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Center for Global Communications,International University of Japan

智場、GLOCOM Review、コラム…


 

く・も・ん・通・信

 一昨日から、社会システム論の集中講義(一週間で15コマ、一日3コマ)ということで、別府の立命館アジア太平洋大学(APU)に来ています。この大学は開学2年目で、世界57カ国から留学生が来ているそうですが、今は夏休み中ということで、大半の留学生は一時帰国していて、私のクラス(講義は日本語です)でも89人の受講生中、留学生は11人で、そのほとんどは韓国からの学生です。男女比は2対3といったところでしょうか。

 着いた日は大雨でしたが、翌日の午後から抜けるような秋空が広がり、空気もさわやかで、眼下には高崎山や別府湾、そして別府市街の風景が一望でき、なかなか快適です。もっとも、一コマ1時間35分の授業を一日3回、立ったままで行うと、さすがに足はぱんぱんに張り、のどはからからという始末で、翌日からはなるべく座って、マイクを口元にくっつけてぼそぼそ話をする方式に切り替えました。講義資料はパワーポイントのファイルにして、教室内のスクリーンにパソコンから映し出せるようになっていますが、やはり黒板を補助的に使います。ほとんど10年ぶりに黒板に字を書こうとしたら、驚くほど漢字を忘れている、それもなんと筆順を忘れていることに気づかされて愕然としました。

 学生さんたちは、私語をまったくせず――坂本和一学長のお話では、それはきっと緊張しているからでしょう、ということでした――ノートをとりながら熱心に話を聞いてくれるので、かなり気持ちよく講義ができるのですが、その分なぜか普段の講演の時よりはかなり速いテンポで話が進んでしまい、1時間半強の講義に準備した分を1時間弱で終えてしまう始末です。そこで質問を受け付けたり意見を言わせたりして時間を稼ごうとするのですが、これがいっこうに出てきません。やっと出てきたと思ったら、試験の仕方についての質問だったりして、いささか拍子抜けです。

 私は、今回の授業の中では、最近の靖国参拝問題や教科書問題をめぐって日本とアジア諸国、とりわけ韓国や中国との間に摩擦が高まっていることや、日本経済の先行きに関する各国の懸念が強まっていることを念頭において、あえて挑発的と思われるくらいにいろいろな問題提起をしてみました。残念なことに留学生の諸君も含めて、学生たちの反応は2日間の講義が終わったこれまでのところ、事実上皆無ですが、これはたぶん私のやり方が性急かつ生硬にすぎたためでしょう。何とかこの壁を突破して、各国の学生諸君との実質的な交流ができるようになりたいものです。

 留学生諸君はいま、日本語のインテンシブな学習に正面から取り組んでいるそうです。この2年間で、会話にはさほど不自由しなくなった学生もたくさん生まれていると聞きました。彼らが学部を卒業するころまでには、その日本語能力にはさらに磨きがかかっていることでしょう。さらに、再来年に予定されている大学院課程が開学するころには、より高度の学業を修めた世界各国からの留学生が、このAPUに続々と集まってくることでしょう。そうなれば、このキャンパスはグローバルな政治、経済、社会の問題を議論しあうための絶好の場になるのではないかという予感がします。坂本学長も、別府の地で教えはじめてから、京都にいたときに比べて、外国との、とくにアジア諸国との距離の近さを痛感するようになったと述懐しておられました。それはそうでしょう。ソウルにせよ、北京や上海、台北にせよ、東京に飛ぶのと大差ない時間で到着するのですから。

公文俊平

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