音楽は誰のもの?
土屋大洋(GLOCOM主幹研究員/メリーランド大学国際開発・紛争管理センター訪問研究員)
9月8日、サンフランシスコ講和条約50周年を記念する式典が、サンフランシスコのオペラ座で開かれた。田中外相とパウエル米国務長官が出席し、日米から多くの関係者が出席した。しかし、会場の外では、中国と韓国に関係する人々数百人が、日本の戦争責任をめぐって激しい抗議運動を展開していた。
抗議運動をひとしきり眺めた後、私は徒歩で西へ向かった。サンフランシスコは坂が多い。汗をかきながら坂を登ると公園に突き当たる。ゴールデン・ゲート・パークである。
入り口を入ってすぐのところには、まるで野外音楽堂のように、緩やかな坂になった芝生の空き地がある。開始時間に20分ほど遅れてしまったが、まだコンサートは始まっていなかった。
この野外コンサートは、電子フロンティア財団(EFF)が主催したものである。ホスト役を務めるのは、ジョン・ペリー・バーローとウェイビー・グレービーである。バーローは作詞家であり、1996年の米国通信品位法(CDA)成立に際しては、「サイバースペース独立宣言」を書いた人物として知られている*1。グレービーは伝説的なコメディアンであり活動家でもある*2。彼はいつのまにか衣装を着替えては、私には聞き取れないほどの早口でジョークを飛ばしていた(ビデオの中では、バーローが話している前で何やらもぞもぞしている縞模様の服を着た人である。どうやら「お香」に火をつけようとしていたようだ。後で香りが漂ってきた)。
バーローは、音楽は巨大なレコード会社などに独占されるべきものではなく、人々がそれをコントロールする権利を持つべきだと主張する。EFFが提唱しているOAL(Open Audio License)では、クレジット(出版物・演劇・放送番組などに使用された材料の提供者に、口頭または紙上で表す敬意)が創作者に与えられる限りにおいて、作品を複製・配布・改作・公演す許可が無償で与えられる*3。
EFFがこうした活動をする背景には、ナップスターのような新しい試みが、巨大な利権を有するレコード業界によって潰されてしまいそうになっていることに対する危機感がある。
この日のコンサートでは、EFFのOALに署名したアーティストたちが、それぞれ数曲を披露した。ほとんどが商業的には成功していないミュージシャンたちだが、プロ並みのパフォーマンスを見せるバンドもあった。
今月のビデオでは、サンフランシスコ周辺の現実の政治問題を素材に曲を作る、「プランニング・コミッション」という社会派バンドの「コンドーズ:プライバシー」という曲を収録した。プランニング・コミッションとは、サンフランシスコ市の都市計画委員会を念頭に置いたもので、3人のメンバーは、委員会の委員(コミッショナー)という設定である。「コンドー」とはコンドミニアム(共同住宅)のことで、市が作るコンドミニアムにはプライバシーの問題があると歌っているらしい。OALでは著作権を表す(C)マークの代わりに(O)マークを使う。それに従うと「(O) Planning Commission "Condos: Privacy" 2001 V.1.0」となる(ただしPlanning Commissionの連絡先が不明なのでここでは省いている)。