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智場、GLOCOM Review、コラム…


 

『政策決定の新しいデザインと「知識マネジメント」』

山内康英、鈴木寛、澁川修一著

 本論文で筆者たちは新しい政策決定のあり方として「政策支援プラットフォーム」を提唱している。これは、政策決定サークルと分散的な情報や知識を持つ外部の集団が適宜、連携する仕組みとして、企業の実務化や専門家と政策立案者が情報交換を行い、必要な期間、戦略的提携を作り出すような「場」のことである。

 従来の日本の政策決定過程には一種の政策サイクルが見られた。つまり、4月から6月頃までの年度始めのフリーディッスカッションと新政策の策定、省内の予算原案作成と省内査定および年次予算概算要求、9月から年末にかけての予算政府原案決定、1月の通常国会と続くサイクルである。

 しかし、こうした政策サイクルが現在の社会の変化についていっているかという点に筆者たちは疑問を呈する。つまり、こうしたシステムが21世紀型の産業に対応していない、あるいは、霞が関=永田町という中央集権的・階層的な政策立案のメカニズムが、現在の、より分散・協働的な社会の知識状況に対応してないというのである。特にそれが顕著なのが情報通信産業であり、市場の側の複雑性の増加に対応する仕組みと、市場の変化の速さに対する政策的意思決定の速度の向上が必要だという。

 そこで筆者たちは三つの概念を組み合わせて政策支援プラットフォームのアイデアを提案する。三つの概念とは、「知識プラットフォーム」、「組織的知識創造のバーチャルSECIモデル」、「組織情報化のCAN(Community Area Network)モデル」である。知識プラットフォームとは、第三者間の「取引を活性化する」ような場を提供するビジネスという「プラットフォーム・ビジネス」の類比概念であり、第三者間の「情報・知識の交換を継続的に作り出す」場を提供する活動である。組織的知識創造のバーチャルSECIモデルとは、知識の創造が集団としての組織の活動と不可分であることを論じたものである。そして、組織情報化のCANモデルは、「組織の情報インフラ」と「組織の知識・情報利用」は相互依存的な関係にあり、既存の組織の情報構造を脱却するためには、その間に正のフィードバックが必要であることを指摘している。

 この三つの概念が重視するのは、知識のマネジメントに他ならない。つまり、知識を重要な資産と見なし、これを有効に管理することによって、的確なタイミングで、的確な個人や部署に、最も的確な形の知識を提供する戦略である。政策決定サークルが政策決定に必要な情報を欲しているときに良質の情報や知識をタイミング良く供給することが、必要なのである。

従来のような未組織の知識マネジメントでは現在の問題にもはや対処できない。したがって、政策決定における知識マネジメントを改善する手段として政策支援プラットフォームが必要になるというのである。

 この政策支援プラットフォーム概念を構築するきっかけとなったのは「情報化による競争力強化に関する研究会(協働研)」での活動であり、それは通商産業省の平成12年度予算作成および『ミレニアム・プロジェクト』と部分的に連動していた。その結果、情報と知識の社会的分散化状況への対応と政府のガバナンスという課題の重要性が認識されるとともに、IT(情報技術)利用の高度化を利用した行政サービスの効率化、日本のポスト開発主義型政治経済体制への移行という課題も存在することが確認されたという。

土屋大洋(主任研究員)

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