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智場、GLOCOM Review、コラム…


 

『第三世代移動通信システム−−標準化の経緯とその将来』

山田肇著

 本論文は、携帯電話を中心とした第三世代の移動通信システムについて、その標準化の経緯と将来性という点から考察したものである。

 第二世代の移動通信システムにおける標準化は各地域に任されたが、欧州ではGSMが国境をまたいだローミングを目指して成功を収めたのに対し、日本のPDC方式は日本のローカルな標準にとどまった。

 第三世代の無線方式については、日欧のW-CDMA方式と米国のcdma2000方式の間で特許問題が発生し、双方の標準化を妨げないという妥協が成立することになった。同じくコア・ネットワークについては、欧州方式のGSMに基づく3GPPという標準化組織と、米国のANSI-41方式に基づく3GPP2という標準化組織が設立された。それぞれの組織で決められた標準に関する情報はITUに提供されることになったが、その結果、標準案に対する意思決定権は政府から企業へ実質的に移動することになった。

 こうして設定された標準に基づくグローバル・ローミングには、使用する無線の周波数帯の統一、無線の変調方式の統一、コア・ネットワークでのプロトコルの統一という三つの条件がそろう必要がある。しかし、二つの標準の存在はこれを難しくしている。そこで、これを解決するためにいくつかの動きが出てきた。まず、世界の移動通信事業者が3GPPと3GPP2に規格の調和を呼びかけ、両者が技術的な仕様を一部変更し、両方式を調和させることになった。また、移動通信事業者の国際的な合併や出資による提携関係の樹立も、標準の違いを超えたグローバル・ローミングを可能にする方向に動いている。この動きが進めば、技術について完全な標準化が達成できなくても、グローバル・ローミングは実現することになる。

 しかし、第三世代の移動通信システムが普及する前に、それと競合する別の技術が普及する可能性もある。第二世代に位置付けられるcdmaOneやGPRSといった技術でも、ある程度満足のいく通信速度が得られる。さらに、低速移動あるいは停止した状態では、Bluetoothや無線LAN技術という選択肢も考えられる。

 そもそも、第三世代の移動通信技術が本当に「第三世代」と呼ぶにふさわしいのかを考えると、利用者が基準とするのは技術ではなくサービスであり、技術者の視点とは認識がずれている。第三世代の移動通信技術を普及させるには、画像、音声、インターネットなどのサービスを、統合的に提供するデータ通信サービスが必要となるが、利用者にとってそれは必ずしも第三世代である必要はない。代替あるいは競合する技術があるとすれば、第三世代技術が利用者に魅力的と考えられる余地は予想以上に小さいかもしれないことに気をつけなければならない。

 第三世代の周波数帯の使用免許付与方法は、各国によって異なっている。欧州におけるオークションの高騰が懸念されているが、サービス価格が高止まりすることはないだろう。しかし、落札企業の経営不振の懸念は残る。また、当面は第二世代と第三世代への二重投資が避けられないため、スムーズに第三世代への移行が進むかどうかは不透明であり、二重投資の負担が経営を圧迫することも考えられる。第三世代技術が「ばら色の未来」に結びつくには、利用者が圧倒的に魅力的と感じる新しいサービスを提供する必要がある。 

土屋大洋(主任研究員)

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