研究成果
2008年05月11日

カテゴリー : 研究成果

地域SNS研究会の活動を踏まえた、最新の研究成果です。地域SNSの研究や運営のための参考資料としてお役立てください。庄司昌彦( shoji[atmark]glocom.ac.jp )までコメント等をお寄せいただけると嬉しいです。

庄司昌彦、「地域SNSサイトの実態把握、地域活性化の可能性」、情報通信政策研究プログラム研究成果論文、2008年3月。
http://www.officepolaris.co.jp/icp/2007paper/2007014.pdf

庄司昌彦、「ネットコミュニティが地域を紡ぐ--地域SNSは何ができるか?(特集:地域ネットワーキングの現在→近未来)」、『月刊 ガバナンス』08年5月号、ぎょうせい。
http://www.gyosei.co.jp/home/magazine/gover/gover_08050.html

庄司昌彦、「地域情報化セミナー 最新の地域情報化と地方における情報産業企業の必要性(※3月28日に行った講演の内容)」、『荘内日報』、、荘内日報社。
http://www.shonai-nippo.co.jp/square/feature/dci/seminar0803.html

第3回 西千葉「あみっぴぃ」 ―豊かな「オフライン」を補完する「オンライン」(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS)
2008年04月30日

地域通貨「ピーナッツ」が育てた土壌

地域SNSとひとくちにいっても、運営主体や目的、運営方針などは事例によって異なり、実に多様である。対象とする地域も、県や郡レベルの広いものから町内会や商店街のような狭いものまで、さまざまである。そして、どのような規模においても優れた事例がある。今回は、「町内会や商店街のような狭い地域」を対象とする地域SNSの代表例として、西千葉の地域SNS「あみっぴぃ(http://amippy.jp/)」を紹介する。

図:西千葉コミュニケーションサイト「あみっぴぃ」画面
amippy.bmp

千葉市に、西千葉というJR総武本線の各駅停車だけが停車する駅がある。この西千葉駅を中心とする地域が、この「あみっぴぃ」の対象地域だ。西千葉には千葉大学の本部キャンパスや千葉経済大学があるため学生街の趣があり、またその周辺には戸建の住宅街が広がっている。千葉大学のキャンパス沿いには「ゆりの木通り」が走り、通りを挟んだ反対側には「ゆりの木通り商店街」の商店が数百メートルにわたって軒を連ねている。このゆりの木通りに、「あみっぴぃ」のキーパーソンがたくさんいる。ゆりの木通りに行けば、必ず誰かに会うことができる。

「あみっぴぃ」の特徴のひとつは、このような狭い地域で、商店主や地域住民、学生などさまざまな人々の間に、互いに顔が見える人間関係がしっかりと築かれているという点だ。もちろん、ネット(SNS)の上でも活発なコミュニケーションが行われている。

だが、10年ほど前までこの地域では学生と地域住民の間の交流はそれほど活発ではなかったという。この場所で豊かな人間関係が築かれるようになったのは、地域SNSが開設されるよりも前に、「ピーナッツ」という地域通貨の取組みが行われたことによる。ピーナッツは、都市計画コンサルタントの村山和彦氏と、商店会長の海保眞氏、そして佐久間聡子氏、NPO法人千葉まちづくりサポートセンターなどによって2000年に生まれた。ピーナッツは、海保氏が経営する美容院など三店舗でのみ使えるというところから始まり、現在も参加者を増やしている(2008年2月現在1500名以上が参加)。2003年には、地域通貨の利用を通じてまちづくりの活動に取り組む「ピーナッツクラブ」が結成された。このクラブでは、清掃活動やコンサート、オリジナル商品の開発、さまざまなワークショップの開催や商店街の「第三土曜市」への参加など活発な地域活動を行っている。


図:ゆりの木通り商店街の店舗
yurinoki-dori.JPG

地域SNS「あみっぴぃ」を運営するNPO法人TRYWARP(トライワープ:虎岩雅明代表)の活動も、ピーナッツクラブと密接に結びついている。地域の人々に学生がパソコンの使い方を教える、という事業が柱であるこのNPO(当初は千葉大の学生サークル)は、2003年にピーナッツを家賃として事務所を借り始め、2004年にはピーナッツの電子決済システムの設計・制作を受託した。商店会の海保氏はTRYWARPのパソコン講習会を受講し、ピーナッツクラブのブログを書くようになった。


