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Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

FTTHによる日本復活のシナリオ

FTTHが日本を元気にする

講師:藤本篤志(株式会社有線ブロードネットワークス取締役/株式会社ユーズコミュニケーションズ取締役)

 有線ラジオ放送の雄、株式会社有線ブロードネットワークス(旧・大阪有線放送社)が、2001年3月1日にインターネット接続サービスBROAD-GATE01を開始してから4カ月が経った。BROAD-GATE01は、光ファイバーを利用し、ベストエフォートで100Mbpsの通信速度が得られることもさることながら、月額4900円という低価格が話題を呼んだ。7月12日に開催されたIECP研究会では、同社の藤本篤志取締役を招き、「FTTHによる日本復活のシナリオ:FTTHが日本を元気にする」と題した講演会を行った。

 有線ラジオ放送事業者であった同社が、FTTHサービスに乗り出したのには、それなりの理由がある。有線放送事業者である同社は、もともと番組を配信するための同軸ケーブル網を自社で所有している。同社のケーブルの総延長は22万キロメートルに及び、北海道から石垣島まで国内のほとんどの人口密集地をカバーしている計算になるという。そして、このケーブル網を通じて、個人宅、業務店を合わせて140万以上の加入者のもとに有線放送の番組を送り届けているのだが、この有線放送のためのインフラを敷設し、加入者にサービスを提供してきた経験が、通信事業の展開に結びついていると藤本氏は言う。

 しかし、同じように同軸ケーブル網を持つCATV事業者の多くとは異なり、同社は既存の同軸ケーブルによるインターネット接続サービスという選択肢を取らなかった。講演の中で藤本氏は、所有する既存の同軸ケーブル網を利用したインターネット接続サービスの可能性が検討されたことにも言及した。しかし、この先10年、20年のうちに必要になると見込まれるブロードバンド需要を見越した場合、同軸ケーブルの伝送容量では限界がある。同社には、より高速なサービスが提供できる光ファイバーのインフラを早い時期に構築しようという狙いがあったようだ。

 有線ラジオ放送事業の中で、同社がコンテンツプロバイダとしての役割を担っていたことも同社にとって有利だったと藤本氏は見ている。同社は、有線ラジオ放送という一つのコンテンツビジネスを展開するうえで「コンテンツはユーザが選ぶ」という原則の下、多様な番組メニューを揃えることで、あらゆる人の趣味趣向に合うサービスを提供してきた。ブロードバンドがまだ万人にとっての必需品とは呼べない今の段階では、単に「速くて安い」だけではなく、有線放送で培ったノウハウをもとにして、ブロードバンドがもたらす「楽しい」側面によって利用者を獲得することが重要なのだという。

 今後は、NTT、電力系、その他資金力のある企業が高速インターネット接続サービスに乗り出し、激しい競争が予想される。しかし、藤本氏にはそれも織り込み済みのようだ。「それらの多くは、10年先、20年先を見越したインフラではない。いずれ本当のブロードバンドが求められるときがくる。そうしたときに、利用者が同社のFTTHサービスを選んでくれればいい。そういう意味では、競合他社にも成功して欲しい」という藤本氏の言葉には、他社に先んじてFTTHによるサービスを開始したという有線ブロードネットワークスの自信を感じた。

上村圭介(GLOCOM主任研究員)

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