ブッシュ新政権と日米関係

舛添要一(主任研究員)

 アメリカのブッシュ大統領は、3月中旬、「死に体」と言われた森首相と会談し、 日米経済、原潜事故などについて話し合ったが、それは、アジアについては、クリントン政権の中国寄り姿勢を改め、日本重視の姿勢を打ち出したことの反映でもある。 新政権の外交政策の特色は、かつてのレーガン政権と同様に力の政策であり、それはたとえばNMD(国家ミサイル防衛)の推進に顕著に現れている。

 国務長官に指名されたパウエルは、2001年1月7日、上院外交委員会の公聴会で、「対日関係は、アジア太平洋地域における土台である。日本など同盟国との関係を弱めれば米国自身の力が弱まる」と日米関係の重要性を強調するとともに、中国については、「競争相手であり、潜在的には地域的ライバルにもなりうるが、通商や朝鮮半島問題では利益を共有している」と述べている。

 アメリカと日本の関係は、世界第一位と第二位の国の同盟関係であり、世界で最も重要な二国間関係である。したがって、日米関係が悪化すれば、世界全体の平和と安全に深刻な影響を及ぼす。国務副長官に就任したアーミテージは、ハーバード大学のナイ教授らとともに「アーミテージ・レポート」をまとめたが、そのなかで、ポスト冷戦時代には在日米軍基地を整理・縮小・統合すべきだとしている。しかし同時に、日本が集団的自衛権を行使すべきであることを強調している。つまり、これは、日米安保を片務的なものから双務的なものに変えようという意向である。しかし、日本は憲法上の制約を盾に、首を縦に振らないという状況が続いてきた。

 しかも、その背景には、日米の力関係の変化がある。1980年代には、日米の力関係が相対的に日本に有利なように展開していたが、90年代のバブルの崩壊とともに、逆の方向へと動いていった。アメリカが一人勝ちの時代に、相対的に弱体化した日本が、集団的自衛権の行使をはじめ、日米同盟の双務性を高めることなどまっぴらだという意見が出てきても不思議ではない。

 空前の繁栄を謳歌したクリントン時代が終わって、ブッシュ政権下ではバブル崩壊の気配が見え始めているが、日本に比べればアメリカ経済の実態は遙かによい。米軍が世界最強であることは疑いえないし、また経済も繁栄を続けているし、さらにはドルは基軸通貨の地位を確保している。そして、何よりも、文化や価値観の面で、アメリカが世界をリードしている。この状態が今後とも続いて行くのか否か。

 もし、アメリカ経済が突然不況に陥ったりすると、その余波は世界に拡大することになってしまう。そこで、今まさに求められているのが、日本の一日も早い経済回復である。アジアにおける唯一のサミット参加国として、日本はアジアを代表しているのであり、日本の通貨、円がアジアの通貨危機を救ったことは周知の通りである。その日本が経済を回復させて、IT分野でもアメリカに追いつくことは、アメリカが不調になったときに、世界を救うことにもつながる。

 日本は、何らかの形で、アジアを統合していく努力を展開すべきであろう。特に東南アジア、とりわけASEANとの協力は、アジア通貨基金構想のような形で進めるとよい。発展途上国はまだ開発に精一杯で、真の民主主義が確立するまでには至っていない。アジアをとってみても、ミャンマーのように、アメリカ流の人権外交一本槍路線への反発も見られる。「アジアにはアジアのやり方がある」というのが、アメリカに批判されているアジア諸国の言い分である。開発独裁はインドネシアでは倒れたが、その後にクリーンな民主主義を構築するのは容易ではない。南北問題にどう対応するのか。ITについてデジタル・デバイドが言われているが、南北の格差は今後ますます拡大していくことが懸念される。この問題への対応もまた、日米両国にとっては大きな課題であろう。

 先述したアーミテージ・レポートは、同盟国としての日本に能動的なパートナーシップ、具体的には、日米が共同してアジア戦略を構築し、朝鮮半島、中国・台湾問題などに対処することを要求している。しかし、それが可能となるには、憲法9条を改正するか、解釈を変更して、集団的自衛権の行使を認めねばなるまい。また、有事法制をきちんと定める必要がある。それが、日米安保の双務性を高める道でもあり、21世紀の日米関係を展望するとき、避けては通れないハードルである。

 この問題に答えを出し、強固な日米関係を築くためには、わが国に、一日も早く、国民に支持された強力なリーダーシップの誕生が不可欠である。