オフラインへのこだわり

地域SNS「あみっぴぃ」は2006年2月にTRYWARPによって開設され、2008年2月現在、2000人が参加している。「あみっぴぃ」という名前は、地域通貨ピーナッツの利用者がつながりの証として使う「アミーゴ」という言葉と「ピーナッツ」の合成である。あみっぴぃは、TRYWARPが行っている地域の人々のためのパソコン講習やサポート事業を補完し、活動を通じてできた地域の人々と学生のつながりを発展させることをひとつの目的にしている。もちろん、ピーナッツクラブの活動とも連動しており、「西千葉」で世代を超えたコミュニケーションを活性化することも目的にしている。TRYWARPの虎岩雅明氏は、パソコン講習・サポートの事業やピーナッツクラブの活動のようなオフラインの町づくり活動が先にあり、オンライン(SNS)はその補完をする道具である、と明確に語っている。この「オフライン」への強い意識も、あみっぴぃの大きな特徴である。

ユーザーの活動も、ネット上にとどまっていない。あるユーザーの「がんばれ!ニシチバ!キャンペーン」という呼びかけがきっかけになり、「がんばれ!ニシチバ!」というロゴ入りのステッカーが作られた。また胸に大きく「西千葉」と描かれたTシャツを作成して販売したユーザーもいる。さらに、千葉大学出身で「シンガーソングライター&西千葉のアイドル」の松尾貴臣氏を中心に「西千葉のアイドル祭り」と題した音楽イベントが開催され、「あみっぴぃ」とも連動して盛り上がっている。このイベントは、地元商店街のメンバーが開発した化粧品の「公式イメージソング」を松尾氏が作成して歌うなど、「西千葉の大学・学生・企業、そして西千葉のミュージシャンがコラボレートした「made in 西千葉」の音楽とアートの祭典」である。


図: 「西千葉のアイドル祭りvol.6」の様子。松尾氏が「西千葉Tシャツ」を着ている
idol.JPG

ここまで述べてきたように、「あみっぴぃ」では、地域通貨の取組みが育んだ人間関係の土壌の上にSNSというツールが重なり、さらに人のつながりを強く豊かなものにしている。そして、オフラインの活動とオンラインの活動を強く結びつけることによって相乗効果を生み出すようになっているのも、地域SNSならではの特徴であるといえるだろう。またSNSの運営とパソコンの講習・サポートを組み合わせたり、分かりやすいデザインや言葉遣いをしたりすることで、シニア世代がSNSに参加するハードルを下げ、世代を超えたコミュニケーションに結び付けているという点も、優れた運営上の工夫である。

あみっぴぃでは、2008年1月からSNSの画面上に地域通貨ピーナッツの決済画面も組み込まれるようになった。今後は「人をつなぐ」SNSと地域通貨のシステムを連携させることで、地域の経済活動にどのような効果をもたらすか、注目される。

※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載している記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

地域SNSイメージフラッシュ『つながりの先の未来へ』公開
2008年03月19日

カテゴリー : 研究成果

いま地域SNSで起きていることや地域SNSが出来ることを表現し、今後の可能性を展望するための素材として、フラッシュ作品『つながりの先の未来へ』を作成しました。

フラッシュ作品の閲覧は、画像をクリックしてください。

pict.jpg

また今後、地域SNSの将来を展望する際のヒントになりそうな素材も公開していく予定です。ご期待ください。

※これらは、昨年度末から今年度にかけて活動をした「2010年の地域SNS」研究プロ
ジェクトの成果に基づいています。
http://www.glocom.ac.jp/project/chiiki-sns/2007/03/2010sns.html

第2回 続々と立ち上がる地域SNSと、そこに集う人々(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)
2008年03月12日

カテゴリー : 研究成果

※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載している記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

地域SNSの現状を概観する
前回は、地域SNSについての議論を始めるにあたり、そもそも地域社会は何を必要としているのか、ということを考えた。今後の地域社会は、国からの資源配分などに依存することなく自らの力で生きていかなくてはならず、そのためには行政とともに地域を経営するさまざまな中間組織を生み出し、それらの活動や連携を機能させることが求められる。「中間組織を生み出し機能させる」ということは、人と人のつながりを作り出し、人々の間に「信頼」や「互酬性規範」や「市民参加のネットワーク」といったソーシャルキャピタル(社会関係資本)を醸成すること、と言い換えることもできる。そして地域SNSには、その基盤となる可能性がある。

