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Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

「辞書」にでていない世界

土屋大洋(主任研究員)

 カナダのモントリオールへ行ってきた。北緯41度付近のニューヨークを北上し、北緯45度を超えたやや東寄りにモントリオールはある。北緯45度というと、だいたい日本の北端、北海道の稚内ぐらいになる。

 ウェブで調べてみると気温は摂氏0度あたりをうろうろしている。最高気温がマイナス6度という日もある。当然、重装備で出かけたのだが、行ってみるとさほど寒くはない。地下街が発達しているため、あまり外に出なくていいようになっているし、外も湿度が高いせいか体感温度はそれほどでもない。

 モントリオールの繁華街は歩いて回れるほどの大きさだ。カナダは米国、北欧と並ぶインターネット先進国だが、目抜き通りのサント・カトリーヌ通りを歩いてもインターネットの面影はあまり見えてこない。ぽつぽつと控えめに「.ca」の文字が見えるだけだ。

 モントリオールはケベック州最大の都市であり、世界のフランス語圏ではパリに次ぐ第二の都市「モンレアル」でもある。本場パリのフランス語とはだいぶ変わってきているそうだが、フランス語を解さない私にはどちらも同じである。

 モントリオールに四つある大学のうち、英語系の牙城とされているのがマギル大学である。校舎の中をのぞいてみると、ようやくインターネットの面影を見つけた。課題に取り組んでいるのか、端末室のパソコンは全部埋まっている。パソコンが足りないのか、教室の外の廊下にまで端末が置かれていて、ここも満席である。

 マギル大学の前の本屋も英語の本ばかりだった。ぼんやり見て歩くと『カナディアン・インターネット・ハンドブック2000 ヨッタビットへの光バルブ』という本が目に付いた。1999年の発行である。「ヨッタビット(yottabits)」とは何なのか。

 中を読んでみると、どうやら「ヨッタ」は数字の桁のことらしい。インターネットの世界では「キロ」、「メガ」から「ギガ」、「テラ」ぐらいの話までは進んできている。「ギガビット・イーサーネット」という言葉も使われ始めた。

 「テラ」の上が「ペタ(peta)」で、その上が「エクサ(exa)」、その上が「ゼッタ(zetta)」である。この辺になるともう簡単な辞書には出ていない。そして、ゼッタの上が「ヨッタ」であるらしい。1ヨッタビットを6,000万人の人々にラジオで送るには30年かかり、テレビで送信すると15年かかるそうだ。ヨッタビットの8倍が「ヨッタバイト」で、これを数字で表すと「1,208,925,819,614, 629,174,706,176」バイトとなる。

 こうした大量の情報送信が、光ファイバ技術の登場によって視野に入ってきたというのがこの本の主張らしい。現に、モントリオールで開かれた非営利の官民協力会社であるCANARIEのワークショップでは、光ファイバをどう敷設し、使っていくかが議論の中心だった。

 CANARIEは、通信事業者がコントロールするネットワークの時代はそろそろ終わり、ユーザがネットワークの末端から自由に光ファイバをコントロールする時代がくると考えている。光ファイバの中を通すデータの波長を多重化し、それぞれの波長に何を通すかを自分で決めるというのだ。インターネットの混雑を想定して作られたIP(Internet Protocol)さえもそうした環境には合わなくなるとして、CANARIEはOBGP(Optical Boader Gateway Protocol)という新しいプロトコルの開発を行っている。

 CANARIE社長のビエリング氏は、ここからインターネット革命の第二幕が始まるという。OBGPはまだデモを行う段階にまで至っていないようだが、寒い国でホットな未来世界を見せられた気がした。

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