『情報通信産業の構造と規制緩和〜日米英比較研究』
福家秀紀著
2000年4月28日、関西大学総合情報学部の福家秀紀教授による米英の規制緩和をテーマとした第2回目のIECP読書会であった。特に、現在進行中のNTT接続料を巡る日米交渉中としては時機を得たテーマである。
1.米国1996通信法
1996年の改正は、情報通信のグローバル化、インターネットの拡大を背景に、従来の反トラスト政策にかえて、米国の国際競争力を確保しようとする政策意図が明白である。それは以下の競争3部作からなり、全面的な競争原理を導入を図るものである。1)市内相互接続の改革、即ち、地域・長距離の別なく相互参入によって市内通信での競争を促進するために接続ポイントの増加、ネットワーク要素をUnbundle化、長期増分費用に基づく相互接続を進めた。2) ユニバーサルサービスの改革、即ち、長距離から地域へ、都市部から過疎地へ、大口利用者から低利用者への内部補助の仕組みとして、Universal Service Fundの設立、Life-Lineの援助、教育機関へのインターネット導入支援(E-rate)などを明確にした。3)アクセス・チャージの改革、即ち、州際アクセス・チャージを段階的に通話料基準から定額制にし、また長距離事業者との相互接続に適用されているプライス・キャップ(上限価格)規制についても市場競争を通じてコストに近づけた。(このように米国では、利害関係者間の政治的な配慮からのルール作りを採用しているにもかかわらず、日本に相互接続料金の設定に長期増分費用方式の採用を迫るという矛盾を著者は指摘する。)また地域電話事業とケーブルTV事業の相互参入ついても、一部の規制は残ったものの基本的に自由化された。
2.通信法改正後の状況
その後の状況については、1) 長距離通信から地域通信への参入、2) 地域通信から長距離通信への参入、3)電話事業からケーブルTVへの参入、4)情報通信メガメディアを目指すM&Aの局面がある。1)については新規参入事業者のシェアも極めて少なく、かつ施設ベースでの市内競争は期待通り進まず、地域通信の競争も都市部中心に過ぎない。2)も相互接続条件義務がネックとなりRBOCの長距離通信参入もほとんど進展していない。3) は、通信事業者によるケーブルTV事業への相互参入の動きより、M&Aによるメガ・メディア形成の動きが顕著である。
3.英国の情報通信政策
英国の電気通信政策の特徴は、1)競争の進展に応じて段階的に、(BTとMercuryによる複占政策は7年など)期限を明確にして適用してきた。2) 米国FCCの「参入支援的」な政策と対照的に、英国OFTELは「競争中立的」な政策を採用し、既存の事業者と新規参入者を同一条件で競争させてきた。3) 規制政策の透明性で、諮問文書のみならず案の作成背景、理論的根拠を公表し、また関係者の意見を募り、それにコメントするというやり方である。
4.日本での総合的な情報通信政策の必要性
英国と市場構造が似ている日本は、上記と対照的に、不透明な裁量型行政やNTT分割問題への過度の集中の結果、総合的な情報通信政策の遅れが目立つ。LCRのあり方を含めた優先接続の問題、番号Portability、個人情報保護など利用者保護への取り組み、コンテンツ規制、さらには国際的なM&Aの中でのメディア融合への対応など省庁の枠を超えた総合通信政策が求められている。
小林寛三(フェロー)