この連載では、各地の地域SNS事例を紹介し、効果的な運営方法などを探っていくことにしている。だが個別の議論に入る前に、今回は、地域SNSが全国に広がった経緯と、どのような人々が地域SNSを利用し、またそこに集っているのかということを概観しておきたい。

誕生と伝播
SNSを地域で活用するというアイディアは2004年12月、熊本県八代市の「ごろっとやっちろ」というサイトから始まった。八代市では市の広報情報をより多くの人に届けるために、公式サイトとは別に、市民が普段から「居場所」にするネットコミュニティとしてSNSを設けた。その結果、アクティブユーザーが増加し、活発なコミュニケーションが行われるようになった。

図1:ごろっとやっちろ(熊本県八代市)
gorotto.jpg

そして総務省はこの八代市の成功に注目し、2005 年12月から2006年2月まで、新潟県長岡市と東京都千代田区で地域SNSの実証実験を行った。この実験はSNSが行政への住民参画や防災情報の共有などに使えるか、ということがテーマであった。「ICTを用いた行政への住民参画」というテーマはそれほど新しいものではなく、1990年代後半から電子掲示板(BBS)を活用する地方自治体が登場し、2002 年には全国で733 自治体を数えた。だがほとんどの事例が、議論が盛り上がらなかったり、荒らされたりして失敗に終わっていた。そこで、互いのプロフィールを明かすことで匿名性が低く安心できるSNSに期待が寄せられたのである。

この実証実験は、SNSが地域密着の情報を迅速に交換・共有できる安心な場であるということを示した。また同時に、この実験の報道などを通じて「地域SNS」というアイディアが全国的に認知され、他の自治体や企業やNPOなどの想像力を刺激した。

そしてこのころから、地域の人的ネットワークをSNSで構築し、地域情報の生成・流通・蓄積や、まちづくり、商業振興、観光振興などに活かそうという取り組みが全国に広がっていった。「OpenPNE」というオープンソースのSNSプログラムもタイミングよく登場し、2005年末から地域SNSは増加し始め、2007年末時点では全国で300カ所以上存在すると推測される。

目的と運営主体
地域SNSを運営しているのは、地方自治体や各地の企業、メディア、NPO、個人、任意団体などで、これらが協働でSNSを立ち上げる事例もある。多いのは民間企業(システム開発、地域ポータル、通信系、新聞・TV等)やNPOで、地方自治体は全体の1割(30自治体)程度だ。地域活性化を掲げる人々が任意団体を結成してSNSを開設した「イマソウ」(愛媛県今治市)や「けいはんな」(けいはんな学研都市)、商工会議所を中心とする有志が開設した「N[エヌ]」(長野県)といった事例もある。

地域SNSの運営主体と、それらが掲げる地域SNSの目的や方向性をおおまかに整理すると図2のようになる。地方自治体が運営しているものは行政や交流・まちづくりをテーマにするものが多く、NPOは交流・まちづくりや地域メディアづくり、企業が運営するものは地域メディアや地域(経済)活性化への意識が強いようだ。

図2:地域SNSの運営主体と目的・方向性
unei.jpg
出典:筆者作成

地域SNSの参加者
次に、地域SNSに参加している人々に焦点を当ててみよう。地域SNSの参加者数の平均は(SNSを作っただけで放置されているものを除くと)300~500人程だ。だが多いところでは数千人規模に達しており、佐賀県の「ひびの」の約8,000人、福岡県の「VARRY」の約6,000人といったところが最大規模である。これは「mixi」最大の地域コミュニティ「I Love Yokohama【横浜】」の約4万9,000人と比べるとひとケタ少なく、電子掲示板(BBS)形式で唯一の成功例ともいわれる神奈川県藤沢市の「市民電子会議室」の約3,000人よりは多い。この数が多いか少ないかは評価が分かれるところだが、実態を踏まえると、現在の地域SNSは対象地域のすべての人が参加するようなものではなく、その地域に関するコミュニケーションやまちづくり活動などに関心のある人々が数百人、数千人規模で参加している、と理解した方がよさそうだ。

