GLOCOM - Publication

Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

『プロダクト・リアライゼーション戦略 3次元情報技術が製品開発組織に与える影響』

竹田陽子著

 6月14日、竹田陽子専任講師によるIECP読書会が行われた。今回は、新世代3次元情報技術が製品開発プロセスに与えるインパクトについて、6つの事例研究をもとにした解説が行われ、今後の職務のあり方や産業構造の変化の可能性に関して論じられた。

1.3次元CAD

 現在、製品開発の分野では、Rapid prototyping(試作の高速造形)など情報技術の革新が起こっており、これによって開発プロセスも、組織も、産業構造も変わり得る。特に3次元CADは、1993年頃より、2次元CADの飽和状態に代わって普及し始めた。2次元CADは3次元の製品を3方向から描くもので、製品イメージは掴みにくい。80年末に登場した新世代3次元CADは、Solid modelerと呼ばれ、立体の内部構造をデータとして持つので、輪郭・表面だけでなく表裏の区別、容積・重量計算ができ、設計のツールとして使われるようになった。なお、3次元CADの登場で回数は減るものの、強度・操作性・質感などでやはり試作は必要である。

2.プロセッサ−機能とメディア機能

 情報の送り手が手順に従ってコード化・伝送・加工・蓄積処理を行うことがプロセッサー機能で、定型的な演算処理、一定のフォーマット表示が特徴である。これに対し、データの意味解釈が受け手に委ねられ、人と人の相互作用によって意味を伝達する機能をメディア機能と呼ぶ。3次元CADは、これら両機能を併せ持つ。

3.フロント・ローディング

 3次元CAD活用の最大のメリットは、メディア機能を活用した企業内外での設計上の諸問題を早い段階で認識し解決することによって開発期間短縮とコスト削減を図ることである。これをFront loadingという。問題解決のサイクルは、問題認識→代替案→モデル作成→テスト→評価の繰り返しとなるが、前段ではメディア機能が、後段ではプロセッサー機能が作用し、6件の事例研究によれば、3次元CAD導入によって、量産出図前の金型業者の設計への参加や公式非公式の会合を通じてFront loadingは典型的に現れた。多くの場合、製品品質は向上し、期間短縮は達成された。ただし、開発工数は短期的にはむしろ増える。またデザイナーと設計者の分業関係が曖昧になり、顧客とのインターフェースが要求され、新しいタイプの職人が出現するなど分業構造、産業構造が変わる傾向がある。

4.3次元情報技術普及のポイント

 大企業の場合、1)トップダウンの意思決定、2)組織・制度改革、3)短期的なマイナスを補う中長期的評価方法が必要。部品・加工業者の場合、二代目など後継者がいる場合は3次元導入には積極的。但し、人的資源不足は逆に情報仲介業などビジネスチャンスでもある。データ互換性の問題については、標準化・変換技術・低廉化・JAVAなどパラダイム変換の4つが絡んで解決していく。

5.最上流の情報技術

 最上流のコンセプト・デザイン(概念の可視化)はデザイナーのアナログ感覚が重要であり、3次元化は遅れている(未来技術研究所が挑戦中)。従来は、それ以降のエンジニアリング・デザイン(コンセプトの具現化)およびプロセス・デザイン(商品化)の順だが、3次元化によって、コンセプト・デザインの試行錯誤の段階から次の段階のデザインを開始できる。最上流のプロセスこそ顧客につながる部分であり、3次元モデルでプレゼンテーションを行うことで顧客の意見を聴取でき、あるいは顧客自身による3次元化による設計注文に発展し、より付加価値のあるサプライチェーンの一巡が期待できる。

小林寛三(フェロー)

[ Publications TOP ]