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智場、GLOCOM Review、コラム…


 

『第二世代B2B』-オープンS2Sに向かう企業情報戦略-

講師 :小池良次(在米ITジャーナリスト/GLOCOMフェロー)

 10月19日に開催されたIECP読書会は、小池良次著『第二世代B2B−オープンS2Sに向かう企業情報戦略』を題材として行われた。講師の小池氏は、電子商取引にとどまらず、IT分野全般において、その緻密な分析で定評のある在米のITジャーナリストである。現地で日々精力的な取材活動を続ける同氏ならではの、臨場感のある講演がなされた。以下、米国におけるB2B(Business to Business)を中心とする電子商取引の歴史的変遷と、同書が発売された今年4月以降の最新の動きも含めた講演内容の概要を報告する。

 小池氏によれば、インターネットB2Bは、主に企業間取引に係る三つの要素を軸に発展を遂げてきたと解することができるという。それは、消費者向けネットビジネスが2000年を境に低迷しはじめた一方で、活況を見せはじめたが、その歴史はインターネットが広く普及した1990年代半ばにはすでに始まっていた。その契機となったのが一つめの要素である「情報の断片化」である。ECサイトがブームとなった当時の企業の調達担当者は、いくつもの調達サイトとの個別の情報交換の煩雑さに加え、企業内システムと連動していないそうしたサイトとのやりとりで生じる情報を、社内業務のために人手を介して再整理するという膨大な作業に悩まされることになった。こうした「情報の断片化」と呼ばれる現象を解消するために登場したのが、コマースワン、アリバといった企業が提供を始めた「マルチカタログ・ソフト」と呼ばれる商品群であった。多くの調達先サイトを統合し、閲覧・価格比較・発注・社内情報システムへの情報受け渡しなどの作業を合理化するものであったが、従来の電話・ファクスを利用し、人手を介してなされていた作業がそのまま電子化されるというレベルに止まっていた。

 こうした動きは、インターネットの登場による社内情報と社外情報の壁の崩壊ととらえることができるが、それはやがて、従来の商取引の商習慣や概念を根本的に揺るがすB2Bサイトを出現させることになった。従来、調達業務というものは各企業が個別に実施するものであったが、高価な「マルチカタログ・ソフト」を導入できない中小企業に対して、インターネット経由で、複数の企業が一緒に電子調達システムを利用することを可能にするという「ビジネスポータル・サイト」の登場である。

 また、二つめの要素としての「情報の流動化」への取組みとして誕生したのが、取引市場系のB2Bである。これらは従来、商社やブローカーなどによって遮断されていた販売側と購買側の情報を流動化させ、迅速・効率的かつ公正な取引を実現させようというものである。こうした取引市場系としては、個別企業の発注する個別発注市場に加え、業界や系列全体をまとめる業界統合市場、既存商社やブローカー、問屋などが個別に構築する私的取引市場があるが、社内・系列といった従来の枠組みを超えた合理化や創造性を創出し、新しい商習慣や価値観を見出すこととなった。

 こうした流れのなかで必然的に行き着いたのが、三つめの要素である企業システムのバックエンド系の「オープンシステム化」である。インターネットをフルに活用し、取引市場や、問屋システム、小売システムなどの不特定多数の相手とのネットワークを活用するためには、従来型の企業内、系列内に閉じたバックエンド系のシステムをオープンなものにしていくことが不可欠となったのである。そして人手を介することなく、自社のサーバーと社外のサーバーを連結させることによって、自動作業・合理化を可能にするというサーバー・ツー・サーバー(S2S)を実現することが、企業戦略として重要になったのである。こうした動きは、販売系も含めた企業システム全体に対する再構築の機運を高め、それはASP(Application Service Provider)やeCRM(electronic Customer Relationship Management)のブーム化にまで派生していくことになったのである。特にインターネットの大衆化によって、強力に情報武装化された顧客との対応に追われることになった企業は、それに対抗するため自らも情報武装を拡充するという、情報戦争時代とも形容できるようなeCRMを中心とする情報化投資を加熱させていくことになった。

 小池氏によれば、こうした歴史的発展を遂げてきたB2Bについて、最近になってさらに新たな動きが現れつつあるという。eCRMへの熱狂的な期待が冷め、その限界が囁かれるのに伴い、企業システムの再構築の動きのなかで「コラボレーション・コマース」という概念をベースとしたワークフローの見直しを図ることにより、B2Bのインプリメンテーションから得られる利益の最大化を目指す試みが出現しつつあるのである。また、従来のクライアント・サーバー型システムをベースにしたものに代わり、企業システムにおいてもP2P型のシステムを活用した商取引形態やコラボーレーションのあり方を模索する動きが見られつつある。このように第二世代B2Bを超えた次の段階として、第2.5世代とも定義され得る動きが、すでに米国では見られはじめているというのが、同氏の現状分析であった。

花井靖之(GLOCOM主任研究員)

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