また参加者の年齢層に注目すると、「若者ばかりではない」というのが地域SNSの特徴だ。全国規模で流行しているmixiの場合、35歳未満の人々がパソコンで8割、携帯電話からは9割以上を占めているが、地域SNSでは平均年齢が40歳前後というものが少なくない。これは、地域SNSが掲げている地域メディアやまちづくりなどのテーマは40代以上の人々にも関心が高く、またそのようなテーマに意識をもっている人々がさらに仲間を引き込んでいるからであろうと思われる。

またシニア層など、機器の操作に慣れていない人にも参加してもらうために、パソコン講習やサポートを地域SNSの取り組みとセットにしている事例もみられる。これは地域SNSの参加者を増やし、互いに顔が見える関係を築くのに役立っている。

次回からは具体的な事例を取り上げ詳しく紹介しながら、地域SNSに共通する特徴や効果的な運営方法を探っていく。

※地域SNSの運営者、利用者、研究者などが集まる、「第2回地域SNS全国フォーラム」が2月28日・29日横浜で開催される。8月に行われた第1回のフォーラムは主催者の予想を大幅に上回る数の参加者が全国から集まり、大変なにぎわいであった。「地域で人をつなぐ」ことによる活性化に関心のある方にはぜひおいでいただきたい。

社会情報学会[第108回定例研究会]発表資料:「日本の地域社会におけるコミュニティガバナンス -実践・課題・展望-」
2008年02月16日

カテゴリー : 研究成果

地域SNS研究会事務局の庄司が、社会情報学会[第108回定例研究会](2007年11月26日開催)にて発表した際の資料を公開します。

発表資料:「日本の地域社会におけるコミュニティガバナンス -実践・課題・展望-」
ファイルをダウンロード

参考:
増殖する米国の地方自治体(makolog)
http://mshouji2.cocolog-nifty.com/makolog/2007/12/post_b457.html

第1回 地域SNSに何ができるか(月刊『広報』連載コラム 「人をつなぐ」地域SNS ~各地の地域SNS活用術)

カテゴリー : 研究成果

※このコンテンツは、(財)日本広報協会が発行している月刊『広報』に2008年1月号より地域SNS研究会の庄司昌彦が連載している記事を、日本広報協会のご好意により許可をいただき地域SNS研究会のサイトでも公開するものです。

「人をつなぐ」地域SNS
“SNS”が世界的に広がっている。SNS(Social Networking Service)とは、インターネット上で友人関係を可視化しコミュニケーションを楽しむ会員制のコミュニティサイトだ。国内では大手の「mixi」が1200万人以上の会員数を誇り、また海外でも1億人以上の会員を抱える「Myspace」をはじめ数千万人規模のサイトがいくつも存在するなど、急速に成長している。インターネットでコンピュータや情報をつなぐのではなく「人をつなぐ」ということ、そしてつながった人々のコミュニケーションや活動をさまざまな形で支援するということがSNSの特徴だ。

国内では2005年頃から、SNSを「地域」の活性化や交流に活用しようという取り組みが増えており、総務省もこれを後押ししている。2007年5月現在で250ヶ所以上の地域SNSが全国各地に設けられ、すぐれた成果も各地でみられるようになってきた。2007年の8月に兵庫で行われた「地域SNS全国フォーラム」では、主催者の想定を大幅に上回る数の人々が産官学民のさまざまな立場から集まり、大変な盛り上がりの中で地域SNSの可能性について議論し交流を深めた。同時多発的に全国で起こった地域SNSの取り組みは、大きなうねりとなりつつある。

図:地域SNS全国フォーラムの様子
zentaikai.jpg

しかし、地域SNSに参加しているのはどの地域でも数百人から数千人ほどで、インターネット上のサービスとしてはどれもそれほど大きなものではない。そのため実情が十分に紹介されているとはいえない。また、地域SNSが支える「人のつながり」はどうすれば地域の課題解決や活性化へと発展させることができるのか、行政やNPOや民間企業は地域SNSとどう関わればいいのか、どうすれば地域SNSを持続的な地域社会の活動基盤としていけるのか、といったことは各地で試行錯誤が続いている状態で、成功・失敗の経験が広く共有されているとはいえない。
そこでこの連載では、地域SNSの先進的な事例や特徴的な事例を紹介し、共通する特徴や効果的な運営方法をさぐっていきたいと考えている。

