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知られざる東アジアの情報化

2006年 7月 19日 (水)

東アジアの不安型ナショナリズム

講師:高原 基彰氏
所属:東京大学大学院
日時:2006年7月19日(水) 午後2時~午後5時
終了しました

  • 概要:
    東アジアにおけるナショナリズムの相克は、これまで主に外交上の歴史問題として解釈されてきた。その争点は、戦争 責任をめぐるものであり、国内の社会変動とは関わりのない、 対外的な問題であると考えられてきた。
     しかし近年のナショナリズムは、外交問題としてだけでは なく、雇用を中心とする、生活不安の広がりを背景とするもの でもある。これはいわば「欧米型」のナショナリズムであり、 欧米では、自国民の雇用保護をうたう、移民排斥の動きなどと して現れてきたものである。
     現在は、日本・韓国・中国の内部で、「歴史・外交問題」に 焦点化されたナショナリズムと、この「欧米型のナショナリズム」 とが、混在している状態である。とりわけ、もともと雇用不安定 化の影響を受けやすい若年層が、自らの不安感を旧来の「歴史・ 外交問題」へ仮託することで、ナショナリズムの盛り上がりに 加担するという構図が、三ヶ国に共通して見られる。そこには インターネットというメディアが大きく関わってくる。
     本セミナーでは、既存の東アジア・ナショナリズム論では解釈 することのできない、国内の社会変動と連動する形のナショナリ ズムが生起していることを、日本の事例と韓国・中国の事例とを 比較参照しつつ、論じることとしたい。

  • 講師プロフィール:
    1976年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍中。 著書に『不安型ナショナリズムの時代』(洋泉社・新書y)、共著書に 『インターネットと<世論>形成』(東京電機大学出版局)がある。 発表論文に、「創造性で稼げない若者の苦悩」(中央公論2006年4月号)、 「反日デモ世代が抱える団塊の狂躁とフリーターの不安」(中央公論 2005年7月号)、「日本的脱工業化と若年労働力の流動化」(社会学 評論56巻3号)など。

  • 速報:
    本セミナーでは、東京大学大学院の高原基彰氏による「東アジアの不安型ナショ ナリズム」と題した講演が行われた。日本・中国・韓国のネット上で見られる、 若者中心のナショナリズムの動向に着眼しつつ、その発生原因はどこに由来して いるのかを分析する内容であった。

    高原氏の考えでは、日本-中国、日本-韓国間で起きている歴史問題(をきっかけ にしたナショスティックな感情の噴きあがり現象)の本質は、外交問題ではなく 国内問題にある。すなわち70年代以降の産業構造の変化、すなわち社会経済の流 動化というマクロな動向に高原氏は注意を促しながら、現在見られる若者中心の ナショナリズムというのは、この流動化に対応できない人々―たとえばフリー ターやニートと呼ばれているのはまさにこうした若者たちのことだが―の不満の はけ口になっていると論じるのである。高原氏はこうしたナショナリズムの姿 を、高度成長期に国民が等しく幸せを共有できた時代のナショナリズムと区別し て、「不安型ナショナリズム」と名づけているのである。日本の若者たちは、か つて日本社会が持っていた豊かさから「あぶれてしまった」という実感を抱きつ つも、その一方で、中国や韓国に対して「日本は平和的に豊かさを達成したのだ から、歴史問題の責任を問われる筋合いはない」と日本の達成した高度成長を 誇ってしまうという、ある種の自己疎外的な状況に陥っている。流動化に適応で きない若者たちは、本来であれば、自分たちの生活を保障するための政治的な道 を模索するべきなのだが、歴史問題という生活とはなんら関係のない擬似問題に かかずりあうことで、行き場のない不安を転嫁してしまっていると高原氏は指摘 している。

    セミナーでは、この発表の分析に同意する意見が多く聞かれた他、この問題に対 しインターネットがどのような役割を果たしたのかなど、今後検討すべき課題に も繋がる議論が交わされた。


  • 講師:高原 基彰氏
  • 所属:東京大学大学院
  • 日時:2006年7月19日(水) 午後2時~午後5時
    終了しました
  • 場所:国際大学グローバルコミュニケーションセンター

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