移動通信システムの過去、現在、未来
講師:山田肇
6月26日に行なわれたIECP研究会では、「移動通信システムの過去、現在、未来」と題し、山田肇主幹研究員が、移動通信の標準化動向やサービスの現状、将来像などに触れた上で、利用者の立場から見た第三世代携帯電話についてレポートした。
携帯電話の第一世代から第二世代への交替は、技術的にはアナログからデジタルへの転換を意味したが、利用者にとっては端末の小型化、軽量化という、単に技術的以上の意味があったのだという。加えて、ヨーロッパでは、第一世代では国別であったサービスが第二世代では域内サービスへと進化し、日本では、自動車電話という、まさに「携帯」できる電話への転換があった。第一世代から第二世代へのサービスの転換には、このように、ユーザにとって目に見える違いがあったわけである。
紆余曲折を経て「IMT-2000」という規格にまとめられた第三世代携帯電話でも、これまでのサービスとの違い、「グローバルローミング」と「高速データ通信」を打ち出している。ところが、第三世代携帯電話の本格的サービスを目前にして、この二つの「違い」の意味が、携帯電話の内側と外側から挑戦を受けているという。第三世代といっても電話をかけるという機能自体は変わらないので、この二つの「違い」に合理性がなければ、第三世代携帯電話サービスそのものの存在意義が失われかねない。
内側からの挑戦とは、第二世代技術によるローミングサービスの実現と、同じく第二世代技術の改良による高速データ通信の実現である。すでに日本を除く、ほぼ世界中で採用されているGSM方式を採用すれば、世界中で同じ携帯電話を使用することができる。また、携帯電話事業者の中には、自らの市場を広げることで自社サービスを世界中で提供し、その結果、第三世代技術によらずに、事実上のローミングサービスを提供しようという戦略をとるところも出ている。高速データ通信についても、同様に第二世代技術の「有効活用」が検討されている。業者は第二世代技術を改良し、高速のデータ通信を提供することで、設備への投資額を最小限にしつつユーザのニーズに応えようとしているのある。
一方、携帯電話の外側からは、この数年で急速に成長している無線LAN技術からの挑戦を受けている。無線LANは、第三世代携帯電話が担おうとしていた高速データ通信の機能を提供するものである。しかも、アメリカやヨーロッパで実験的に行なわれているような、無線LAN同士を相互に接続し、インターネットに接続する試みが拡大すれば、そもそも携帯電話による無線データ通信の意味が失われることになる。「世界中どこでも」無線LANが利用できるとなれば、そして、その上には音声サービスも載るとすれば、携帯電話サービスを使わなくても無線LANを利用した通話サービスが可能になる。だとすれば「携帯電話」というサービスの存在意義が問われることになるのではないだろうか。
第三世代携帯電話の危うい点は、このように利用者の目に見える違いを打ち出すことができないというところにある。しかも、第三世代携帯電話のライバルは、第○○世代の「電話」サービスではなく、無線LANのような、何か別のサービスになるのかもしれない。
上村圭介(主任研究員)