地域社会を機能させるもの
地域SNSを語るときに、「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」という用語をたびたび耳にする。「地域で人をつなぐことでソーシャルキャピタルをはぐくむ」とか、「地域SNSはソーシャルキャピタルが豊かなところで活性化する」などといった使われ方をする。地域SNSの活用は、このソーシャルキャピタルがカギになっている。

そこで、地域SNSについての議論を始める前にソーシャルキャピタルという考え方を基に、地域社会は何を必要としているのか、ということを考えてみたい。

ソーシャルキャピタルについてはさまざまな研究があるが、ロバート・パットナムという政治学者が行った「Making Democracy Work(「邦題:哲学する民主主義」、1993年)」という研究が代表的である。彼は、1970年代にイタリアで進んだ地方分権について研究し、地方政府がよく機能した地域は、自発的な市民活動が根付き活発で水平・平等主義的であると考えた。

このときに彼が、「人々の協調行動を活発にし、効率を高める社会的特徴」として位置づけたのがソーシャルキャピタルだ。これは「信頼」、「互酬性規範(互いに与え合う意識)」、「市民参加のネットワーク」などによって構成されていて、ソーシャルキャピタルが充実している地域では、地域経営が効率的に機能しうまくいくという。これらを踏まえて彼は、アメリカ社会でソーシャルキャピタルが低下し地域が衰退しているという指摘を行った。

図:ソーシャルキャピタルの概念イメージ
socialcapital.bmp
出典:「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」
(平成14年度 内閣府委託調査)より
http://www.npo-homepage.go.jp/pdf/report_h14_sc/2.pdf


パットナムのソーシャルキャピタル論は、日本の地域社会を考える際にも参考になる。もともと日本の地域社会には、「結」や「講」やさまざまな中間組織が存在し、「信頼」、「互酬性規範」、「市民参加のネットワーク」の源となっていたと考えられる。だが近代化が進むと社会分業や地方行政が発達し、旧来の仕組みは衰退した。地域社会は自律性が低下し、「政府の指示や知識、中央の資源」に頼って全国どこでも画一的な姿になるような地域経営を行った。その中で町内会や業界団体など、新たな中間組織が整備されたが、近年は既得権化したり機能不全に陥ったりしていて衰退傾向にある。また特に都市部では人々の流動性が高いため、協力関係がなかなか構築されず、危険や不安感が高まっている。

今後の地域社会を考えると、もはや「政府の指示や知識、中央の資源」に頼って生きていくことはもはやできなくなってしまったといえるだろう。少子高齢化が進みグローバルな競争が進む中で中央は地方を支えきれなくなっている。地域社会は政府や中央になるべく頼らず、自ら課題を分析し、目標を定め、自前の知識や資源で問題を解決していく必要がある。

ただ、衰退が進む地域社会にいきなり自立を求めるのは難しい。そのため政府は、地方分権や税源の移譲などを進めているが、パットナムのイタリア研究やソーシャルキャピタルの議論を踏まえると、これからの地域社会に必要なのは「人々の協調行動を活発にし、効率を高める」ことであり、そのための「信頼」や「互酬性規範」や「市民参加のネットワーク」ではないかと思えてくる。行政などとともに地域経営を機能させるための中間組織を生み出し、活性化させ、それらの連携を機能させること(多主体によるネットワーク型のガバナンス)を作り出すことがとても重要なのではないだろうか。

地域SNSができること
 地域SNSは、人と人をつなぎ、さまざまなサークルや団体など新たな中間組織の活動を支援することができる。また、インターネット上でしばしばみられる助け合いの精神も機能させることができる。そして、コミュニケーションを重ねさまざまなイベントを共有することで、ユーザー同士が互いの信頼感を高めるといった効果も持っている。

つまり地域SNSは、ソーシャルキャピタルを醸成することで人々の協調行動を活発にし、地域社会の経営を機能させる基盤となる可能性があると考えられる。

 今回は地域SNSからやや離れた抽象論が多くなってしまったが、次回は地域SNSの全国的な実態を運営目的や運営主体、ビジネスモデル、利用者の属性などさまざまな角度から整理することにしたい。


