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Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

『「品川区地域活性化・情報プラットフォーム」の開発実証』

西山裕・田尾宏文著

 本論文は、GLOCOMの研究事業の一環として行われた「品川区地域活性化・情報プラットフォーム(SJP)」の構築と実証実験から、中小企業の情報化と地域活性への一つの解決策を提示しようというものである。

 筆者たちが実証実験期間中もち続けた問題意識は、「中小の事業主は厳しい環境変化の中、新たな展開を日々模索している」というものであったという。中小企業は、従来の下請け取引の中で、仕事量の安定以外にも様々なメリットを受け取ってきた。しかし、それは裏を返せば依存関係でもあり、脱系列化や市場環境の変化によって、そうしたメリットが受けられなくなると、中小企業は大きな打撃を受けることになる。そこで、地域の中小企業経営者は、新しい取引関係の構築、情報の入手・交換・発信手段の確保、外部資源との連携・活用という、具体的な成果を情報ネットワークに期待しているという。

 こうした中小企業のニーズに応える形で企画されたのが、「品川区地域活性化・情報プラットフォーム」である。これは、従来の系列関係では必要とされていなかった情報交換機能を補完し、企業の課題解決のため、外部資源を有効に活用する仕組みを提供しようとするものである。

 今回の実証実験では、「事業支援」、「分業・協働」、「地域情報化サービス」の三層からなるプラットフォームを想定し、各サブ・プラットフォーム上にそれぞれ2個(計6個)の「支援モジュール」が設計・開発された。つまり、第一に、対象事業所の経営資源の長所と短所について自己診断を行う「経営資源分析支援」、第二に、従業者の資格や資質および事業主の育成意欲を診断・分析し、事業主と対象従業者、専門家の三者が面談して育成プログラムの概要を設計する「人材育成・後継者支援」、第三に、企業間の情報交流に関する意欲や、新しい事業分野を開拓しようとする姿勢を診断する「企業間情報支援」、第四に、インターネット利用を促進する「情報技術導入支援」、第五に、事業所の標準インタフェース利用状況と採用意欲の診断を行う「標準インタフェース採用支援」、第六に、他の五支援モジュール分野で、行政情報がどのように活用されるのか調査する「行政情報活用」である。

 このようなプラットフォームに基づく実証実験の結果、中小企業の事業主・従業員と、高いコンサルティング能力を持った専門家とが、情報プラットフォーム上で交流・協働することにより、「経営・技術・人材」といった中核的課題を解決していくことが可能であることが明らかになったという。そして、地域情報プラットフォームによる事業主・従業員・専門家の交流・協働実験は、今後進められる情報化による地域活性化に大きな可能性をもたらしたと筆者たちは述べている。

 しかし、こうした試みを支援する態勢が、他の地域でも充分整っているとはいえない。今後、情報プラットフォームが各地に構築され、地域の活性化を推進していくには、関係各方面の協力が不可欠であり、特に行政とその関係機関には、従来の姿勢にとらわれず、思い切った発想の転換をして地域活性化の中核となることが強く求められる。事業主も、相互理解と自立に基づく協働関係をいっそう広げる努力を行わなければならない。

 筆者たちは、さらに、今回の実証実験を基に発展させた情報プラットフォームとして、個人・組織・集団の自助努力を活かす「マッチング・プラットフォーム」構想を検討している。

土屋大洋(主任研究員)

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