GLOCOM - Publication

Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

く・も・ん・通・信

 2000年度も、たちまち年度末が来てしまいました。“e-Japan戦略”をひっさげて、情報化の推進にいよいよ本格的に乗り出そうとしている日本ですが、日増しに強まる不況色や政治の混迷の中で、来年度はどのような展開が見られるのか、心配の種は尽きません。

 わがGLOCOMは、それでも皆様がたのご指導とご支援のおかげで、昨年度の赤字が一転して、今年度は黒字決算となる見通しがたち、ほっと一息いれています。この勢いで、来年度には経営の基盤をより確固たるものにしたいと、決意を新たにしています。情報社会研究の推進、地域情報化への積極的な関与、政策形成のためのプラットフォームやデータベースの構築が、来年度にも引き継がれていくGLOCOMの活動の三本柱ですが、同時に今年度から始めた国際情報発信の方も、さらに内容を充実させ有意義なものにしていきたいと考えています。

 先月お知らせした私の本は、『文明の進化と情報化-IT革命の世界史的展望-』という題になって、3月下旬には出版される運びとなりました。この本では、現在進行中の“IT革命”と総称される社会変化を、互いに性格を異にする四つの社会変化の同時並行的な進行と見る観点からの、分析を試みています。その四つとは、村上前所長のいう“スーパー産業化”に対応する(1)第二次産業革命の爛熟と(2)第三次産業革命の突破、および“トランス産業化”に対応する(3)第一次情報革命の突破と、(4)ポスト近代文明(智識文明)の出現です。

 日本のIT革命は、これまでもっぱら(1)の側面を中心に進んできました。いわゆる“情報家電”路線や自動車の情報化路線がそれです。ここでは現在でも、日本は世界をリードしているといってよさそうですが、その反面、新情報通信産業が主導する(2)の側面では、パソコンやインターネットの普及の遅れ、あるいは情報技術の“ビジネス利用”の遅れなど、立ち後れが目立っています。しかし、今度のe-Japan戦略で、ようやくこの側面にも目配りが効くようになってきました。

 それに対し、日本だけでなくどの国でも、NGO-NPOやネティズンの台頭に代表される(3)の側面への理解や対応は、著しく不十分です。警戒を強めて抑圧しようとする傾向さえ見えます。そして、(4)の側面については、70年代から80年代にかけて、いささか性急に展開された“ポストモダン論”への反省もあって、体系的な理解や構築のための取り組みはあまり見られないように思われます。もちろんポスト近代文明の出現は、少なくとも100年とか200年という長期間にわたって、近代文明の衰退と並行しつつ徐々に見られる過程でしょうから、慌てても仕方がないのかもしれません。

 皆様のご高評を賜ることができれば、この上ない幸いに存じます。

公文 俊平

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