「単なる「交換日記と掲示板」を超えろ」(日経BP ITPro)
2007年09月19日

先日の地域SNS全国フォーラムについて、地域SNS研究会事務局の庄司が書いた文章が、日経BP社のITProに掲載されました。

単なる「交換日記と掲示板」を超えろ--全国の地域SNSが神戸に集結
「地域SNS全国フォーラム」レポート
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070913/281853/

当日の盛り上がりを描写しつつ、話題になった知事の「交換日記と掲示板」発言を中心に、現在の地域SNSが置かれている状況をまとめています。この原稿は、『日経BPガバメントテクノロジー』誌にも掲載される予定です。

T4P(Technology for Participation)カンファレンス@ノルウェー・アグデル大学で日本の地域SNSを紹介
2007年06月28日

カテゴリー : 地域SNSニュース : 研究成果

ノルウェー・クリスチャンサン市のアグデル大学にて開催されたT4P(Technology for Participation)カンファレンスにて、事務局の庄司などが日本の地域SNSについての発表を行いました。

Analysis of Regional Social Networking Services: Community Participation and Regional Economic Revitalization in Japan
Michiko Yoshida, Masahiko Shoji, Yuko Yamada.

---------------
※感想(庄司昌彦)
ヨーロッパの方々の反応はおおむね「興味深い」というものでした。電子政府関連のカンファレンスということもあり政治家の関与やeデモクラシーとしての成果について2問ほど質問をされました。

ヨーロッパでの電子政府の議論は、障害を持つ人も含めてみんなが「参加」できるようにしよう、サービスを使えるようにしようという意識が非常に強いと感じます。日本ではインターネットを通じたサービスは高齢者や苦手な人は使えないから、やっぱりオフラインが大事、、、、という話になりがちですが、今回のカンファレンスでは逆にインターネットだからこそいろんな人が使えるようになる可能性があって、そのためにはどうすればいいか考えようという姿勢の人が多かったと思います。そのような精神は会議の運営にも現れていて、聴覚障害者のために、話されている内容の速記をプロジェクターに映していたりしました。

私は、色々な議論を聞きながら、では日本の地域SNSは多様な人々の「参加」にどれだけ取り組んでいるだろうかと思いました。視覚障害を持っている人が自由に文字の大きさを変えたり、スクリーンリーダーを通したりして地域SNSを楽しめるのか。色覚障害の方にはサイトがどう見えるのか、、、等々。日本の自治体ウェブサイトはここ数年でアクセシビリティがみるみる向上していますが、地域SNSはまだそこまで至っていないと思います。
---------------

下記のとおり、カンファレンスのウェブサイトでも紹介されています。

Global participation
Kaoru Sunada and Masahiko Shoji, from the International University of Japan, Michiko Yoshida from Fujitsu Research Institute, and Yuko Yamada from Merchandise and Life, have travelled a long way to attend the T4P'07 Conference in Kristiansand, Norway.

http://www.t4p.no/t4p.no/conference/programme/news/global-participation/

「mie-SNS」実証実験中間報告の際の発表資料を公開
2007年03月29日

070221%E4%B8%89%E9%87%8D%E5%A4%A7%E5%AD%A6.jpg

2月21日に行われた「mie-SNS」の実証実験中間報告の基調講演で、庄司が発表した際の資料を公開しました。

上記の画像、あるいはこちらからダウンロードできます。

※地域SNS研究会では、地域SNSの研究に役立つ資料のご紹介、ご提供をお願いしております。ご協力いただけます方は事務局の庄司(shoji@glocom.ac.jp)までご連絡をお願いいたします。

『地域SNS最前線:Web2.0時代のまちおこし実践ガイド』の読書会が開催

カテゴリー : お知らせ : 研究成果

3月28日、国際大学GLOCOMにて『地域SNS最前線:Web2.0時代のまちおこし実践ガイド』の執筆者4氏による読書会が行われました。

須子氏の発表では、SNSとWeb2.0の概要説明の後、地域SNS内における地域通貨の可能性について、自身が開発しているバーター通貨システムを具体例として挙げ説明しました。

