ブルークラブは赤かった!
土屋大洋(GLOCOM主任研究員/メリーランド大学国際開発・紛争管理センター訪問研究員)
ワシントンD.C.は二つの州にはさまれている。一つはバージニア州で、もう一つの州はメリーランド州である。メリーランド州は、独立13州に名を連ねる歴史ある州だ。州都アナポリスは、英国からの独立戦争直後の1783年11月26日から1784年8月13日まで、一時的にアメリカの首都にもなった。
アナポリスはワシントンの東30マイルほどに位置し、車で40分ぐらいで行ける。ここはチェサピーク湾に面する港町でもあり、海軍士官学校が置かれていることでも有名である。
メリーランドの名物シーフードといえばブルークラブだ。ブルークラブは正式名をCallinectes sapidusといい、南北アメリカ大陸の東海岸に生息している。
実はその姿は日本のワタリガニによく似ている。ただし、ワタリガニが海に住むのに対し、ブルークラブは海水と淡水の混ざるところに住んでいるという。日本のワタリガニは食べるところがあまりないため鍋料理のだしにされてしまうことが多いが、アメリカのブルークラブは毛ガニのように食べる。
一般にアメリカでカニを食べるという場合、タラバガニの足を食べるときもあるが(ただし、タラバガニはカニではなくヤドカリに近いらしい)、たいていはクラブケーキという、カニ身を寄せ集めたハンバーグのようなかたまりを食べる。ブルークラブは数少ない手でむいて食べるカニのようだ。
アナポリスのマリーナ沿いにある、わりと有名な店に入った。日本で見たニュースによれば今年はブルークラブが豊漁らしい。「ブルークラブはある?」と聞くと、「もちろん。小さいのは1ダースで25ドル、中ぐらいなら40ドル、大きいのは60ドルでフレンチフライがつくわ」とのお答え。中ぐらいのを半ダースとシーフードサラダを注文した。
注文が終わるとすぐにウェイトレスが戻ってきて、大きな茶色の紙をテーブルいっぱいに敷き詰める。なるほど、カニを食べるとテーブルが汚れるらしい。木槌とカニバサミも用意された。
いざやってきたブルークラブは見事に赤かった! 加熱してしまうと赤くなるのだ。ブルークラブの甲羅はオリーブ色、茶色、うすい赤、それに青などになるそうで、ブルークラブ(青蟹)の由来は、オスの足が青みがかったグレーだからである。
ブルークラブは脱皮をする。脱皮直後のやわらかい甲羅のままのブルークラブをソフトシェルクラブといい、ソテーにして食べるとまた美味だそうだ。わざわざ脱皮させるのを待つために、レストランが生け簀に飼っていることがよくある。
今回は、蒸してスパイスをかけたブルークラブを半ダース、黙々とむいて食した。店の人に食べ方を教えてもらったが、カニ味噌をこちらの人は食べないようだ。気にせず、日本流でいただいた。30分後には殻の山である。