続く三浦氏の発表では、地域SNSの先駆けである「ごろっとやっちろ」と、各地で実施された総務省の実証実験の成果および評価について詳細な報告が行われました。

司会も務めた庄司氏の発表では、地域SNSの動向を報告した後、地域SNSのビジネス・モデルや特徴、オフライン活動との関係について言及しました。

最後の和崎氏の発表では、地域SNSの運営におけるノウハウに加えて、今後に懸念される問題点や目指すべき地域SNS像に向けて、具体的な提案がなされました。

質疑応答では、地域SNSの運営や評価の手法、個人情報に関するポリシー、ユーザーと非ユーザー間の情報格差などについて活発に議論されました。

読書会の概要は、下記のウェブサイトをご覧下さい。
http://www.glocom.ac.jp/IECP/2007/03/sns_web20.html

『地域SNS--ソーシャル・ネットワーキング・サービス--最前線 Web2.0時代の町おこし実践ガイド』が3月20日に発売
2007年03月07日

カテゴリー : お知らせ : 研究成果

地域SNS研究会のメンバーが執筆した『地域SNS--ソーシャル・ネットワーキング・サービス--最前線 Web2.0時代の町おこし実践ガイド』が、3月20日にアスキーから発売されます。

地域SNS--ソーシャル・ネットワーキング・サービス--最前線 Web2.0時代の町おこし実践ガイド地域SNS--ソーシャル・ネットワーキング・サービス--最前線 Web2.0時代の町おこし実践ガイド
庄司 昌彦 三浦 伸也 須子 善彦

アスキー 2007-03-19
売り上げランキング : 37460

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

内容

地域SNSの最新動向と運営の実例を詳しく解説。使用しているプログラムやオフライン活動との結びつき、地域社会との関係、また地域活性化の事例をビジネスモデル別に紹介する。

目次

はじめに
第1章 地域SNS導入の前に

1.1 SNS を振り返る
1.2 地域SNS とWeb 2.0.
1.3 「まちづくり」と「地域SNS」

第2章 行政が取り組む「地域SNS」

2.1 熊本県八代市「ごろっとやっちろ」
2.2 総務省の取り組み
2. 3 評価

第3章  急増する地域SNSの実態

3.1 続々と立ち上がる地域SNS
3.2 地域SNS の実像
3.3 地域SNS には何ができるのか

第4章 地域SNSの開設と運営

4.1 地域SNS 開設への道のり
4.2 地域SNSの設計思想
4.3 地域SNS 開設後の考え方
4.4 地域SNS の運営
4.5 地域SNS を立ち上げよう

第5章 地域SNSの評価と展望

5.1 「ごろっとやっちろ」が地域に与えたインパクトと、今後の展望
5.2 地域SNS とオフライン
5.3 これからの地域SNS と地域通貨
5.4 地域SNS 事始め

あとがき
著者紹介

詳細は下記のウェブサイトをご覧ください。
http://www.ascii.co.jp/books/books/detail/978-4-7561-4873-5.shtml

政策情報学会にて事務局の庄司が発表「eデモクラシーの展開と地域SNS」
2006年12月13日

カテゴリー : お知らせ : 研究成果

政策情報学会第2回研究大会にて、事務局の庄司が「eデモクラシーの展開と地域SNS」と題する発表を行いました。

詳細は下記のウェブサイトをご覧ください。
http://policyinformatics.org/convention/2006/2nd.html

mixiユーザの現住所を分析
2006年08月24日

カテゴリー : お知らせ : 研究成果

地域SNS研究会事務局では、mixiの検索機能を利用して、ユーザが登録している「現住所」について調査しました。調査対象は、調査当時の全ユーザー約480万人のうち、「現住所」を公開していないユーザや海外在住のユーザを除いた約300万人です。

表1.都道府県別mixi人口と実際の都道府県人口

図1.調査対象mixiユーザーにおける各都道府県ユーザーの割合(各都道府県のシェア)

表2.各都道府県の実際の人口に対するmixi人口の割合(mixi普及率)

図2.各都道府県の実際の人口に対するmixi人口の割合(mixi普及率)

地域SNS研究会のウェブサイト公開
2006年05月17日

カテゴリー : お知らせ : 研究成果

地域SNS研究会のウェブサイトを公開しました。
また、1月27日に開催したセミナー「地域SNSを考える」で庄司昌彦(GLOCOM研究員)が発表した資料「地域SNSの事例紹介」のPDFファイルを公開しました。

Download file

関連記事
「mixiじゃダメなの?」にどう答える――地域SNSの意味 (ITmedia)
自治体から個人まで運営主体も様々、各地で芽吹く「地域SNS」(日経BPガバメントテクノロジー)